2016年05月03日 (火) | Edit |
熊本地震は未だに余震が続いている状況で、やや旧聞に属しますが復旧・復興に関する法制度について一悶着あったようです。

熊本地震に関して、「激甚災害指定」と「災害救助法の指定」が話題になっています。

「災害救助法の指定」を受けると避難所、応急仮設住宅の設置、食品、飲料水の給与、医療、被災者の救出などにかかる費用について市町村の負担がなくなります。

熊本地震では、地震の翌朝に指定されました。

一方、「激甚災害制度」は、国民経済に著しい影響を与えるような激甚な災害から復旧するにあたり、自治体の財政負担を軽減するために、公共土木施設や農地等の災害復旧に必要な費用に関して国庫補助の嵩上げを行うものです。

被災したり、避難所に避難したりしている人には今すぐ直接、関係はありません。

激甚災害の指定は、復旧費用がその自治体の財政力の一定割合を超えるかどうかで、機械的に決まります。

その為、指定にあたっては、災害復旧に必要な金額の査定がまず必要です。

「災害救助法と激甚災害」(2016.04.19 衆議院議員 河野太郎公式サイト)

拙ブログでは、普段は政治家の発言を揶揄して取り上げることが多いのですが、この説明は簡潔にして要を得ていますね。震災などの災害発生直後の救助活動や支援物資の配給などの実働的な活動については災害救助法(東日本大震災までは厚生労働省が所管していましたが、その後総合防災会議を所管する内閣府に移管されています)に基づいて行われます。こうした実働的な活動はもちろん、災害発生直後の緊急時から復旧・復興期に移行するに当たって、その復旧・復興事業にはお金がかかるわけでして、その財源を国から地方自治体への財政移転によって補填するのが、「激甚災害制度」となります。

もう少し細かい話をすると、災害救助法の適用地域の指定は都道府県知事が行うものであり、直接的には市町村と都道府県が財源を負担しますが、その額に応じて国庫負担する額が災害救助法で規定されています。詳しくはこちらの「問1 被災市町村が対応した災害救助関係経費は、最終的にはどのように負担されるのか。」などをご覧下さい。
東日本大震災への対応に係るQ&A(地方行財政関係)(pdf)

これに対して、激甚災害制度は国から地方への財政移転の制度であり、熊本県知事が早期に指定してほしいと要請したのはこの激甚災害制度についてです。ただし、上記の河野太郎氏の指摘の通り、その指定は自治体による被害状況の調査に基づいて行われるものであって、通常は1か月程度の時間を要します。なお、東日本大震災のような被害状況の調査そのものが困難なことが明らかな場合には、調査を待たずに決定されることもあります。今回の熊本地震は、当初局地的な震災と思われていたところ、その後本震が発生して余震活動が活発に継続しているという状況となり、東日本大震災と同じように調査を待たずに決定されました。この点では、通常の手続きよりは早い指定といえるでしょう。

という制度の仕組みを把握していれば知事が要請したから指定するという手続きではないというのはわかると思うのですが、こうした制度をごっちゃにした人はどこにでもいるようです。

安倍政権の震災対応に激怒 蒲島熊本県知事「強気」の源泉(2016年4月19日 日刊ゲンダイDIGITAL)

 14日夜の熊本地震「前震」の発生からすでに5日が経過。安倍政権による激甚災害の指定が遅れている。安倍首相は18日の国会で「早期に指定したい」と明言したが、19日の閣議でも指定を見送った。

 激甚災害は、地方自治体が実施する復旧事業の見込み額が一定基準を超えた場合に政府が指定、復旧事業への国の補助率がカサ上げされる。ちなみに、東日本大震災では当時の菅政権が発生翌日には激甚災害の指定を閣議決定していた。

 前震の発生直後に熊本県の蒲島郁夫知事が早期指定を求めたところ、安倍政権はその要求をはねつけた。16日の「本震」発生でやっと方針を改めたとはいえ、腰が重すぎる。ひょっとして、安倍官邸と蒲島知事との間で確執でもあるのか。

「熊本県の財政事情は決して悪くない。財政の健全性を示す実質公債費比率も14年度は13%と、早期健全化基準の25%まで、まだまだ余裕がある。財政出動を抑えたい政府にすれば、激甚災害の指定範囲を震源地近くの益城町や南阿蘇村など小さな自治体に絞り、残る地域の復興は県に任せたいはず。県全域の指定を求める蒲島知事とは当初からボタンが掛け違っていた」(官邸事情通)

いやだから、制度上は「安倍政権はその要求をはねつけた」わけではなく通常の手続きで指定できないわけでして、その後、通常の手続きより早く指定されたことからすると、この「官邸事情通」という方がこのようなコメントをされている趣旨がよく分かりませんね。まあ、日刊ゲンダイの記者が都合よく話をしてくれる人を探していて、ちょうどよく趣旨のよくわからないコメントをする人に捕まってしまったのかもしれませんが。

震災の被害によって避難している方々が多くいらっしゃる一方で、復旧・復興事業は速やかに着手する必要があることはいうまでもありません。かといって、現在進行形で被害が大きくなる中では、復旧・復興事業の規模や箇所を確定することができないために着手が難しいという事情もあります。そもそも地元自治体の職員は避難されている方のケアが最優先事項となっている状況で、現状ではそこまで手が回らない部分もあるでしょう。復旧・復興事業は官民問わず地元が主体となって実施するものではありますが、大規模な被害が発生している現状を踏まえて中長期的なスパンで考える必要がありそうです(念のため、これは東日本大震災時の経験などを踏まえた推測であり、私自身は熊本地震の現場を直接見聞しておりませんので、現地の状況について詳しく知りたい場合はそちらのWebサイト等をご確認ください)。
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