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2016年12月13日 (火) | Edit |
海老原さんの新著が出ましたので早速拝読し、ちょうどそのタイミングで『HRmics vol.25』をご恵投いただきました。毎度のことながら場末のブログにご配慮いただきありがとうございます。その新著ですが、前回エントリで取り上げた「日本死ね」という例の言葉をもじったタイトルでして、実は本エントリの振りでもありました(本書の発行日は11月20日ですのでノミネート前にはタイトルが決まっていたと思われますが)。実は以前、海老原さんは「就活に関する本はもう書かない」と書いていらっしゃったので、就活にまつわる新著を出されるというのは何か心境の変化があったのだろうかと思って読み進めると、最後の部分にその理由が書かれていました。

 諸外国というとまずはアメリカだが、この国には21年前に初取材をして以来、都合6回、いずれも1回当たり10社以上に赴くという形で、長期取材を敢行している。合計すれば、100社に迫る企業訪問になるだろう。だから、そこそこ「働く」を見てきた。
 それが、3年前くらいの自分だ。そして、そのころ「働く」について、こんなことを考えていた。
「アメリカの『働く』は、出入り自由な分、生存競争も激しい。なかなか厳しいな。それよりは日本の方が楽でいいか。でも、欧州はきっと、両者にないもっと幸せな『働く』があるのだろう……」
 当時はまだ、欧州を取材していない。だから「横」を知らずに夢を描いていたのだ。
 そうして3年前から急繕いで欧州でのヒアリングを重ねていく。フランスとドイツの中間層を中心に30人程度取材をした。その度ごとに、ノックアウトされそうになってしまった。
「フランスに生まれなければよかった」
「私たちは籠の鳥だ」
「いや、箱の中のネズミだよ」
「おでこにラベルも貼られているしさ」
「残業しない理由? 感嘆だよ。外食する金がないから。夕飯は嫌でも家で食べないと」
「こんなホテル、入っただけで緊張して、足が震える(シェラトンでの取材時に)
 伝え聞いていたワークライフ充実社会は、こんなものだったのかとショックを受けた。
pp.253-254
文春新書
お祈りメール来た、日本死ね
「日本型新卒一括採用」を考える
海老原嗣生
定価:本体820円+税
発売日:2016年11月18日
ジャンル:ノンフィクション



この部分の後に、中間層の不平不満が極右政党への支持やイギリスのEU離脱につながる状況にも類似構造があり、「続きは次著にて」という予告もありますので、そちらも気になるところですが、海老原さんのような雇用を専門とする方にとっても、欧州で「働く」ということの実態は、実際に現地で話を聞くまでは具体的にイメージすることはできなかったとのこと。3年前というと、『HRmics』のvol.17の特集「近くで見た欧米企業」vol.20の特集「学校で仕事を教え、資格で能力を表せるか」で取材された内容が本書でまとめられたという位置づけになりそうですが、本書はより網羅的に日本の新卒一括採用と欧州の職業教育制度から連なる就職事情が比較されています。

欧州でも新卒(未経験者)の採用はあるのですが、その実態はというと、

職務別×未経験の欧州事例 ①超エリートの青田買い

 それでは、欧州には、未経験者の一括受け入れという仕組みはないのか。
 欧米企業でも、トレーニー採用とエントリーレベル採用という2つの入口を設けて未経験者を受け入れてはいる。この2つについて、説明していくことにしよう。
 トレーニー採用とは、希少人材に対する青田買いシステムと考えると分かりいやすい。この手法を取り入れるのは超大手企業がメインとなり、対象の学生には、エンジニア、財務や金融職などのスペシャリスト、MBA(経営学修士)取得などの経営管理層があげられる。
(略)
この採用では、はっきり決められたポストをあてがわれるのではなく、1〜2年程度、訓練生として社内のいろいろなポジションで仕事をすることになる。そうして、仕事を覚え、また、自分の人柄や能力を周囲に知ってもらう。この期間中に空きポストが出れば、自ら応募する。そこで任用されると正式な「入社」となる。
(略)

職務別×未経験の欧州事例 ②不人気・低待遇求人

 もう1つの未経験者受け入れであるエントリーレベル採用は、まったく様相が異なる。
 こちらは、組織の最末端の比較的簡単な職務ポジションの空きを埋めるための採用だ。欧米でも、人員の流出が多い企業や成長著しい企業、不人気職務などでは、組織末端に欠員が大量に発生することになるので、こうしたポジションを常時公募し続けることになる。
 ここには新卒だけでなく、社会人も応募可能だが、給与待遇レベル、職務内容などからそれほど熟達者は応募しない。結果、新卒や既卒未就業者の採用割合が高くなる。そう、大量に未経験者を受け入れ、既卒者もOK、なおかつ「職務別」と、これこそ日本型就職のよき部分をのこしたまま、欧米の「あるべき姿」をドッキングさせた理想の入職スタイルといえそうだ。
(略)
 要は、「欠員が埋まらない」不人気企業・不人気職務は洋の東西を問わずこの方式で常時未経験者を受け入れるだけの話だ。とすると、これが日本の就活全体の「あるべき姿」には直結しないだろう。

