2008年05月18日 (日) | Edit |
HALTANさんから再びトラバいただきました。

ええと、前回エントリの冒頭の部分は地方分権に反対の立場であることは自分も同じ思いだということを強調するために書いた部分でしたが、ちょっと自意識過剰だったようでした。気を悪くするどころか、連続してコメントいただいて恐縮しております。

自分が念頭に置いていたのは、主に左派・市民系の政談系ブロガーの方々のことで、「なんであの人たちはカンリョーや自民党支配を批判するだけで、『じゃあ中央集権とやらを解体して本当に大丈夫なのか?』『民主党はそんなにまともな政党なのか?』を自省しないのだろう?」という点をとても憂慮しているんです。
[床屋政談]極めて啓蒙的・論壇的・運動的な「分権」主義者たち(2008-05-17)」(HALTANの日記

この点は本当に深刻ですね。霞ヶ関がインボーを巡らせていたり、制度疲労を起こしているから中央集権はもうダメで、じゃあ地方分権だよねくらいの簡単な二分法で国家を語るのが最新トレンドになってしまうと、改革バカが繁殖するには最適な状況になってしまいます。

あと、「改革バカ」に成り果ててドロップアウトしたキャリアというのは旧自治省に限ったつもりはありませんでしたので、まさに「浅野さんのハートに火をつける会」でまんまと担ぎ出されてしまう浅野史郎氏を含む現・元の「改革派知事」を念頭に置いております。民主党から出馬する元キャリアもほとんどこのパターンですし、そんな持ち駒しかない小沢氏が改革バカに成り下がるのも宜なるかな。

こういう改革バカの手合いが、国会を最高機関とする単一国家として日本国を規定した憲法をどこまで本気で変えるべきだと考えているのか判然としませんが、民主党はおろか自民党まで改憲論議の中で地方分権にやる気を見せてますし、HALTANさんの「国体にあれだけ固執する「保守」が国民国家を解体させてどうするというのか!」というご懸念が現実のものとなる可能性はかなり高いかもしれません。

私たちは、地方自治について、「道州制」を含めた新しい地方自治のあり方を模索しています。その場合、住民に身近な行政はできる限り市町村といった基礎自治体に分担させることとし、国は国としてどうしてもやらなければならない事務に専念するという「補完性の原則」の考え方と、その裏付けとなる自主財源を基礎自治体に保障していくという方針が決定的に重要になってきます。

 地方に自己決定権を与えるとともに自己責任を負わせることによって、地方の努力をうまく引き出せるようにするには、いまの都道府県より広範な単位、すなわち「道州」が適当であると考えます。

 各道州がそれぞれ努力していけば、全体としての国の力を最大化することができる、という「道州制」構想については、今後細部にわたって議論をしていく必要があり、新しい憲法には、こうした点を明示するべきでしょう。
5.緊張感をもって切磋琢磨する、統治機構のしくみ」(自由民主党Web「憲法改正のポイント」


「補完性の原則」なんてキリスト教の考え方(注:pdfファイルです)でしかなくて、マーストリヒト条約に取り入れられたのだってEUがキリスト教圏だからという理由に過ぎないのに、それを憲法にまで取り入れようとする仏教圏の保守ってのは、もはや保守とはいえないような気もします。まあ所詮地方分権教ですし何も考えてないんでしょうけど、キリスト教社会の倫理がいつの間にか地方自治の基本原理みたいな持ち上げられ方してるところに、地方分権教の浅薄さがにじみ出ているんですよねえ。

ついでにいえば、日本経団連が道州制に積極的なのはおそらくは関西圏を州としてひとまとめにすることによって、関東圏に対抗させようとする関西の経済人の意向が強いのではないかと個人的には考えております。民間団体でもっとも道州制に力を入れて具体的な研究をしたり提言をしているのも関西経済同友会ですし(直近では「緊急アピール「5年以内の道州制実現に党派超え取り組め それが日本成長の起爆剤となる(注:pdfファイルです)」なんてものも出してるし)。

