2015年12月06日 (日) | Edit |
いろいろとネタにしたいことはありつつも業務繁忙で更新できませんでしたが、とりあえず拙ブログで何度も取り上げている緊急雇用創出事業についての会計検査院による「平成26年度決算検査報告」が公表されましたので、概観してみます。

まずは、緊急雇用創出事業の事業費を私的に流用したとして業務上横領の罪に問われた岩手県山田町での事件については、検査の結果、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた「不当事項」として取り上げられています。

 基金事業では、都道府県等が企画した事業を民間企業等へ委託し、当該民間企業等(以下「受託者」という。)が公募により失業者を雇い入れて行う事業(以下「委託事業」という。)等が実施されている。都道府県は、自らが委託事業を実施する場合は、委託費相当額をそれぞれの基金から取り崩して受託者に支払い、管内の市町村等が委託事業等を実施する場合は、当該市町村等に対して基金を財源とした補助金(補助率10分の10)を交付している。
 実施要領等によれば、委託費の対象経費は、受託者に新規に雇用された者に係る賃金等の人件費、受託者に既に雇用されている者(以下「既存雇用者」という。)が基金事業に従事した分に係る賃金等の人件費及び基金事業の実施に必要なその他の経費とされている。そして、事業実施の要件は、新規に雇用する予定の労働者の募集に当たり、より多くの求職者に対して当該事業への応募の機会を提供する観点から、公共職業安定所への求人申込みなどにより公募を図ることなどとされている。
 本院が、10都道県において、10都道県及びこれらの都道県から補助金の交付を受けた管内の132市区町村を対象に会計実地検査を行った結果、3道県(注1)及び23市区町村(注2)が実施した基金事業において、受託者等が、基金事業の対象とならない経費を計上したり、新規に雇用する失業者の募集に当たり公募を行っていなかったりなどしていたため、計222,016,588円(交付金相当額同額)が、10都道県(注3)に造成されたそれぞれの基金から過大に取り崩されて、補助の目的外に使用されていて不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、上記の10都道県及び23市区町村において市区町村又は受託者から提出された委託事業に係る実績報告書等の内容の調査確認が十分でなかったこと、10都道県において23市区町村に対する指導監督が十分でなかったこと、厚生労働省において10都道県に対する指導監督が十分でなかったことなどによると認められる
(注1)3道県 北海道、山梨、広島両県
(注2)23市区町村 函館、盛岡、花巻、一関、釜石、二戸、奥州、鶴岡、高岡、魚津、津、防府、高松、三豊各市、豊島区、上川郡東川、白老郡白老、下閉伊郡山田、九戸郡洋野、西八代郡市川三郷、南巨摩郡富士川、安芸郡府中各町、南都留郡鳴沢村
(注3)10都道県 東京都、北海道、岩手、山形、富山、山梨、三重、広島、山口、香川各県

〈事例〉
 岩手県下閉伊郡山田町は、緊急雇用創出基金を財源とした委託事業として、町内の物資センターの運営や防犯パトロールを行うことなどを内容とした「山田町災害復興支援事業」を平成23年度に430,593,050円で、「復興やまだ応援事業」を24年度に791,417,000円でそれぞれ特定非営利活動法人大雪りばぁねっと(以下「法人」という。)に委託していた。そして、23年度事業については、同町は、法人から実績報告書の提出を受けて、委託費を430,486,582円とし、岩手県は同町に対して、緊急雇用創出基金を財源として同額の補助金を交付していた。
 また、24年度事業については、事業実施期間の途中で継続が困難となったことから、同町は法人との契約の一部を解除し、法人から実績報告書の提出を受け、委託費を363,208,574円と確定し、同県は、このうち経費の内容が明らかでなく、事業との関連を確認できなかった支出等を控除し、289,423,261円が補助の対象となるとして、同町に対して、緊急雇用創出基金を財源として同額の補助金を交付していた。
 そして、24年度事業において経費の内容が明らかでなく、事業との関連を確認できなかった支出等が見受けられたことから、同県は23年度事業についても、委託費の再調査を行い、23年度事業の補助金の額を262,996,133円と修正していた。
 そこで、本院においても、実績報告書等を基に検査したところ、法人は、主に北海道旭川市内の法人の事務所において、既存雇用者2名が、本件委託事業に係る事務を専従で担当していたとして、事業期間内に当該2名に対して支払われた人件費23年度計7,779,000円、24年度計6,879,000円の全額を本件委託事業に要した経費として実績報告書に計上していた。
 しかし、法人において、当該2名に係る業務日誌を作成していなかったことから、法人が同町へ提出した本件委託事業に係る出張の復命書等により当該2名が本件委託事業に係る事務に従事した日数を確認して、人件費を算定したところ、23年度2,034,369円、24年度2,411,000円となった。したがって、前記の実績報告書への計上額との差額23年度5,744,631円、24年度4,468,000円、計10,212,631円は、本件委託事業の対象経費とは認められない。
 また、法人は、本件委託事業の実施に必要な経費とは認められない打上げ花火の購入費等2,930,527円を本件委託事業の対象経費として計上していた。
 したがって、本件委託事業の対象経費とは認められない計13,143,158円(交付金相当額同額)が岩手県から同町に交付される補助金として緊急雇用創出基金から過大に取り崩され、補助の目的外に使用されていた。
 なお、本件については、平成25年度決算検査報告の「国民の関心の高い事項等に関する検査状況」において、検査を実施している旨を記述した(平成25年度決算検査報告1162ページ参照)。

