2019年07月21日 (日) | Edit |
だいぶ放っておいてしまったところですが、午後8時から各局で選挙特番が始まっておりまして、まあ報道で見ていた事前の予想に概ね沿った結果となっているようです。で、6年前の参議院選挙の後にこんなことを書いておりましたが、

その林内閣はわずか4か月で退陣し、昭和12年4月に総選挙が行われることとなりますが、そのような生活を実感している中下層に支持を訴えた社会大衆党の選挙スローガンについて、坂野先生はこのように引用されます。

 山川菊栄の一文を念頭に置くと、社会大衆党が選挙運動中に公表した選挙スローガンの意味がよくわかってくる。それは次のようなものであった。

「選挙スローガン
一、まず国内改革の断行!
一、国民生活の安定!
一、広義国防か狭義国防か!
一、政民連合か社会大衆党か!
一、議会革新の一票は社会大衆党へ!
一、大衆増税絶対反対!
一、勤労議会政治の建設!
一、国民外交の確立!」(内務省警保局『社会運動の状況・昭和12年』)


 「選挙スローガン」などは単に美辞麗句を羅列したものにすぎないと思われがちであるが、政治が大きな岐路にさしかかっているときには、各陣営とも意外に率直に自ら信ずる方向を国民に訴えるものである。そういう岐路においては、今日流行の「マニフェスト」はおのずから明示されるのである。すでにたびたび指摘してきたように、この時の日本の岐路は、「反ファシズム」か「改革」かにあり、「反ファシズム」の側には社会の上層が(財界と二大既成政党支持者)、「改革」の側には社会の中下層が支持を与えていた
 そして、大規模な軍拡を目指す陸軍内部にも、それを社会上層の「反ファッショ勢力」と結んで実現するか、ようやく議会にも勢力を増大しようとしていた社会の中下層の「改革」勢力と組んで行おうとするかの、二つの勢力があった。この二つの方向を理解すれば、ここに紹介した社会大衆党の選挙スローガンが、後者の途を率直に提示していたことがわかるであろう。
 社大党にとって第一に重要なのは対外政策ではなく「国内改革」であり、「国民生活の安定」だった。そしてそれを実現するためには、「反ファッショ」と軍拡を結びつけた「狭義国防」ではなく、「改革」と軍拡を組み合わせた「広義国防」路線が必要であり、それを政党界で実現するのは、既成の二大政党が結びついた「政民連合」ではなく、「改革」をめざす社会大衆党だったのである
坂野『同』pp.159-160
昭和史の決定的瞬間 (ちくま新書)
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坂野 潤治
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いわゆる中下層の方の支持を得ようとする政党は、いつの時代も変わらず「増税反対」と「改革」を唱えるようですが、裏返していえば、中下層の方は自らの境遇に満足しない限り「増税反対」と「改革」に期待するものと考えるべきかもしれません。結局、社会大衆党は昭和12年4月の総選挙で議席数を20から36へと倍近く伸ばし、その躍進の要因について、特高警察が「国民の政策批判力の増進」を挙げたとのこと。「政策批判力」というのは今でいう「熟議」とかになりそうですが、まあ「熟議」の結末がどうなるかを示唆するものともいえそうです。

(略)

経済学の教義に忠実なあまり増税忌避という思考停止に陥ることは十分にあり得ることでしょう。そのとき「増税反対」と「改革」を主張する勢力が、「付加価値税が生み出す恩恵−−無料の診療、高等教育、公共交通費や住宅取得の補助など−−をもっとも受けるのは、それらを払えない貧しい人たち」の期待を取り込んでいく様子が見られるのかも知れません。

トッププライオリティの置き方(2013年08月15日 (木))


今回の参議院選挙では、ナイーブさに定評のある松尾匡先生をブレーンに据えた政治団体(今回の結果で政党要件を満たしそうですが)が議席を確保したとの由。

政権とったらすぐやります
今、日本に必要な緊急政策

れいわ新選組は、
ロスジェネを含む、
全ての人々の暮らしを底上げします!

消費税は廃止


物価の強制的な引上げ、消費税をゼロに。
初年度、物価が5%以上下がり、実質賃金は上昇、景気回復へ。
参議院調査情報担当室の試算では、消費税ゼロにした6年後には、
1人あたり賃金が44万円アップします。

れいわ新選組 政策

まあ、今回消費税率引き上げ反対を含めれば、与党以外はほぼ消費税を目の敵にしていたようですし、上記の政策を掲げた政治団体からは障害者が当選された(障害者が選良として議会の場に参加することそのものについてはまた別途)とのことで、6年前の予想も当たるものだなと自分を褒めてあげたいと思います。

ついでに、3年ほど前には

権丈先生の新著から、この辺の整理をしておきますと、

 そう言えば,2015年の経済財政諮問会議(5月19日)「“経済財政一体改革”の実行に向けて(有識者議員提出資料)」の中に,「「経済・財政一体改革」個別改革の目標(1)社会保障(保険料)負担率(対国民所得比)の上昇に歯止めをかけ,実質可処分所得の目減りを抑制する」という言葉がありました.当初所得から税金・社会保険料を引いて現金給付を加えたものを「可処分所得」と呼び,可処分所得プラスの現物給付を『所得再分配調査』の中では『再分配所得』と呼んでいます.ですから,可処分所得という指標は,社会保障が行っている「医療,介護,保育などの現物給付」を無視した指標なんですね.そうした可処分所得の目減りを抑制するという話は,なんとなく聞こえはいいのですけれど,要は,ここでみた,社会保障の所得再分配機能を縮小するという話につながることです.
pp,102-103

