2013年08月30日 (金) | Edit |
一応経済学カテゴリに入れましたが、このテーマは単なる経済学の範疇を超えているにも関わらず、相変わらずどマクロな議論が主張されていておもしろいですね。29日まででだいたい半分終わったところでして、これからもいろいろな立場からの主張がされるでしょうが、とりあえず現時点ではドラめもんさんのご指摘が秀逸だと思います。

人によってペラ1(どころか資料無の人もいますが)だったり40ページ組の人がいたりと中々オモロスだったり香ばしかったりするのですけれども、見てて盛大に爆笑の発作を禁じ得なかったのは、某どこぞの誰かさんが「消費税先送りで金利が上昇するのが正しければ投資家が先に収益機会の手の内を明らかにするとは考えにくい」(ので市場が言ってる金利急騰リスクというのは違いますよと言いたいんでしょう。なお端折ってますので念の為)みたいな話を資料に書いているのを拝読した所ですかねえ。

いやね、収益機会の手の内は出さないってじゃあ何とかストの皆さんとか市場の中の人の話はというのはありゃ常に本当の手の内を話していないんですよみたいな物言いで何とかストに随分こりゃ失礼なお話ですなあと小一時間問い詰めようかと思ったらその指摘をしている資料に何とかストの館みたいなところのお名前が入っていた所に何とも味わいの深いものを感じましたとだけ申し上げておきましょう。

(略)

#まあしかし何ですな、ついこの前までアベノミクス大勝利とか言ってた人たちが消費税増税反対とか仰せになっておられたりして、アベノミクスが絶賛大勝利しているんだったら増税くらい屁でも無いじゃろと思うのですが大勝利というのは何だったのかいやまあいいです

本日のドラめもん 2013/08/28

私も緩やかにリフレーション政策を支持する者として「アベノミクスとして金融政策で異次元緩和が行われたのには消費税引き上げの地ならしという側面もあると考えておりますので、このまま景気回復が本格化することを祈るばかり」なのですが、こうしたオモシロ成分の高い主張を拝見していると、「政府の失政でアベノミクスが失敗する」という予測をしたくてしょうがないのではないかと思ってしまいます。

何度も繰り返しますが、「その税収でより豊かな暮らしを享受できるのは低所得者層だったり、その方々に社会保障の現物給付を行う公的セクター(私もその一員です)や医療・福祉分野に従事する労働者」である以上、私は再分配を使途とした増税を「おおっぴらに支持」する立場ですので、アベノミクスと消費増税の両立を願ってやまないのですが、増税忌避という思考停止に陥っている方々にそんな立場が理解されることは、アベノミクスと消費増税の両立以上に難しいのかもしれません。
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コメント
この記事へのコメント
当方が間違っていたら、指摘頂きたいのですが、この増税の目的は財政健全化ですよね?社会保障の拡充では無いと思いますが。

例えば、社会保障費20兆円(額は適当)のうち、税10兆円、国債10兆円となっている部分を、税15兆円、国債5兆円とするようなものだと理解しているですが。

これをやると、増税して国債を発行しなくなった分、国民の所得が減ります。(民間経済が貯蓄主体であるため。)それは弱者保護ですか?
2013/09/01(日) 01:03:26 | URL | 名無しの投資家 #SFo5/nok[ 編集]
> 名無しの投資家さん

今回の集中点検でも顕著ですが、巷で繰り広げられている消費税論議がいかに法律とか政府の報告書をまじめに読んでいないかを思い知らされますね。

集中点検では社会保障制度改革国民会議会長をつとめた清家篤慶応塾長がそのものずばりを提出されていますが、8月6日にとりまとめられた「社会保障制度改革国民会議報告書」にも、今回の消費税増税の目的が記載されています。

> 消費税を段階的に10%に引き上げる税制改革関連法案及び子ども・子育て支援関連法案、年金関連法案の成立により、消費税収(国・地方、現行分の地方消費税を除く。)については、社会保障財源化されるとともに、消費税増収分の具体的な活用先として、子ども・子育て支援の拡充を図ること、年金分野においては、基礎年金の国庫負担割合を3 分の1 から2 分の1 に引き上げることのほか、低所得者に対する福祉的給付などの措置が講じられることとなった。
pp.1-2(pdfではpp.5-6)

http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/tenken/06/shiryo06.pdf

私も緩やかにリフレーション政策を支持する立場ですので、今回の増収分が財政再建に充てられるのであればおおっぴらに消費増税を支持したりはしません。本文にも書きましたが、今回の消費増税は単なる経済学(もう少し詳しくいえば、サミュエルソン以降の新古典派統合とかアメリカンケインジアンに属する経済学)の範疇を超えている問題を含んでいるわけで、そうした議論の対比が公にされた点では、今回の集中点検にはそれなりの意味があったかもしれません。

なお、当然ながら、収入がどの支出に充てられるかについてはファンジビリティを完全に防ぐことはできませんので、増収分を社会保障費に充てながら、そこで浮いた歳入を国債償還に充てるのであればそれは財政再建となる可能性はあります。
http://sonicbrew.blog55.fc2.com/blog-entry-120.html

だからこそ、拙ブログでは何度も繰り返しているように、税制を考えるためには、「誰からとるか、いくらとるかも大事ですが、それを誰に配分するのか、現金・現物をどれだけ配分するのかも同じくらい大事です」と申し上げているところです。
http://sonicbrew.blog55.fc2.com/blog-entry-461.html
2013/09/01(日) 22:55:08 | URL | マシナリ #-[ 編集]
http://www.mof.go.jp/comprehensive_reform/gaiyou.pdf(のPDF-PP.4)

http://dl.gov-online.go.jp/public_html/gov/pdf/pamph/ad/0002/0002b_all.pdf(PDF-PP.6)
「社会保障の充実・安定化と財政健全化の同時達成のため、消費税率を段階的に
5%引き上げるなどの「税制抜本改革」を実施します。消費税率引上げによる増収分
のうち、1%は社会保障の充実、4%は現在の社会保障制度の安定化の財源とします。」

これらの資料によると社会保障の充実に当てられる費用は消費税増税分の1%程度らしいです。

残4%は財政再建との事。
「今回の増収分が財政再建に充てられるのであればおおっぴらに消費増税を支持したりはしません。」
現在、国内で政府のみが貯蓄不足主体である今、それでも支持されますか?

