2017年08月16日 (水) | Edit |
震災後はお盆の時期にその時々に感じたことなどをアップしているところで、今年は東日本大震災で亡くなった方の七回忌となります。とはいえ、沿岸部から離れた内陸部に居住する私は身内に被害者がいるわけでもないのでニュースでその様子を伺うだけですが、その中にこんな記事がありました。

 東日本大震災の津波で流された写真や位牌(いはい)など「思い出の品」を持ち主に返す活動が、岐路に立たされている。国の財政支援を失ったり、問い合わせが減ったりして活動を縮小する自治体が相次いでいるのだ。そんな中、岩手県陸前高田市がこの夏、県外の東京、仙台で「出張返却会」を初めて開くことを決めた。震災から間もなく6年半。物理的な復興と違って、一人一人歩みの異なる「心の復興」の現場を歩いた。【石巻通信部/百武信幸、統合デジタル取材センター/小国綾子】

引用元: 「思い出の品」で心の復興を 東京、仙台で初の返却会(毎日新聞 会員限定有料記事 2017年8月15日)


有料記事ということですが、月5本まで読めるとのことなので本文の一部を引用しておきますと、

「写真を探しに行きたいが……」と県外避難者ら

 陸前高田で震災後に泥や潮水から回収された写真は20万~30万枚に上る。写真約7万2000枚、位牌やへその緒などの品々約2500点がまだ残ったままだ。

 実は三陸沿岸の自治体はどこも持ち主に返しきれない「思い出の品」を抱えている。写真だけでも、仙台市の約16万枚など、合計100万枚前後になりそうだ。しかし、どこも復興事業で忙しく、返却作業にまで手が回らない。役所に足を運ばないと写真を探せない自治体も多く、問い合わせが減ったことや保管場所がないことを理由に、電子データ化した上で現物を焼却処分した自治体もある。

(略)

 陸前高田市はこれまで、市内だけでなく、県内陸部の盛岡や一関などでも「出張返却会」を積極的に開いてきた。今年4月からの3カ月間だけでも223人が返却会に訪れ、923枚の写真が持ち主や家族、遺族らの手に返された。

 今なお海や泥の中から新たに写真が見つかることがある。昨年、市内で泥の中から見つかった写真アルバムは今年になって持ち主に返却された。

 今回初めて東京や仙台での開催を決めたのは、県外避難者や実家を流された県外在住者らの「写真は探したいが、高田までは行けない」という声を受けてのことだ。

 「まだ生活に余裕がなく写真探しどころではない方、つらくて写真を見られない方、今年、七回忌を終えてようやく写真をゆっくり探す気持ちになれた方などもたくさんいます」。同市から返却事業を委託されている一般社団法人「三陸アーカイブ減災センター」理事の秋山真理さんは語る。

引用元: 「思い出の品」で心の復興を 東京、仙台で初の返却会(毎日新聞 会員限定有料記事 2017年8月15日)

とのことで、七回忌を迎えてやっと遺品探しができるという方もいらっしゃいます。しかし、その遺品を預かる立場の自治体の中には、人手や経費、さらに場所の問題からデジタル化して現物を焼却処分したところもあったようです。遺品は現物だからこそその意味があると思われるところでして、当然自治体の側でもそれは痛いほど分かっている(自治体職員の多くも被災した当事者ですし)はずですが、それでもなお焼却処分せざるを得なかった事情を推察すると、被災した地域の自治体が置かれた状況の厳しさを改めて考えてしまいます。

思い出の品を返す活動を縮小する自治体が相次いでいる大きな理由は、冒頭の引用部分にある通り「国の財政支援を失った」ことにあるでしょう。役所の仕事の特徴として、先におカネがあってそれに基づいて仕事が発生するという経路があるわけですが、これを裏返すと、おカネがなくなれば仕事が無くなるということになります。おカネがあるうちは継続できた活動(役所的にいえば事業)が、その財源を失ったことによって継続できなくなるというのは、良し悪しは別として役所の仕事の実態です。そしてその財源拠出の可否は、少なくとも建前上は財政民主主義に基づいて国民が決定することになります。

東日本大震災後も日本各地で相次いでいる大規模災害は、(言葉は不適当かもしれませんが)それぞれが競合してしまい、予算とそれに付随する仕事と人手を奪い合う事態となっている面は否定できないでしょう。さらにいえば、東京オリンピックなどの大規模イベントに予算とそれに付随する仕事と人手を割いている状況で、その競合の度合いがより高くなっていきます。その中にあって思い出の品を返すという、大規模公共事業に比べればニッチな事業に予算が付けられるか否かは、この国の空気を知るために何らかのヒントになるのかもしれません。
スポンサーサイト





コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック