2015年12月07日 (月) | Edit |
前回エントリに引き続き、会計検査院の報告から緊急雇用創出事業関係の案件ですが、

 そして、上記77事業のうち、道及び5県(注4)管内の17市町村(注5)が委託するなどして実施した22事業(事業費計39億3578万余円、このうち基金事業の対象経費となるリース料計7億7949万余円)については、機器等の使用可能年数として一般的に認められている「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」(昭和40年大蔵省令第15号)に定められた期間(以下「法定耐用年数」という。)よりも短期間となっている1年以内の事業期間又は当該事業期間内における当該機器等の使用期間(以下「事業期間等」という。)をリース期間と設定してリース料を算定しており、この額を基金事業の対象経費としていた。また、上記の22事業については、受託者等が基金事業の終了後も、リースにより調達された機器等をリース料の10分の1程度の低額で再リースしたり、低額で買い取ったりするなどして継続して使用していた
 しかし、基金事業において調達した機器等について、事業期間等をリース期間と設定しリース料を算定して、この額を基金事業の対象経費とすることは、基金事業の終了後に受託者等が自らの負担によるなどして行う事業で使用する当該機器等に係るリース料も基金事業の対象経費に含めることになる。このため、基金事業の終了後も受託者等が継続して使用する見込みのある機器等をリースにより調達する場合のリース料の算定に当たっては、事業期間等をリース期間として設定するのではなく、法定耐用年数等の合理的な基準に基づいてリース期間を設定し、事業期間等に発生した分のリース料のみを基金事業の対象経費とするのが適切であると認められる。
 そして、前記の22事業について、リースにより調達された機器等の法定耐用年数をリース期間と設定しリース料を算定して事業期間等に発生するリース料のみを基金事業の対象経費とすると、表のとおり、リース料は計1億3724万余円となり、当初基金事業の対象経費として計上したリース料計7億7949万余円との差額6億4225万余円は過大に算定されていたと認められた。

(注3)3道県 北海道、岩手、沖縄両県
(注4)5県 岩手、秋田、山形、愛媛、沖縄各県
(注5)17市町村 盛岡、花巻、北上、一関、釜石、二戸、奥州、にかほ、鶴岡、西予、名護各市、下閉伊郡山田、九戸郡洋野、雄勝郡羽後、国頭郡本部、島尻郡南風原各町、国頭郡今帰仁村

(表省略)

 上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
〈事例〉
 岩手県九戸郡洋野町は、平成24年度に、コールセンター業務等の実施によって、コールセンター等の情報通信技術を活用した新たな業種に対応できる人材を育成することを目的とする「コールセンター人材育成事業」を基金事業として契約金額1億8989万余円(変更契約金額2億2209万余円)で株式会社Aに委託し、同会社が当該事業を実施したことを確認して、1億8458万余円を同会社に支払っており、岩手県は同町に対して、基金を財源として同額の補助金を交付していた。そして、本件基金事業が開始される前の24年3月に同町と同会社との間で締結された「事業所立地に関する協定書」等において、同会社が基金事業の終了後も自らの負担によるなどしてコールセンター業務等を継続して実施することが予定されていた
 同会社は、コールセンター業務用機器等のリース料について、法定耐用年数(6年等)よりも短期間となっている基金事業の期間内の使用期間(以下「使用期間」という。)である8か月をリース期間と設定し5343万余円と算定して、同額を基金事業の対象経費としていた。
 しかし、基金事業において調達した機器等について、使用期間をリース期間と設定しリース料を算定して、この額を基金事業の対象経費とすることは、基金事業の終了後に同会社が自らの負担によるなどして行う事業で使用する当該機器等に係るリース料も基金事業の対象経費に含めることになる。

緊急雇用創出事業の実施に必要な機器等をリースにより調達し、当該機器等を事業終了後も継続して使用することが見込まれる場合において、合理的な基準に基づいてリース期間を設定することを実施要領に明示することなどにより、同事業の対象経費となる機器等のリース料が適切に算定されるよう改善させたもの(PDF形式:171KB)
ホーム > 検査結果 > 最新の検査報告 > 平成26年度決算検査報告 > 第3章第1節 省庁別の検査結果 > 厚生労働省
※ 以下、強調は引用者による。

ということで、大雪りばぁねっとはそのままの名称が出されていたのに対し、こちらでは「株式会社A」となっていますが、これはもちろん「株式会社DIOジャパン」ですね。こちらのエントリで引用した読売新聞で指摘されていたことについて改善措置がとられたとのことです。