ちょっと気になる社会保障 権丈 善一 著
ISBN 978-4-326-70089-9
2016年1月
A5判・240ページ
1,800円+税


※ 以下,強調は引用者による。


つまり可処分所得に現物給付を加えた「再分配所得」の拡充のためには、(言葉の厳密な意味での)再分配に必要な財源を一次分配の給与等の稼得所得から一旦政府に預けて、それにより必要原則に応じて分配するという恒久的な仕組みを構築する必要があります。その財源確保のために増税が必要だと申し上げているところでして、「可処分所得を減らして何が何でも財政均衡を達成しなければならない」というようなことは考えておりません。

いやもちろん、本書で権丈先生も指摘されているように社会保障というのは市場システムのサブシステムですので、一次配分の適正化が大前提ではあります(そのため集団的労使関係による人件費の配分交渉が重要になります)が、それに現物給付による再分配を加えて生活を保障するには、一旦政府に預けるという過程が必ず必要になります。ところが、日本的左派の皆さんには政府に対する徹底的な不信感がありますし、一般の方々にもそれはかなり深く浸透しているとは思いますので、「再分配」というなら政府を利用するのが効率的だというのはなかなか受け入れられる考えではないだろうとは思います。

可処分所得と再分配所得(2016年02月21日 (日))


というようなことも書いておりましたが、この点を政策の最初に持ってきた政党は苦戦したようです。

「家計第一」の経済政策


アベノミクスの最大の弱点は、家計消費が伸びないことです。企業収益は増えましたが、一部の経営者の富の増加にしかつながっていません。一方、国民の実質賃金は低下しています。年金だけでは満足な生活ができないことも政府は認めました。生活は悪化し、消費は低迷し、経済は停滞しています。さらに、大規模財政出動により、国の借金は増え続けています。

国民民主党は、「家計第一」。家計を支援し、消費を活性化させます。人への投資で、一人ひとりの能力が存分に生かせるようになれば、家計も企業も豊かになります。「地域活性化」により、地方が立ち直れば、都市も豊かになります。

消費税

約束した議員定数削減も果たされていません。高所得者が得をする軽減税率や、一部の人だけが得をするポイント還元を伴う、今回の消費税引き上げには反対します。『家計支援こそ成長力』。社会保障財源の確保は必要ですが、消費拡大による景気回復を十分に果たさなければ、消費税引き上げを行うべきではありません。引き上げの前に、先行して子育て支援拡充を行うため、「子ども国債」を発行します。

所得再分配機能の回復

一般の家庭が少しでも余裕を実感できるようにする一方、富裕層には応分の負担をしてもらい、そのお金を社会に還元します。NISA等の拡大により、家計の金融資産形成を応援します。同時に、高所得者層は金融所得の割合が高いことから、金融所得課税により所得再分配機能を強化します。

「所得控除」から「給付」(給付付き税額控除)へと税体系を大きく変えていきます。給付を社会保険料の支払いと相殺すること等により、実質的な可処分所得を底上げするとともに、無年金者、生活保護世帯を減らします。

「GAFA」と呼ばれる巨大IT企業などがビジネスを展開し利益を上げている国でほとんど納税していない実態を踏まえ、国際社会と協調して課税を強化していきます。

国民民主党 政策index 2019

まあ、この分野の政策では「消費税廃止」のインパクトには敵わなかったというところでしょうか。
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コメント
この記事へのコメント
 マシナリさん、ご苦労様です。

 薔薇マーク・れいわ・まんさく・リフレ派・共産党が消費税反対で使う資料が、共産党・民商。全商連が昔から使用していたものというのは、苦笑しました。

 国民の税負担が増えてもいないことを表す資料を出して「法人税の穴埋めに消費税」「所得税減税の穴梅に消費税」とか所得税減税・法人税減税の総額と消費税が何時まで経っても均衡しない歳入不足(財政赤字)の事実(減税による緊縮財政圧力)をどう見ているんでしょうね。
2019/08/10(土) 15:03:47 | URL | hahnela03 #JalddpaA[ 編集]
> hahnela03さん

レスが遅れて申し訳ございません。

>  薔薇マーク・れいわ・まんさく・リフレ派・共産党が消費税反対で使う資料が、共産党・民商。全商連が昔から使用していたものというのは、苦笑しました。

私自身はそれらの資料を確認しておりませんが、まあさもありなんというところでしょうか。彼らは増税忌避の一点のみで敵味方を区別しているように見受けますし、そもそも政策論を敵味方で議論する時点で、政策そのものの実現可能性なり手続きなりといった政策技術論には冷淡であって、それを担う官僚組織を目の敵にすることで支持を広げる戦略をとるところまで共通していますね。政策技術をないがしろにする姿勢からは、結局ご自身が推される政策の主張には熱心でもその結果もたらされる社会には関心がないということが如実に現れているといえそうです。
2019/08/18(日) 12:18:52 | URL | マシナリ #-[ 編集]
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