2013年06月15日 (土) | Edit |
書きかけのエントリをアップしようとしているうちに、震災から27か月が経過しました。震災からの復旧・復興はこの間も、地道に進んでいる分野となかなか進捗が見えてこない分野でそれぞれ問題を抱えながら進められています。もう恒例行事となりましたが、定期的に「復興が遅い」とか「復興予算が流用されている」とかいう報道が流れてきて、そのたびに着実に進んでいる分野ではモチベーションを下げられ、なかなか進捗が見えてこない分野では徒労感が募らされるというのが公務員の仕事ですね。ただし、報道する側も手を変え品を変えてきますので、今回報道された緊急雇用創出事業については、まあご指摘の趣旨は理解できるというところです。

復興予算、雇用でも流用 被災地以外に1千億円朝日新聞デジタル 6月3日(月)8時0分配信

 【古城博隆、座小田英史】東日本大震災の復興予算で2千億円がついた雇用対策事業のうち、約1千億円が被災地以外で使われていることがわかった。被災地以外の38都道府県で雇われた約6万5千人のうち被災者は3%しかおらず、被災者以外が97%を占める。「ウミガメの保護観察」や「ご当地アイドルのイベント」など震災と関係のない仕事ばかりで、大切な雇用でも復興予算のずさんな使われ方が続いている。

 この事業は厚生労働省が担当する「震災等緊急雇用対応事業」で、被災者などの雇用を支援するため、2011年度の復興予算で2千億円がついた。臨時や短期間の仕事に就いてもらい、生活を支える目的だ。

 このうち915億円は、東北や関東などの被害が大きかった9県が運営する雇用対策基金に配られた。11~12年度に計約6万人が雇われ、その約8割を被災者が占める。

 一方、残る1085億円は被災地以外の38都道府県の基金に配られた。朝日新聞が38都道府県に聞いたところ、11~12年度に雇われた人は計約6万5千人にのぼるが、被災者は約2千人にとどまった。

朝日新聞社

まあ、今回の記者の座小田氏も一連の復興予算流用問題を取り扱っている方のようで、一般財源と基金の違いも理解していないながら、それなりに奮闘されていると思うのですが、この件でつっこむのであれば、あと2年くらい早くつっこんでいただきたかったものです。ちなみにその当時の拙ブログでは、

リーマンショック後に低下した労働需要を喚起するために実施された緊急雇用創出事業を、今回の震災にあたって震災対応事業として流用しているために生じる齟齬ではないかと感じております。リーマンショックのような景気変動による労働需要の減少であれば、政府が資金提供する形で企業に雇用の場を提供することで雇用が創出されますが、民間事業者そのものが毀損している被災地では、そもそも企業が雇用する機能を失っているため、事業化が進みません。

「新しい公共」が依って立つもの(2011年06月05日 (日))

ということを指摘しておりますし、その後に今回問題となった「震災等緊急雇用対応事業」が創設されたときには、


マンマークさんのところで取り上げていただいたようです。
http://manmark.blog34.fc2.com/blog-entry-581.html

> 相棒「被災失業者か平成23年3月11日以降に失業した人を募集しました。でも、普通の失業者しか来ませんでした。だったら、その普通の失業者を雇って事業を実施すれば、緊急雇用創出事業の中の震災等緊急雇用対策事業として認めるそうです」
> 私 「はあ?」
> 相棒「そうらしいです」
> 私 「それってさ、被災地どうこう関係無しのバラマキじゃねぇーの?」
> 相棒「でも、そういう事らしいです」

「被災地どうこう関係無しのバラマキ」というマンマークさんのご指摘の通り、今回の緊急雇用創出事業の拡充は震災どうのこうのは関係ありません。というのも、「震災等緊急雇用対応事業」(順列組合せがヒド過ぎる…)は円高にも対応するものとなっておりまして、結局のところ日本全体が対象となっています。

「平成23年度厚生労働省第三次補正予算案の概要」7ページ
http://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/11hosei/dl/h23_yosan_gaiyou.pdf
> 2 震災及び円高の影響による失業者の雇用機会創出への支援(「重点分野雇用創造事業」の基金の積み増し(全国))2,000億円
> 被災者を含めた震災及び円高の影響による失業者の雇用の場を確保し生活の安定を図るため、都道府県又は市町村による直接雇用又は民間企業・NPO等への委託による雇用を創出する「震災等緊急雇用対応事業」を実施する(震災対応事業の拡充・延長)。

緊急雇用創出事業そのものが拡充やら要件緩和やらで訳が分からない状態となっているところですが、本来の緊急雇用創出事業が23年度までだったのを事実上延長するものと考えられます。

失対事業の夢魔へ一歩一歩近づいているような気がするところですが…

2012/01/09(月) 22:40:44 | URL | マシナリ #-[ 編集]

なんてことも書いております。ところが、当時のマスコミは、菅元総理の辞任やら野田前総理のどじょう演説やらで時間が費やされ、7月に予定していた補正予算が11月にやっと成立して、「これから本格復興が進められる」とか無邪気に持ち上げていましたね。当時の自治体の反応は上のコメントで引用させていただいているマンマークさんのエントリをご覧いただきたいのですが、当初から目的なんかどうにでもつじつま合わせできるような制度設計だったわけで、そのとおりに事業化した自治体を「復興予算の流用だ!」とかマスコミの皆さんが責め立てても、何を今更という感は否めません。

