2014年04月12日 (土) | Edit |
ということで、まさかの連載の『HR mics vol.18(直リンができないので、ニッチモWebサイトからどうぞ)』連載第6回目が、編集の海老原さん、荻野さんのご指導のおかげで無事掲載されました。ありがとうございました。いつもながら冗長な拙文となっておりまして、活字になって読み返す度に反省しております。まあ、そもそも連載の元になっている本ブログ自体が最近特に長文になる傾向がありますので、何とか読みやすい文章を書けるように精進いたします。もちろん、hamachan先生をはじめ豪華連載(拙稿を除く)が目白押しですので、ぜひご高覧いただければと思います。

で、今回の特集は障害者雇用(後述の通り、私は「障がい者」という言葉はあまり好きではありません)ということで、雇用する側の本音が語られています。日本理化学工業(株)など『日本でいちばん大切にしたい会社』でもおなじみの会社も登場しますが、障害者雇用に積極的な会社には、お互いにサポートし合いながら仕事をするといういかにも日本型雇用慣行バリバリのところが多いことに、海老原さんが多少困惑されながらこう総括されます。

 では、本気で戦力化をするときに、どのような方向性が考えられるのか?
 この答えとして、従来から欧米型の「職務別採用」が唱えられてきた。職務を細分化し、特性に応じてできそうな仕事をパッケージとして作り、障がいの状況に応じて、ふさわしい仕事に就いてもらう、という考え方が。日本型総合職のように、無限定でなんでもやらせるのが基本では、ハンデや個人事情のある人は働きづらい。障害のある人のみならず、育児・介護世代や、体力の低下したシニア層、など多様な人が働けるようにするためには、脱日本型が必要であり、時代に合っているとも考えられる
(略)
 ところが一方で、本気で障がい者雇用を推進している2章の4社は、いずれもベタベタな日本型企業でもあった
 「一生働いてもらうから、人柄で採用する」「彼らにも役職を与えて、長期間、飽きずに働けるようにする」「ご両親とのコミュニケーションを大切にし、子供たちの成長をともに喜ぶ」「未経験でも心が通じ合えるなら」……。こんな話がずっと続く。
(略)
 この矛盾については、永野准教授(引用注:永野仁美上智大学法学部准教授)が見事に種明かしをしてくださった。
 欧米型の「ピッタリな仕事」にあてはめる考え方は、わかりやすい。即効性も高い。
 ただ、日本型の利点で、職務を決めずにいろいろやらせていけば、自ずからできる仕事に行き着く。そうしてじっくり育てれば、習熟度も増し、見えなかった仕事までこなせるようになる。
 だから、どちらがいいかは、それは一概には言えない、というのだ。この2つの、二律背反な障がい者の戦力化モデルについて、どう結論を出すか。ここが、これから企業が考えていくべきポイントだろう。

「もっと本気で障がい者雇用 むすび 美談で済ませるから、何も生まれないという過ち」『HRmics vol.18』pp25.26
※ 以下、強調は引用者による。

障害者雇用というととかく特別な美談として語られがちですが、もっと汎用性の高い問題でして、海老原さんが指摘されるように、育児・介護など、自分自身に障害がなくても仕事をするうえで制約がある方はいくらでもいるはずですし、むしろすべての労働者に個人の生活がある以上、そこには制約がなければなりません。それを無限定に広範な人事権を認めてきたのが日本型雇用慣行のもう一つの側面ですので、障害者雇用を考えることは、そうした日本型雇用慣行が等閑視してきた制約を意識的に考えることにつながると考えます。

その意味で、私は「障がい者」という健常者が障害者に配慮したような言い方が好きではありません。感じ方には個人差があるでしょうから「障がい者」という言葉が使われることはまあいいのですが、自分自身の制約が特別なことであって周囲とは違うという意識が個人の中で強まりすぎると、かえって障害者に対する特別視や偏見につながってしまうのではないかと懸念してしまいます。

というのも、障害者雇用に積極的に取り組んでいるのが日本型雇用慣行バリバリの会社だからといって、では日本型雇用慣行の会社なら障害者雇用に積極的に取り組めるかというとそうもいかないところが難しいところです。実は、障害者雇用促進法では、国や地方自治体などの公的機関の法定雇用率は、率先して障害者雇用に取り組むべきという理由で、民間の法定雇用率2.0%よりも高く2.3%に設定されています(昨年4月に引き上げられています)。ただし、地方自治体の任命権者のうち教育委員会だけは2.2%と低めに設定されていまして、にもかかわらず未達成だった6つの教育委員会に対して昨年2月に勧告が行われています(なお、次の勧告は当時の基準の2.0%が達成されていないことによるものです)。

障害者雇用が進んでいない6都県の教育委員会に対して障害者採用計画の適正実施を勧告

「障害者の雇用の促進等に関する法律」では、国および地方公共団体に、法定雇用率以上の身体障害者または知的障害者の雇用を義務付けており、法定雇用率を達成していない場合は、障害者採用計画を作成しなければなりません。
都道府県教育委員会(以下「教育委員会」)のうち31都道県の教育委員会は、平成23年6月1日現在、教育委員会に義務付けられている法定雇用率2.0%を達成できていなかったため、平成24年1月に、2年間にわたる障害者採用計画を作成しました。しかし、中間時点に当たる平成24年12月1日現在、下記の6都県の教育委員会は、いずれもこの採用計画を適正に実施していません
このため厚生労働省は、これらの教育委員会に対し、障害者雇用促進法第39条第2項の規定に基づき、採用計画を適正に実施するよう、2月27日付けで厚生労働大臣名による勧告を行いました。