結局リフレ政策で課税対象をまず大きくするほうが利点が大きいように考えます。

http://sonicbrew.blog55.fc2.com/blog-entry-577.html
「一方で経済団体に賃上げを要請する政府が、一方で公務労働者の賃金引き下げを要請するというのも、なかなかに興味深い光景です。」

とおっしゃっておられますが、それ全体のパイが大きくならない中で、分配を強化しようと思うとならざるを得ないわけです。身分が安定しているうえに老後の年金も医療保障も大手企業並みのですから。もちろん、社会保障の拡充を主張されるマシナリ様においては、課税前給与の半分ぐらいは社会保障のために提供されるおつもりなのでしょう。

最後に私自身は、社会保障に安定財源は必要だと思いますし、公務セクターの給与を削減するべきではないと考えている事を付け加えておきます。
2013/09/03(火) 23:40:04 | URL | 名無しの投資家 #SFo5/nok[ 編集]
> 名無しの投資家さん

ご教示ありがとうございます。
私の前回コメントでは、ご指摘の通り不正確な記述がありましたので修正させていただきたいのですが、
> 今回の増収分が財政再建に充てられるのであればおおっぴらに消費増税を支持したりはしません。
としたのは、「増収分のすべてが財政再建のための国債償還に充てられるのであれば」という趣旨です。

ただし、消費増税によって社会保障の安定財源を確保することと、その財源を国債償還に充てることは、予算経理上は異なりますが、財政上は同じになり得ます。

その点でいえば、提示いただいた資料に書かれているのは、「1%は社会保障の充実、4%は現在の社会保障制度の安定化の財源とします。」であって、名無しの投資家さんがそれを「残4%は財政再建との事。」と解釈されるのは、やはりファンジビリティの問題が大きいのではないかと思います。

以前拙ブログでも書きましたが、社会保障という形の残らないフローの支出には、毎年の付加価値から得られるフロー財源を充て、積み上がった国債の償還にはストック財源を充てることが望ましいと考えております。そのために、リフレーション政策で予測インフレ率を上昇させて既存の税制の中での名目の税収を上昇させつつ、安定財源を確保してフローの支出をファイナンスするというナローパスが求められているのではないでしょうか。
http://sonicbrew.blog55.fc2.com/blog-entry-391.html

また、私がリフレーション政策を緩やかに支持するのは、マクロ全体での再分配強化のために必要と考えているからでして、名無しの投資家さんが

> それ全体のパイが大きくならない中で、分配を強化しようと思うとならざるを得ないわけです。身分が安定しているうえに老後の年金も医療保障も大手企業並みのですから。もちろん、社会保障の拡充を主張されるマシナリ様においては、課税前給与の半分ぐらいは社会保障のために提供されるおつもりなのでしょう。

とおっしゃる点には賛同できる部分もあります。現時点で私個人の国民負担率は約4割ですので、保育や大学までの教育費、医療、介護、住居が個人負担なしで(あるいは大部分を国が負担して)享受できるようになるのであれば、あと1割くらいの負担増は十分に受け入れる余地はあると考えております。

法令で定められている公務員給与からすれば、私自身上記のような社会保障は再分配を受ける側の可処分所得しかないのですが、「老後の年金も医療保障も大手企業並み」だから公務員から再分配しろというのが民意であれば、それに従うしかないのが労働基本権のないこの国の公務員の定めなのでしょう。
2013/09/08(日) 08:58:35 | URL | マシナリ #-[ 編集]
>「増収分のすべてが財政再建のための国債償還に充てられるのであれば」という趣旨です。

では、1円を残して財政再建のための国債償還に充てる場合でも増税に賛成なんですね?という事は聞かないようにしておきます。

>ただし、消費増税によって社会保障の安定財源を確保することと、その財源を国債償還に充てることは、予算経理上は異なりますが、財政上は同じになり得ます。

であるならば、私の意見と同様に思ったのですが、

>その点でいえば、提示いただいた資料に書かれているのは、「1%は社会保障の充実、4%は現在の社会保障制度の安定化の財源とします。」であって、名無しの投資家さんがそれを「残4%は財政再建との事。」と解釈されるのは、やはりファンジビリティの問題が大きいのではないかと思います。

この部分が良く理解できないのですが、マシナリ様は、新規国債発行を0円以下にする事を財政再建とお考えなんでしょうか?
私は、新規国債発行を減らす事自体が財政再建と考えております。
(財務省の資料http://www.mof.go.jp/comprehensive_reform/gaiyou.pdf のpdf-pp.3 には「財政健全化目標の達成 諸外国で最悪の財政状況から脱出「2015年に赤字半減、2020年に黒字化」日本発のマーケット危機を回避⇒消費税率を2015年10月に国・地方あわせて10%へと段階的に引上げ」とはっきり書かれていたりするんですが。)

>以前拙ブログでも書きましたが、社会保障という形の残らないフローの支出には、毎年の付加価値から得られるフロー財源を充て、

民間消費=賃金、利子等+政府移転支出-税金です。また、投資支出=国民貯蓄=民間貯蓄+財政収支ですので、すでに閉鎖マクロ経済でのストックは常に「0」なのです。よって、マクロ経済的に社会保障はGDPの枠内でしか保障できません。

>積み上がった国債の償還にはストック財源を充てることが望ましいと考えております。

お金に色は無いので、失礼な言い方で申し訳ございませんがマクロ経済的に無意味だと思います。国債の償還にあてるには民間から資金を吸収する必要があり、その後、国債と民間資産と相殺する訳です。結果、同じ金額を民間に返す事になりますが、そこに信用収縮以外の何の意味があるのでしょうか?
(民間消費=賃金、利子等+政府移転支出-税金ですから、国債の償還を発行するには政府移転支出<税金となる必要があり、民間消費の減少を招きます。)

>また、私がリフレーション政策を緩やかに支持するのは、マクロ全体での再分配強化のために必要と考えているからでして、名無しの投資家さんが

最近、マシナリ様のブログを拝見していて思うのですが、リフレ政策を誤解されているように思います。あくまでリフレ政策は、経済成長の方策であり、再分配強化とは全く関係ございません。再分配はまさしくこの国民会議のような別の方策を充てる必要があります。

