2016年05月14日 (土) | Edit |
議会の質問について一悶着あったようですが、これもまた詳細はよく分からないもの批判する側もポイントを外しているように思います。

神奈川県議会、共産に代表質問させない? 不手際で混乱(2016年5月12日20時22分)

神奈川県議会での「代表質問」をめぐり、共産会派と他会派が激しく対立している。議会での共産議員の不手際に端を発した騒動は「共産は代表質問の辞退を」と主張する他会派と共産との協議が11日から続き、12日夜になっても収拾しない異例の事態となっている。

 「共産は同じような不手際を繰り返している。いじめではなく、あまりに未成熟で我慢の限界だ。(代表質問の制限について)採決すべきだ」。12日未明、県議会での議事の進行などを各会派の代表者で話し合う議会運営委員会(議運)で自民議員が主張。土井隆典議長が再度協議を続けるよう呼びかけ、11日午前に始まった議運の協議は、他の協議事項を挟みながら、12日夜まで断続的に続いた。
(略)
 共産の井坂新哉・県議団長は「請願の賛否間違いは議場で即座に訂正し、影響は最小限に済ませた。ブログについても、謝罪して訂正した。発言に制限がかかる問題とは無関係だ。県民の負託を受けた発言権を制限されるのは納得がいかない」と主張。最大会派の自民議員は「円滑な議会運営のための極めて初歩的なルールすら守れていない」と溝は深まる一方だ。

 収拾がつかない県議会内の「内輪もめ」にある議員からは「これまでに議論に費やした膨大な時間を考えると、情けなくなる」との声も上がる。(岩堀滋)


記事で引用されている共産党の県議団長のコメントでは、議会での質問方法についてはいかなる制限も許されないように見えますが、限られた時間内で内容のある適切な討議をする必要がある以上、議会での発言にある程度の制限は必要です。かといって、いちいち法令で多岐にわたる質問内容や時間まで詳細に制限を規定するわけにはいかず、会派同士の協議やその結果の申し合わせを「先例」としてまとめて議事運営を行うのが通常ですね。自治体業界向けに書籍も販売されています。

注解 地方議会先例集
全2巻
編著者名 地方議会先例研究会/編集
判型 A5
体裁 加除式
定価(価格) 21,600円(税込み)
本体 20,000円
ISBN
図書コード 1111706-00-000


さすがに私の手元にはありませんので、ネットで公開されている国会〈参議院)の規則と先例録を見てみましょう。

第4節 発言

第91条 会議において発言しようとする者は、予めその旨を参事に通告することを要する。但し、やむを得ないときは、この限りでない。
第92条 削除
第93条 討論の通告をする議員は、その通告と共に反対又は賛成の旨を明らかにしなければならない。
第94条 参事は、質疑又は討論の通告については、通告の順序によつて、これを発言表に記載し、議長に報告する。
 議長は、質疑又は討論に当り、発言表により順次に発言者を指名する。
 前項の指名に応じない者は、通告の効力を失う。

参議院規則(昭和22年6月28日議決)

つまり、国会(参議院)での内閣に対する質問などは、事前の通告に基づいて発言表が作成され、議長がこの発言表により指名しなければ勝手に行うことはできません。さらに各質問者の質問時間などについては、議院運営委員会(いわゆる議運)の協定によって決められます。

第7節 発言(pdf)

第五五条の二
第六一条
規第九四条
二五一
質疑又は討論の発言者数、発言の順序及び発言時間は、議院運営委員会において協定する質疑又は討論の発言者数、発言の順序及び発言時間は、議院運営委員会において、各会派の所属議員数を考慮してこれを協定する。会議においては、議長は、この協定に基づいて順次発言を許可するが、協定時間については、これを宣告しないのを例とする。
(一)質疑の場合
(1)国務大臣の演説に対する質疑
発言者の数は、一会派一人乃至三人とし、発言の順序はおおむね大会派順とするのを例とする。ただし、最大会派が与党であるときは、最初の質疑者を野党の最大会派所属議員とする例が多い。質疑時間は、従来の例によれば、一人おおむね十分乃至四十分である。

平成25年版 参議院先例録

最大会派で10~40分ということで、最大会派には40分の質問時間が割り当てられ、所属議員数が少なくなるに従って質問時間が短くなることが先例となっています。これはおそらく、多くの自治体議会でも同じような運営方法となっているものと思われます。

さてこのように各会派が協定によって質問時間を定めたりして円滑な議会運営を行のは、先述の通り、限られた時間内で内容のある適切な討議をする必要があるからですね。という理由からすると、これをもって、「質問を制限するなんてけしからん!」とおっしゃる方はあまりいないと思うのですが、冒頭で引用した共産党の県議団長のコメントは、どうもそのような趣旨で発せられているような印象です。

まあ、あらゆる制度とか慣例というのは、いちいち決めていると時間がいくらあっても足りないし、その都度集まって話し合うのでは非効率この上ないという現実的な要請に対応するものであるわけでして、国会(参議院)で先に引用したような規則や先例録は、限られた時間内で適切な討議を行おうと試行錯誤を繰り広げた先人の工夫の積み重ねの結果です。もちろん、だからといって金科玉条のごとく前例踏襲するものではありませんし、随時見直されているものではあるのですが、では今回の神奈川県議会の件はどのようにとらえるべきでしょうか。

たとえば、冒頭で引用した共産党の県議団長は「県民の負託を受けた発言権を制限されるのは納得がいかない」と主張されているとのことですが、ほかの会派からすれば、共産党の間違いのために貴重な議事の時間が削られ、修正など行う手間がかけられ、結果として他の会派の発言時間が制限される結果となれば、他の会派からすると「共産党のために県民の負託を受けた発言権を制限されるのは納得がいかない」ということになると思われます。記事からは、神奈川県議会で共産党がどのような振る舞いをしてどのような影響があったのか詳細までは分かりませんが、他の会派が一致して制限を協議したということは、それだけ「県民の負託を受けた発言権を制限される」と各会派が考えていたという状況だったのではないかと思います。

まあ、「そんな制限しなくてもいいように、時間なんか関係なく年中議会を開いて好きなだけ討議させるべき」という考え方もあるでしょうけれども、役所の中の人の感覚としては、質問が通告されてから関係部局と調整しながら上司の決裁を得て発言者にレクするという一連の作業を年がら年中やるとなると、通常の住民サービスをする人員と時間は確実に削減されることが予想されるわけで、「国会(議会)対応のために仕事をしているわけではないんだよなあ」というのが率直な感想だろうと思います。というか「議会対応に人員を割かれているので住民サービスを縮小します」なんて話が通るはずもなく、むしろそんなことをいえば議会でつるし上げにあうのは目に見えてます。

いやもちろん、議会に対応する人件費を増額して公務員の人数も増やして、さらに通告が遅くなったり集中したりして超過勤務しなければならなくなったときの超過勤務手当を議員さんが負担していただけるのであれば、そのような体制を組むことも可能かもしれませんが、そんな妄想は悲しくなるのでやめておきます。なにごともバランスが重要ですね。
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