--年--月--日 (--) | Edit |
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


2016年04月21日 (木) | Edit |
熊本から大分に広がった地震関連のエントリを挟みましたが、前々回エントリに関連して議論を広げておきます。

前々回エントリで取り上げた職階制の廃止と並んで、任用方法の改正も今回の国家公務員法改正に連なる地方公務員法改正の大きなポイントとなります。これまでは、地方公務員法に任用方法の規定がなく、解説書に採用、昇任、降任、転任それぞれの任用方法について説明がある程度でしたが、改正後の地方公務員法ではそれぞれに定義規定が置かれることになりました。というと、年中行事として3月に従業員の少なくない割合が異動or昇任し、定年を迎えた従業員が退職or再雇用され、4月になると入れ替わりに新卒の新入社員が入社してくるという日本の勤め人には、「その方法の規定が無いとは何事だ」と思う方も多いかもしれません。

この話の前提として、ジョブ型雇用のアメリカ占領下で制定された地方公務員法が任用の種類について規定を置かなかったのは、ジョブ型ではすべての雇用が採用に包含されることがその理由であるということに注意が必要です。これもまた日本型雇用慣行では認識されない点ではあるのですが、雇用の基準が「職」にあるジョブ型においては、ある「職」に労働者を配置するのは、すべて「採用」なんですね。

たとえば、ジョブ型の会社がニューヨーク支店の法人営業課長という「職」に労働者を配置する場合は、その人材が会社内部の従業員か外部の応募者からであるか(もちろん応募者が無業者であるか)は問いません。つまり、ジョブ型である以上、その候補者の適性はあくまで「ジョブ」を基準として判断されるため、内部労働市場と外部労働市場がシームレスとなり、内部の人材と外部の人材は特に区別されることなく配置の可否が判断されることになります。それらはいずれも「雇用」(employment)となるわけでして、これを日本人が見ると、内部の人材であれば「昇進」(promotion)したように見えて、外部の人材であれば「採用」(employment)したように見えるということになります。なお、昇進を意味するpromotionは、使用者側ではなく労働者側の視点であることも示唆的ですね。昇進は社内の手続きとして行われるのではなく、あくまで自分自身を販促(promote)した結果であるという考え方が透けて見えるように思います(まあ昇進した人を三人称でいうときは He is promoted となるようですが)。

これに対して、メンバーシップ型の会社の東京支店の法人営業課長という「職」は会社の内部の人材が「昇進」して就くポストであって、外部からいきなり「管理職」に「採用」するというのは(特別のプロジェクトなどで外部から招聘される場合は除いて)ほとんどありません。こうした「管理職」への「昇進」は、日本のメンバーシップ型雇用においては、会社内部の手続きとなっているからですね。上記の例でいえば、東京支店の法人営業課長には大阪支店の法人営業係長が「昇進」したり、東京支店の会計課長が「横滑り」したりするものであって、これらはすべて「異動」といわれます。外部の労働者が応募しようとしても、そもそも「異動」は外部にはオープンにされていないので、応募すらできません。まあ、最近では特定のポストに「公募制」などの制度を設ける会社もありますが、それもあくまで社内の従業員を対象としたものですし。

これらの「異動」が会社内部の手続きとなるのは、定年退職とセットになった新卒一括採用のため、定年退職で空いたポストに順次「昇進」させながら、上から末端までの中間のポストに空きを作らなければならないという物理的な必然性があるからですが、話はそれにとどまりません。こうした「定期異動」は、従業員を下から順次大きな仕事を担うポストに割り当てることで、「昇進」させるに足る人材の育成(あるいは見極め)を行うものでもあって、それが内部労働市場で人材育成と調達を行う日本型雇用慣行の肝でもあるわけです。逆にいえば、よくわからないけど英語が上手くて評判が高い経営コンサル辺りを外部から「管理職」に登用すると、プロパー従業員からは「横入りのごぼう抜き野郎」((c)松本人志@『遺書』)として忌み嫌われてしまい、結局仕事にならないということになりかねません(まあ、地方公務員の世界では、国やら県やらから「格下の」自治体に「管理職」が出向するというのは日常茶飯事ですが)。

これを日本的感覚でいえば、「内部で人材育成された労働者でないのに、どうして「管理職」になれるのか」というところでしょう。実は、上記の日本型雇用慣行における人材育成の観点からいえば、この感覚には一理あります。つまり、日本社会にメンバーシップ型の雇用慣行が根強く浸透しているため、その会社における「管理職」とはメンバーシップ型雇用を管理するものでなければならず、その管理を担うためには、「管理職」自身がその会社におけるメンバーシップ型雇用を十分に経験して体得している必要があるというわけです。こうしてメンバーシップ型雇用は自ら「管理職」を養成することによって自己を強化し、それを支える職能資格給はますます堅牢になっていくことになります。

端的には、管理職ポストを経て退職した中年男性が再就職しようとしたときに、「管理職の経験があります」と自己PRしたという話は、メンバーシップ型の日本では笑い話になってしまうけれども、ジョブ型の社会では特に違和感を感じられないという点にその違いが表れているといえましょう。

さて、前置きが延々と長くなっていまいましたので、改正地方自治法についてはさらにエントリを改めることにします。
スポンサーサイト


コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。