>あと1割くらいの負担増は十分に受け入れる余地はあると考えております。

恐れ入りました。では、残り1割についても既に寄付金控除無しのふるさと納税をなされているのでしょう。失礼しました。

>公務員から再分配しろというのが民意であれば、それに従うしかないのが労働基本権のないこの国の公務員の定めなのでしょう。

私自身は反対ですが、昨今の公務員バッシングやマシナリ様ご自身のお考えも含めて、残念ながらそうなってしますのでしょう。


最後に私の考えをまとめますと、民間消費=賃金、利子等+政府移転支出-税金である以上、政府移転支出=税金であれば増税もやむなしと考えます。しかし、政府移転支出<税金となる場合は景気回復するまで増税に反対します。
2013/09/11(水) 23:24:45 | URL | 名無しの投資家 #SFo5/nok[ 編集]
> 名無しの投資家さん

再度ご教示ありがとうございました。
いろいろと議論いただきましたが、結論は

> 最後に私の考えをまとめますと、民間消費=賃金、利子等+政府移転支出-税金である以上、政府移転支出=税金であれば増税もやむなしと考えます。しかし、政府移転支出<税金となる場合は景気回復するまで増税に反対します。

ということでよろしいですね。また、

> 私は、新規国債発行を減らす事自体が財政再建と考えております。

と、プライマリーバランスについての議論が含まれていますので、これについては、財務省の研究会が発行している『図説 日本の財政』の平成19年度版(第一次安倍内閣の経済財政諮問会議で「歳出・歳入一体改革」が取りまとめられた当時)の説明から引用いたします。

> PB(引用注:プライマリーバランス)を均衡させることは、この@債務残高GDP比」を一手に保つ,すなわち,経済規模(=GDP)に対する債務残高の割合を一定に保つことを目指すものといえる.たとえ,債務残高が利払費分だけ増大したとしても,名目GDP成長率(以下,「成長率」)が債務残高の利子率と等しければ,「債務残高GDP比」は一定に保たれる.したがって,PB均衡の達成は,財政の中長期的な持続可能性を考える際に,重要な意味を持ってくる.
> ただし,PBの均衡は,あくまで財政健全化に向けた一里塚に過ぎない.債務残高が膨大な水準にある現状では,金利上昇による財政悪化のリスクは大きく,中長期的にはこの「債務残高GDP比」を安定的に低下させていく必要がある.そのためには,一定に「PB黒字(対名目GDP比)」が必要となるが,その額は,下の式(引用注:式は引用省略)にもあるとおり,「債務残高GDP比」に「長期金利と名目GDP成長率の差」を乗じたもの以上でなければならない.例えば,「債務残高DGP比」が150%,長期金利が3%の場合,必要なPB黒字額は0%以上となるが,長期金利が4%,成長率が3%の場合,必要なPB黒字額は1.5%以上(=(4%ー3%)×150%)ととなる.このように,必要なPB黒字額は,債務残高GDP比の規模のみならず,長期金利や成長率の大きさにも影響されるのである.

林編『図説 日本の財政 <平成19年度版>』p.58
http://www.amazon.co.jp/dp/4492031847/

財政健全化のためには、必ずしも新規国債発行額を0にする必要はありません。上記引用部の「ただし」以降にある通り,新規国債発行額を0にすることは単なる財政均衡であって、名目のGDP成長率を確保しつつ、それよりも低い水準に長期金利を保つことがPB改善による財政再建につながるものと考えております。まあ、これだけを言うと「上げ潮派」になってしまいますが、だからこそ、拙ブログでは、リフレーション政策を緩やかに支持しながら、歳出の構造を低所得者や働く世代向けに変えていく必要が同時にあると指摘しているところです。

で、その低所得者や働く世代向けの歳出について、フロー統計であるSNAでどのように扱われているかというと、以前のコメントでも書きましたが、

> なお、マクロ経済分析そのものではありませんが、
> 作間逸雄『SNAがわかる経済統計学 (有斐閣アルマ)』
> http://www.amazon.co.jp/dp/464112194X/
> によると、93SNAでは伝統的国民勘定や産業連関構造を含む「中枢体系」のほかに「サテライト勘定」というのがあるそうで、
>
> > 社会保障の負担と給付の問題は,一国全体では相殺されますが,個人の営みとしてみるとプラスとマイナスが表裏一体となっているのです。そうした仕組みをどう設計するかということは,人々の営みに直接影響を及ぼす大きな問題なのです。(p.271)
>
> として、

> > 93SNAでは,消費概念の二元化が行われました。当該サービスの費用を誰が負担したかという点から考察した「最終消費支出」概念とともに,当該サービスによる便益を享受したのは誰かという側面に注目した「現実最終消費」概念が登場しました。(p.273)
>
> という分析が進んでいるようです。
>
> とはいっても、本書でも
>
> > しかしながら,昨今「少子高齢化社会」の到来を目前に控えて,(中略)「分配」をめぐって,さまざまな経済的・社会的問題が提起されており,このような問題に対して政府は「公平な負担」と「公平な享受」をめぐってきめ細かな制度設計を行う必要があるでしょう。ところが,そのための基礎資料がSNA統計(『国民経済計算年報』)から得られるかというと,答は「ノン」なのです。(p.274)
>
> とされていますね。
>
> 2012/07/26(木) 00:33:44 | URL | マシナリ #-[ 編集]

「財政政策という実務(2012年07月16日 (月))」
http://sonicbrew.blog55.fc2.com/blog-entry-523.html#comment866

となりますので、名無しの投資家さんが

> 民間消費=賃金、利子等+政府移転支出-税金です。また、投資支出=国民貯蓄=民間貯蓄+財政収支ですので、すでに閉鎖マクロ経済でのストックは常に「0」なのです。よって、マクロ経済的に社会保障はGDPの枠内でしか保障できません。

とおっしゃる点は全くその通りだと思います。しかし、引用部にもある通り、「政府は「公平な負担」と「公平な享受」をめぐってきめ細かな制度設計を行う必要があるでしょう。ところが,そのための基礎資料がSNA統計(『国民経済計算年報』)から得られるかというと,答は「ノン」」ですので、社会保障が会計上はフローで賄われるをもって、社会保障がそれで十分か、あるいは、その財源がどのように調達されているかを議論することはできません。

