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2013年09月16日 (月) | Edit |
2週間前のエントリのコメント欄で名無しの投資家さんと大変有意義な議論をさせていただいておりまして、コメントを引用するのがめんどいので、その中でいろいろと引用した文献などをこちらのエントリにまとめておきます(引用時の誤字脱字は修正しています)。

その前に、マクロ経済学者の方のブログで消費税引き上げについての視点を提示されていますので、一部項目だけピックアップさせていただきます。

1.Old Keynesian View
マクロ経済学を1980年以前に学んだ場合、あるいはそれ以降のマクロ経済学の「発展」を無駄だと考える場合、考えられるチャンネルは:消費税引き上げ→可処分所得減少→消費減少→総需要減少→総需要の減少に対応して生産縮小→景気の悪化、というものである。おそらくは消費税を上げれば日本経済の景気が悪化するといっている人のほとんどすべての人はこのチャンネルを念頭に置いているだろう。このモデルは一期間モデルなので、長期的影響は考慮されない。
2.RBC View
(略)ちなみに、インセンティブという観点からすると、特定のものについて税率を下げるような政策はとるべきでないと思う。低所得者の方が買いがちなものの税率を下げて再配分効果を生み出すという観点は理解できるが、再配分効果の正攻法はこういう間接的な方法でない直接的な所得再配分だと思う。もちろん政治的に難しいということがあるのかもしれない。再配分がそんなに気になるなら、消費税引き上げを所得再配分の強化とセットにすればよい。いろいろな品目別の税率を導入すると税制の効率性も損なわれる。
3. Modern OLG View
4.Redistribution View
(略)この、「消費税は再配分という観点から見て好ましくない」という考え方は、消費税が累進性の高い所得税に取って代わるという前提のもとで有効な議論な気がする。この点については3つコメントしたい。一つは、消費が現在少ない理由が若くて賃金がまだ低いというのであれば、将来この人は所得が上がるのだから、再配分を考える必要はない。言い換えれば、再配分政策を論じるときには、ライフサイクル全体を見た上で議論しなければならないと思う。二つ目は、消費税のようなインセンティブを阻害する効果が低い税制に置き換わることで、経済の構成員全体が、長期的には程度の差こそあれ恩恵をこうむる。三つ目は、上でも書いたが、もし、現時点での所得再配分の悪化が大きな問題なのであれば、消費税の引き上げと再配分の強化とうまく組み合わせればよい。
5.Borrowing Constraint View
6.Default Risk View
消費税引き上げに反対する人の中には、現在の消費税引き上げが将来の(所得)税の引き下げ、あるいは引き上げの回避、年金受給額の引き下げの回避、等のベネフィットを生み出すと考えられないのかもしれない。こういう長期的効果の計算はたくさんの仮定に依存するので難しい。こういう人を説得するためにちょっとでもできることは、例えば、現在消費税を引きあげると、例えば、将来の年金受給額の(回避不能な)引き下げがどのくらい食い止めることができるかを示したりすることではないだろうか(すでに行われているかもしれない)。
7.Business-Cycle View
人によって消費税の利点、あるいは欠点と考えるものとして、消費税の方が税基盤が安定している(景気変動に伴う動きが小さい)という点があげられる。景気が悪くなったときに税収が下がらないというのは、「自動安定化装置」としての役割が弱いということなので、景気の悪いときには減税・財政支出の拡大が好ましいと考える人にとっては、消費税のこのような特徴は好ましくない。反対に、景気が悪くなったときに税収が比較的下がらないということは、最近のヨーロッパのように景気が悪化したときに政府が債務返済問題に陥る可能性が低くなるということである。景気が悪いときに財政支出を増やす方が政治的に用意であるということを考えると、個人的には消費税の安定性は望ましいのではないかと思う。
8.Temporary Rise and Fall View
9.New-Keynesian View