                         記
 
◎ 適正実施勧告の対象となる教育委員会(6教育委員会)
  岩手県教育委員会、福島県教育委員会、東京都教育委員会、新潟県教育委員会、滋賀県教育委員会、鳥取県教育委員会


なお、採用計画を作成した31都道県の教育委員会のうち、10県の教育委員会が平成24年12月1日までに法定雇用率を達成しています。
(平成24年12月1日現在、全国で法定雇用率を達成している教育委員会は26府県)

教育委員会で法定雇用率の達成が難しい理由については、埼玉県議会の答弁で述べられています。

平成21年2月定例会 代表質問 質疑質問・答弁全文


県教育委員会における障害者の雇用について


Q 秦 哲美議員(民主党・無所属の会)
 県教育委員会関係の障害者雇用状況は、平成20年の雇用率が1.45パーセントで、法定雇用率の2パーセントを大きく下回っています。法定雇用率を実現するには142人の雇用が必要だと言われています。教育職員の雇用については、教員免許状等の資格要件がありますので、雇用の困難性については重々承知しています。しかし、全国的には、平成20年6月1日現在で大阪2.21パーセント、和歌山県2.19パーセント、京都2.16パーセント、奈良2.01パーセントと、4府県が法定雇用率を上回る雇用を実現しています。埼玉労働局は、率先垂範しなければならない立場にある県教育委員会の障害者雇用が遅々として進んでいない状況について危機感を持ち、平成23年末までの法定雇用率の達成について、昨年10月、県教育委員会に対して要請しています。
 そこで、教育長に伺います。
 第一点は、平成19年10月に埼玉労働局から、障害者採用計画について適正に実施するよう勧告があったが、平成20年末までの計画期間内に何が問題で障害者の法定雇用率が実現できなかったのか、その要因の解決のためにどのような対策や対応を講じてきたのかについて伺います。
(略)


A 島村和男 教育長
 まず、1点目の「平成20年末までに、何が問題で障害者の法定雇用率が実現できなかったのか。」についてでございます。
 教育委員会事務局職員の障害者雇用率は4.22%であり、法定雇用率の2%を上回っております
 一方、対象となる職員の9割以上を占める小・中・高等学校等の教育職員の障害者雇用率が、1.23%と低い状況になっております。
 教育職員の法定雇用率が未達成の理由といたしましては、議員お話のように、教員の採用には教員免許状等の資格要件がございますので、教員採用選考試験に障害者の志願者が少なく、結果として採用者数も少なかったためでございます。

まあ端的に言えば、教員免許状を持っている障害者が少ないので採用する教員に障害者が少なくなり、結果的に法定雇用率を下回っているというのがその理由となっているわけです。「障害者特別選考」も必要かもしれませんが、しかし、そうやって採用された障害のある教員が、教育の現場で本務である教育業務だけをやれば許される環境にあるのかといえば必ずしもそうではありません。

上記の通り、日本型雇用慣行では個人の事情に配慮することは特別なことですので、逆にいえば採用されてしまえば同じスタートラインに立つことが要求されてしまいます。移動や事務作業に「障害」がない健常者ですら、課外活動や保護者の対応、業績評価など本務の教育業務以外の業務で忙殺されるわけでして、障害を持ちながらそれらの業務をこなすことは極めて困難になります。

障害者のそうした困難をフォローするためにこそ、日本型雇用慣行で職務を限定せずに助け合うことが重要になるわけですが、公務員の仕事の現場はいうほど大部屋主義ではありません。教員ほどではないとしても、地方公務員の仕事の現場は昔の階級が廃止されてフラット化されておりまして、部下のない管理職とか、逆にラインの上司がいない個人事業主のようなヒラが増えています。採用抑制による年齢構成の変化とか、人件費削減による人手不足がその原因ではありますが、稟議が回ってくればはんこは押すし、ホウレンソウやらコミュニケーション能力は求められるけど、その業務そのものは担当する職員個人に任させるという業務の進め方が中心になっているわけです。

となると、そこに障害者が採用が採用されると同じように個人に業務が任せられ、それでいて「空気を読んでコミュニケーション能力」とか「指示待ちじゃなく自分から動け」とか「こまめにホウレンソウ」とか、通常の職員と同じ作業が求められてしまうことになります。人手不足なので、障害があろうとなかろうと仕事を分担したら原則その仕事はその職員の責任で遂行しなければなりません。まあ、もちろんここまで極端ではありませんが、仕事の進め方や人員配置そのものを変えずに障害者を受け入れても、障害者本人だけではなく、周囲の職員もフォローができないという状況は何も変わらないわけです。

上記の埼玉県教育長の答弁で注目していただきたいのは、教育委員会事務局職員の障害者雇用率が4.22%と極端に高いところでして、いわゆる学校事務や教育事務所にいる職員では積極的に障害者が雇用されているともいえます。しかし、教育委員会の事務の現場をご存じの方なら分かると思いますが、教育委員会事務局とか教育事務所は激務で有名ですね。学校事務もいまどき事務レベルの職員が複数いるような学校はほとんどないので、事務担当は1人だけというところがほとんどだと思います。ところが、法定雇用率をいくらかでも達成しようとすると、教員以外の職員として障害者を採用し、そうした激務な現場やフォローできる職員がいない現場に配属せざるを得なくなるわけです。

『HRmics』では各種助成金によって人員配置をし、障害者をフォローする体制を整備することの重要性が指摘されていますが、それを活用できるのは民間企業だというのが歯がゆいところです。先日も、復興増税に伴う給与減額が元に戻されたということで批判が巻き起こっている現状で、公務労働の現場に人員を配置するということのハードルの高さを痛感せざるを得ませんね。
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