2013年05月12日 (日) | Edit |
日付が変わりましたが、昨日で震災から26か月が経過しました。昨年12月ののエントリで「震災から時間が止まってしまっている感覚が強くあるため、「21か月」という方がしっくり」くるということを書いていて、先月は「2年と1か月」と書いたところですが、今回はまた26か月という書き方に戻しました。

24年度末、といってもつい1か月とちょっと前ですが、国の復興関連予算の関係で年度内に処理するため、被災しながら残っていた建物が一斉に解体されました。たしかに、まずがれきが撤去されなければかさ上げとかの新たなインフラ整備ができませんので、拙ブログでもこれまでがれきの撤去が最優先であることなどを指摘してきました。しかし、建物の基礎部分だけが残り、かつての町並みを思い起こさせるようなものが一切なくなった被災地に立つと、言葉にしようのない寂寥感にさいなまれます。現地にいるわけではない私ですらそう感じるということは、もともと被災した土地に家を建て、その土地の建物で仕事や買い物をし、家族や仲間と過ごした日常が消えてしまった方の喪失感を感じているはずです。

しばらく前のNHKスペシャルで

シリーズ東日本大震災 ふるさとの記憶をつなぐ2013年4月26日(金)午後10時00分~10時49分

東日本大震災から丸2年。復興事業が本格的に動き始めた被災地では町の風景は一変し、地元の人間ですら「かつてそこにどんな町があったのか思い出せない」という状況が生まれている。かつてその場所に暮らしてきた痕跡がことごとく失われ、時の移ろいと共に、その記憶までも容赦なく奪われていく中、その土地に暮らしていくことの意味や、そもそも自分が何者であるのか?自らのアイデンティティを見失い、立ちすくんでいる人たちは少なくない。
こうした中、被災地では、津波で失われる前のふるさとの風景の記憶をつないでいくための取り組みに注目が集まっている。人々にとっての大切な場所だった高田松原の7万本にのぼる松林の記憶をつなぎ止めておくために“奇跡の一本松”の保存を決めた岩手県陸前高田市。更に津波で失われた街並みを模型に復元し、その模型をキッカケに人々の心の奥底に埋もれた記憶を呼び覚まして、それを記録していこうという取り組みも、岩手・宮城・福島の3県で進められている。
復興への日々を歩む人々にとって、かつてのふるさとの風景の記憶や思い出がどれほどかけがえのないものなのか?津波で失われる前の被災地の映像でたどりながら、見つめていく。

NHKのサイトでは、その保存方法が物議を醸した「奇跡の一本松」の復元が紹介されていますが、番組では主に、被災した方々にとってその土地の「しるし」が大きな意味を持っていたこと、それが失われることが精神的なダメージをもたらしていることが取り上げられていました。被災地に行くと、まさに番組で取り上げられていたように自分がゆかりのある土地に花を植えている方々をよく目にします。もちろん、その土地はしばらくすればかさ上げされて土の下に埋もれてしまう場所です。それでも丁寧に土も盛って花を植えていく方々の姿を見ていると、見ているこちらの胸が締め付けられてしまうのですが、ご本人はもっと切ない思いで作業をされているのだと思います。

番組では、花を植えていた方に直接話を聞いて震災後の気持ちの変化をグラフに書いてもらっていたのですが、震災後に大きく落ち込んでからしばらくして回復し、それがこの年度末で震災直後よりもさらに大きく落ち込んでいる方が多くいらっしゃいました。インタビューに答えられていた女性の方は、「建物が建っているだけで懐かしい時間が残っていたが、すべての建物が解体されたことで一気に落ち込んだ」と話していたとおり、大きな悲劇があった土地で新たな生活の場を再建するというのは、単に公共事業で都市計画を作るのとは全く違う要素として、「悲劇が起きる前の生活の思い出」を考慮しなければならないのだろうと思います。

その「思い出」に配慮した一つの取り組みとして、番組では震災前の町並みを再現するミニチュア作りを取り上げていました。といっても、そんなミニチュア作りに復興予算が使われるはずもなく、その多くは被災地支援の活動をしている大学の研究チームによるものとのことです。震災で家も土地も写真も流されてしまった方にとっては、町並みのミニチュアを前にして思い出話に花を咲かせることで、過去と向き合いながら気持ちを落ち着かせるよすがとなっているのだろうと思います。そうした復興予算の使い方もあるという話になるのかと思いきや、朝日新聞がまた飛ばしたようですね。

復興予算1.2兆円、基金化し流用 被災地外にも(朝日新聞デジタル2013年5月9日3時34分)

 【座小田英史、古城博隆】東日本大震災の復興予算のうち約1・2兆円が公益法人や自治体が管理する「基金」に配られ、今も被災地以外で使われていることがわかった。全国で林道を約1900キロもつくるなど、約20基金が復興とあまり関係のない事業に使っている。政府は昨年、復興予算を被災地以外で使わないことにしたが、基金の使い道をチェックしていないため、抜け道になっている。

 政府は被災地の公共事業や雇用支援のため、2011~12年度に約17兆円の復興予算をつけた。しかし、沖縄県の国道整備や反捕鯨団体「シー・シェパード」の対策費などに使われていることがわかり、今年度からは原則として被災地以外では使えないことにした。