Effects of Sales Tax Increase(Saturday, August 03, 2013)」(unrepresentative agent


2の軽減税率、4、6の所得再分配についての議論は拙ブログのスタンスとも共通するところがありますし、7の安定財源についての議論もしっくりくる説明がされていまして、個人的にはバランスの取れた議論ではないかと思います。これらの論点を踏まえて以下の引用をご覧いただくとわかりやすいかも知れません。

1 社会保障制度改革国民会議

消費税を段階的に10%に引き上げる税制改革関連法案及び子ども・子育て支援関連法案、年金関連法案の成立により、消費税収(国・地方、現行分の地方消費税を除く。)については、社会保障財源化されるとともに、消費税増収分の具体的な活用先として、子ども・子育て支援の拡充を図ること、年金分野においては、基礎年金の国庫負担割合を3 分の1 から2 分の1 に引き上げることのほか、低所得者に対する福祉的給付などの措置が講じられることとなった。

報告書 ~確かな社会保障を将来世代に伝えるための道筋~」pp.1-2(pdfではpp.5-6)
社会保障制度改革国民会議


2 社会保障・税一体改革とファンジビリティ

社会保障の充実・安定化と財政健全化の同時達成のため、消費税率を段階的に5%引き上げるなどの「税制抜本改革」を実施します。消費税率引上げによる増収分のうち、1%は社会保障の充実、4%は現在の社会保障制度の安定化の財源とします。

社会保障・税一体改革 明日の安心 社会保障と税の明日を考える」p.6
政府広報オンライン


財政健全化目標の達成 諸外国で最悪の財政状況から脱出「2015年に赤字半減、2020年に黒字化」日本発のマーケット危機を回避⇒消費税率を2015年10月に国・地方あわせて10%へと段階的に引上げ

説明会資料(平成24年4月26日 最新版)「社会保障・税一体改革について [PDFPDF (1.7MB)]」p.3
社会保障と税の一体改革


が……まず簡単な話としては、「学校作るから」と言ってお金を貸しても、相手はそのお金でミサイルを買ったりするかもしれない。まあこの程度なら簡単に見張れるし、対策もある。が、もうちょっと複雑な話がある。学校用の援助をしたら、途上国はちゃんと学校を作るかもしれない。でも援助してあげた分、自国の教育予算を減らして、その分を軍事費にまわすかもしれない。帳簿上は何も問題がない。援助のお金は、ちゃんと目的通りに使われている。でも全体としてみたら、援助のお金は結果的に軍事費の増加に寄与してしまうことになる。お金は使い回しが効くし流用もできる。これがファンジビリティだ。

 それをどう防ぐか? これはとっても頭の痛い問題だ。きっちりやろうとすると途上国の予算編成に口出しする内政干渉にもなってしまうし。それに途上国側だって、教育援助 10 億円あげたら文教予算がきっちり 10 億円減ってその分軍事費がきっちり 10 億円増えました、なんていうわかりやすいことにはならない。予算なんて他の事情でいくらも変わるんだし。「うちが教育援助するようになってから、どうもそちらの文教予算って頭打ち気味のような気がするんだけど~」と言ったところで、向こうは「いやわが国がこーぞー改革なるものをやって無駄をなくした結果でして」といくらでも言い抜けはできるし、ファンジビリティが本当にあるのかないのか、という話すら、きっちりと証明するのはなかなか難しい。

山形浩生「ファンジビリティと給油反対論のあほらしさ(『Voice』2007 年 12 月 pp.112-3)」(YAMAGATA Hiroo Official Japanese Page


