2016年11月15日 (火) | Edit |
また浜田宏一先生の華麗な掌返しが炸裂していますね。

アベノミクス4年 減税含む財政拡大必要 内閣官房参与 浜田宏一氏(2016/11/15付)

 ――デフレ脱却に金融政策だけでは不十分だったということですか。

 「私がかつて『デフレは(通貨供給量の少なさに起因する)マネタリーな現象だ』と主張していたのは事実で、学者として以前言っていたことと考えが変わったことは認めなければならない」

 「(著名投資家の)ジョージ・ソロス氏の番頭格の人からクリストファー・シムズ米プリンストン大教授が8月のジャクソンホール会議で発表した論文を紹介され、目からウロコが落ちた。金利がゼロに近くては量的緩和は効かなくなるし、マイナス金利を深掘りすると金融機関のバランスシートを損ねる。今後は減税も含めた財政の拡大が必要だ。もちろん、ただ歳出を増やすのではなく何に使うかは考えないといけない」


まあ、こう頻繁に掌返しをされる浜田宏一先生に対して心ある方々の呆れた感嘆の声が上げられていますが、私としても厭債害債さんとjura03さんのご指摘に付け加えることは特にありません。
浜田センせぇー・・・(厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか) 2016/11/15 08:46)
扇動のための不当表示としての「リフレ派」 part152(今日の雑談 2016-11-15)

…というところで終わってしまうのもなんですので、himaginaryさんのところで取り上げられている指摘について考えてみます。

クリス・ディローが、トランプの人格が大統領職においてそれほど問題にならない可能性の理由として以下の3つを挙げている。

  • 人々はそもそも無知で偏見を持っているが、大統領は人々の代表であることが望ましい。
  • チェック・アンド・バランスというものが存在する。大統領ができることには憲法の制約があるのみならず、望むならば大統領は最高の助言が得られる。強力な支援ネットワークによって、人格の欠点の影響を和らげることが可能。
  • 人格よりは政策が問題。もしトランプがインフラに投資し、税体系を簡素化する一方で、保護主義や移民制限に関する公約を希薄化するならば、完全なカタストロフとはならないかもしれない。

大統領の人格が問題にならない時(himaginaryの日記 2016-11-11)
※ 以下、強調は引用者による。


前回エントリで取り上げたようなトランプ氏に対する支持は、「素人崇拝」が高じて、素人の意見を素人として発言する候補者に支持が集まったという面もあると思いますが、アメリカにはそれでも政策決定とその執行が円滑に進むような制度を作り上げてきたという自負があるのかもしれません。

翻って日本の政策決定過程を見ると、「猖獗を極めたカイカク病」を支えたのもまた「経済学的な正しさ」であって、そこにはチェックアンドバランスなどが機能する余地はないように思われます。「財政的な措置をしなくてすむように医療費を削減するための「経済学的に正しい」処方箋は、治療に高額の医療費を要するような疾病に罹患した患者には治療しないこと」というのは、こちらの本で指摘されている研究結果ですが、本書冒頭の青木昌彦先生の推薦文に続くこの序文がアツいんですよね。

 過去30年間、社会保障支出、医療支出の水準が一貫して主要先進諸国の中で最低レベルである日本の水準を、さらに公的部門の役割を縮小する「小さな政府」を目指すことで、先進国クラブと呼ばれる経済協力開発機構(OECD)加盟30カ国中最低レベルまで、ないし発展途上国レベルまで引き下げることを目指すと仮に日本社会が決めたとします。この場合、「どのようにして政府の財政負担を減らすか」という手段についても、「理念」抜きには語れません。政府の財政負担削減を至上の課題にすれば、多くの予防医療を「やめる」ことが有効な一案です。なぜなら、多くの予防医療を「やめる」ことで病気にかかり早死にすると、総医療費は節約できることを諸外国の厳密な医療経済研究が示唆しているためです(5章参照)。さらに、早死にした人々には年金を支給しなくてもよいので、財政負担を一層軽減できます。筆者は個人としての理念からこの案に反対ですが、読者の皆さんの賛否はいかがでしょうか。
 3つ目の提言は、日本の政策の形成・執行の各過程で評価を行うチェックアンドバランス機構を強化しなければ、改革は一度限りの打ち上げ花火で終わってしまうということです。日本での通説とは逆に、筆者の目には「米国の医療制度改革は非常に『慎重』であるのに対し、日本の改革は非常に『大胆』」と映ります。米国を含めた多くの先進諸国は、「政策は謝る可能性が高い」ことを前提に、制度改革には、「大失敗」を未然に予防するため幾重にもチェックアンドバランス機構を組み込んでいます。それに比べ、日本では欧米におけるようなチェックアンドバランス機構がきわめて貧弱です。(中略)このような政策上の失敗にブレーキを踏めるインフラを整備しない限り、3章で紹介する政策提言・評価のための経済学理論・実証分析手法も、日本では単なる絵に描いた餅に過ぎません。言い換えれば、政策の方向性・進捗状況すら判断できないままブレーキ・安全装置を外せば、とりあえず速度だけは上がることに嬉々とする類の大胆な改革が繰り返されるおそれがあります。
 4つ目の提言は、公的皆保険制度の役割を堅持した枠内で可能な改革案(5章参照)を実施することです。なぜなら、5章6節で詳解するように、ハーバード大学のシャオ教授によれば、すでに日本の現行制度は、コスト抑制にきわめて有効で、不変性の高い2つのタイプの政策を組み込んでいるからです。また、シャオ教授は、世界各地で失敗を繰り返した政策の例として、「患者の窓口負担増」「医療機関への診療報酬の一律引き下げ」「医療保険制度における民間企業の役割拡大」「医療機関への民間営利企業の参入」を挙げています
 根拠の曖昧な通説を、厳密なデータ分析の結果に基づいて覆すことは、筆者には知的興奮であり、ある種の快感でした。この体験を多くの人と共有したいという執筆の動機に、一人でも多くの読者が共感してくれることを願っています。
pp.006-008