(単位:千円)

部局等補助事業者
(事業主体)
補助事業年度基金造成額
・左に対する
交付金交付額
不当と認める
基金使用額
・交付金相当額
厚生労働省本省北海道緊急雇用創出基金
ふるさと基金
20~25
20
53,490,000
8,210,000
6,354
4,424
岩手県緊急雇用創出基金20~2595,284,53756,929
山形県20~2526,977,00011,788
東京都20~2561,236,00027,684
富山県20~2520,007,6004,719
山梨県20~2516,691,80080,548
三重県20~2525,585,0004,386
広島県20~2524,916,30019,285
山口県20~2516,105,1001,579
香川県20~2511,755,0004,315
360,258,737222,016

緊急雇用創出事業臨時特例交付金及びふるさと雇用再生特別交付金により造成した基金を活用して実施した事業において基金を補助の目的外に使用していたもの(PDF形式:147KB)
ホーム > 検査結果 > 最新の検査報告 > 平成26年度決算検査報告 > 第3章第1節 省庁別の検査結果 > 厚生労働省
※ 以下、強調は引用者による。表が大きいので数値が重複する項等を省略してあります。

…なんで会計検査院のpdfはコピペしようとすると文字化けするのか、そのために手打ちで上記を引用するための労力は無駄で不当なものではないのかと小一時間問い詰めたいところですが、まあ概観するといいながらほぼ全部引用してしまいました(ということでタイポがありましたらご容赦ください)。
(付記)緊急雇用創出事業臨時特例交付金及びふるさと雇用再生特別交付金により造成した基金を活用して実施した事業において基金を補助の目的外に使用(PDF形式:89KB)こちらの概要版ではコピペできませんでしたが、本文ははコピペができましたのでそちらに差し替えています。「概要」を見たのが間違いだったとは…

引用部分の最後の文は、検査自体は平成26年度に実施していた(25年度の決算なので26年度に検査します)ということですが、まあものの見事に「そもそも論からすれば、不正受給とか虚偽申請ってのはそういうことをした側がその責を問われるはずです。しかし、会計検査院とかオンブズマンの方々はそれを見逃したとか適切に処理しなかったとして役所の責任を追及され」ていらっしゃいますね。まあ、会計検査院の目的は役所の不正を暴くことですから、会計検査院の役人はその職務を粛々と果たしているわけですが。

ということで、事業者に対しては司法が裁くことになるわけでして、この旭川市内に居住して勤務の実態がないのに人件費の支払いを受けていた2名と代表者に対する裁判は着々と進んでいます。

<山田NPO横領>元代表の母に実刑(河北新報 2015年02月25日水曜日)

 岩手県山田町から緊急雇用創出事業を受託したNPO法人「大雪りばぁねっと。」(北海道旭川市、破産手続き中)の横領事件で、働かずに給与を受け取ったとして業務上横領罪に問われた元代表理事の母、無職岡田かおり被告(54)=旭川市=に盛岡地裁は24日、懲役2年4月(求刑懲役3年6月)の判決を言い渡した。
 岡田健彦裁判長は、かおり被告の出勤簿が、他の従業員と別扱いで後から作成された経緯を指摘。「問題を隠蔽(いんぺい)しようとしたことが推認される」と述べた。
 給与の原資が事業費であったことの認識の有無に関しては「被災地域で活動する大雪の資金源について、何も知らないのは常識的に考えて不自然」と判断した。
 判決によると、かおり被告は2011年12月~12年11月、元代表理事の岡田栄悟被告(36)=旭川市、業務上横領罪で公判中=らと共謀、勤務実態がないのに事業費から計約466万円の給与を受け取り、横領した。

このうち母親は控訴しましたが、高裁で棄却されて確定しています。
NPO法人元代表の母、二審も実刑 岩手の震災事業費横領(産経ニュース 2015.7.9 12:39)
代表者とその妻への地裁判決は来年1月とのこと。