マスコミの皆さんが制度をいちいち理解する時間がないほどに仕事に追われていることは存じておりますし、その意思を持っている方でも組織内の論理でなかなか思うような報道ができないというのも理解はしております。しかし、そのツケを払うのが我々のような制度の現場で仕事をする人間なわけです。一面記事を飾って社内からも社外からも評価が上がっている記者さんたちの陰で、その無理解な記事によってストレスを強いられたり紛争のタネを蒔かれたりする現場の人間にも配慮していただけるとありがたいのですが、まあ望むべくもないのでしょう。

ただ、最近は、NHKなどでも被災地の自治体職員に着目した番組がいくつかありまして、先月もこんな番組がありました。

シリーズ東日本大震災 "応援職員"被災地を走る ~岩手県大槌町~
2013年5月31日(金)午後10時00分~10時49分

震災以来、深刻な職員不足に見舞われながら、膨大な復興業務と格闘してきた被災地の自治体。そこで大きな役割を果たしてきたのが全国の自治体から派遣されてきた応援職員だ。中でも役場が津波にのみ込まれ、職員の3分の1が犠牲になった大槌町では、80人を越える職員が全国から駆けつけ、復興のために汗を流してきた。中心市街地の復興の責任者を務めている小林武さん。去年4月、街づくりの専門知識で被災地を支援したいと、自ら志願して埼玉県川越市役所からやって来た。しかし、現実は小林さんの想像をはるかに越えるものだった。被災した住民たちひとりひとりと丁寧な話し合いが必要になる復興まちづくり。風土やまちの文化を知ろうと努力を重ね、何度も地権者のもとをたずねては信頼関係を築き上げてきた。一刻も早い復興を願う声に応えながら、どうしたら住民の理解を得てまちづくりを進められるのか。番組では、小林班長をはじめ大槌町の応援職員に密着、空前の規模の復興まちづくりの舞台裏を記録する。

被災した自治体の職員ではなく応援職員に着目したのは、その方が視聴者に対して「大変さ」が伝わりやすいという判断があったのかもしれません。しかし、言うまでもなく、被災地の状況に心を痛め、自らも被災した中で、地元自治体の職員が上記のような無理筋の復旧・復興事業をこなしています。日本型雇用慣行では、仕事は職員に併せて作られる傾向がありますが、ジョブ型の雇用であれば、仕事が増えればその分人員を増やすことになるはずです。ところが、何度も繰り返しになりますが、前政権も現政権も、さらに来月予定されている参議院の公約でも軒並み、政党が掲げる公約は公務員人件費の削減という現状です。仕事を増やしておきながら人を減らすって、そりゃまあたしかに、被災地で最低賃金のコールセンターを作って社会貢献とか言い張るブラックな企業の経営者が参院選の候補にもなるわけですね。

なお、先日関係者から漏れ聞いたところでは、上記のNHKスペシャルについては、地元自治体からNHKに放送しないよう申し入れがあったとのこと。復興事業が困難を極めていることは事実ですが、だからといってその大変さばかりが強調されてしまうと、合意しない地権者が悪者扱いされたり、地元職員が応援職員を地権者との交渉に駆り出しているとかいうイメージを植え付けてしまいかねません。その点では拙ブログも注意しなければならない点はあるのですが、そうした疑心暗鬼が地元の方々や職員の間に生まれてしまうと、それがさらに復興事業を困難なものにしてしまいます。

 福島県の事例では、本家・分家等が現在は北海道・関東・近畿等へ離散している状況で、権利関係は当初「本家」に集約して、金銭的な分配にとどめる動きが一般的でありました。これは「津波てんでんこ」の続きとして「土地・山林等の相続は一人が相続する」という不文律があります。自分の家も明治・昭和の津波で流失しましたが、「相続(権利者)は一人」にすることで、再建を速めるというものです。
 こういう口伝の類も日弁連の皆様の努力により「民に対策あり」としての「リスクマネジメント」を失うように努めた結果が「被災地の復興を遅くしている」のです。応援職員の自殺の遠因の一端ってすごく難しいですよね。
 福島県の事例は第2回目以降の会議から一変します。本家への権利集約が「土地は無価値(帰宅困難地域)」という評価ゼロだからが、東京電力からの賠償金の根拠になるとなった時から、「共同名義」を主張しはじめて、収拾がつかなくなります。被災地に残らない者達による「権利」を守るために、「復興予算の繰越」を批判して、(俺達(大都市)に金を渡さないなら)「復興予算はムダ」というのを数年間聞かせれ続けるのって精神的に厳しいものですよ。そんなに田舎で金が廻るのが気に入らないとは。

津波被災の記録116(2013-06-11)」(hahnela03の日記

hahnela03さんのエントリは「被災から2年と3ヶ月目となりましたが、特に進展はありません。」という一節から始まっていますが、ここで指摘されている実態はもっと知られなければならないと思います。応援職員についても地元の評判は千差万別で、「ぼくのかんがえたふっこうけいかく」を振りかざす職員(国や県の職員が多いようです)がいたり、NHKが取り上げたようなわかりやすい事例だけではありません。まあ、NHKスタッフにしてみれば、これも被災地の実態だということになるのでしょうけど、カメラに映らないところで何が起きているのかを想像することが、これからさらに必要になってくるのだろうと思います。
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