2020年05月05日 (火) | Edit |
前回エントリでマクロの定員抑制について取り上げましたが、一応備忘録として地方公共団体の定員管理の考え方についてメモしておきます。

とはいえジョブに応じて人員体制を整えるという考え方が希薄な日本型雇用においては「考え方」というほど大したものではないのですが、総務省の「地方公共団体定員管理研究会」で毎年モデルを示しています。このモデルというのも現状の組織体制を基準として地方公共団体を比較しているだけなので、そもそも「必要な定数」というものを示しているわけではありません。

という代物ですが、平成23年度以降は毎年モデルが示されておりまして、最新版の資料は昨年9月のものとなります。
令和元年度地方公共団体定員管理研究会(第1回)資料
こちらの2ページ(pdfでは4ページ。以下pdfのページとします)に職員数の推移が掲載されていますが、

○ 総職員数は、対前年比で5,736人減少し、273万6,860人。平成6年をピークとして対平成6年比で約55万人減少。
〔対平成6年比で約▲55万人(▲17%)〕

と大々的に記載さています。下のグラフを見ると「(H17~H22) 集中改革プランにより約23万人の減」と特出しされていまして、6ページの「地方公共団体定員管理研究会の経緯」では、平成17年度から平成22年度は、地方の側からモデルを示す必要はないとして示されていなかったとのことですが、この期間をよく見ると、集中改革プランの時期と重なります。いやまあすごいぐうぜんですね(棒)この集中改革プランは、具体的には平成17年11月に経済財政諮問会議で決定された「総人件費改革基本指針」と平成17年12月に閣議決定された「行政改革の重要方針」を指しているのですが、「国と地方の行革コンペ」の見事な成果といえましょう。

この資料では30ページから埼玉県資料が掲載されているのですが、これによると埼玉県では「平成30年4月時点で県民1万人あたりの職員数(一般行政部門)は「11.2人」であり、全国最小を維持している」とのこと。その2枚目(31ページ)に県民一人当たりの都道府県職員数(定数管理調査一般行政部門)のグラフがありまして、1位の埼玉県が11.2人、2位の千葉県が13.2人、3位の大阪府が14.0人、4位の東京都が14.2人、5位の兵庫県が14.5人となっています。もちろん人口が大きいほどスケールメリットが働くので職員数の削減効果は大きいのですが、現在のCOVID-19の人口10万人当たり感染者数と比べてみると、職員が少ないという上記の4府県はすべて上位10位にランクインしています。一方で、職員数の多い方からは鳥取県51.0人、高知県47.1人、島根県47.2人、徳島県40.7人となっておりまして、なかなか興味深い結果となっていますね。
20200503チャートで見る日本の感染状況新型コロナウイルス
チャートで見る日本の感染状況新型コロナウイルス(5月3日時点)
https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/coronavirus-japan-chart/#d5

ちなみに33ページに埼玉県の過去5年の部門別職員増減状況が掲載されており、保健所が含まれる民生部門では67人増加となっています。なるほど保健所は体制強化したのかと思いきや、増要因として民生部門では「児童虐待件数増加への対応 (+71) 発達障害総合支援センター設置 (+10)」と81人増員したとしておりますので、保健所の検疫部門はむしろ減らされている可能性も考えられます。いやもちろん、非常事態にあって児童虐待担当も発達障害担当も総出で対応しているものとは思いますが、PCR検査に対応できる人員が増えるとは考えにくい状況だろうと思います。保健所が含まれる衛生部門では17人増加となっており、増要因として医師確保・感染症対策強化(+8)が掲げられていますので、一定の体制強化が行われていると考えられます。ただし、だからといって今回のCOVID-19感染拡大局面において即座にPCR検査に対応できる人員を増やせるとは限らないわけで、保健所が厳しい状況に置かれてしまう一因となっているのではないかと考えます(5/6修正しました。大変申し訳ございませんでした)。

さらについでに病院の病床数や職員については、小泉内閣に至るまで医療費削減の大義名分の下で人員削減が進められた経緯があり、福田内閣以降は、病床が急性に偏っている現状から地域包括ケアを中心とした体制へと移行させ、医師不足、看護師不足、コメディカル不足をいかに解決するかについて連綿と取り組んでいる分野でして、緊縮財政で病床削減ガーというのは勉強不足の誹りを免れないでしょうね。

(付記)
本エントリをアップして数時間後にこんな記事がはてブで話題になっていましたが、

…非常勤だが仕事ができる有能なスタッフは重宝され、任期明けのたびに別の部署で再任用を繰り返す。こうしたかたちで「非常勤のベテラン」が長く働き続ける例が、各地でけっこうみられている。細かい相違はあれど、この構図自体は非正規化が進んだ民間企業と何ら変わらない。

今回、コロナ禍に端を発した緊急対応とはいえ、こうした慣行とは全く異なる建て付けで、若者を期間限定で地方自治体に登用し、雇用創出・人手不足解消の両立を図ろうとする試みは、大変注目に値する。過去に資格試験スクールの講師として公務員採用試験対策に関わってきた筆者から見ると、大きな可能性を秘めているように思える。

なぜなら、この仕組みは少しでも運用を誤れば、「任期付き公務員」という、常勤職員と比べて著しく不安定で差別的な雇用形態を常態化・増加させる結果に終わりかねない一方で、神奈川県の黒岩知事が、この緊急対策で採用した職員について「優秀な方はそのまま県職員に登用する道もつくっていきたい」と発言しているように、公務員の採用に一石を投じうる力をも秘めているからだ。