3 プライマリーバランス改善を通じた財政再建

 PB(引用注:プライマリーバランス)を均衡させることは、この「債務残高GDP比」を一定に保つ,すなわち,経済規模(=GDP)に対する債務残高の割合を一定に保つことを目指すものといえる.たとえ,債務残高が利払費分だけ増大したとしても,名目GDP成長率(以下,「成長率」)が債務残高の利子率と等しければ,「債務残高GDP比」は一定に保たれる.したがって,PB均衡の達成は,財政の中長期的な持続可能性を考える際に,重要な意味を持ってくる.
 ただし,PBの均衡は,あくまで財政健全化に向けた一里塚に過ぎない.債務残高が膨大な水準にある現状では,金利上昇による財政悪化のリスクは大きく,中長期的にはこの「債務残高GDP比」を安定的に低下させていく必要がある.そのためには,一定の「PB黒字(対名目GDP比)」が必要となるが,その額は,下の式(引用注:式は引用省略)にもあるとおり,「債務残高GDP比」に「長期金利と名目GDP成長率の差」を乗じたもの以上でなければならない.例えば,「債務残高DGP比」が150%,長期金利が3%の場合,必要なPB黒字額は0%以上となるが,長期金利が4%,成長率が3%の場合,必要なPB黒字額は1.5%以上(=(4%ー3%)×150%)ととなる.このように,必要なPB黒字額は,債務残高GDP比の規模のみならず,長期金利や成長率の大きさにも影響されるのである.
p.58

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4 SNAにおける社会保障

 社会保障の負担と給付の問題は,一国全体では相殺されますが,個人の営みとしてみるとプラスとマイナスが表裏一体となっているのです。そうした仕組みをどう設計するかということは,人々の営みに直接影響を及ぼす大きな問題なのです。
p.271

 93SNAでは,消費概念の二元化が行われました。当該サービスの費用を誰が負担したかという点から考察した「最終消費支出」概念とともに,当該サービスによる便益を享受したのは誰かという側面に注目した「現実最終消費」概念が登場しました。
p.273

 しかしながら,昨今「少子高齢化社会」の到来を目前に控えて,(中略)「分配」をめぐって,さまざまな経済的・社会的問題が提起されており,このような問題に対して政府は「公平な負担」と「公平な享受」をめぐってきめ細かな制度設計を行う必要があるでしょう。ところが,そのための基礎資料がSNA統計(『国民経済計算年報』)から得られるかというと,答は「ノン」なのです。
p.274

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5 ミクロ経済学 対 マクロ経済学

 表6-2には,経済学でよく問われるいくつかの問題が示されている.左側にあるミクロ経済学の問題は,右側にあるマクロ経済学の問題と対になっている.これらを比較することで,ミクロ経済学とマクロ経済学の違いを感じることができる.
 ミクロ経済学は,個人や企業がどのように意思決定をするのかという問題に焦点を当てていることがわかるだろう.例えば,大学で新しい科目を設置すべきかどうかを決めるために,ミクロ経済学が利用される.教員の給料や教材費などを含めて費用がいくらかかるのか,それに対してどれほどの便益があるかを比較することで,新しい科目を設置するかどうかを決めることができる.それとは対照的に,マクロ経済学では,経済のあらゆる個人・企業の行動が互いに行動しあった結果,経済全体に関わる特定の経済効果がどのように生じるかという観点から,経済の相対的動向を考察する.例えば,ある特定の財・サービスの価格ではなく,経済全体の価格水準(物価水準)に関心を持ち,物価水準が前年に比べてどの程度上昇もしくは下降したかを気にかけるのがマクロ経済学だ.

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表6-2 ミクロ経済学の問題 対 マクロ経済学の問題
ミクロ経済学の問題マクロ経済学の問題
ビジネススクールに進学すべきか,それとも今すぐに就職すべきか.経済全体で,今年はどれだけの人が雇用されているか.
コロンビア大学の新卒MBAシュリー・カマヨがシティバンクから提示される給料を決める要因は何か.ある年に労働者に支払われる給与総額の水準を決める要因は何か.
大学が新たな科目を設置するための費用を決める要因は何か.経済全体の物価水準を決める要因は何か.
低所得家庭の子どもが大学に進学しやすくなるように,政府はどんな政策を実施すべきか.経済全体の雇用を成長を高めるために,政府はどんな政策を実施すべきか.
シティバンクが上海に支店を開設すべきか否かを決める要因は何か.アメリカと外国の間で行われる,財・サービスや金融資産の総取引水準を決める要因は何か.

pp.162-163
クルーグマンマクロ経済学クルーグマンマクロ経済学
(2009/03/20)
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6 マスグレイブの財政3機能論