確かに、近畿とか関西といわれる三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県の7府県の面積(32,852.05km2)を足すと、関東といわれる茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県の7都県とほぼ同じ面積(32,234.85km2)になりますし、東京対大阪では勝負にならないから周りを巻き込んで勝負しようという意気込みは分かります。その限りではEUと同じく「補完性の原則」ということもなじむかもしれませんが、だからといってその他の地方まで巻き込まれるいわれはないんです。例えば、上記の関西7府県と関東7都県の面積は青森県、岩手県、秋田県の3県の面積(35,631.52km2)よりも小さいわけで、人口はそれぞれ22,737千人、43,892千人、3,892千人、人口密度はそれぞれ690.4人/km2、1365.3/km2、108.3/km2となります(面積のデータはこちら、人口のデータはこちら)。特に青森県、岩手県、秋田県の3県の人口密度が低くなっているのは、それだけ山岳地帯に分断されていて居住可能地域が少ないという地理的な条件があるからであって、そんな地域を大括りにしたところで規模の経済なんてものは期待できるわけがない。というわけで、個人的には、地方分権なんてものは政策ごとに是々非々で判断するしかないと思っているので、自分のところを道州制にしたいばっかりにほかの地域まで巻き込もうとする関西はもちろん、それに唯々諾々と賛同してしまう過疎地域の対応にも脱力しております。

公共経済学については、前回エントリで「問題はこういう公共経済学者には一般向けの発言力がほとんどない」と書いたように、HALTANさんのような認識が一般的だということには異論はありません。

実のところ、そうした公共経済学の学界的位置づけというのはどうなっているのでしょう? というのも、経済学部ならともかく、「公共××」「××政策」といった類の学部・研究科・専門職の先生や非常勤の方々は、(少なくとも自分の知る限りでは)ほとんどが「政治学(行政学)」「社会学」「隠れマル系」「ジャーナリズム」「民間シンクタンク・金融」「中央官庁(旧自治省など)」「市民運動」「政界」といった辺りの専攻者・出身者・現役が主で、そうした公共経済学の人なんかほとんど見たことがないように思うのですが・・・。これは自分の勘違いでしょうか? 
[床屋政談]極めて啓蒙的・論壇的・運動的な「分権」主義者たち(2008-05-17)」(HALTANの日記


特に文部省が乱立させた地方の県立大に多い「公共××」とか「××政策」という類の学部では、HALTANさんのおっしゃるようにアカデミズムとは縁遠い教員が、「地方の人材を育成する」という名目で地方分権マンせーな講義を担当しているのは事実でしょう。結局は、まっとうな公共経済学の薫陶を受けた人材が地方に行き渡るほどには供給されていないため、本来なら公共経済学的な数理的アプローチで分析するべき問題(特に政府間財政移転や外部性が深刻な問題となる地方財政)が、「政治学(行政学)」「社会学」「隠れマル系」「ジャーナリズム」といった数字を一切使わない文系アカデミズムの草刈り場となってしまうのですね。しかも、地方自治体の首長も議員も職員も「反霞ヶ関」をキーワードにそういう言説をありがたがる傾向があるし。

あと、公共経済学の側にもマクロよりミクロを優先するようなクセがあって、特にリフレ派的な財政膨張を容認する立場と反りが合わない傾向があるように思います。前回言及した石先生や本間教授のほか、井堀東大教授やその弟子の土居丈朗慶大准教授(今朝の『報道2001』に出てましたね)といった辺りが公共経済学では有名どころですが、財政再建第一主義的な主張をされることが多いので、リフレ派には受けが悪いですね。井堀先生は、田中・野口・若田部『エコノミストミシュラン』の「エコノミスト主張別マップ」(p26-27)でも「財政再建、主計局派」として構造改革派に分類されてますし。

公共経済学者の一般向けの発言力がないという意味では、ブログを公開されている岩本康志東大教授はかなりのレアケースですが、ブログのエントリを見るに岩本先生もどちらかというとマクロ寄りかもしれません。ほかにも八代尚宏国際基督教大学教授(経済財政諮問会議議員)とか、八田達夫政策研究大学院大学学長とかは規制改革派として有名だったり、地方財政論では林宜嗣関西学院大学教授とか林宏昭関西大学教授辺りが、公共経済学周辺では有名どころでしょうか。

もちろん、この中にも地方分権マンせーだったり道州制推進派だったりする立場が錯綜してますが、経済学ではモデルの数理的な検証や計量経済学による実証的な検証が可能なので、トンデモは数理的にあるいは実証的に見抜かれてしまいます。そういえば野口悠紀雄氏も公共経済学者としてまっとうな教科書を書かれてますが、『1940年体制』以降「超」のつく著書以外はトンデモ扱いされてます。まあ、だからといってそういう経済学の世界に自浄力があるわけではないようで、トンデモとされる御仁が大きな顔をできるところが経済学に対する信用を落としていることは否めませんね(『経済セミナー』2008年5月号の特集「日本経済は大丈夫か?」の半分は?な方々ですし)。それでも政治学とかよりはだいぶマシでしょうけど。
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2008/05/20(火) 03:17:56 | HALTANの日記