DIO研修中5000万収入…県調査(読売新聞 2014年08月05日)※リンク切れ

 DIOジャパン(本社・東京)がにかほ市と羽後町に開設したコールセンターの従業員研修期間中、約5000万円の収入を得ていたことが4日、県の調査で分かった。研修期間中の従業員の給与は、国の緊急雇用創出等臨時対策基金で賄われており、収益が出た場合、地元自治体に返還する義務がある。県は近く厚生労働省に報告し、返還を求めることが可能な収益に当たるか否か判断を仰ぐ。

 このほか、にかほセンターが昨年12月~今年12月の契約で借りたノートパソコン80台について、研修期間外の今年4月以降の使用料も基金で支払ったことなどが判明。県は「基金返還の可能性が高い案件」として、併せて同省に報告する。
(略)
 一方、佐竹知事は4日の記者会見でこの問題について「良かれと思って(誘致を)頑張ったが、結果的に従業員と地域の方々に心配をかけた。深く反省し、おわびしたい」と陳謝した。

(略)
念のため記事の解説をしておくと、委託事業というのは本来自治体が実施するべき事業について、その実施を他の事業体に委任するものでして、民法でいう委任(特に事実行為の委任である準委任)に該当します。したがって、緊急雇用創出事業であっても、あくまで自治体が実施すべき事業を他の事業体が代わりに実施するものとなりますので、事業体が自ら行う事業とは経理上も実態上も明確に区別されます。ということで、委託事業で雇用した従業員を委託事業の仕様書に定められた以外の業務に従事させることは認められませんし、事業体が自ら行う事業で発生した経費に自治体からの委託費を充当することも認められません。

当事者意識の欠如(2014年08月08日 (金))

この当時の厚労省の報告書も持って回った書きぶりでしたが、会計検査院もさらっと「本件基金事業が開始される前の24年3月に同町と同会社との間で締結された「事業所立地に関する協定書」」とか書いていて味わい深いものがありますね。まあ、かといって緊急雇用創出事業が終わった後も事業を続けるからといって緊急雇用創出基金を財源として購入した備品をタダで使用できるわけではないんですが、もしかすると佐竹秋田県知事のように「よかれと思って」便宜を図ったのかもしれませんが、何度も繰り返すとおり適切な手続きを経ない事業はその正当性を失ってしまうという厳然たる事実には謙虚に学ぶ必要があるでしょう。

ということで、震災後に数倍に膨れあがった事業の後始末はこれからも続くところでして、膨れあがった事業に加えて被災された地域の自治体職員には大きな負担となっています。

被災地町村、監査で悲鳴 県内、業務量増も職員不足(岩手日報(2015/11/21))

 自治体の財務や事務事業の在り方をチェックする監査委員制度をめぐり、県内町村の体制確保が課題となっている。20日には花巻市内で町村監査委員の研修会が開かれ、業務量に対し職員配置が不足している現状に悲鳴が上がった。補助金が不適切に使われた山田町の「大雪りばぁねっと。」問題などもあり、再発防止に向け監査の重要性が増す一方、行革で職員削減が進み、沿岸被災地は復興業務にも追われるなど対応に苦慮している。

 町村の監査委員は通常2人で、事務局の職員が業務を支えている。しかし県町村監査委員協議会によると、専任職員を置く市部と異なり、町村は議会や農業委員会、選管など複数の事務局を兼ねる場合が多い。

 田野畑村は監査委員の事務局が議会など計4事務局を兼ねており、大沢喜男事務局長は「行財政改革で職員数が減っている。手が回らないほど忙しい時期もある」と明かす。大槌町は2015年度当初予算が震災前年の約9倍、506億円に激増。以前は議会と兼ねていた監査委員の事務局を13年度に独立させ、職員体制も1人増の3人に拡充したが、激務は十分には解消されていない。平野公三町長は「体制充実の必要性は感じるが、まずは監査に至る前段で事務の在り方を整理したい」と配置以外の負担軽減策も探る。

 監査委員の権限は、07年に制定された財政健全化法に伴い健全化比率の審査が課されるなど拡大傾向にある。「大雪」問題では自治体の事務事業の管理体制があらためて問われ、監査委員が果たすべき役割も大きい。

ということで、予算額が増えるというのは単に使えるお金が増えるだけではなくて、その後始末を含めて膨大な作業量を伴うわけですね。私も下っ端役人としてそうした現場におりますので、「官僚とか役人とかは予算をぶんどってくることが仕事だ」とかいうステロタイプな批判を目にすると、「いやそんなことしたらまた仕事が増えるんだけど…」というのが正直な感想でして、被災された地域の自治体で起きていることはまさにそういうことなんですが、まあそういうステロタイプな批判をする方々にはそもそもそんな事態は想像もつかないのでしょうと遠い目をするばかりです。
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