大原 みはる 行政評論家「コロナでわかった、やっぱり日本は公務員を「減らしすぎ」だ 「ヒマで安定」の時代は終わったのに」(2020.5.5 現代ビジネス)5

いやまあリーマンショックや東日本大震災の際の緊急雇用創出事業はすっかり過去のものになってしまったのだなあと遠い目をしてしまいますね。もちろん、この間に法の趣旨を逸脱していた臨時的任用職員や一般職非常勤職員の制度が「会計年度任用職員」という弥縫策によって鞍替えされた経緯もありますが、リーマンショックの際東日本大震災の際も、国の基金を財源とする緊急雇用創出事業として、各自治体が地方公務員法に基づく臨時的任用職員や一般職非常勤職員を大量に直接任用した実績があります。特に東日本大震災時には、リーマンショック時から引き続き拡充された緊急雇用創出事業に加えて、地方公共団体の一般職の任期付職員の採用に関する法律に基づく任期付職員を任用しており、その任期付職員から地方公務員法に基づく選考による採用も行われています。
(補足しておくと、地方公共団体の一般職の任期付職員の採用に関する法律第3条第1項の特定任期付職員、同条第2項の一般任期付職員、第4条第1項の各号で「一定の期間内に終了することが見込まれる業務」と「一定の期間内に限り業務量の増加が見込まれる業務」に従事する4条任期付職員として任期を定めた職員を採用することができます。任期付職員は任期が定められている以外は基本的に正規職員と同じですので、定数管理の対象となりますし、適用される給料表も正規職員と同じです。したがって、任期付職員に限っていえば、ジョブに応じて正規職員が採用されたといえる場合もありますが、特に4条任期付職員の実際の配属は○○課の業務一般となることが多く、メンバーシップ型の仕事がメインとなります)

ということで、「神奈川県の黒岩知事が、この緊急対策で採用した職員について「優秀な方はそのまま県職員に登用する道もつくっていきたい」と発言しているように、公務員の採用に一石を投じうる力をも秘めている」といわれましても、既に実施していますが何か?という感想しかありません。まあ一般的な「公務員採用試験対策」は地方公務員法に基づく競争試験による採用の(いわゆる)正職員を対象としているでしょうから、選考採用といってもピンとこないのかもしれません。

念のため、地方公務員法上の競争試験採用は、18条の2で「採用試験は、人事委員会等の定める受験の資格を有する全ての国民に対して平等の条件で公開されなければならない」とされているため、医師等の資格を有する者を対象として受験者を限定することができません。逆に資格を有する者を採用する場合は、21条の2に規定する選考による採用によって採用しますので、例えば保健所の医師や保健師のような有資格者を採用する場合は選考採用することになります。まあ重箱の隅をつつくような指摘ですが、ご参考までに。

(付記2)
本エントリの冒頭で「ジョブに応じて人員体制を整えるという考え方が希薄な日本型雇用においては「考え方」というほど大したものではない」と書いておりましたが、付記で取り上げた記事についてhamachan先生が本質をズバリと突いていらっしゃいます。

日本では、公務員減らしを主張する人が、少なくとも筋金入りの一部の立派な欧米風のネオリベを除けば、それによって当該公務員の遂行するジョブが減るのであり、即ちあんたが享受しえた公共サービスがその分だけ減らされるのだよという、ジョブ型社会であればあまりにも当たり前の事実が脳みそから完全に消え失せてしまって、その極限まで減らされた公務員が、なぜかもっといっぱいいた時と同じくらいの、あるいはむしろそれ以上のサービスを提供してくれるのが当たり前だと、悪意などこれっぽっちもなく、ほんとに素直に、それのどこがおかしいの?と稚気愛すべきほど無邪気に、思い込んでいるんですね。
(略)
本ブログで何回も繰り返してきた気がしますが、わたしは、筋の通ったネオリベは好きです。筋の通ったというのは、公務員減らせということは、自分が享受できる公共サービスをその分減らせと言っているということをきちんと理解して言っているということです。そういう人は尊敬します。

しかし、残念ながらこの日本では、論壇で活躍する評論家にしても、居丈高な政治家にしても、みんなずぶずぶメンバーシップ型のいんちきネオリベでしかないのです。居丈高に公務員を減らしておいた上で、いざというときに公共サービスが足りないと、赤ん坊のようにわめきたてるのです。いや、それお前のやったことだろ。

ジョブなき社会の公務員減らしの帰結(2020年5月 5日 (火))(hamachanブログ(EU労働法政策雑記帳))

特に付け加えるべきことはありませんが、さらに絶望的なのは当の地方公務員法の所管大臣とか各自治体の首長とかその指揮命令下にある所管課を含めて「メンバーシップ型のいんちきネオリベ」しかいないということでしょうか。
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コメント
この記事へのコメント
保健所に検疫部門はないっすね。児童虐待担当もいないっす。
2020/05/06(水) 09:44:20 | URL | - #-[ 編集]
ご指摘ありがとうございました。保健所は民生部門ではなく衛生部門ですし、検疫は保健所ではなく地方衛生研究所の業務でしたので、本文を修正しました。
大変申し訳ございませんでした。

(自治体によっては民生と保健衛生を同一の部署で所管するところもあり(特に都道府県や中核市等の区分によって大きく異なります)、中の人でなくなって確認がおろそかになってしまい、反省しきりですね・・)
2020/05/06(水) 22:01:13 | URL | マシナリ #-[ 編集]
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