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2016年07月12日 (火) | Edit |
増田寛也氏が正式に出馬表明したとのことで、いやまあ誰もが知っていることではありますがこうやって宣言されると清々しいものですね。

【全文】増田寛也氏 出馬表明会見「東京都政のトップに立って、子育て・少子化問題を解決する」(ログミー 7月11日(月)13時26分配信)

さまざまな自治体のみなさま方のお話を聞き、私も、この都政の混乱を考えて、まさに都政の混乱を解決する上で、先頭に立ってがんばらなければ、と気持ちにスイッチが入りました。

これまで、岩手県知事として行政の経験を行ってまいりましたが、日本全体を考え、そして東京都政を担うものとして、きちんとしたスイッチの切り替えを行って、そして都民の最大幸福の実現に努力をしていきたい。このようの思います。東京は私の生まれ育ったふるさとであります。

※ 以下、強調は引用者による。

増田氏は岩手県選出の国会議員の子息として東京で生まれ、大学まで東京で育ち、キャリア官僚になってから初めて地方勤務したという東京の人なんですよね。生粋の江戸っ子じゃないとはいえ、東京生まれで東京育ちの増田氏が、霞ヶ関のキャリア官僚としてキャリアをスタートして、父が同じ地元で仇敵同士であった小沢一郎氏に担がれて岩手県という地方自治体の首長になったという経緯を考えれば、岩手県知事退任後は東京に移住(帰郷)して東京のコンサルの役員やら国務大臣やらを歴任し、都知事に立候補するという華麗なる転身を遂げられているのも頷けます。

とはいえ、総務大臣就任当時の新聞記事のとおり、

 岩手県庁ではこの日、職員から「地方分権の特命相かと思ったが、まさか総務相とは」と驚きの声が上がった。幹部職員は「地方財政を理解している人の入閣はありがたい。これで交付税が増えれば言うことなし」と手放しの喜びよう。

読売新聞『舛添厚労相「批判はする」、増田総務相「地方問題に総力」』(リンク切れ)

東京問題への対処として岩手県の幹部職員が望んでいたように東京の税源を地方交付税増額に振り向けたのは、地方在住者にとっては増田氏の功績としてよいかもしれません。まあ、増田氏が総務大臣に就任した2007年というのは、前任の竹中平蔵氏によって地方税への税源移譲などが議論された後であって、増田氏が就任する2007年8月27日の2か月ほど前の6月19日に閣議決定された「骨太の方針2007」ですでに、

(5)真の地方分権の確立
・財源における地方の自立性を高めるため、国・地方の財政状況を踏まえつつ、国庫補助負担金、地方交付税、税源移譲を含めた税源配分の見直しの一体的な改革に向け地方債を含め検討する。
法人二税を中心に税源が偏在するなど地方公共団体間で財政力に格差があることを踏まえ、地方税の在り方や国と地方の間の税目・税源配分(地方交付税財源を含む)の見直しなど、地方間の税源の偏在を是正する方策について検討し、その格差の縮小を目指す

経済財政改革の基本方針2007(平成19年6月19日閣議決定)(pdf)」p.27

ということが決まっていたんですよね。増田氏が何かを進めたというより、既定路線に乗っかったというのが実態でしょう。1年以上前に中川雅治参議院議員が当時の竹中総務大臣に質問しています。

次に、私は最近出ている東京富裕論や東京の財源を地方に回すべきであるといった議論について反論し、竹中総務大臣、谷垣財務大臣の見解を聞きました
東京の人口は約1,250万人ですが、約370万人もの昼間流入人口があります。総務省などから提出された資料などを見ると、人口一人当たり税収というグラフがあり、東京が突出しているような印象を与えますが、コメントなしにこうしたグラフを出していくのは問題であると私は思っています。
また、東京には大都市特有の財政需要や首都としての機能を維持するための支出も多く、さらに用地取得費を取ってみても1m2当りで東京都は他の道府県の14倍も高いのです。
(略)
私は以上のような趣旨の発言をして、竹中総務大臣、谷垣財務大臣の見解を聞きました。
竹中大臣からは、「東京の事情に大変お詳しい中川委員から御意見、しっかりと承った次第でございます。」との発言があり、そのうえで、「地方の自立を考える場合に東京の位置付けが大変大きな問題であるので、今後制度設計の段階に至りました場合は、そういうことはしっかりとフェアに議論していかなければならないと思っている。」との趣旨の発言がありました。

