2013年09月16日 (月) | Edit |
ちょっと前回エントリのコメントで後回しになっておりましたが、先週の水曜日に震災から30か月が経過しました。拙ブログではこれまで、震災で時が止まってしまった感が強かったので通算の月数でカウントしておりましたが、30か月と書いてみるとさすがに2年半と書いた方が分かりやすいかもしれません。2年半という節目でもあったのでテレビでもそれなりに特集があったようですが、相変わらず業務が錯綜していてほとんどチェックできておりません。まあ、そもそも沿岸部へ行く機会も激減してしまって知り合いからの情報ぐらいが情報源となってしまっております。

そんなところでたまにTwitter方面を見ていたら、以前集団的労使関係について議論させていただいた金子先生が「応援職員さんのつぶやきによる大槌町の雇用状況について」という大変興味深いまとめを作成されていました。いろいろな論点が指摘されておりますが、趣旨としては、

まあこの先は、仕事の中で頑張って行く範疇になるのだが。今日の話の主旨としては、人口流入を阻害する住宅不足問題について話したかった。特に、一部報道では「仮設住宅を被災者以外に供用しないのは、自治体職員の怠慢」みたいな報道が平気でされているので、その部分の主張をしたかった。以上。
jin0210 2013-09-05 01:14:35

ということのようです。

実はこの点については、岩手県のホームページでも対策の必要性が指摘されておりまして、

2 課題
沿岸4地区の水産加工19事業者と労働力確保に向けた意見交換会を実施
【意見交換会での主な意見・課題】

1 地域内での労働力の掘り起こし
・ 採用しても長続きしない。就業意欲の高い求職者の確保が必要(宮古)
・ 企業見学会を実施し採用につながった。今後も実施すべき。(久慈)
・ 災害廃棄物処理完了による離職者の方々に水産加工業に来てもらえないか。(大船渡、宮古、久慈)
・ 労働者の水産加工現場に対するイメージアップを図ることが必要(宮古)
・ 商品開発により自社ブランドのイメージを向上させ、従業員の就業意欲の向上や求職者に関心を持ってもらうことが必要(宮古、久慈)
・ 緊急雇用創出事業を縮小してほしい。(人手が取られている。)(釜石)
2 地域外からの労働力の確保
・ 他地域から人材を確保しようにも住居が確保できない。また、転居費用もかかるので支援いただきたい。(釜石)
・ 外に対し労働力を募集していることをPRしてほしい。(釜石)
・ 地域での雇用が確保できるまでの間、外国人技能実習生の受入れ人数枠を時限的にでも緩和してほしい。(釜石、大船渡)
3 生産工程の改善・省力化
・ 生産性の高い業務に転換し、将来的には賃金体系等を見直す必要がある。(釜石)
・ 機械化、自動化するなど、省力化を進める必要がある。(釜石、大船渡)


平成25年度第1回岩手県経済・雇用対策本部会議を開催しました。(平成25年6月24日(月))」(岩手県

これらの意見に対する対策は「取組内容」にまとめられております。

1 地域内での労働力の掘り起こし
(1) 意欲ある求職者と企業とのマッチング支援
◇ 企業見学会の実施による企業と求職者とのマッチング支援(商工)
◇ ハローワーク等と連携した水産加工対象の面接会の開催(商工)
(2) 水産加工現場のイメージアップ
◇ 水産加工現場のイメージアップDVDによる求職者に対する就職への動機付け(ハローワーク、ジョブカフェ等で放映)(商工)
◇ 商品開発・販路拡大に対する支援
・三陸復興商品力プロジェクトの推進(商工)
・岩手県産㈱や大手量販店と連携した商談会やフェアの開催(商工・農林水)
・いわて農商工連携ファンド、いわて希望ファンドによる支援(商工)
・(新)水産加工高度衛生品質管理モノづくり支援事業(農林水)
(3) 緊急雇用創出事業の縮小
◇ 平成25年度計画雇用者数3,726人(H24実績8,713人) (商工)
うち沿岸地域は、H25計画雇用者数1,650人(24実績3,578人)

2 地域外からの労働力の確保
(1) 労働者の住居の確保
◇ (新)雇用促進住宅の活用を国等に要請(商工)
特に住居不足が深刻な釜石地区について、釜石市と協力し国等へ要請
※ 釜石市内に雇用促進住宅の空き戸数が100戸程度あり。
※ 中期的には、復興公営住宅の整備等に伴い住宅事情は改善の方向
(2) 労働力募集のPR
◇ (新)U・Ⅰターンフェア等における沿岸水産加工業の復興を担う人材の募集(商工)
(3) 外国人技能実習生の受入れ人数枠の緩和
◇ (検討)受入れ人数枠の緩和に係る課題等について検討を行う。
(水産加工連絡調整会議で検討(復興局、商工、農林水))

3 生産工程の改善・省力化
◇ トヨタ生産方式の導入促進(対象地域・事業者の拡大)(沿岸局)
【沿岸局がH25年度に重点的に取組を実施中】
◇ 商品開発・販路拡大に対する支援(上記1(2)参照)
(参考)市町村においても、省力化設備導入に対する補助事業を実施する
などの取組を行っている。