NPO元代表に懲役8年求刑 - NHK岩手県のニュース 11月02日 18時59分(リンク切れ)

東日本大震災後に山田町で活動していたNPO法人の元代表理事らが町から委託された被災者の雇用を支援する事業の補助金を私的に使ったとして、業務上横領などの罪に問われている裁判で、検察は「復興のための公的資金を私的に流用したことは極めて悪質だ」などとして元代表理事に懲役8年を求刑しました。
北海道旭川市のNPO法人、「大雪りばぁねっと。」の元代表理事、岡田栄悟被告(36)は山田町から委託を受けた被災者の雇用を支援する事業で、補助金あわせて5300万円あまりを私的に使ったとして業務上横領などの罪に問われています。
2日は盛岡地方裁判所で、岡田元代表と、同じく業務上横領の罪に問われている妻の光世被告(34)の裁判が開かれました。
この中で、検察は「被害額が高額であり、復興のための公的資金を私的に流用したことは極めて悪質で身勝手きわまりない行為だ。社会を騒然とさせた行為に対する刑事責任は重い」と指摘しました

その上で、岡田元代表に懲役8年、光世被告に懲役3年6か月を、それぞれ求刑しました。
一方、弁護側は「NPO法人の活動の中で適正さを疑われる形でなされた支出もあったかもしれない」としましたが、いずれの行為も町からの委託を受けた業務の範囲で行われており、法律上の業務上横領にはあたらないなどとして無罪を主張しました。
最後に岡田元代表が意見陳述し、「この復興事業は私利私欲のためにやったものではない。協力してくれた人たちの期待に応えられなくて大変申し訳なく思っています」と述べました
判決は、来年1月19日に言い渡されます。

ということで、裁判では母親の466万円と代表らへの5,300万円を合わせて5,800万円程度の横領が問われていまして、会計検査院が本件委託事業に関して目的外に使用されていたとした額は1,300万円程度、岩手県全体でも5,900万円弱となっていて裁判と微妙に異なっているように思いますが、まあ端数の関係かもしれません。でまあ、最後に引用した記事で代表者が「この復興事業は私利私欲のためにやったものではない」と言い張るところに、改めて「当事者意識の欠如」を感じます。手段が目的化することはもちろん本末転倒ですが、特別会計と特定財源の違いも分からないような目的さえ正しければ手続きなんてどうにでもなるという議論は、その事業の正当性を失わせてしまい、結局事後的に不当なものとしてその実施主体が責任を取らされることになるわけですね。会計検査院の結論は出ましたので、後は司法の判断を待つことにします。

ちなみに、これだけ世間を騒がせた割に(?)岩手県ではなく、山梨県が不当とされた額が最多となっておりまして、地元の地方版ではその理由が報じられているようです。

会計検査院:決算検査報告 緊急雇用、不適正8054万円 全国最多 県、指摘の15件返還へ /山梨 毎日新聞 2015年11月07日 地方版

 会計検査院が6日公表した2014年度の決算検査報告によると、県関係では失業対策の「緊急雇用創出基金事業」で要件に反した国の補助金交付や、農業関係で国の補助事業を受けて取得した財産の無断貸し付けなどが指摘された。同創出基金事業で不適正とされた額は約8054万円(8件)で全国で最も多額となった。県は検査院から自主返還するよう指導があった分を含め、約9891万円(15件)を返還する方針を明らかにした。【後藤豪、藤河匠】
(略)
 県労政雇用課によると、県が東京都八王子市の人材育成会社に委託した「ジョブカフェサテライト事業」(11、12年度)では、雇用期間を1年以内としている同事業の実施要綱に反し、同じ人を2年連続で雇っていた。検査院は「失業者を新規に雇用していない」などとして、計約1720万円の不正を指摘。同社関係者は毎日新聞の取材に「県の当時の担当者には確認を取った上で行った」と話した

 このほか、県農業振興公社が県から委託を受けた「耕作放棄地を活用した企業の農業参入推進事業」(11年度)では、雇用した38人中31人が失業者か否かを確認できる書類が不備だったという。検査院からは5071万円分が、国補助金の目的外使用と認定された。

うーむ、これは役所の担当者まで含めて制度の理解が足りなかったといえそうで、この記事による限りは「ずさん」と指摘されても仕方ないのではないかと思います。いやもちろん、この記事が何処まで実情を伝えているかわかりませんが、世間の耳目を集ようが集めまいが適切な手続きを経ない事業はその正当性を失ってしまうわけでして、これからの緊急時対応でも適切な対応が必要であることはいうまでもありません。

もう一つ拙ブログで取り上げているネタも検査対象となってしますが、長くなりましたのでエントリを分けます。
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