 ところが、朝日新聞の調べでは、約17兆円からいろいろな基金に配られた約2兆円のうち、約20基金に配られた約1・2兆円分が被災地以外でも使えるままになっている。

 農林水産省が所管する「森林整備加速化・林業再生基金」には復興予算から約1400億円がついた。「被災地の住宅再建などのために材木が必要になる」という理由だ。

いわゆる復興予算を被災地以外で使う理由については以前のエントリで書いたとおりですし、繰り返しになりますが、被災地以外で使ったからといってそれがすなわち「流用」に該当するかといえばそうではないでしょう。一年前も予算を使い切ってなかったとかいって批判していたのはどこの国のマスコミでしたかね。国から交付された予算を自治体が基金化するのは、単年度主義をとる通常の予算執行に縛られることなく、基金化して運用益を事業に充当しながら事業を実施するためです。予算が残ることがけしからんというなら、基金化することは、「年度ごとの交付の事務を効率化しながら運用益で財政負担を軽減している」とか褒めてもらってもよさそうな気もしますが、それをしないところがさすがのマスコミクオリティです。

まあ、わかる方にはわかる話なのであえて書くこともないのですが、一般財源を基金化した場合は、歳計外現金という形で金融機関に預けて、国債などで運用しながら運用益を基金に繰り入れ、決算時にその運用益と基金を一般財源として事業に充当します。つまり、基金を財源とする事業は一般財源として予算計上され、議会での議決を経て実施されていますので、財源を充当する際に基金から繰り戻しするという点以外は、予算の査定も執行も決算も通常の事業と変わりありません。当然、基金も国の支出する交付金が原資ですから、会計検査院の検査対象となります。ということで、上記の記事で「基金の使い道をチェックしていないため、抜け道になっている」と書いているのは全くの間違いです。こうした初歩的な勘違いを一面記事にしてしまう日本の新聞の度量の大きさには、改めて感服するほかありませんねえ。

それに比べれば、NHKのニュースは

使われない復興予算 1兆2600億円余りに(NHK NEWS Web 5月11日 17時45分)

震災と原発事故で大きな被害を受けた東北の3つの県と市町村では、昨年度使われないまま今年度に繰り越された復旧・復興関連事業の予算が合わせて1兆2600億円余りに上る、異例の事態となったことがNHKの取材で分かりました。
工事を請け負う業者や行政機関の人手不足が主な原因で、専門家は国の支援の強化が必要だと指摘しています。

と予算執行が進まない理由まで取り上げていて、問題の認識の点では妥当なものとなっていると思います。

というところで、最近少し仕事に余裕ができたのでテレビを見る時間がとれるようになって、パオロ・マッツァリーノさんがお勧めされていたアメリカのドラマを見てみました。

 もう一本、それと入れ違いのようにはじまったアメリカのドラマ『ニュースルーム』にも、毎週うならされてます。テレビ局のニュース番組制作現場を描くドラマなのですが、ケーブルテレビ局制作なのでスポンサーの顔色をうかがわなくていいのが強み
 ティーパーティー運動は初期には中流市民の不満を代弁していたが、いまや急進的右翼に乗っ取られてしまっただとか、それに大量の資金を出してるのが大金持ちの実業家コーク兄弟だとか、劇中で実名批判をバリバリやってしまうんです。

どろどろ・骨太・良心のドラマ、そしてホンモノの懐疑論者( 2013/04/28 18:05)」(反社会学講座ブログ
※ 強調は引用者による。


WOWOWの番組紹介はこちら。

<ストーリー>
全米TV界で日々生き馬の目を抜く競争に追われる、報道専門チャンネル“ACN(アトランティス・ケーブル・ニュース)”。その人気キャスター、ウィルはある大学のパネルディスカッションで非国民発言をしてしまったことが問題視される。そんな彼のニュース番組を新任のエグゼクティブプロデューサー、マッケンジーが引き継ぐが、彼女はウィルの元恋人だった。そんな彼らやスタッフのもとに世界中から届く最新ニュースは、メキシコ湾原油流出事故、日本の東日本大震災と原発の事故など。ニュースの裏にある真実をどう捉え、どう伝えるか。時に激しい議論も辞することなく、彼らは生放送を通じ、本物のニュース番組を生み出していく。

ニュースルーム」(WOWOW


いやまあ、まさに骨太のドラマで、ニュース番組自体はもちろんフィクションですが、取り上げられている事件は実際に起こった事件で、事件の当事者も実名です。

ネタバレしない程度にストーリーを紹介すると、主人公のニュースキャスターのウィルは、共和党員でありながらニュースでは中立を保っていたものの、討論会で女子大学生から受けた質問への回答で民主党と共和党をこき下ろして、さらに質問した女子大生まで「非国民」と罵ってしまいます。それまでの独善的な態度でスタッフの総スカンを食らい、上司にスタッフを入れ替えられてしまうのですが、そこで雇われた元恋人のプロデューサーとともに(いろいろありながら)「国民に真実を伝えるニュース番組を作る」と番組で宣言します。そこで「真実を伝えるニュース番組」の方針として掲げられる項目が、日本のマスコミに比べて(ドラマ的にはアメリカのマスコミに比べてでしょうけど)とんでもなく深いですね。

  1. 選挙で投票する時に必要な情報か?
  2. 議論の形としてこれが最良だろうか?
  3. 背景を紹介しているか?

この方針に対して、会社の上層部からは「もっとニュースになる項目を取り上げろ」とか「他局の速報に負けるな」という圧力がかかるのですが、主人公を始めスタッフは動じません。油田事故のトピックでも、当初は油田会社が事前に自己処理の準備をしていなかったことをニュースとして取り上げるのですが、その後油田を検査する役所の予算と人員が大幅に削減されていたことがわかると、その検査官にインタビューしてどれだけ手が足りていないかを証言させたりします。あくまでアメリカのニュース番組に対するアンチテーゼとしてのドラマとはいえ、日本のマスコミにもそのメッセージは十分通用しそうです。
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