参議院行革特別委員会で安倍官房長官らに質問(平成18年4月8日)

ということで、東京の財源が奪われたというのであれば主犯は竹中平蔵氏ということになると思うのですが、やまもといちろう氏の増田氏へのネガティブキャンペーンが止まりません。

改めて、増田岩手県政で公債費比率がどう増えたのか、見てみましょう。利権に食い物にされ、利益誘導した時期と、交際費が増え、岩手県の希望が失われていく期間と一致していませんか、どうですか。

増田寛也と「西松建設」(2016年7月11日 16時58分配信)

うーむ、いやだから増田氏の黒い噂とかコンサルに無駄金をつぎ込んだとかというのはそれとして、県債残高が増えたのは全国的な現象だったんですけどね。前々回エントリの都道府県データに国の国債残高も並べてみてみましょう。
発行主体1995年度2007年度増加率順位
476,974,200,000938,808,000,000196.8%-
岩手県759,880,5551,470,396,528193.5%10
東京都5,814,239,3316,292,585,832108.2%47
都道府県総計46,499,753,99779,590,816,558171.2%-
出所:政府総債務残高の推移(世界経済のネタ帳)地方財政統計年報

こうして増加率を比べてみると、10位にランクインした岩手県の増加率は国債残高の増加率をやや下回る結果となっています。ここで、ちょっと制度の話をしておきますと、地方債発行は以前は許可制だったのが2005年から協議制になっておりますが、毎年国の一般会計の概算要求がとりまとめられる8月に先立って、7月に地方債計画というのが総務省と財務省の協議によって策定されます(付記:この書き方はちょっと不正確でした。通常の流れは、7月に財務省から概算要求基準が示され、8月末までに各省の概算要求がとりまとめられる時期に地方債計画(案)が策定されます。その後財務省と各省が予算折衝を行い、12月末の政府予算とりまとめの直前に地方財政対策と地方債計画が策定され、これらを基に2月に地方財政計画が策定されます)。これは、国から地方自治体に補助金を交付する際の補助裏とするために地方債を発行する必要があるため、国が補助金の予算要求をするに当たって、それに見合う地方債の発行高を事前に調整することを目的に策定されるものです。

まあ平たくいえば、あらかじめ借金できる目安を決めておいて、この借金の範囲で国の補助金の交付を地方自治体が受けられるようにして、地方に金を使わせるための根拠になるのが地方債計画というわけです。で、この地方債の許可計画額と実際に発行した許可実績額を比べると、1995年度から2004年度にかけて計画よりも実績が下回るようになっています。
 地方債発行許可計画額地方債発行許可実績額差額実績率
1995年度21,065,002,00022,735,579,7001,670,577,700107.9%
2004年度17,976,200,00015,670,739,600△2,305,460,40087.2%
出所:地方財政統計年報

つまり、確かに国も地方も景気対策のため債務残高は増やしてはいたのですが、特に地方の側は国が計画した通りには地方債を発行していなかったというのが実際のところでして、前々回エントリで都道府県ごとにばらつきがあるのは、地方債計画通りに債務残高を増やしたかどうかという国への協力度合いによって異なると理解するのがよろしいかと。

という意味では、地方の側が総じて国より慎重だった地方債発行について、岩手県は国と同程度の債務残高を増やしたという点でも、増田氏が何かを進めたというより、既定路線に乗っかったという評価が妥当なのではないかと思うところです。
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