2008年04月29日 (火) | Edit |
この点は前回のエントリで書き漏らしていたので、ちょっと補足。

すなふきんさんのところ経由でkechackさんが「~醜悪だった「朝生 新しい貧困特集」」というエントリを上げていらっしゃるのを知りましたが、確かにあの番組のセットでは現役の「貧困」世代と団塊世代というカテゴリで観客が配置されていたようで、はじめから世代間の対立を目立たせようという演出がミエミエでした。

ただ、前回この団塊の世代との対立を書き漏らしていたというか避けてしまったのは、俺が関心のあったのが渡邉氏の指摘についてだったからなので、該当部分を引用しておくと、

あとは、渡邉氏がデータを元にして、正社員の既得権益保護が労働者への配分を目減りさせ、非正規雇用を増加させている原因となっているとの指摘はもう少し掘り下げてよかったのにと残念。福井・大竹『脱格差社会と雇用法制―法と経済学で考える』(濱口先生がいうところの『脱力本』ですが)の大竹文雄・奥平寛子論文「解雇規制は雇用機会を減らし格差を拡大させる」には賛否あるし、番組中にも示された OECDの解雇規制ランキングも本当にそうか?とも思わないではありませんが、少なくとも企業内の原資を確保するためには考えなければならないはず。

そもそも、リストラが吹き荒れた時期には中高年のリストラも社会問題になってたし、田原総一郎も指摘したとおり日本の雇用慣行では定年間際にならないと元が取れない給与体系だったわけで、それをやめてしまえというのは難しいだろう。とはいっても、確かに今現在生産性に見合わない給料を得ている定年間際の給与を減らす以外に原資を確保する手段がないのであれば、積極的に議論してよかったのではないかと思う。でもまあ、それを実行したりすると裁判所が「若年期に生産性を下回る給与で働いた労働者の債権を不当に減額することは許されない」とかいうんだろうなあ。解釈論でしか考えない裁判所が経済活動を不当に制限することは許されるんだろうかね。
他力本願と数字


ということ。

この点で俺とkechackさんは問題意識が正反対を向いているようで、俺が違和感を感じるのはkechackさんの以下の指摘。

もう旧世代のリストラは90年代から行われており、給与のフラット化は相当進んでいて、まだそれが足りないとことさら騒ぎ立てるような問題ではない。しかも連合も同一労働同一賃金を主張して年功序列賃金が是等とは言っていない。世代間対立を煽って本質を見失わせるアジ以外の何者でもない。
~醜悪だった「朝生 新しい貧困特集」(Munchener Brucke


細かいところからいえば、ILOとか連合が主張しているのは「同一価値労働同一賃金」であって同一労働同一賃金ではないんだけどまあそれはおいといて、kechackさんのエントリのコメント欄でも議論があったように、ブルーカラーが年功を積んで生産性を上げて熟練工として高賃金になるのは全く構わない(し、現にそうなっている)としても、文系学部卒の大半を占めるホワイトカラーが年功で生産性に見合わない高賃金を得ていることが問題とされているんでは? そしてその解決を難しくしているのは、前回エントリに書いたとおり、そのホワイトカラーの高賃金が「得べかりし利益」となって債権化していることにあるんだろうと俺は考えます。

債権化したホワイトカラーの年功者の高賃金は、単にそれ自体が若年期の低賃金労働に対する報酬としての債権となっているだけではなくて、その債権を担保に住宅ローンやら子供の教育費が現実に支払われているわけで、俺が裁判所の判断を危惧するのもそれに対する「期待利得」を無碍にはできないだろうと考えるから。労基法上は本人の同意なしで行いうる賃金の減額は、懲戒のための減給ですら1/10を越えることができないし。

さらにいえば、就職氷河期に正規雇用されず未だに非正規雇用でワーキングプアとかいわれている団塊ジュニアは、その団塊の世代の「期待利得」によって教育を受けたり親の建てた住宅に住めた部分も大きいわけで、団塊の世代が「俺が食わせてやって学校にも行かせたのに、働かないなんてけしからん」といいたくなるのも無理はない(それが自己責任であるかはともかく)。まあ、団塊の世代のような自分の僥倖を顧みない自己責任論好きが有権者の多数派を占めるから「改革バカ」がのさばっていることには間違いないだろうけど。

というわけで、俺は朝まで生テレビが世代間の対立を演出したことはミスリーディングなだけであって、そっちに言及するより渡邉氏の指摘を議論した方が実のある話になったのではと思った次第です。団塊の世代が批判するべきは、自らが獲得した長期雇用プレミアムでもってせっかく手塩にかけて育てた子供の世代がまともな職に就けないような経済情勢であって、まずその責を負うべきなのは中央銀行とかなんじゃないでしょうかねえ。
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