--年--月--日 (--) | Edit |
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


2014年08月08日 (金) | Edit |
前回エントリの関連となりますが、旧聞に属するどころか事態が急展開しているようです。

被災地でコールセンター 本社の業務事実上休止 8月4日 18時06分 NHKニュース

東日本大震災の被災地などで国の助成を受けてコールセンターを運営し、従業員の給与の未払いや雇い止めが問題になっている「DIOジャパン」について、厚生労働省は、4日までに本社の社員全員が解雇され、事実上業務を休止したと説明を受けたということです。
東京に本社がある「DIOジャパン」は、国の緊急雇用創出事業の委託を受けて東日本大震災の被災地など全国でコールセンターを運営していますが、先週本社と連絡が取れなくなっていました。
厚生労働省によりますと、4日までにDIOジャパンの本門のり子社長と電話で連絡が取れ、本社の社員全員を解雇し、事実上業務を休止したと説明を受けたということです。
DIOジャパンは7000万円余りに上る従業員の給与の未払いや雇い止めが問題になっています。
また、昨年度までにおよそ36億円の助成金が支払われており、厚生労働省は助成金の使い方が適切だったか調査を進めています。
社長からは被災地などで運営しているコールセンターの取り扱いや今後の対応についての説明はなかったということで、厚生労働省は引き続き詳細を確認していく方針です。


誘致した企業どころか本社まで全員解雇とは。。。予想のはるか上を行くずさんな経営ですな。前回エントリで指摘したことについては、厚労省が中間報告を発表していますので、制度上の問題点については改めてこちらから引用します。

緊急雇用創出事業に係る(株)DIO ジャパン関連子会社への調査~中間報告~(平成26年7月15日)(注:pdfファイルです)
<対応の方向性等>
 これらの状況は、緊急雇用創出事業により創出される雇用が、次の就職に繋げるための人材育成を行う有期雇用であることにかんがみれば、事業期間終了後に雇用が必ずしも継続されないこと自体は、制度上、委託契約としての問題とはならない。
 しかしながら、厚生労働省としては、緊急雇用創出事業の趣旨にかんがみ、事業終了後においても、安定した雇用に繋がるよう、事業実施要領に基づき、都道府県を通じ、市町村及び受託事業者へ指導しているところである。このため、事業終了後とは言え、決して望ましい事態ではない。
 厚生労働省としては、今後、都道府県をはじめ関係自治体に対し、事業の受託者の選択において、安定した雇用に繋がるか否かの判断をより重視する等について、指導してまいりたい。
 なお、このような緊急雇用創出事業における取扱とは別に、関係子会社の立地している自治体の一部には、関連子会社の設立時に、企業立地協定を締結している場合等がある。その中には、「企業立地を支援する代わりに、最低 5 年は雇用を継続する」、「事業終了後も引き続き継続雇用する」などの具体的な約束をしている場合がある。
 こうした場合には、緊急雇用創出事業とは別に、当該関係子会社と自治体との間で、協定等の遵守に関する問題が生じることが考えられる。

なかなか持って回った言い方ですが、あくまで有期雇用を創出する委託事業としては問題がないものの、企業誘致の際の約束である「企業立地協定」において継続雇用を謳っておきながら、賃金未払やら雇止めやらでそれを反故にしてしまう程度のDIOジャパンを委託先とした自治体に対して、厚労省からきちんと見極めるよう指導しますよということです。要すれば、始めから緊急雇用創出事業がなければ地方に立地することもできないような企業を誘致して、「緊急雇用で企業誘致」という筋の悪い事業を実施してしまった被災地の自治体がしっかりしろという指摘です。

被災地の自治体の側には、震災で事業所が閉鎖したりして背に腹を代えられない状況があったという事情はあるにせよ、「緊急雇用で企業誘致」なんてことしたらこうなる可能性が高いことは十分に予想できたはずでして、厚労省の指摘はその通りだろうと思います。その背景には、前回エントリの繰り返しになりますが、緊急雇用創出事業という事業そのものが、「失対事業の夢魔」を回避するために有期の委託事業という大枠をはめ、その期間内で有期雇用を創出するという苦肉の策であって、当初はその目的に合致するような短期的な業務を委託することとされていたのに、自治体の側の要望によって、当初の目的ではない「地域の雇用確保のツール」と位置づけられるようになっていた経緯があるわけです。

ということで、DIOジャパンの撤退については緊急雇用創出事業として制度上の問題がないにも関わらず、岩手県山田町の緊急雇用創出事業の不正事件との合わせ技で会計検査院の餌食となるようですね。

会計検査院が検査開始 山田NPO問題、年内に「報告」(岩手日報(2014/07/30))

 会計検査院は29日、県や山田町などに対し、予算が適切に執行されたかを調べる実地検査を開始した。NPO法人「大雪(だいせつ)りばぁねっと。」の予算使い切りが問題となった同町委託の緊急雇用創出事業などが対象とみられる。検査報告は年内に公表される見通しだ。

 同検査院の関係者数人は同日、盛岡市の県庁や山田町役場などを訪れた。県内に数日程度滞在し、補助金交付に関する書類確認や担当者の聞き取りなどが行われるもようだ。

 会計検査院の実地検査は毎年行われるが、東日本大震災後の本県に対しては復興業務を妨げないよう見送られてきた経緯があり、本県での実施は2010年以来4年ぶり。今回の検査対象として、県内で子会社撤退が相次ぐDIOジャパン(東京)の緊急雇用創出事業なども検討されるとみられる。