この点について、名無しの投資家さんが誤解されていると思われるのは、

> お金に色は無いので、失礼な言い方で申し訳ございませんがマクロ経済的に無意味だと思います。

とおっしゃる点でして、マクロでは色がないからといって財政上色がないわけではありません。震災後に書いたエントリの通りですが、

> また、経済学の議論では、企業や家計の効用が変わりなければ財・サービスの選択は「無差別」といわれ、「色」が付いていない方が「歪み」がなく効率的とされるのですが、政府の財源は「無差別」ではありません。日本国憲法第25条第1項で「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」とされているとおり、国が徴収した税・保険料はその使途を限定されているという点で「色」が付いています。むしろ、政府の予算編成というのは財源に「色」をつける作業であって、たとえば事業化して現場で事務を行う公務員が不足しているということは、そのために投入される「色」のついた財源が不足しているということの現れといえます。
>
> もちろん、「色」の付き方にはグラデーションがあって、一般的な税金は特に使途が特定されないことから、一般会計(普通会計)で扱われて、国会(議会)の審議を経て決定されますので、「色」は薄くなります。一方、特定の目的のために使うことを約して徴する税金は「目的税」と呼ばれ、その多くは他の使途と区別するため特別会計で扱われます。もちろん、目的税の具体的な使途も国会の審議を経て決定されますが、使途がある程度特定されているという点で「色」が濃い財源といえます。これらの税金と比べると、社会保険料は拠出の義務に対して受給の権利が対応し、原則として国会の審議を経ずに個別の支給額が決まるため、もっとも「色」が濃い財源となります。権丈先生が社会保険料の財源調達力を重視するのも、社会保険料のこうした「色」の濃さ故でしょう。


「復興へのいくつかの論点(2011年07月12日 (火))」
http://sonicbrew.blog55.fc2.com/blog-entry-457.html

社会保障の財源を確保しないということは、それによる低所得者や働く世代向けの歳出をときの経済情勢という不安定要素に委ねることになります。所得再分配政策の財源に「強い色」が必要であることは、それが経済情勢が厳しいときにこそ必要となるという説明で十分ではないでしょうか。

その他、私に対する当てつけのようなコメントは無視させていただこうと思ったのですが、一点だけ。

> 恐れ入りました。では、残り1割についても既に寄付金控除無しのふるさと納税をなされているのでしょう。失礼しました。

これは、私の

> 現時点で私個人の国民負担率は約4割ですので、保育や大学までの教育費、医療、介護、住居が個人負担なしで(あるいは大部分を国が負担して)享受できるようになるのであれば、あと1割くらいの負担増は十分に受け入れる余地はあると考えております。

というコメントの一部のみを抜き出して意図的に曲解されていますので、悪質に感じるとだけ申し上げておきます。
2013/09/15(日) 12:06:56 | URL | マシナリ #-[ 編集]
>ということでよろしいですね。

はい、良いです。

>名目のGDP成長率を確保しつつ、それよりも低い水準に長期金利を保つことがPB改善による財政再建につながるものと考えております。

その通りだと考えます。しかし、その名目成長率を低下させるのが「消費増税」なのです。

>リフレーション政策を緩やかに支持しながら、歳出の構造を低所得者や働く世代向けに変えていく必要が同時にあると指摘しているところです。

その通りだと考えますが、歳出の構造を変えるのは、リフレ政策とは別の政策が必要です。

>社会保障が会計上はフローで賄われるをもって、社会保障がそれで十分か、あるいは、その財源がどのように調達されているかを議論することはできません。

そのような議論は行っておりません。

>この点について、名無しの投資家さんが誤解されていると思われるのは、

クルーグマンマクロ経済学P163 表6-2
「ミクロ経済学の問題 対 マクロ経済学の問題」
ミクロ経済学
「低所得家庭の子どもが大学に進学しやすくなるように、政府はどんな政策を実施すべきか」

マクロ経済学
「経済全体の雇用と成長を高めるために、政府はどんな政策を実施すべきか」

私はマクロ経済学の議論をしているつもりなのですが、マクロとミクロを混同されていませんか?この点において私は、
誤解していないと思います。もう一度、申し上げておきます。

お金に色は無いので、失礼な言い方で申し訳ございませんがマクロ経済的に無意味だと思います。国債の償還にあてるには民間から資金を吸収する必要があり、その後、国債と民間資産と相殺する訳です。結果、同じ金額を民間に返す事になりますが、そこに信用収縮以外の何の意味があるのでしょうか?
(民間消費=賃金、利子等+政府移転支出-税金ですから、国債の償還を発行するには政府移転支出<税金となる必要があり、民間消費の減少を招きます。)

>所得再分配政策の財源に「強い色」が必要であることは、それが経済情勢が厳しいときにこそ必要となるという説明で十分ではないでしょうか。

論点がずれています。私は再分配を否定していません。(因みに日本の現状は人類史上最もマシナリさんのおっしゃる状況に
該当していると思いますが。)

マシナリ様は目先の果実を求める余り、その先にある大きな果実をとり逃そうとしているように見えます。
財政県再建を急ぐ余り、肝心のGDPが縮小してしまっては元も子もないでしょう。
2013/09/15(日) 13:55:59 | URL | 名無しの投資家 #SFo5/nok[ 編集]
> 名無しの投資家さん

たびたびご教示いただきありがとうございます。

> 私はマクロ経済学の議論をしているつもりなのですが、マクロとミクロを混同されていませんか?

なるほど、これでは議論がかみ合うわけはありませんね。私がここで議論しているのは、ミクロ経済学としての公共経済学と(新古典派経済学に代表される)現在の主流派経済学の範疇を超えた社会保障ですので、マクロ経済だけの議論をしているつもりははじめからありません。もちろん、租税政策と財政支出を含む財政政策はマクロ経済の一部ですので、それをマクロ経済の視点から論じることは当然必要なことですが、拙ブログでは、それだけでは社会保障について議論することはできないだろうと重ね重ね指摘しておりまして、本エントリもその一つと認識しております。名無しの投資家さんがマクロ経済学「だけ」の議論をされたいのであれば、私は相手としてふさわしくないものと考えます。

