2015年11月03日 (火) | Edit |
軽減税率の導入については、一応「経済学」のカテゴリを持つ拙ブログもご多分に漏れず反対の立場なのですが、まあ結局「政策は、所詮、力が作るのであって正しさが作るのではない」という権丈先生の箴言が現在進行中のようです。

社会保障充実、一部見送り 政府与党、軽減税率財源で(2015/10/23 22:30 【共同通信】)

 政府、与党は23日、10%への消費税増税時に導入する軽減税率の財源を確保するため、予定していた社会保障の充実策を一部見送る方針を固めた。医療、介護などの自己負担額に世帯ごとの上限を設け、支出を抑える「総合合算制度」の実施を取りやめる。年間約4千億円の歳出を減らし、消費税収の落ち込みを埋め合わせる考えだ。

 ただ、公明党が対象品目として提案する「酒類を除く飲食料品」の財源には足りていない。公明党内にはたばこ税などの引き上げで財源を調達する案も浮上する一方、自民党は否定的で、27日に再開する与党協議はなお対立が続きそうだ。

※ 以下、強調は引用者による。

この報道に対しては、すでに経済学(に限らずアカデミックな)方面の方々から批判が吹き荒れているのですが、私の感想はbn2さんのこちらのtweetに特に付け加えることはありません。

さらに、4千億円では品目が足りないという公明党の意向を尊重するため、他の分野でも削減が進められそうです。

軽減税率、財源1000億円上積み 政府・与党が調整(日本経済新聞 電子版2015/10/29 14:00)

 政府・与党は29日、消費税率を10%に上げるときに一部の商品だけ8%に据え置く軽減税率の財源について、これまでに確保した約4千億円から約1千億円積み増す方向で調整に入った。総額5千億円程度とし、対象品目の範囲を広げたい公明党に配慮する。

 ただ、公明党は1兆円規模の財源が必要としており、与党の議論が決着するかは不透明だ。

 新たな財源は子どものいる低所得者世帯への給付を削減することなどでひねり出す案がある

 与党は29日午後、軽減税率に関する協議会を開き、財源の規模や対象品目を議論する。制度の大枠を固める11月中旬まで時間がないため、両党が歩み寄る可能性もある。

この報道についての感想は、こちらのレ点さんのtweetと同じ感想だったのですが、このtweetに対するRTを是非合わせてご覧いただけると財源確保の難しさがよく分かるかと思います。

このtweetにRTされたtweetはやはり財務省を批判する方が多数だったわけですが、まあ財務省を批判してもしなくても財源がなければこうなりますね。


ということで、私のような下っ端地方公務員はことの成り行きを見つめるしかないわけですが、付加価値税率が高いヨーロッパ各国で軒並み軽減税率が導入されているのは、増税に対する抵抗をいくらかでもそらなければならないという政治的な事情が大きいのではないかと思います。そうした側面については、abz2010さんのご指摘が参考になります。

そして、ここから派生するもう一つのメリットは消費税率の上げ下げが比較的容易になることである。 もちろんどのような形であっても増税には常に逆風が吹くわけであるが、 生活必需品を軽減税率の対象とすることにより、「低所得者への負担増が・・・」、「逆進性が・・・」といった消費税増税の本質的な問題を(相対的にではあるが)軽減できる為、消費税増税(減税)をフレキシブルに実施することが可能になる。(念のために書いておくと、上記は軽減税率そのものが低所得者対策として有効という話ではなく、消費税増税による低所得者の負担増を相対的に軽減する事ができるという話である。尚、より直接的な低所得者対策が必要であれば消費増税で得た財源を元手に別途行なえばよい。)
(略)
そして欧米並みの税率となるまでの道程とそうなった場合の低所得者への配慮を考えるとこのあたりで軽減税率の議論を真剣に行うことは避けては通れないだろう。 もちろん軽減税率の代わりに低所得者用の還付金を採用する等、他の方策も十分検討の対象となりうるが、「生活必需品の税率は軽減される」という基本部分のわかりやすさ・納得感も考えると軽減税率も巷でやたらと批判されているほど悪いものでもないというのが筆者の考えである。

軽減税率のメリットについて(カンタンな答 - 難しい問題には常に簡単な、しかし間違った答が存在する2014-11-25)

個人的には、軽減税率を「批判されているほど悪いものではない」とまでいえるかはかなり疑問ではありますが、政治プロセスを考えると「議論を真剣に行うことは避けて通れない」というのはその通りだと思います。そして現在、軽減税率の導入のためにどの財政支出を削るかという真剣な議論が行われているところなわけでして、政治的プロセスの中で経済学的な正しさがどのような行方をたどるのか大変興味深いですね(なお、社会保障の財源を公債に頼ることは、スティグリッツの批判の通り軽減税率と同じくらい公共経済学的に無理筋だろうと思います)。

なお、経済学方面の方がこういう議論をしてしまうのは、政治プロセスに対する実務感覚の欠如がなせる技なのでしょうか。

 確かに、税は安いに越したことはない。そして軽減税率が導入されても、店舗運営や税務に携わる者以外にとっては直接困ることは少ない。全くの個人的な損得から勘案すると、「軽減税率の方が差し引きで得」という人の方が多いだろう。ちなみに、生鮮食品のみの軽減適用ならば、平均的な家計で年4000円ほど得になる。大多数の人の(一家で!)4000円程度のお得感と一部の人の大幅な負担増――多数決では、少数の大きな苦しみは大多数の人のちょっとした賛成に勝つことは出来ない。経済政策の問題は単純な多数決によって決定することは出来ないのだ

2015.10.29 第1回 「軽減税率」のこと、ちゃんと知っていますか?「軽減税率」は、実は低所得者支援策ではない!飯田 泰之

いやまあ、飯田先生はネタの宝庫でして、自ら『ダメな議論』を体現する姿勢には敬服いたします。

飯田(泰):
それについては、ぼく個人の意見としては、とりあえず再稼働はしょうがないだろうと。その後、現存の耐用年数の過ぎた原発は徐々に、ゆっくりと縮小していくという論なんですが、それ以上に、再稼働についても、みなさん忘れている部分があると思うのは、国民の大多数が、もう再稼働させるなと思っているのであれば、それは止めるしかないんです
(略)
国民のなんだかいやという感情が、どの程度なのかというのをしっかり調べるべきだと、世論調査でもいいし、国民投票は難しいですが、世論の大勢が、再稼働もいやですとなったらそれに対する経済的ダメージを引き受けるしかない、という意思決定なんですね

その意味で原発問題というのが、議論をする対象ではなくて、意思決定しなきゃならない局面になっている。その時に、僕自身は、何となく嫌だからというのは、一番重要な基礎になる考え方ではないかと思います。そこで、僕自身は、「再稼働してゆっくり撤退」。でもやるべきこととしては、とにかく、いやな人が多いのか少ないのかを調べて、その結果再稼働するのかしないのかを、さっさと決めるというのが大切だと思います。

「震災を超克せよ!」復興、原発…4時間討論(全文文字起こし)第3回(2012/03/08) - みなと横浜みなみ区3丁目(リンク切れ)

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