海老原『同』pp.114-117


ということで、欧米にも(日本のコース別採用というより)正規と非正規の組合せに近い採用区分の違いがあり、そのうち正規労働者は1〜2年という長期のトレーニー採用で「職務無限定」に働いて、空きポストがあればやっと正規に「入社」できるという日本型就活どころではない超難関の就職事情となるようです。そして一方のエントリーレベル採用は、どちらかというと日本の非正規と同じように新卒・既卒の区分なく常時募集があり、いわゆる「欧米では雇用が流動化している」という場合はこちらが想定されているように思いますが、その待遇は「不人気企業・不人気職務」に相応しいものとなります。そのような普通の労働者からは、冒頭で引用しているように海老原さんもショックを受けるような本音が聞かれることになるのでしょう。

本書は就活に焦点を当てているのであまり触れられていませんが、このような採用方法の違いは、就職後に会社で人材育成するか、就職までに(公的に)職業訓練を行うかという職業能力開発の在り方と密接に対応しているため、単に会社が横並びだとか怠慢だとか批判するだけでは的外れになるだけです。という職業能力開発の観点から見ると、日本型雇用慣行は広く「正規労働者という網」をかけて、その中から幹部候補生を育て上げていくという管理者養成機能こそが特徴とも言えそうです。

ところが、以前は課ごとに分かれた大部屋の中で、課長から課長補佐、係長、主任などの序列の中に新卒を受け入れ、徐々に管理者としての能力開発と選別を行っていた日本型雇用慣行が、「年功序列で責任の所在が曖昧でスピードに欠ける」との批判にさらされてフラット化しました。その結果、即戦力としていきなり見よう見まねで仕事をこなさざるを得なくなったのが、ちょうど我々のような団塊ジュニア世代ではないかと思います。私自身も痛感するところなのですが、既にアラフォーからアラフィフが見えている団塊ジュニアの世代は、小池和男先生がおっしゃるところの「長期化するトーナメント方式」でつい最近まで部下もいないような平社員として現場に出ていて、残り10数年という段階でいきなり管理職としての役割を求められるようになっています。

もちろん、それまでに管理能力を身につけられる職員もいますが、あまりに現場が長くなってしまうとそのやり方が身についてしまって、自分なら簡単にできる仕事を十分にできない部下に対して高圧的に接してしまってパワハラしてしまう管理職や、目先の目標にばかりとらわれて長期的な次世代の育成まで配慮できない管理職も多くいます。人事担当部署もこれまで強力な人員削減圧力にさらされてきたので、退職者不補充と新卒採用抑制の手法のノウハウはありますが、その少なくなった職員体制でどのように業務を効率化するかという手法は未だに取得できていないのが実態ではないかと。

管理職を養成できないような日本型雇用慣行はそのメリットを大きく損なっているのですが、退職者不補充と新卒採用抑制に明け暮れてやっとそれに気が付いた現状にあって、現場も人事担当部署も現有の管理職で乗り切るしかなく、結果としてさらに管理職養成が進まないという悪循環にある自治体(民間企業も?)は多いのではないかと思います(そんな状況ではありますが、本書では埼玉県や広島県安芸高田市で役所が中心になって進めている地域人材育成の取組も紹介されていて、同業者として自分の力不足を痛感するところではあります。いやまあ、私なりに拙ブログに書いていることは仕事で実践しているつもりなのですが、なかなか目に見える形にならないのがお恥ずかしい限りです)。

実は、今回ご恵投いただいた『HRmics』のvol.25は「残業は、常識では減らせない。」という特集で、厚切りジェイソン氏、勝間和代氏からホリエモンとカルビーの松本社長との対談まで、豪華な人選でいろいろと議論されているのですが、管理職養成はあまり意識されていないように感じました。長時間労働を評価する管理職がいて、それで評価された部下が管理職になった時にも長時間労働を評価するという悪循環を断ち切る方策こそが、当面の現場で求められているのではないかと思うところですが、それはあくまで内部昇進で管理職を養成するという日本型雇用慣行を温存することを前提としたものであって、日本型雇用慣行のデメリットは解決しないことになります。どこから手をつけるかというのはなんとも難題ですねえ。。
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