念のため、拙ブログでたびたび引用している、「マスグレイブの三つの機能論」にあるとおり、政府の役割はマクロ経済だけではありません。拙ブログではこちら(http://sonicbrew.blog55.fc2.com/blog-entry-523.html)など参照いただきたいのですが、毎度wikipediaからの引用もなんなので、スティグリッツ『公共経済学 第2版(上)』から引用いたします。
>  20世紀の偉大な財政学者の1人であるリチャード・マスグレーブ(Richard Musgrave)は,政府を三つの経済的機能を持つものと考えた.1番目は安定化機能であり,物価の安定と完全雇用の維持である.これをどのように達成するかは,マクロ経済学の主たる課題である.2番目の機能は配分機能であった.ここでは政府は,経済が資源を配分する介入するのである.この目的のために政府は,国防や教育のような財を購入することによって直接的に介入することもあるし,ある経済活動を刺激したりまた他の活動を抑制するために税金や補助金を用いて,間接的に行うこともある.3番目の機能である分配機能は,社会で生産された財を社会構成員間でどのように分配するかを問題にするものである.この機能は平等という問題,および平等と効率のトレードオフに関係する.公共経済学では,この三つのうち後の二つの機能に注目するのである.ただし,そうした問題は,規制の問題を取り扱うような他の経済学分野でも生じるものである.
>  今日では,三つの機能の面で政府活動は互いに絡み合っており,マスグレーブが想定したように明確に分割することはできないということが明らかになっている.しかしながら,「三つの機能」という見方は,政府が作っている無数の経済活動を考察するうえでは便宜的な方法を提供してくれる.

スティグリッツ『公共経済学 第2版(上)』p.28
http://www.amazon.co.jp/dp/4492313311/

引用部の2つ目の段落の点については、拙ブログでも指摘しているところでして、

> 「経済安定化政策」「成長政策」「所得再分配政策」というのは確かに経済的な分析には有用な機能分けかもしれませんが、実務上は同一の事業にそれぞれ不可分の要素として入り込んでいる(http://sonicbrew.blog55.fc2.com/blog-entry-437.html)のが現実です。ある事業について「これは成長政策ではあるが所得再分配政策ではない」とかいちいち腑分けできるものではありません。となると、ある事業が「成長を通じた所得再分配」となることがあり得るでしょうし、逆に「所得再分配を通じた成長」となることも十分にあり得る話だろうと考えます。というか、それが権丈先生から受け売りして拙ブログで飽きもせず指摘している再分配論でもあります。

「再分配論のゆくえ(2013年05月04日 (土))」
http://sonicbrew.blog55.fc2.com/blog-entry-555.html

このエントリの最後段で引用させていただいた権丈先生の「社会保障と係わる経済学の系譜序説」の一説にある通り、サムエルソンによる新古典派総合に連なる現代の経済学では、「現代の経済理論、経済思想、それに強く依拠した形で展開される社会保障を論じることは難しい」という事態に陥ってしまっているものと考えます。

※ ただし、マスグレイブ自身はサムエルソンの新古典派総合に連なる財政学者ではあります。詳しくは、以下の小西先生の論説をご覧ください。
せっかくですので、小西先生の箴言を引用させていただきます。

>  財政学研究が政策決定の場にストレートに影響を与えるようになったことで,応用ミクロ経済学において前提とされている市場メカニズムが,現実の市場にどこまで期待できるかを突き詰めて考える必要性が増した。その点を怠って安易にスキップすると,応用ミクロ経済学流の論理展開は,結果的に市場主義という一種のイデオロギーとなって一人歩きを始めるリスクがある。
>
>  2010年代の状況から近年の流れを日本の政治状況に照らして振り返ると,経済学と財政学の関係はいまやむしろ近くなりすぎて,財政学の問題意識は経済学に飲み込まれ,埋没した感がある。現代におけるバランス感覚は,かつてとは逆に経済学と財政学の適切な距離感を見いだして,そこに社会学的な要素を持ち込むことではないか。その結果,エレガントな理論分析は難しくなるとしても,それはやむを得ない代償である。

「著者より:『市場と向き合う地方債』 「書斎の窓」に掲載」
http://yuhikaku-nibu.txt-nifty.com/blog/2011/09/post-3391.html

この点を除けば、私も名無しの投資家さんとそれほど見解の違いはないと考えております。リフレーション政策を否定しておりませんし、リフレーション政策とは別の政策として所得再分配を「同時に」実施すべきと申し上げているところです。

その上で、名無しの投資家さんが

> そこに信用収縮以外の何の意味があるのでしょうか

とおっしゃる点については、所得再分配による消費性向の高い低所得者層および貯蓄が少なく資産効果が小さい働く世代に対する政府支出を増やすことで、社会全体の消費性向を高めることができると考えております。
2013/09/15(日) 21:49:07 | URL | マシナリ #-[ 編集]
>租税政策と財政支出を含む財政政策はマクロ経済の一部ですので、それをマクロ経済の視点から論じることは当然必要なことですが、拙ブログでは、それだけでは社会保障について議論することはできないだろうと重ね重ね指摘しておりまして、

マクロ経済あっての社会保障だと考えますが如何でしょうか?

>この点を除けば、私も名無しの投資家さんとそれほど見解の違いはないと考えております。リフレーション政策を否定しておりませんし、リフレーション政策とは別の政策として所得再分配を「同時に」実施すべきと申し上げているところです。

これについては意義はございません。

>所得再分配による消費性向の高い低所得者層および貯蓄が少なく資産効果が小さい働く世代に対する政府支出を増やすことで、社会全体の消費性向を高めることができると考えております。

これは現在でも国債を発行する事で既に行っている事ですよね。中身がおかしいなら中身だけを変更すれば良いと思います。1兆円を再分配するために5兆円の名目GDPを失っては意味がありません。一人を失業させ、その人に雇用保険基本手当を与えるよりその一人が失業しないようにすることが先だと思います。

今のまま増税を実施すれば、おそらく上記のような、わざわざ失業者や生活困難者を政府が作ってそれを政府が赤字国債で支援するという状況になるでしょう。前回の増税と同じで名目GDPを維持するために赤字国債を結局増発し、さらに財政状況が悪化するでしょう。
(よほど経済状況が好転すれば別ですが、来年の経済状況など誰にもわかりません。)

この議論を通じて感じたことは、結局公務員の方も同じサラリーマンであると言うことですね。

民間のサラリーマンならマクロ政策など考えようが無いのですが、(自社以外は所定のもの、動かせないものとして考えます。来年は名目GDPを10%アップさせた上で自社の売上を・・・なんて言ったら笑われます。)公務員はマクロ政策にも関わるのですから、マクロ経済の視点が必ず必要です。しかし、この議論を通じて感じたことは民間と同じで、「政府の行動はマクロ経済に影響しない」という前提で物事を考えていらっしゃると言うことです。

