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2016年11月14日 (月) | Edit |
アメリカの次期大統領にトランプ氏が決定してから、アメリカ国内のみならず日本でも各方面で懸念やら希望やらが示されていまして、私も改めて民主主義の危うさを実感しているところですが、大統領選の決着がつく前に読もうと思っていた本をやっと読んでみて、このような結果につながる流れは随分前からあったのだろうと思います。

その本というのは、fujiponさんのブログで紹介されていた外務省官僚によるアメリカのリポートでして、

 お金が無尽蔵にあるのならば、彼らに十分な援助をしても、文句は出ないでしょう。
 しかしながら、元からアメリカに住んでいて、ギリギリの生活をしている人たちは、不法移民の存在が、自分たちへにまわってくるはずの社会保障費を減らしているのではないか、とか、そもそも、なんで他所から来た連中が「われわれの税金」で助けられるのか?と考えてしまうのです。
 彼らは、アメリカのために何かしてきたわけではないだろう、と。

 トランプ氏は、アメリカ国民が何を望んでいるかを知っている。大量の不法移民の流入とイスラム過激主義によるテロリズムは、アメリカ国民に経済的、そして治安上の、ぬぐい去ることのできない根本的な不安をもたらすものであり、単なる一過性の問題ではない。そして本章で筆者が述べたとおり、移民の問題は格差の問題と密接に絡んでいる、今世紀のアメリカ内政上の最大の問題である。
 この大問題に対する処方箋を何ら示すことなく、冷静になって慎重に判断すべきだと「政治的に正しい(politically correct)」正論を吐くだけの既存の政治家に安心できず、怒りさえ覚える国民がいる。 

 トランプ氏は、このような国民の真っ当な不安感、焦燥感そして怒りに率直に向き合っている。これまでワシントンの経験の長い政治家の「政治的正しさ」にがんじがらめにされた物言いに辟易して政治から離れていた人々が、トランプ氏に帰ってきているのである。それが彼の人気の原動力になっており、この点がトランプ現象の一つの本質である。


 日本でも「生活保護バッシング」をやっている人がいることを考えると、トランプ支持者は「政治的に正しくはない」のかもしれないけれど、自分の気持ちには正直だと言えるのかもしれません。
 そもそも、「政治的な正しさ」というのは、恵まれた人々に押しつけられたものではないのか?

「【読書感想】アメリカの大問題―百年に一度の転換点に立つ大国 ☆☆☆☆(琥珀色の戯言 2016-09-12)」
※ 以下、強調は引用者による。


という引用を拝見して「なるほど」と思って買っておきながら積ん読になっていました。でまあ、拙ブログでも

ついでにいえば、こうした極端な主張をする傾向はフェミニズムとかポリティカル・コレクトネスにも当てはまりそうなところもありますが、その行き過ぎたフェミやらポリコレに対する批判がさらに極端な主張になるところも「経済学的に正しい」ことへの絶対的信頼感のなせる技なのかもしれません。その意味では、行き過ぎたフェミやらポリコレへ極端な批判を繰り広げる方々というのは、「男性正社員が家計を支えているうちは社会保障なんぞ構う必要がないほど生活が保障されるというのが、日本型雇用慣行が有する世界的に特筆すべき優位性」のゆえにこそ存在しうるものといえそうですね。

「経済学的に正しい」ことへの絶対的信頼感(追記あり)(2016年07月09日 (土) )


という懸念を抱いていたところでして、その背景となるものは各国の諸事情に影響されるとしても、世界的な傾向として行きすぎたポリコレやらフェミとそれに対する極端な批判の応報が繰り広げられているのだなと暗澹たる気持ちになっていました。

で、実際に読んでみると、

 第一段階は、1930年代の大恐慌、その後の第二次世界大戦、ベトナム戦争、人種間の対立と、20世紀中盤に次々にと大問題がアメリカを襲ったのに対し、ルーズベルト、トルーマン、ケネディ、ジョンソンと、歴代の民主党の大統領が立ち向かっていった時代である。その中で、政府の役割は拡大し、必然的に「大きな政府」につながっていった。
 これらの民主党政権では、アメリカの超一流の知性(the best and brightest)を結集すればいかなる問題でも解決できるという、政府の役割に信頼を置く理想主義の雰囲気が底流にあり、多くのアメリカ人がそれを信じた。
 しかし、第二段階になると、第一段階の反動として、このような民主党主導の理想主義に疑念が膨らんできた。特に南部においては、人種間の平等を目指した公民権運動が、「あまりに急進的」と白人の反感を呼び、この保守的な地域を民主党の大票田から共和党の牙城に変えてしまうほどのインパクトをもたらした。これが南部の「政治的大事件」の端緒となる。
pp.97-98

 こうしてウォレスが掘り起こした南部の怒れる白人票の多くは、その後共和党に流れ、民主党に戻ることはなかった。これが南部の共和党科の始まりとなった。70年代には、カーター、90年代にはクリントンと南部出身の大統領が出たが、南部の共和党化の流れは止まらなかった。
 第三段階は、この怒れる南部の白人票に宗教右派が合体して、共和党の強固な支持母体となった1990年代である。
p.99