 20世紀の偉大な財政学者の1人であるリチャード・マスグレーブ(Richard Musgrave)は,政府を三つの経済的機能を持つものと考えた.1番目は安定化機能であり,物価の安定と完全雇用の維持である.これをどのように達成するかは,マクロ経済学の主たる課題である.2番目の機能は配分機能であった.ここでは政府は,経済が資源を配分する介入するのである.この目的のために政府は,国防や教育のような財を購入することによって直接的に介入することもあるし,ある経済活動を刺激したりまた他の活動を抑制するために税金や補助金を用いて,間接的に行うこともある.3番目の機能である分配機能は,社会で生産された財を社会構成員間でどのように分配するかを問題にするものである.この機能は平等という問題,および平等と効率のトレードオフに関係する.公共経済学では,この三つのうち後の二つの機能に注目するのである.ただし,そうした問題は,規制の問題を取り扱うような他の経済学分野でも生じるものである.
 今日では,三つの機能の面で政府活動は互いに絡み合っており,マスグレーブが想定したように明確に分割することはできないということが明らかになっている.しかしながら,「三つの機能」という見方は,政府が作っている無数の経済活動を考察するうえでは便宜的な方法を提供してくれる.
p.28

スティグリッツ公共経済学 第2版 (上)スティグリッツ公共経済学 第2版 (上)
(2003/10/24)
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7 財政学と経済学の関係

財政学の流れのなかで,ドイツ財政学の伝統と,サミュエルソンらの新古典派総合の流れを合体させ,財政学の体系を示したのがマスグレイブ(R. A. Musgrave)である。柏井教授の次に専任教授となった橋本徹教授は,木下和夫教授を中心とする大阪大学財政学研究会の中心的メンバーとして,マスグレイブの一連の翻訳を手がけ,その大系をもとに自身の財政学研究を進めた。さらに,その次の専任教授となった山本栄一教授は,サミュエルソン = マスグレイブ流の公共財の理論を掘り下げ,それを軸に財政学研究を展開した(そうした研究成果の主要なものが有斐閣から出版されていることもあわせて強調しておきたい)。

私は1980年代に大学院で最適課税論に接することとなった。当時,創刊してほどない時期のJournal of Public Economics誌は,あたかも最適課税論の専門雑誌のようであった。そこでは課税という財政現象が,シンプルな応用ミクロ経済分析のモデルに取り込まれ,課税のあり方についての論理を導くことに成功している。この最適課税論と従来の財政学研究の再結合をねらったのが拙著『日本の税制改革』有斐閣,1997年であるが,いまとなってはそれが成功したなどとは思っていない。最適課税論の隆盛は,わが国では研究室にとどまらず,エコノミストが現実の政策決定の場で影響を与えるようになったことで,現実との接点をもった。そこでは,政治的な複雑怪奇なネゴシエーションの論理ではなく,経済学の「中立的な」論理で,政策運営を正しく導こうという高揚感が漂っている。

 財政学研究が政策決定の場にストレートに影響を与えるようになったことで,応用ミクロ経済学において前提とされている市場メカニズムが,現実の市場にどこまで期待できるかを突き詰めて考える必要性が増した。その点を怠って安易にスキップすると,応用ミクロ経済学流の論理展開は,結果的に市場主義という一種のイデオロギーとなって一人歩きを始めるリスクがある。

 2010年代の状況から近年の流れを日本の政治状況に照らして振り返ると,経済学と財政学の関係はいまやむしろ近くなりすぎて,財政学の問題意識は経済学に飲み込まれ,埋没した感がある。現代におけるバランス感覚は,かつてとは逆に経済学と財政学の適切な距離感を見いだして,そこに社会学的な要素を持ち込むことではないか。その結果,エレガントな理論分析は難しくなるとしても,それはやむを得ない代償である。

小西砂千夫(こにし・さちお,関西学院大学大学院経済学研究科・人間福祉学部教授)「著者より:『市場と向き合う地方債』 「書斎の窓」に掲載
有斐閣書籍編集第2部

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