2017年04月19日 (水) | Edit |
震災から6年を過ぎて業務で被災地支援に当たることも減り、拙ブログでも震災関連のエントリは激変しているところでして、被災した沿岸部から遠く離れた内陸部からは窺い知れない部分も増えてきました。そんな中で被災された地域から貴重な情報発信を続けていらっしゃるhahnela03さんの最新エントリでは、復興の進み方(進め方)が引き起こしている問題が鋭く指摘されています。

 大槌町の復興の遅れは、防潮堤建設の際に共産党系の反対する方たちの「巨大な防潮堤ガー」ということによるものです。地下水脈が豊富に流れる町内を嵩上げせずに再建させるには震災前より大きい防潮堤整備と非難道路の整備を行うことで、自然環境を温存しつつ町内再建者を増やし、人口流出を抑制するという考え方によるものです。ですが、当時、反対派は安倍首相夫人が城山体育館に来訪されて際に、「安倍首相夫人も疑念があると発言した」と政治利用をしたのです。上手に利用されたわけですね。
 それにより大槌町の復興計画は狂いこの6年で住民の流出はとどまるところを知らず、復興後の予測でも人口は半減する方向へ反対派によって誘導されていったのです。嵩上げの選択が復興を遅らせることは当初から分かっていたことで、これを後押ししたのが、メディアによる報道でした
 明治・昭和の津波の際の高台移転の事例や津波石などを取り上げ、住民を誘導して言ったのです。それをさらに利用したのが東京のNPOによる「桜植樹」「鎮守の森」等の植樹募金ビジネスです。浸水地域という穢れた土地という設定の下に、復興計画が住民の意思から乖離して行き復興はどんどんずれ込んでいくようになりました。

「津波被災の記録146(2017-04-09)」(hahnela03の日記)
※ 以下、強調は引用者による。


大槌町については、拙ブログでも3年ほど前にNHKの番組での議論の様子を取り上げたことがありました。

番組では住民の皆さんが真摯に向き合って話し合う中で、様々な立場から意見が述べられていました。番組を見た範囲で私なりに大きく意見を分類すると、防潮堤の高さを低くすべきという意見としては、

  • 高い防潮堤があると景観が損なわれる。
  • 高い防潮堤が町を守るという安心感から防災意識が低下して、津波警報が出されても逃げない人が増える(今回の震災ではそのような状況で命を落とされた方も多くいた)。
  • 奥尻島でも町を囲む防潮堤を完成させて復興宣言もしたが、重要な地場産業である漁業が衰退し、人口減少が止まらない。
  • 防潮堤の高さを下げることによって予算を浮かせ、高台移転や避難路などの防潮堤に頼らない防災対策に予算を使うべき。
  • 防潮堤などの規模が大きくなると、維持管理・補修などの後年負担が大きくなる。

というところだったと思います。これに対して、計画通りの防潮堤とするべきという意見としては、
  • 防潮堤を低くすると浸水区域が広くなり、避難するのに時間がかかって足腰の弱い高齢者などが逃げ遅れるおそれがある。
  • 防潮堤の高さを前提として、避難路、公共施設の設置場所などの計画が作られており、防潮堤の高さを変えると計画全体を見直す時間がかかる。
  • すべての計画を作り直すために時間をかけるより、早く復旧させることを優先すべき。
  • 高齢者などの足腰の弱い住民が安心して暮らせるようにすべき

というところだったと思います。

「守るべきもの(2014年03月15日 (土))」


震災後3年の時点の上記のような議論からさらに3年が経過した現時点では、後者の意見の悪い点の方が目立っているということかもしれませんし、あるいは前者の意見で優先された点の利点がまだ顕在化していないということもいえるかもしれません。しかし、これらを組み合わせて考えてみたときに、後者の立場で懸念していた事態が発生している(と思われる)現状から、前者の立場から主張された利点が今後それを補うだけ顕在化していくのかは、より長いスパンで評価しなければならないように思います。というより、その長いスパンがかかるということ自体が後者の立場からの懸念だったわけでして、まさに守るべきものの評価は多様であり、それこそが意思集約の困難さを物語るものだろうと思います。

そのほか、ラグビーワールドカップに向けた競技場建設が建設地の復興事業の進捗を妨げているというご指摘も重要だろうと思いますが、もう1つ気になったのはこのご指摘です。

 みなし仮設に居る方達も含め医療費無料化が続いています。民進党と共産党によるものではありますが、これは事実上の県立病院対策でもありますが、それにより被災者は生活保護相当の扱いを継続していると言うことでもあります。生活保護と違い所得の把握をしないため、貯金が随分たまったと言う声もあるようです。そのため被災地の住民からもあまりよく思われていないです。これが住民対立へと向かうことになるんでしょう。
 県立病院以外の民間病院も恩恵は受けていますが、昨年から患者数が減ったということなので、転換点に来たのかと感じる出来事です。
 生活保護相当の扱いを受けた方達が、そのまま生活保護へ向かうのか、その際の所得管理等の把握のためマイナンバーが機能するかどうかということも含めいろいろと転換する動きを感じる6年と約1ヶ月です。

「津波被災の記録146(2017-04-09)」(hahnela03の日記)

医療費の無料化はいわゆる所得再分配に相当するものですから、生活保護相当の扱いというのはその通りだと思うのですが、それがミーンズテストを伴わないものであるため、所得がある層であっても可処分所得としてではなく貯蓄として積み重なっているとのこと。医療そのものは現物給付であるとはいえ、その無料化による現金給付相当の再分配が行われた場合、可処分所得の増加によって消費が増えるというどマクロな方々の想定通りに事が運ぶわけではなく、相当程度は貯蓄に回るのが実態なのでしょう。

その説明として、経済学方面からは将来の増税に備えて将来不安があるからというリカードの中立命題を持ち出して、だから永久国債などという威勢のよい主張がされているようですけれども、こうした実態を見るにつけ、必要な医療・介護・保育などの公共サービスの供給体制が公費で賄われ、その利用が必要原則に応じたフリーアクセス(この「フリー」はいつ誰でも自由にという意味ではありません。為念)を確保することのほうが優先だろうとは思います。まあ、こんな「経済学的に正しい」とは認められない議論には誰も振り向きもしないでしょうから、この状況は相変わらず続いていくのでしょうけれども。
スポンサーサイト


コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック