--年--月--日 (--) | Edit |
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


2013年05月04日 (土) | Edit |
hamachan先生が時ならぬメディアジャックをされているのですが、そのうちのワールドビジネスサテライトで興味深い事例が紹介されています。

そのジョブ型正社員を取り入れている企業がある

東京・中央区
花王

ヒットした新商品のデザイン担当者による
会議が行われていました

社員に職歴を聞いてみました

社員1
「新卒で入社で21年間同じ部署」
「パッケージデザイナーとして働いている」


社員2
「6年前に新卒でパッケージデザイナーとして入社」
「ずっとこの道を極めて行きたい」


花王デザイン部門
新卒採用の時点で仕事内容を限定して採用

原則異動はなく
専門家としてキャリアを積む


花王 作成センター 多治見豊センター長
「一般職とは全く違った形で」
「(デザイン部門の)メンバーが採用係をやって」
「最終的な決定は私がする形」

ヒットに繋がったデザインの数々が
この職種別採用の専門集団によって生み出されました

花王
海外法人では
幅広い分野で職種別採用を行う

ただ日本では
職種別採用はデザインや技術など一部のみ

営業など多くの分野は職種別採用せず
入社後に異動もある


花王 人材開発部 松井明雄 部長
「労働市場の環境が日本と違う」
「全体の中で企業として同じ方向に進んでいく」

「完全な職種別採用でそれができないかというと」
「必ずしもそうではないが長期雇用で育てる過程においては」
「いろいろな部署を経験することが重要」

ワールドビジネスサテライト,5/2,ライジングジャパンゲストスペシャル、規制改革への提言,濱口桂一郎」(ワールドビジネスサテライト.Log

花王のような大企業であれば大きな組織の中に専門的な部署を設けることができるので、ジョブ型に近い採用が可能となるのでしょう。しかし、それもあくまで専門的な部署の中に限られるのであって、一般的な事務職とか営業職では、人材開発部の部長さんがおっしゃるとおり「いろいろな部署を経験することが重要」とされるようです。それこそがhamachan先生が常々指摘されているメンバーシップ型の採用を中心とする日本型雇用慣行でして、正社員と呼ばれる従業員はほとんどこのような形で雇用されているのが日本の特徴となるわけです。

ところが、日本型雇用慣行の典型と思われているであろう公務員では、部門が多岐にわたることもあって職務限定型の採用がそれなりにあります。たとえば、震災後の人材不足が深刻な状況となっている大槌町の平成24年度の募集職種は、

  1. 一般事務職   5名程度
  2. 一般事務職(廃棄物処理施設管理士) 1名程度
  3. 身体障害者を対象とした一般事務職  2名程度
  4. 土木      2名程度
  5. 建築      1名程度
  6. 管理栄養士   1名程度
  7. 主任介護支援専門員 1名程度
  8. 社会福祉士    2名程度

平成24年度 大槌町職員採用試験受験案内

となっており、募集予定15名のうち、職種が特定されない一般事務職は(身体障害者を対象とした一般事務職を除くと)3分の1の5名にとどまっています。これだけを見ると、公務員は日本型雇用慣行ではなくジョブ型の雇用慣行ではないかと思われるかもしれませんが、それぞれの分野でもそれなりに仕事の幅があるので、そう単純な話ではありません。たとえば同じ土木職でも、道路と河川と港湾では事業内容も求められるスキルも違うため、部署も分かれており、土木職で採用された職員はそれらの部署間を異動しながら昇進するパターンが多いですね。

さらに、専門技術職として採用された職員がある程度事務能力があると認められると、事務職に異動してそのまま事務職として昇進していくというパターンもあります。要は、職務限定で採用されたとしても実際に配属される職場がその職に限定されるということはないわけです。結局のところ、職務限定の公務員であっても日本型雇用慣行そのままに異動していくことになります。

役所にいると、専門的な技術職で採用された職員がまるで関係ない部署に異動したりすると、かえって「あの職員は上に見込まれたんだな」とかいう評判が立ったりするわけですが、民間ではそう簡単にはいきません。この辺の事情について、瑞宝重光章を受賞された菅野先生の『労働法 第九版』(最新の第十版は職場においたままです。。)から引用すると、

 裁判例による配転命令の規制をより具体的に見ると、労働契約の締結の際に、または展開のなかで、当該労働者の職種が限定されている場合は、この職種の変更は一方的命令によってはなしえない。医師、看護師、ボイラーマンなどの特殊の技術、技能、資格を有する者については職種の限定があるのが普通であろう。典型例として、アナウンサーの他職種への配転命令については、当該労働者が大学在学中よりアナウンサーとしての能力を磨いて難関のアナウンサー専門の試験に合格し、しかも20年近く一貫してアナウンス業務に従事してきたという事情から、職種が採用時の契約からアナウンサーに限定されていたと認められ、それ以外の職種への配転を拒否できるとされた。
(略)
 このように、職種限定の合意に消極的な裁判例の傾向は、労働者を多様な職種に従事させながら長期的に育成していく長期雇用システムを背景としている。しかし、近年には、職種・部門限定社員や契約社員のように、定年までの長期雇用を予定せずに職種や所属部門を限定して雇用される労働者も増えており、これらの労働者については、職種限定の合意が認められやすいことになろう。これら労働者を配転させるためには、本人の同意を得るか、就業規則上の合理的な配転条項を用意しておく必要がある。
pp.442-442

労働法 第9版 (法律学講座双書)労働法 第9版 (法律学講座双書)
(2010/04/15)
菅野 和夫

商品詳細を見る

というわけで、職種限定であっても配転するためには本人の同意や就業規則の規定が必要となります。まあ逆に言えば、本人の同意があれば配転は可能なわけで、結局は職務限定であっても日本型雇用慣行による配転は不可能ではないといえます。

で、上記で引用した大槌町で募集されている専門技術職の受験資格を見ると、有資格者や専門課程の修了者となっているようです。これは、学歴要件がないのでおそらく大学のみではなく高卒や専修学校・短大卒も含まれると思われますが、実業校(学科)や理系の大学・短大が就職に有利というのはこうした専門技術を要する職が一定数存在するということからもいえるのでしょう。

いやまあ、実業校で職業能力を身につけることが重要であることは言うまでもないのですが、これを採用する側から見るとそうもいってられません。一定数の職が存在するという売り手市場に参入する学生・生徒は、それほど真剣にスキルを身につけなくても職に就けるという幻想を抱いてしまう可能性があります。特に日本の教育システムでは、優秀な生徒は普通科に進み、そうではない生徒が実業校(学科)に進むという構図があるため、専門技術職として採用される職員の中には基礎的な能力に欠けている者がいることが少なくありません。結局は、採用した後のOJTや配転によって経験を積ませて、いっぱしの職員に育て上げることが必要になるわけで、この点でも役所は日本型雇用慣行そのままの雇用システムとなっているといえましょう。

というわけで、震災で被災した沿岸部が舞台となっている朝ドラ「あまちゃん」では、主人公のアキが普通科から潜水土木科へ編入することが決まったわけですが、編入を巡る大人たちのやりとりがこうした職業選択の考え方を反映していて、「よくある光景だなあ」などと思いながら楽しく見ております。で、そのアキを出迎えた潜水土木科の先生と生徒が歌った応援歌が「南部ダイバー」というそうです。

アツい詩を発見!
誰が何と言おうと、カップ(ヘルメットの事?)かぶれば魚の仲間入りなんです。
We are 南部ダイバー!!
洋野町・種高祭で南部もぐりデビュー☆(2012-10-15)」(ひろのだより

クドカンワールド全開の細かいネタの仕込み具合に毎朝唸らされていたので、皆川猿時が湊カヲルそのままに「もっと来い! もっと来いよ!」と合いの手を入れたり、これもグループ魂のネタかと思ってましたが、まさか実在の歌だっとは! あのアツさが実業校っぽい…というのは偏見かもしれませんが、アキの職業選択やこれから描かれる震災も含めて、久しぶりに見逃せない朝ドラです。
スポンサーサイト


コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。