「改革」のための医療経済学
ニューヨーク州ロチェスター大学助教授 兪 炳匡 著
定価 : 2,052円(本体1,900円+税)
発行 : 2006年08月
在庫 : 在庫なし(申込不可)
サイズ : 四六判 264頁
ISBN-10 : 4-8404-1759-8
ISBN-13 : 978-4-8404-1759-4
商品コード : T560090



上記のインタビュー記事で満面の笑みを浮かべる浜田宏一先生(いつの写真かわかりませんが)や、

で、この後は『(4)物価の基調的な動き』という小見出しがあるのですが、これは毎度おなじみ展望レポートで示されている盛大な屁理屈なのでどうでもよくて、しかしまあ2年で2%行かなかった場合の説明責任をこれで取ってるつもりなのかよというか、今にして思えばいわゆる岩田-翁論争の時にこの置物を叩き潰さないで妙な裁定をして有耶無耶にしやがった植田和男先生の責任も重いわとか思う訳で是非ご見解を賜りたいものであります。

では講演テキストの引用の最後に就任記者会見からのお言葉でも入れておきましょう。

『先程申し上げた「中期的」とは、大体2 年ぐらいであり、2%は2 年ぐらいで達成しなければいけないということです。2 年経って、2%がまだ達成できない、2%近くになってもまだ達成できていない場合には、まず果たすべきは説明責任だと思います。ただ、その説明責任を自分で果たせないということ、単なる自分のミスジャッジだったということであれば、最高の責任の取り方は、やはり辞任だと思っています。まずは説明責任を果たせるかどうかが基本だと思います。』(2013年3月21日の就任記者会見より)

岩田規久男副総裁 2015/05/28「札幌金懇ではまさかの「2%に達しない理由」の言い訳が登場とか見苦しいにも程がある」


と華々しくデビューされてから早3年半が経過する岩田規久男副総裁の健在ぶりを拝見するに、日本の政策の形成・執行の各過程で評価を行うチェックアンドバランス機構の強化は急務だなと思わざるを得ませんね。

いやもちろん、制度としてチェックアンドバランス機構を強化することも重要なのですが、こうした事態に遭って、浜田宏一先生やら岩田規久男副総裁を熱烈に支持していた一部のリフレ派と呼ばれる方々や、リフレ派の隠れ蓑を取り払った増税忌避な方々にとっては、その認知的不協和を改善してくれる新たな理論が待ち望まれるところですね。それがMMTなのか内生的貨幣供給システム論なのかよくわかりませんが、その行き着く先が無税国家であることは間違いなさそうです。
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コメント
この記事へのコメント
初めまして。
「経済学的に正しい」こと(笑)を言わせて頂きますと、「経済学的に正しい」人達が目指しているのは無税国家ではなく、デフレギャップの解消ですよ。デフレギャップが解消され、インフレ圧力が問題になるときはむしろ緊縮財政せよと主張します。

あと、そういった面々(まあ私もそうですが)は最初から隠れ蓑など使わず一貫して増税派も浜田宏一岩田規久男リフレ派も批判してますので、認知的不協和は勿論発生しておらず、当然新たな理論なども全く待ち望まれてないですよ。
2016/11/20(日) 11:56:55 | URL | asd #-[ 編集]
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