財務省のキャリア官僚にしても結局同じなんでしょう。表面的にはマクロ経済を理解しているつもりでも実際には理解していない。自分たち政府の行動をミクロの主体と同じように考える。さらに組織や上司とのしがらみが・・・・・。

もう日本はどうしようもないように思います。

最終的な結論として、私は今までの「公務員バッシングを批判し、不幸の横並びを防ぐ。」という考えを放棄し、以後は、
【日本の国益を守り、日本経済の発展を通じて国民に奉仕する】という本来の職務を果たしていない=労務の提供を怠っていると判断し、
この状況が改善されるまで「積極的に公務員バッシングを展開し、自らの職務怠慢を自覚させる。」という考えを採用します。
2013/09/16(月) 21:52:07 | URL | 名無しの投資家 #SFo5/nok[ 編集]
> 名無しの投資家さん

ご理解いただけなかったようで残念です。
正直なところ、名無しの投資家さんにはご自身の主張がコメントごとに変遷して相互に矛盾している点を釈明していただきたかったのですが、一方的に「公務員バッシング」を宣言されるのであればもはや議論の余地はないかと思います。

いろいろ積み残しの論点はありますが、最後にいただいたコメントから一点だけ。

> 今のまま増税を実施すれば、おそらく上記のような、わざわざ失業者や生活困難者を政府が作ってそれを政府が赤字国債で支援するという状況になるでしょう。前回の増税と同じで名目GDPを維持するために赤字国債を結局増発し、さらに財政状況が悪化するでしょう。
> (よほど経済状況が好転すれば別ですが、来年の経済状況など誰にもわかりません。)

「今のまま増税を実施すれば…という状況になるでしょう」という文に引き続いて「来年の経済状況など誰にもわかりません」とおっしゃる趣旨は、「来年の経済状況などわからないが増税すれば財政が悪化することだけは確実だ」ということでしょうか。私は、名無しの投資家さんの主張は「増税によって経済状況が悪化して税収が落ち込んで財政も悪化するから増税すべきではない」ということかと理解しておりましたが、それならなぜ「来年の経済状況など誰にもわかりません」とおっしゃるのか理解に苦しみます。

ただ、私の拙い説明によって公務員全体がバッシングの対象となるのは心苦しいものがあります。昨日のエントリでマクロ経済学者の方の消費税率引き上げに関するエントリを引用させていただいておりますので、私が公務員だからこのような主張をしている側面があることは否定しませんが、逆は必ずしも真ではないということをご確認いただけると幸いです。
http://sonicbrew.blog55.fc2.com/blog-entry-582.html

なお、名無しの投資家さんはご存じかと思いますが、拙ブログでは、FC2利用規約に従い、

> このため、同規約の「5.免責事項」の1において、
>
> ユーザーは、ユーザー自身が作成された本サービス上のコンテンツ(以下「ユーザーコンテンツ」といいます。)の内容について、あらゆる法的責任、損害賠償および訴訟費用について全責任をお持ちいただき、また、日本国および米国の法律、法令、条例に反するような内容はもちろん、他人への誹謗中傷、いやがらせ、他人の知的所有権の侵害、プライバシーの侵害、公序良俗に反する内容 が掲載されてしまった場合、すみやかに削除する管理義務を担っていただきます。
>
> と規定されていることに従い、拙ブログの管理人として、この方によるコメントすべて(HNを使い分けて行ったコメントを含みます)を迷惑メールとしてブロックするとともに、この方が使ったIPアドレスも今後すべてブロックします。

2012/09/20(木) 01:01:17 | URL | マシナリ #-[ 編集]
http://sonicbrew.blog55.fc2.com/blog-entry-533.html#comment917

という対処方針をとっておりますので、拙ブログにおいてこのような行為に及ばないよう心よりお願いいたします。

最後になりましたが、これまでご提供いただいた有意義なコメントにお礼申し上げます。ありがとうございました。
2013/09/16(月) 23:29:50 | URL | マシナリ #-[ 編集]
某かく・・・・ゴホゴホ・・・、さんのように荒らすつもりはありませんのでご安心ください。

私自身としても残念ではございますが・・・。

>さんにはご自身の主張がコメントごとに変遷して相互に矛盾している点を釈明していただきたかったのですが、

全く矛盾しておりませんが。

>それならなぜ「来年の経済状況など誰にもわかりません」とおっしゃるのか理解に苦しみます。

1-4=-4 となるか、3-4=-1となるか、5-4=1となるかは誰にも予想できな3ということです。ただ、増税分のうち、財政再建に回される4%だけは、確実に国内需要を縮小させるという事が判明しているという事です。(要するに、元のGDP-財政再建による消滅=増税後のGDPと言う事だけは確実と言うことなので、小学生でも分かる簡単な理屈です。)

とりあずバッシングの内容は、
「公務員の給与は全労働者の平均給与にすべき!」
「一般国会議員の給与は全労働者平均給与の5倍~7倍にすべき!」とします。

つまり、自らの給与を増やしたければさっさととデフレを収束させろ!という事です。更に言えば、給与を下げた分だけ生産性が落ち、その分を人員増でカバーする必要が出るでしょうが、それで良いでしょう?まさしく所得の再分配で言う事無しですね。
2013/09/17(火) 21:08:31 | URL | 名無しの投資家 #SFo5/nok[ 編集]
名無しの投資家さん

> >さんにはご自身の主張がコメントごとに変遷して相互に矛盾している点を釈明していただきたかったのですが、
>
> 全く矛盾しておりませんが。

そうですか。まあ、私自身も自分の矛盾に気がつくかといわれれば心許ないところですので、名無しの投資家さんがご自身の主張に矛盾がないと信じていらっしゃるのであれば、それでよろしいかと思います。

なお、以前のコメントで

> > 民間消費=賃金、利子等+政府移転支出-税金です。また、投資支出=国民貯蓄=民間貯蓄+財政収支ですので、すでに閉鎖マクロ経済でのストックは常に「0」なのです。よって、マクロ経済的に社会保障はGDPの枠内でしか保障できません。
>
> とおっしゃる点は全くその通りだと思います。

2013/09/15(日) 12:06:56 | URL | マシナリ #-[ 編集]