岩手県同資料

この資料は6月時点のものですので、すでにある程度は取組が進められているはずですが、それでも冒頭でまとめられているような実態であることには変わりがないのだろうと思います。ただし、県が実施する程度のソフト事業の対象範囲はせいぜい数社から多くて数十社でしょうから、一部の事業所でうまくいっているという成果はあるのかもしれません。まあ、その「うまくいっている」事業所というのは、「「がんばっている中小企業への支援を拡大すべき」とか「地元の地場産業を活性化させて地域振興」という主張は大変美しいものではありますが、ではその「がんばっている中小企業」とか「地元の地場産業」として具体的にどの企業を支援するのかという段階になると、上記のような行政との継続的な関係とか地域でのその事業(業種)の伝統的な位置づけがものをい」う状況で支援が行われている一部の事業所と考えていいでしょうから、その他の圧倒的多数の事業主にとっては「役所は何やってんだ!」となるのも無理はありません。

さらにいえば、このような「行政との継続的な関係とか地域でのその事業(業種)の伝統的な位置づけ」によって支援対象が決まる状況というのは、震災前から連綿と続いているものです。つまり、応援職員さんがつぶやかれたことというのは、震災で被災した地域に限らず、過疎が進んで市場が縮小している地域の事業所やそれを支援する行政が長年向き合ってきた現実です。被災地では、物理的に土地が使えなくなってしまって、事業所の立地はもちろん、そこで働く従業員の住居にも事欠く事態となったために、それがより加速化されて可視化されたものともいえます。上記でリンクしたエントリのとおり、「人口減少とか雇用の確保とかが政策課題の常連となって久しい現在、企業誘致とか中小企業支援に力を入れていない弱小自治体なんてありませんよね。首都圏の自治体からすればカルチャーショックかもしれませんが、地方の弱小自治体の商工担当(特に経営支援とか企業誘致とか)というのは地元の中小企業とズブズブの関係であって、むしろそうでなければ務まらないのが実態」ですから。

個人的には、国土交通省の所管とされ、自費で住宅を購入することが前提となっている日本の住宅政策の一つの帰結と考えるべきではないかと考えております。実は、震災の直前にも同じような事態が発生しています。国が雇用促進住宅を設置して住居の面から雇用の流動化を支えようとしたことが、バブル崩壊後にカイカク病が蔓延する中で「行政のムダ」と叩かれ、国から地元自治体への払い下げがほぼ完了したのが小泉構造改革の時期でした。その直後にリーマンショックが発生して仕事を失った方の一部が住居を失い、国は慌てて雇用促進住宅を提供しようとしたものの、すでに国の手を離れて自治体が所有していたため、老朽化した建物は改修もされず、入居できる物件が限られてしまいました。結局、旧雇用促進住宅に入居できた人数はごくわずかだったというのは、それほど昔の話ではありません。

今回も、東日本大震災という災害が発生して多くの方が住居を失ったにもかかわらず、住宅政策が国の社会保障として位置付けられることはなさそうです。拙ブログでは再三所得再分配の拡充の必要性を指摘しているつもりですが、単に既存の分野の手当を厚くするだけではなく、社会全体で支えるべき制度は何かという問いが必要なのではないかと改めて思うところです。
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コメント
この記事へのコメント
空家率が低い都道府県ですら10%を優に超えるほど、住宅の供給は十分にある。そこで何故、国なり地方自治体がさらに住居を作って備える必要があるのか、つー話。

1.失業者にほぼ全額の補助を渡して既存の住宅に住んでもらう、ということが、なぜ失業者だけだ、ズルい、となる社会通念により困難で、半額補助など困窮する人には役に立たない制度でお茶を濁すしかできない。

2.失業者には家を貸さないという大家に対して、公的な保証を逐一つけるのが困難。

3.特定の公営住宅に住むしかなくすことで、その地域に長く生活してもらい、過疎化対策の一助としたい。

4.十分なお金を渡しても、それを住居に使わずホームレス化する恐れがあり、治安上よろしくない。

1,2は政治・行政的にコストがかかる(よーはメンドイし、人手がいる)か、3,4は外部経済性の問題、である。はたして、それらのコストが、住宅自体は余っているのに、さらに追加するコストを上回るのか、そこに答えなければフーン、以上の関心は得られず何も変わらないだろう。いみじくも「国の手を離れて自治体が所有していたため、老朽化した建物は改修もされず」というように、住宅は建てた後までコストがかかるのだから、かなり厳しい。リーマンショックが発生して仕事を失った人が、それまでの住居に住めるくらいの補助金を出した方がよっぽど安上がりだけど、日本人はそんな甘えは許さないし、それを説得するのは困難だから、そういう人向けの(ちょっと住み心地の良くない)公営住宅を割り当てるという解決策で済ませたい、というのは怠慢であり、さらに結局どちらも出来なかったとなればただの失敗。「カイカクかぶれが雇用促進住宅を邪魔したからー」と言って誰も責任を取らないままになったとしても、失敗は失敗。


震災のように住宅の供給自体が(特定の地域だけであれ)不足する、つーのは別問題。
2013/10/03(木) 21:15:57 | URL | piccad #-[ 編集]
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