2016年09月18日 (日) | Edit |
1週間遅れとなりましたが、先週で震災から5年と半年が経過しました。月数では66か月です。この間にも多くの災害が発生しており、先月末の台風10号で甚大な被害が発生した被災地もあります。改めて犠牲になった方への哀悼の意を表するとともに、被害に遭われた方へお見舞い申し上げます。岩手県久慈市では震災に匹敵する被害額となっているとのこと。

<台風10号>久慈市被害額 震災上回る可能性も(デーリー東北新聞社 9月8日(木)11時43分配信)

 久慈市は7日、台風10号による市内の被害額が5日午前10時現在で、66億1276万円に上ると発表した。被害額の公表は初めて。家屋被害などは含まれておらず、今後調査が進めば金額は増加する見通しだ。分野別では、大規模な浸水被害に見舞われた市中心街の商工関係や、山間部での路肩崩壊などがあった道路関係で被害額が大きい。

 同日の市議会議員全員協議会で市側が報告した。

 市災害対策本部によると、東日本大震災の被害額は310億9015万円。今回の台風被害はこれを上回るか匹敵する規模の被害額に膨らみそうだ。


岩手県の北部地域でも東日本大震災で大きな津波被害が発生しましたが、震源地から遠いこともあり、内陸部ではそれほど影響がありませんでした。しかし今回の台風では、内陸部の北上山地から沿岸部にかけて大量の降雨があったため、山から流れてきた河川の氾濫も相まって、内陸部を中心に大きな被害が発生しています。このため、東日本大震災で比較的被害が小さかった地域でそれに匹敵する被害額となっているといえます。さらに本州最大の面積を有する岩泉町での被害額は、担当する町職員の人手が足りずに調査が進んでいない状況です。

<台風10号>岩泉町の被害全容把握遠く(河北新報 2016年09月07日水曜日)

 台風10号の豪雨災害で15人が死亡した岩手県岩泉町の被害は、1週間がたっても全容判明の見通しが立っていない。被災家屋の調査は始まったばかり。人手が足りず、広大な町の被害を把握するには時間を要する。安否不明の住民は6人で、調査が進めば犠牲者がさらに増える恐れがある。
 3日に始まった被災家屋の調査で、町税務出納課の職員が岩泉向町集落に入った。6日までに160戸を調べ終えたが、罹災(りさい)証明書の受け付けの見通しが立つ状況ではないという。
 東日本大震災で同町は、海に面した小本地区で被災家屋を調査した経験がある。しかし、ある町職員は「震災では一部だったが、今回は町全域が被災した。被害を把握する人手が足りない」と違いを説明する。


岩泉町は「昭和の大合併」以来合併していないため、いわゆる「平成の大合併」で多く誕生した大規模市町村のように合併で(一時的にではあっても)職員が増えたという要因がありません。東日本大震災の復興事業のために他自治体からの応援職員や任期付採用職員は増えていますが、彼らは震災被害があった地域の事業に特化しているわけで、町全体に詳しいプロパー職員そのものは少ないわけです。

当然、今回の台風被害への対応として他自治体からの応援職員も徐々に入り始めているようですが、NHKの「明日へつなげよう」のシリーズの中で、震災当時の大槌町では応援職員の受け入れさえできない状況であったことが、当時の町職員の生々しい証言でまとめられていました。番組の概要はこちらにアーカイブされています。

2016年8月28日(日)放送
証言記録・東日本大震災 岩手県 大槌町 ~行政機能を失った町役場~
東日本大震災で1277人の死者・行方不明者を出した大槌町。町役場も津波に飲まれ、140人の職員のうち、およそ3割が犠牲になった。町長と幹部、役場庁舎を一度に失った大槌町は、機能不全に陥った。助かった職員たちは、家族や同僚を失った悲しみを和らげる余裕もなく、救援物資の受け入れ、避難所の運営などに奔走した。しかし人手不足は深刻で、被災した住民へのサービスも停滞。職員たちは、精神的にも追いつめられていった。災害対応の要となるべき町役場が被災した時、どんな困難に見舞われたのか、対応にあたった大槌町職員の証言で見つめる。

「明日へつなげよう これまでの放送」(NHK ONLINE)


この中で、震災直後に総務課長を代理していた現町長の平野氏が「応援を受け入れる余裕がなかった」と証言されていて、こちらのブログで批判されています。

 今回のドキュメントは、そういう意味で非常に多くの教訓を得るものだと思いますが、ただ気になったことは現町長となった平野氏が県からの支援要請を「余裕が無い」と受け入れなかったこと。これは当時、町のトップを失った状況という非常時を斟酌したとしても、今後に繋がるものではないと指摘しなければなりません。

(略)

 何でそこをこだわるのかといえば、地方自治体の根幹に関わるからです。どうやら現政権は「緊急事態条項」なるものを持ち出して、自然災害など「緊急事態」になったら、市町村や都道府県などすっ飛ばして、国があらゆる権限を一括して手にして強引に物事を進められるようにしたいと目論んでいます。

 そのモデルとして大槌町の今回のケースが挙げられたら、たまったものではありません。やり方一つで県と連携をとって上手くいけたものを、国が乗り込んできて強権的に進めるような形にする口実にしてはダメだと思います。そこのところを町長さん、しっかりと検証して今後の防災対策に生かしてくださいと言いたいですね。

「【明日へ―つなげよう―】証言記録 岩手県大槌町~行政機能を失った町役場~(2016-08-31 22:49:29)」(じゅにあのTV視聴録)


県庁からの支援の申し入れ(上記ブログでは「支援要請」となっていますが)について、インタビューでは(おそらく)思わず声が大きくなって「そんな余裕はなかった」と断言されていて、それについての感想が上記の引用部分です。平野氏はもおそらくこうした批判があることを予想されていると思いますが、それに対する印象として上記ブログのような反応は当然でしょう。その上で、ではこちらのブログ主さんのおっしゃる「やり方一つで県と連携をとって上手くいけた」というのはどういうものなのか教えてほしいというのが平野氏の率直な考えではないかと思います。

もちろん、人手が多くなることで対応できることも増えますが、応援を受け入れるというのはそういう緊急時のレベルではなく、その後の非常時からの復旧の過程で行政としての活動を系統立って継続するためのものです。ここで留意しなければならないのは、市町村が大きな被害を受けたからといって県庁職員が乗り込めばすべて上手くやれるとは限らないということです。番組では県庁職員が被災した町役場からデータの入ったサーバを取り出したことが取り上げられていましたが、これはそうした系統だった行政活動を継続するためのインフラの確保であって、その主体として県庁が活動したわけではありません。行政活動の主体としての役場の体制が整わなければ、いくら外部から応援しようにも効果的な応援にはならないわけです。

大槌町では、幹部職員が壊滅に近い状況となって系統だった活動ができない状況にあったため、緊急時から非常時への移行が上手くいかなかった点はあると思いますし、そのような状況を想定した対応に不備があったことは事実だろうと思います。震災当時の状況を根拠とする「緊急事態条項」についてはあちこちで批判されていましたし、その実態は個別に精査しなければならないと思いますが、かといって、現実に活動の拠点となる庁舎が使い物にならず、幹部が壊滅状態となったときに、事前の準備だけでうまくいくかは疑問です。番組でも町と県の関係を地方自治法の「基礎自治体優先の原則」の枠内で考えることの限界が指摘されていましたが、非常時にそうした対応が必要となることを想定することも必要なことではないかと思います。
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