としておきながら恐縮ですが、この場合に用いる恒等式としてはあまり適切ではありませんね。経済学の議論では簡単化のために余計な変数はオミットすることが多いのですが、本エントリは政府による移転支出(再分配)を論じるものですので、政府支出と移転支出をまとめたモデルはふさわしくないでしょう。飯田先生がおっしゃる「思考の型」でもそう指摘されていますし。

ちなみに、武隈『マクロ経済学の基礎理論』によれば、産出量をY、(民間)消費をC、(民間)貯蓄をS、(民間)投資をI、政府購入をG、輸入をIm、輸出をEx、税収をT、(政府による)移転支出をTrとすると、産出量Yは
Y≡C+I+G+Ex-Im
と表されます。このとき、
Y≡C+S
Y+Tr-T
ですので、両式から
Y+Tr-T≡C+S
という恒等式が導かれます。
武隈『マクロ経済学の基礎理論』p.4
http://www.amazon.co.jp/dp/4915787885
この関係は恒等式ですので、統計上は事後的に常に成り立ちます。名無しの投資家さんのモデルでは、「賃金、利子等」≡Y-Sとすると同値になりますね。となると、民間消費Cを向上させるためには、産出量Yや移転支出Trを拡大することはもちろん、民間貯蓄Sを小さくすることも有効です。将来のリスクを軽減することで民間貯蓄Sを縮小させながら民間消費Cを向上させるため、移転支出Tr(所得再分配)の拡充が必要だろうと考えておりまして、GDPで示される産出量Yの拡大は必要と考える立場です。なお、民間貯蓄Sの縮小により投資Iも縮小することになるため、低所得者層の流動性制約を緩和しつつ、高所得者層の流動性選好を緩和するため、リフレーション政策によるマイルドなインフレにより投資の収益率を同時に上げておくことが望ましいだろうと考えております。

ただし、統計上事後的に一致するからと言って、これらの規模や支出の方法が適切かどうかは不明であることは、作間『SNAがわかる経済統計学 (有斐閣アルマ)』で指摘されている通りです。さらに、これはマクロバランスであって、個人の所得や消費の割合は個人ごとに異なるわけで、このマクロバランスから個人向けの移転支出の多寡や内容の是非を論じることもできません。そうではあっても、国民負担率も、それを原資とする対GDP比の(政府購入Gと移転支出Trからなる)政府支出もOECDの最下層に位置する日本で、特に移転支出が小さいことはマクロ経済上も影響があります。

名無しの投資家さんは、政府支出の規模の小ささは問題ではなく、その中身の問題なのだから、税収と新規国債発行額の範囲内で所得再分配を行えばよいとの立場かも知れませんが、毎年30兆円を超える新規国債が発行されるこの国でそれをやろうとすれば、それこそがマクロ経済に大きな影響を与える「緊縮財政」につながりかねません。いやもちろん、「緊縮財政」が回避されればいいのですが、まさに名無しの投資家さんがおっしゃるとおり、色のついていない財源はいくらでも緊縮することが可能であって、不確実性が存在する現実を前にして、財政の持続可能性のために移転支出が大幅に削減される懸念は常につきまといます。だからこそ、目的税によって移転支出の規模を大きくするとともに、緊縮財政の影響を防ぐために移転支出の財源に色をつける(上記モデルで言えば、PB黒字化を一里塚として政府購入Gと移転支出Trの比率をTrに重点化し、その財源を確保する)必要があると考えるのですが、名無しの投資家さんはその財源の確保が「財政再建」であり、民間消費を減らすと主張されています。

名無しの投資家さんのモデルでは、

> 民間消費=賃金、利子等+政府移転支出-税金ですから、国債の償還を発行するには政府移転支出<税金となる必要があり、民間消費の減少を招きます。

とのことですが、移転支出の財源を確保することが民間消費を減らすというのは、上記武隈マクロのモデルからは矛盾する主張となります。さらに、PBの議論によれば、追加的な税収と政府支出については必ずしも「国債の償還を発行するには政府移転支出<税金となる必要」はありません。

名無しの投資家さんがこの矛盾を自覚されないのはそれで構いませんし、その矛盾を抱えたまま公務員バッシングされるのも、拙ブログでFC2の利用規約に違反しない限りは、私から何も申し上げる立場にはありません。

もしかすると、投資家であることがこのような主張につながっているのであれば、ローマー『上級マクロ経済学』の最後の一節が思い起こされます。

> 他の投資家による予測次第で,どんな利子率のもとでも第1期の債務保有に応じなくなるわずかな可能性がある,と認識するだけで,大きな影響が生じうる.
> (略)
> このように,投資家が政府の返済能力に関する他の投資家の認識,他の投資家の認識に関する他の投資家の認識,等々を考慮することは投資家にとって合理的な行動である。それらの認識は政府の債務返済能力,さらに債務を保有することの期待省益率に影響する。したがって,債務市場の変化,さらに債務危機ですらが,経済の基礎的条件とは関係しない。基礎的条件に関する認識にかかわる情報,あるいは,基礎的情報に関する認識に関する認識の情報によって引き起こされうる。このことこそが,複数期のモデルの追加的なインプリケーションなのである。

ローマー『上級マクロ経済学』pp.693-694
http://www.amazon.co.jp/dp/4535551049

少々経済学のトレーニングを受けたくらいの私の能力では理解が及ばない部分もありますが、国債を購入する立場の方が政府の債務返済能力を信用している限りは、安泰なのかもしれません。まあ、公務員バッシングする投資家の方が政府の債務返済能力を信用しているというのもなかなか興味深いところですが。
2013/09/23(月) 23:41:59 | URL | マシナリ #-[ 編集]
>名無しの投資家さんがご自身の主張に矛盾がないと信じていらっしゃるのであれば、それでよろしいかと思います。

矛盾があれば指摘すれば良いだけのことです。

>本エントリは政府による移転支出(再分配)を論じるものですので、政府支出と移転支出をまとめたモデルはふさわしくないでしょう。

「民間消費=賃金、利子等+政府移転支出-税金」のどこに「政府支出が入っているのでしょうか?

>Y≡C+S
Y+Tr-T

申し訳ないですが、この式の意味が理解できません。

>GDPで示される産出量Yの拡大は必要と考える立場です。(中略)リフレーション政策によるマイルドなインフレにより投資の収益率を同時に上げておくことが望ましいだろうと考えております。

これは私も同じ意見です。だからこそ、早急な増税による財政再建には反対です。

>>特に移転支出が小さいことはマクロ経済上も影響があります。

どのような影響でしょうか?