 検査報告は内閣に秋以降送付され、内容が公表される。自治体などを対象に説明会も開かれる。

まあ、会計検査院(とオンブズマンの方々)の行動原理としては、「そもそも論からすれば、不正受給とか虚偽申請ってのはそういうことをした側がその責を問われるはずです。しかし、会計検査院とかオンブズマンの方々はそれを見逃したとか適切に処理しなかったとして役所の責任を追及され」るわけですから、会計検査院(とオンブズマン)が、「問題」があったとされる事業について調査するのは、それこそ制度上問題はないでしょう。ただ、その矛先が緊急雇用創出事業を所管している厚労省とか自治体の雇用対策担当に限られるのであれば、いかにも制度の問題点を理解していない表層的な調査にしかならないわけでして、経産省が所管する企業誘致の問題についても精査されることが望まれます。

ただし、これまでの報道ではあまり触れられていなかったのですが、一部の事業では緊急雇用創出事業としての問題もあったようです。

DIO研修中5000万収入…県調査(読売新聞 2014年08月05日)

 DIOジャパン(本社・東京)がにかほ市と羽後町に開設したコールセンターの従業員研修期間中、約5000万円の収入を得ていたことが4日、県の調査で分かった。研修期間中の従業員の給与は、国の緊急雇用創出等臨時対策基金で賄われており、収益が出た場合、地元自治体に返還する義務がある。県は近く厚生労働省に報告し、返還を求めることが可能な収益に当たるか否か判断を仰ぐ。

 県がDIO社などに確認したところ、にかほ市と羽後町のコールセンター3か所で、研修期間中の2013年4月~今年3月、宿泊予約の受け付けや精米の販売営業などを行い、計約4981万円を得ていた。

 県の調査に対し、DIO社側は「業務の実践練習として、(本社が)受注した業務をさせていた」などと回答、コールセンターが上げた収益ではなく、返還の必要はないとの見解を示したという。

 また、研修期間中に事業収入があった場合、事業者は地元自治体に報告書を提出する義務があるが、にかほ市と羽後町には、同社から報告はないという。

 このほか、にかほセンターが昨年12月~今年12月の契約で借りたノートパソコン80台について、研修期間外の今年4月以降の使用料も基金で支払ったことなどが判明。県は「基金返還の可能性が高い案件」として、併せて同省に報告する。

 県によると、7月31日に業務停止が明らかになったDIO社とは、4日も連絡が取れない状態。今月1日の予定だった給与も支払われず、4月分以降の遅滞総額は延べ290人分、約4213万円に上っている。

 一方、佐竹知事は4日の記者会見でこの問題について「良かれと思って(誘致を)頑張ったが、結果的に従業員と地域の方々に心配をかけた。深く反省し、おわびしたい」と陳謝した。

 DIO社については「無責任で憤りを感じる。会社整理などの手続きを取ってもらえれば次の手が打てるが、放置されると困る」と述べた。未払い給与や研修期間中の収入については、他県と連携して対処していく考えを示した。

佐竹知事の「良かれと思って(誘致を)頑張ったが、結果的に従業員と地域の方々に心配をかけた」と言う言葉がはしなくも安直な企業誘致の考え方を示していて興味深いところですが、それはともかく、DIOジャパンはそもそも自社の事業と委託事業の違いを認識していなかったように見受けます。というか、これまで拙ブログで何度も報道の誤りを指摘しておりますが、これだけ長い期間報道している報道各社ですら全く制度が理解されていないわけでして、あくまで企業誘致された側のDIOジャパンにしても、制度なんて役所が勝手に用意したものであって、自らが受託者としてそれを理解する必要性などみじんも感じてはいなかったのでしょう。これは岩手県山田町で問題を起こしたNPOも同じでしょうけど、「震災で被災した地域の助けになってやっているのに、細かい制度のことでとやかく言われる筋合いはない」という当事者意識の欠如があるように思います。

念のため記事の解説をしておくと、委託事業というのは本来自治体が実施するべき事業について、その実施を他の事業体に委任するものでして、民法でいう委任(特に事実行為の委任である準委任)に該当します。したがって、緊急雇用創出事業であっても、あくまで自治体が実施すべき事業を他の事業体が代わりに実施するものとなりますので、事業体が自ら行う事業とは経理上も実態上も明確に区別されます。ということで、委託事業で雇用した従業員を委託事業の仕様書に定められた以外の業務に従事させることは認められませんし、事業体が自ら行う事業で発生した経費に自治体からの委託費を充当することも認められません。

では、委託事業の仕様書に定められた事業で、その成果物を販売するなどして収益が発生した場合はどうなるかというと、その収益は事業体に帰属することになるので、自治体からの委託費をその分だけ減額する必要があります。そうしないと、自治体からの委託費で雇用した従業員や設備などを使用して、事業体が自らの収益を上げることができてしまうからですね。委託事業の性質上、成果物の販売などで収益が発生する事業を実施することは認められますが、その収益は自治体からの委託費と相殺するわけです。まあ、受託する事業体から「緊急雇用創出事業はやたら手続きとか書類が厳しいのに、自社の持ち出し経費が認められなくて全然おいしくない」と不評を買う所以でもあるのですが、逆にいえば、そこを認めてしまえばそれなりに「おいしい」事業となります。

佐竹知事の言葉にはその辺の反省も含まれているのかもしれませんが、今となっては会計検査院(とオンブズマン)のご指摘を座して待つしかなさそうですね。
スポンサーサイト


コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。