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2008年01月27日 (日) | Edit |
所得格差が問題になっているといっても、それが本当に格差といえるものなのか、問題といってどのくらいの問題になっているのかという点について、実証的な分析がなされているかといえば十分ではないというのが正しい認識であって、「マスコミがいっているから」というのは論外としても、「自分の生活が苦しくなっているから」問題だというのは少し立ち止まって考える必要があるんでしょうな。

結局、政権党が政権の座にいるということは政権党を支持する票が多いということにほかならないわけで、野党として政権交代をねらわなければならない立場の政治家の頭の中には、現政権の問題点を指摘して敵失によって多数党の票を切り崩すという戦略しかなくなってしまう。そう考えたときに一番手っ取り早い方法は、問題のある政策は当然として、実際にはそれほど問題のない政策にもとりあえずイチャモン(言いがかりともいう)をつけて、世論を盛り上げようというものになる。うまく世論が乗っかってくればめっけもん、うまくいかなくても現政権に批判的な票の支持を固められるというわけですな。

と考えてみると、野党が政権批判をするときにとりうる対応として、
(1)政策そのものに問題がある場合
(2)政策そのものには大きな問題はないが、なんとなく政策を批判することが世論受けしそうな場合
という二つの場合があって、そのそれぞれについて、
(a)政策の解決に有効な対応策、
(b)政策の解決には有効じゃないけど世論受けはする対応策
を提示するという戦略が考えられます。

いうまでもなく、もっとも望ましいのは(1)→(a)という流れで国会における審議が進められることなんですが、実際のところそれ以外の選択肢、すなわち(1)→(b)、(2)→(a)ないし(b)という流れはいずれも国民にとって不幸な結果になるわけで、事実上(1)→(a)の流れによってしか社会的厚生の向上は望めないといえます。

ここで冒頭の話に立ち返ってみると、「所得格差が広がっているからけしからん」なのか、「所得格差が広がるのはけしからん」なのかというのは案外重要な論点になると思われます。そもそも「所得格差」というのは、文字通り読めば「高所得者から低所得者に順に並べたときに所得階層間の分布が拡散している」というだけのことであって、全体的に所得が上がったとか下がったということではありません。したがって、所得格差が問題になるのは所得再分配がうまくいっていないという文脈においてのはずなんだけど、なぜか「非正規雇用が増えたせいで賃金が下がっている」ということをいうために、その本来の意味とは離れたところで「所得格差」という言葉が使われてしまっているように思われます。

もし、昨今の「格差問題」の出発点が「所得格差が広がっているから」という問題認識から出発しているのであれば、上記の(1)に該当するかは大竹文雄先生の『日本の不平等』における分析に照らしてかなり怪しい。しかも、いわゆる「小泉改革」が行われた2001~2006年でいえば所得格差の広がりは鈍化しているわけで、一部の野党が鬼の首を取ったように連呼していますが、「小泉改革によって格差が広がった」というなら完全に(2)になってしまいます。

しかし、「所得格差がこれから広がるのはけしからん」というならそれは確かに問題なわけで、そういう議論なら(1)だと認定できます。
実際に大田経済財政担当大臣も、

先行的な取組として、「成長力底上げ戦略」を実施します。第一に人材能力向上、第二に就労支援、第三に中小企業の生産性向上と最低賃金の引上げという三本の矢で成長力の底上げを図り、格差の固定化を防ぎます。
平成19年3月6日 第166回国会 参議院内閣委員会 大田内閣府特命担当大臣(経済財政政策)所信表明

と所信表明演説で述べているように、政府も「格差の固定化」が問題だという認識を示しています。だからこそ、所得の再分配をどうするかということで「社会保障制度と税制を一体的に議論する」という話になるわけですな。
一国民として野党はこの話にきちんと乗っかっていただいて、(1)タイプの問題に対する(a)タイプの対応策(それが所得再分配の話になるんでしょう)を示してもらいたいものだと切に願うものの、願いってものは叶わないもんなんですかね。

一応補足しておくと、全体的な賃金が下がっているというなら、その原因はデフレによる不況です。株主への配当が増えているとか役員報酬が増えているという批判もありますが、だからそれも不況だからなんですってば。企業ってのは生産性を高めて利潤を最大化することを目的としているわけで、生産性を高める優秀な人材には高い報酬を与えて、そうでない人材にはそれなりに待遇することが費用最小化のためには当然のこと。企業が逃したくないと考える希少価値の高い人材から順番に並べて報酬が与えられていったときに、序列の末端に位置する人材に対する報酬が少なくなって、結果的に高所得者と低所得者の所得格差が大きくなってしまうのは、全体のパイが小さくなっているからです。

株主への配当を増やすのだって、護送船団方式による銀行の間接金融を規制緩和して直接金融に転換しろという方々の意向に添った結果として、不況の中で内部留保を高めて株主配当を増やさないと資金繰りが苦しくなるからですね。

これらの問題も、きちんとアジェンダ設定ができれば(1)タイプの問題として議論ができるわけですが、「経営者が私腹を肥やしている」とかの話になってしまうと(2)タイプの議論しかできなくなってしまうわけで、だから野党はしっかりしてくれといいたくなるわけです。

それなのに、「ガソリン値下げ隊」って、もういい加減にしてくれ。
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