>政府支出の規模の小ささは問題ではなく、その中身の問題なのだから、税収と新規国債発行額の範囲内で所得再分配を行えばよいとの立場かも知れませんが

そうです。政府支出の規模の問題はありますが、ここでは論点がずれるので控えます。

>目的税によって移転支出の規模を大きくするとともに、

5%増税の内の1%だけですね。残りは結局財政再建だと財務省も公表しているわけですから。

>緊縮財政の影響を防ぐために移転支出の財源に色をつける(上記モデルで言えば、PB黒字化を一里塚として政府購入Gと移転支出Trの比率をTrに重点化し、その財源を確保する)必要があると考えるのですが、

だったら、尚更公務員の給与を削減すべきでしょう。上限200万で公務員にたいする政府移転支出は不要でしょう。身分が安定していて年金も貰えるんですから。どんどん給与削減!!!

>名無しの投資家さんはその財源の確保が「財政再建」であり、民間消費を減らすと主張されています。

これは酷い藁人形ですね(笑)。

>> 民間消費=賃金、利子等+政府移転支出-税金ですから、国債の償還を発行するには政府移転支出<税金となる必要があり、民間消費の減少を招きます。
>とのことですが、移転支出の財源を確保することが民間消費を減らすというのは、上記武隈マクロのモデルからは矛盾する主張となります。

曲解ですね。移転支出=税金ならば民間消費は縮小しないし、移転支出<税金なら民間消費は縮小します。財源の確保だけでなく、それをどのように使用するかが重要だと考えます。武隈マクロのモデルは、まず式が理解できないので、差し控えます。

>PBの議論によれば、追加的な税収と政府支出については必ずしも「国債の償還を発行するには政府移転支出<税金となる必要」はありません。

PBを黒字化するため、と言うことでしょうか?

論点がかみ合わないので、整理しますが、私は
・デフレや景気回復中の増税・財政再建には反対。
・再分配には賛成
という立場で一貫しています。ここに何も矛盾点は存在しません。

>公務員バッシングする投資家の方が政府の債務返済能力を信用しているというのもなかなか興味深いところですが。

(笑)。何も今までの議論経緯を理解していなんですね。

都度、様々な著作を引用されるのは凄いと思いますが、正直に申し上げて、その中身を理解されているとは思えませんね・・・。
民間の私がマクロ経済を理解して財政赤字の重要性を認めているのに、公務員のマシナリ様が財政赤字の重要性を理解されていないというのは、なんと言う皮肉でしょうか。
2013/09/28(土) 22:19:21 | URL | 名無しの投資家 #SFo5/nok[ 編集]
> 名無しの投資家さん

> >Y≡C+S
> Y+Tr-T
>
> 申し訳ないですが、この式の意味が理解できません。

転記漏れがありまして失礼しました。抜粋した際に必要な部分も省略してしまいました。
抜粋せずに引用すると、

>  政府は課税によって人々から税を徴収する。逆に、人々は政府から移転を受け取る。税収をT、移転支出をTrとすると、人々の実際の所得、すなわち可処分所得は、Y+Tr-Tとなる。したがって、(1.1.2)式(引用注:Y≡C+S )は以下のように修正される。
>  Y+Tr-T≡C+S

武隈『マクロ経済学の基礎理論』p.4
http://www.amazon.co.jp/dp/4915787885

その他、本エントリの冒頭にも記したとおり、「このテーマは単なる経済学の範疇を超えている」ので、マクロ経済学以外の応用ミクロ経済学としての公共経済学と社会保障論について述べながら、それがマクロ経済にも影響を及ぼす可能性について考えているものです。当然ながらマクロ経済学の考え方も参考としておりますし、その他の理論的、データ的分析も参考としておりますので、その範囲で参考となる文献等を引用しております。
その点では、

> 都度、様々な著作を引用されるのは凄いと思いますが、正直に申し上げて、その中身を理解されているとは思えませんね・・・。

と名無しの投資家さんがおっしゃるとおり、私のマクロ経済学についての理解は怪しいところもあるかも知れません。しかし、例えばスティグリッツが「公共経済学では,この三つ(引用注:政府の経済的機能としての安定化機能、配分機能、分配機能)のうち後の二つの機能に注目するのである.」とし、クルーグマンが「低所得家庭の子どもが大学に進学しやすくなるように,政府はどんな政策を実施すべきか.」という問題に「経済全体の雇用を成長を高めるために,政府はどんな政策を実施すべきか.」という問題を対置させるように、政府の役割はマクロ経済学「だけ」で論じられるものでもありません。また、そのマクロ経済学のデータ的基礎となるSNAについては、作間先生が「「分配」をめぐって,さまざまな経済的・社会的問題が提起されており,このような問題に対して政府は「公平な負担」と「公平な享受」をめぐってきめ細かな制度設計を行う必要があるでしょう。ところが,そのための基礎資料がSNA統計(『国民経済計算年報』)から得られるかというと,答は「ノン」なのです」とおっしゃるとおりです。マクロ経済学者の方のブログにおいても、消費税の引き上げについて、「消費税率の引き上げという点に関する限り、New-Keynesianは基本的には、動学モデルでOld Keynesianの議論を行っているだけだと思う。総需要の減少から生産が一時的に減少するが、長期的には2.のポジティブな効果が現れると思う。それに、逆に、8.の効果が一時的な総需要の増加としてポジティブに働くかもしれない。いずれにしても長期的に見た効果はNKモデルが想定するさまざまな摩擦には影響を受けない気がする(がモデルを走らせて見ないとわからない)。」と指摘されているとおり、短期の総需要の減少と長期の効果を考慮する必要もあると考えております。
http://sonicbrew.blog55.fc2.com/blog-entry-582.html

以上の通り、私がいろいろと引用するのは、それが私のオリジナルの考えではないということをお示ししているものであることをご確認ください。

なお、繰り返しになりますが、名無しの投資家さん議論の相手として私はふさわしくないと思いますので、マクロ経済学「だけ」の議論をされたいのであれば、ほかの場所をご活用いただくのがよろしいかと思います。
2013/09/30(月) 08:27:11 | URL | マシナリ #-[ 編集]
長い時間お付き合い頂き、ありがとうございました。
2013/10/07(月) 20:40:09 | URL | 名無しの投資家 #SFo5/nok[ 編集]
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