 以上述べた三段階を経て、「怒れる南部」において、「小さな政府」、白人主導、宗教右派という三つの要素が結合し、共和党内の強力な政治連合が成立した。20世紀後半に南部で繰り広げられた「政治的大事件」の完結である。この経済的利害追求を超え出現した政治的連合は、経済政策に明確な問題意識を有していなかった草の根の信心深い多くの有権者を、中絶、同性婚反対といった宗教上のテーマに引き付けることにより、共和党への投票を増やすことに成功した。
 このような共和党内の草の根の世論に着目して初めて、経済的には「大きな政府」の恩恵を受ける可能性が高い低所得者層の中に、なぜ「小さな政府」を支持する勢力がいるのかという、逆説的な政治行動の理由が明らかになる。宗教心に篤く保守的な心情を大切にする彼らにとって、民主党に投票するという選択はとりにくい。結果的に自らの個人的な経済的利益に反する可能性があっても、「小さな政府」を支持する行動に走るのである。
 なお、この共和党をめぐる「政治的大事件」に並行して、1990年代から民主党の支持勢力の変質も進行した。クリントン政権の中道的政策は、大企業の民主党に対する評価を高めることになる。特に、同政権の低金利政策とIT革命へのサポートに恩恵を受けた、金融界とIT関連企業の間にこの傾向は強かった。
 こうして、共和党が低所得者層に支持を広げていくのに並行して、民主党も企業経営者の支持を獲得していった。それぞれが伝統的支持基盤に加えて、競争相手の支持基盤に手を伸ばしていった構図である。
p.101

アメリカの大問題―百年に一度の転換点に立つ大国
著者 高岡望著 《前ヒューストン総領事》
2016年06月15日
新書判並製
978-4-569-82966-1



ここまでが1990年代の動きですから、既に20年以上にわたって民主党が掲げる「理想主義」的な政治思想への反感が高まっていたことが伺えます。最近話題の「ポリコレ棒」への反感は、アメリカでは既に大きな流れになっていたということかもしれません。その後のITバブルや金融工学の隆盛を経て、「金融界とIT関連企業」といえば、現代の富裕層の代名詞でもあるわけでして、これらの「先進的」な経営者がトランプ氏に対する反対を表明するのは自然な流れなのでしょう。

ドナルド・トランプ氏は、大統領選挙期間中、女性やLGBT、移民、有色人種といったマイノリティについて攻撃的な発言を繰り返していており、多様性を尊重するAppleの方針と合わないのは明らかです。

トランプ氏は、「iPhoneを全てアメリカ国内で製造させる」と語って物議をかもしたり、銃乱射犯が持っていたiPhoneのロック解除に関するFBIの要求をAppleが断固拒否したことに「何様のつもりだ」と批判し、Apple製品のボイコットを宣言するなど、Appleを標的にした発言も目立っていました。

ヒラリー・クリントン陣営の副大統領候補として名前も挙がっていたティム・クックCEOは、トランプ氏の当選阻止が目的とされる会合にも出席していました。

【全文訳】Appleティム・クックCEO、大統領選の結果を受け全従業員にメッセージ(2016年11月10日 19時23分)



しかし、こうした状況を見た低所得者層が、現代の富裕層に対する「怒り」をさらに増幅させるだろうことは想像に難くありません。しかも、そうした富裕層に反感を抱く層そのものが、"We are the 99%"をスローガンに掲げた"Occupy Wall Street"に参加するような(自分自身は必ずしも99%ではないにせよ)再分配支持の「エリート」と、「ティーパーティー」のような自称「良識的な保守派」とに分裂しているというのが、アメリカの現状のようです。

 ティーパーティーは、「小さな政府」という共和党の古くからのテーマの実現を目指す経済的保守主義に立脚した運動である。民主党のオバマ大統領の就任後、2009年から南部の白人を中心に急速に盛り上がった。
 オバマ政権が、初の黒人大統領選出の熱狂の中で「大きな政府」志向の政策、特に、リーマンショック後の大銀行救済策を打ち出したことが、共和党内の草の根勢力に怒りと反発を生み、大きなエネルギーを与える結果になった。なぜ、身の丈以上の借金をして家を買った人や、それを知っていて金を貸した金融機関を、汗水流して働いて国民が納めた税金を使って救済しなければならないのか。というわけである。
(略)
 ティーパーティーの人々は、自分たちがアメリカの良心を代表していると固く信じ、自信満々である。彼らによると、あらゆる世論調査で、アメリカ人の常に4割は、自分を「保守主義者」だと答えているそうだ。「リベラル」とする人は2割しかない。古き良きアメリカを守ろうとする多数派の願いを踏みにじるリベラル派、怒りと非難の対象に値するというわけだ。

高岡『同』p.102-103


これからいろいろとデータに基づいた検証が進められるでしょうけれども、その検証を検証するためにも、こうした背景を踏まえておくことが必要なのだろうと思います。

(付記)
こうしたアメリカの現状を的確に指摘していたマイケル・ムーアのHuffington Postの記事が話題になっていますが、ここで挙げられている5つの理由も本書と同じような内容ですね。まあ、5つめの「5. ジェシー・ベンチュラ効果。」までは本書で指摘されていないのは、さすがマイケル・ムーアというところでしょうか。
「ドナルド・トランプが大統領になる5つの理由を教えよう(投稿日: 2016年07月29日 16時36分 JST 更新: 2016年07月30日 21時09分 JST)
もちろん、マイケル・ムーアはアメリカ人向けに書いているため日本人にはややわかりにくいのですが、本書は日本人向けに日本語で書かれているので、本書を読んでからこの記事を合わせて読んでみると、味わいが深まるのではないかと思います。

という状況を踏まえてみると、こちらもバズっている(らしい)ブログエントリですが、
アメリカのポップスターは、束になってもトランプに勝てなかった(日々の音色とことば 2016/11/10)
ミリオネアでセレブリティなポップスターが肩入れすればするほど逆効果だったのだろうと想像されます。日本でも同じようなことは繰り返されていますから、改めて驚くことでもない…とはいえ、やはり暗澹たる気持ちになることは変わりませんね。
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