2018年10月28日 (日) | Edit |
さて、気がついたら9月の更新が落ちてすでに10月も終わろうとしておりまして、定期的に発生するデスマーチの対応で精一杯になっている自分に歳を感じるところではあります。という中でいくつか書きかけのエントリがいくつかありまして、これもすっかり時期を逃した感がありますが拙ブログでは継続的に取り上げているテーマでもありますのでなんとか片付けてしまいます。

まず一つ目は、障害者雇用について国の府省庁や地方自治体で「水増しがあった」という問題を受けて各方面からこれ幸いとご自身の意見が表明されたところで、いやまあいつもながらここに至った経路依存的な状況を認識できない方がしたり顔で発言される光景が繰り広げられていましたね。








法律の多くは原則を定めてそれによりがたい場合の例外を慎重に規定するのが作法となっておりまして、最低賃金の適用は労働者性の根拠となる使用者の賃金の支払い義務があることを第一段階の要件とし、第二段階の例外としてその「最低賃金において定める最低賃金額から当該最低賃金額に労働能力その他の事情を考慮して厚生労働省令で定める率を乗じて得た額を減額した額」を適用することができるとしているのが最賃法第7条です。その中に「精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者」が規定されているところでして、これを高齢者にも拡張する意図をもって玉木氏は「最低賃金以下でも働けるような労働法制の特例も必要」とされているわけですね。さらにそれに対してツッコミが入るとベーシックインカムを提唱するというお手軽社会保障論が持ちだされるところでして、まあカイカク好きの皆さんの最新流行は社会保障論に行き詰まったら「とりあえずBI」というところでしょうか。

で、とりあえず上記の通り最賃法が適用されるための第一段階の要件は労働者性を有する労働者に対して使用者に賃金の支払い義務があることなわけですが、それに該当しないために最賃法が適用されないのが請負です。これを高齢者の就労機会確保のために制度化したのが高齢者雇用安定法(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律)に規定するシルバー人材センターなんですね。

なお、余談ではありますが、臨時的かつ短期的に低い賃金で就労する場は震災前からすでにあります。それがシルバー人材センターでして、請負により会員に支払われる配分金は賃金に該当しませんので、最低賃金の縛りを受けません。まあ、シルバー人材センターのそもそもの出自が国に対して団交申し入れまで行われた失業対策事業であったことを考えれば、失業対策事業ではないというCFWがシルバー人材センターの就労形態と類似するのは必然なのかも知れません(現全国シルバー人材センター事業協会の初代会長が大河内一男先生で、2代目が氏原正治郎先生ですし)。

CFWはその枠を越えるべきか(2011年10月12日 (水))」


引用元のエントリでは「賃金で就労する」と書いてしまいましたが、正確にはシルバー人材センターからは会員に対して成果に応じた「配分金」が支給され、これは請負に対する報酬であるため「賃金」には該当しません。まあ、お手軽社会保障論を持ちだすような方にはお手軽労働政策を展開する傾向が強くあるようでして、最賃法の適用を除外して就労機会を確保する仕組みとしてシルバー人材センターが昭和の時代に法律に規定されたものの、その存在を無視しながらドヤ顔で「高齢者の最賃法の適用をなくして雇用拡大を!」とか叫ぶのがカイカクであるならば、この国でお手軽社会保障論とかお手軽労働政策が大手を振って繰り広げられるのもやむを得ないのでしょうね。

今回高齢者雇用のとばっちりを受けた形の障害雇用については以前書いた通りですが、障害者を雇用するためには障害に応じて可能な従事が可能な範囲での業務の切り出しが必要となるものの、それを阻むのが日本型雇用における「職務無限定性」です。

障害者雇用というととかく特別な美談として語られがちですが、もっと汎用性の高い問題でして、海老原さんが指摘されるように、育児・介護など、自分自身に障害がなくても仕事をするうえで制約がある方はいくらでもいるはずですし、むしろすべての労働者に個人の生活がある以上、そこには制約がなければなりません。それを無限定に広範な人事権を認めてきたのが日本型雇用慣行のもう一つの側面ですので、障害者雇用を考えることは、そうした日本型雇用慣行が等閑視してきた制約を意識的に考えることにつながると考えます。

(略)

上記の通り、日本型雇用慣行では個人の事情に配慮することは特別なことですので、逆にいえば採用されてしまえば同じスタートラインに立つことが要求されてしまいます。移動や事務作業に「障害」がない健常者ですら、課外活動や保護者の対応、業績評価など本務の教育業務以外の業務で忙殺されるわけでして、障害を持ちながらそれらの業務をこなすことは極めて困難になります。

役所の障害者雇用を阻むもの(2014年04月12日 (土))


さらにそこに「公務員の人件費を増やすことは無駄遣いでありまかりならん!」という民意が加わると、切り出された業務に障害者が従事するのではなく、外部の安価な人件費でまかなえる民間にアウトソーシングすべきということになります。その結果として、

冒頭の障害者雇用の話に戻りますと、障害者雇用は公的機関が率先すべきとの考え方により法定雇用率が民間よりも高く設定されていますが、上記のようなアウトソーシングと指定管理者制度によって定型的な業務を行う部署が大きく削減されてしまい、障害のある方を職員として配置できる部署が少なくなっていることが大きな壁として立ちはだかっています。公的機関が率先すべきというのは趣旨は理解できるものの、特に法律上はジョブ型の雇用を前提としている地方公務員の採用に当たって、業務がなければ雇用できないのは当然の成り行きでして、障害があっても業務遂行できる職務内容や職場環境を外部化してしまった役所には、そもそも障害者を雇用する余地がなくなってしまっているわけです。



長期雇用されない障害者2015年02月22日 (日)

こうして素晴らしく少人数の公務員によって運営される政府が現出している状況において、障害者をどのように雇用するべきとカイカクを叫ぶ方々はお考えなのか興味深いところですね。
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