2013年03月25日 (月) | Edit |
いつの間にやらアベノミクスといういい方が定着して、日銀では総裁・副総裁にリフレーション政策に親和的な方(副総裁は「親和的」どころかある意味「首謀者」ですが)が就任されたとのことで、リフレーション政策を緩やかに支持する立場の者として心から慶賀した…いと思ったんですが、伝え聞くところによるとしばらくは実質の賃下げに耐えなければならないんだそうですね。

目賃金は上がらないほうがよい
その理由はあまり理解されていない

――では、こうした金融政策をやれば、経済はどのような経路で上向くことが考えられますか。デフレから脱却して「名目成長率」が上がり、それがどう「実質成長率」の上昇に結び付いて行くのでしょうか。

物価が上がっても国民の賃金はすぐには上がりません。インフレ率と失業の相関関係を示すフィリップス曲線(インフレ率が上昇すると失業率が下がることを示す)を見てもわかる通り、名目賃金には硬直性があるため、期待インフレ率が上がると、実質賃金は一時的に下がり、そのため雇用が増えるのです。こうした経路を経て、緩やかな物価上昇の中で実質所得の増加へとつながっていくのです。

その意味では、雇用されている人々が、実質賃金の面では少しずつ我慢し、失業者を減らして、それが生産のパイを増やす。それが安定的な景気回復につながり、国民生活が全体的に豊かになるというのが、リフレ政策と言えます。
よく「名目賃金が上がらないとダメ」と言われますが、名目賃金はむしろ上がらないほうがいい。名目賃金が上がると企業収益が増えず、雇用が増えなくなるからです。それだとインフレ政策の意味がなくなってしまい、むしろこれ以上物価が上昇しないよう、止める必要が出て来る。こうしたことは、あまり理解されていないように思います。

浜田宏一・内閣官房参与 核心インタビュー 「アベノミクスがもたらす金融政策の大転換 インフレ目標と日銀法改正で日本経済を取り戻す(2013年1月20日)」6
※ 以下、強調は引用者による。

流動性を供給するためにリフレーション政策をとることを前提として、それを家計に行き渡らせる再分配政策を同時に行うべきということを繰り返し指摘している」者として、これまで緩やかにリフレーション政策を支持してきたつもりですが、壮大にハシゴを外されたような気がしますが気のせいですかそうですか。まあ、リフレ派と呼ばれる一部の方々については、これまでも「制度を知らずにリフレーション政策ばかりを主張し、結果として制度を歪めてしまうような論調があって、それが「リフレ派」特有の制度を知らない議論に由来する」という疑念を抱いていたところですので、特に驚くことでありませんが。

それにしても、既にあちこちでツッコミ尽くされているとは思いますが、「供給ではなく需要の不足が不況の原因だ」として「デフレギャップ」が日本のデフレの原因だとおっしゃっていた「リフレ派」と呼ばれる一部の方々は、浜田先生の「雇用されている人々が、実質賃金の面では少しずつ我慢し、失業者を減らして、それが生産のパイを増やす」という供給過剰を助長するような言説についてはいかがな評価をされているのでしょうね。

浜田先生が編集されたによる論集では、浜田先生の総括コメントとして、

ベースマネーが、マネーサプライに反映されないのは、個人の(預金に対する)現金選好と、銀行の(貸し出しに対する)準備選好とが増加したためである。そうして、後者の効果も最近は重要であるが、長期的に均してみると前者の効果の方が圧倒的に大きい。このことは、ゼロ金利、デフレ期待を通じた効果が、貸し出し行動とともに、あるいは貸し出し行動よりもまして重要であることを示している。
pp.321-322

バブルの継続を許したのは、国際協調という口実(そもそも変動制下では国際協調の必要もメリットも微々たるものである)による政府からの圧力があったことも否めないが、同時にフローの物価が安定していれば資産価格のことはそれほど意に介さなくてよいという安心感が働いていたように思われる。1989年からの引き締めが急すぎたことに関しては、日本銀行を責めるのは酷かもしれない。バブルを引き締めすぎてデフレーションを招いたのは、最近の金融史でも稀なことであったし、「平成の鬼平」と呼ばれた三重野総裁が快刀乱麻にバブルを退治したときには国民の喝采が集まっていた。そして、野口・岡田[2003]にも引用されているように、岩田規久男教授らによる93年から引き締めすぎの弊害を予告した意見は無視されてきた。
p.329

速水総裁時代の日本銀行と福井総裁時代での日本銀行は、具体的な金融政策手段の行使という点ではそう変わりがなかったと考えられる。むしろ量的緩和の程度自体を比較すると、速水総裁時代の後半の方が、福井総裁の1年より穏健であったとすらいえる。デフレもすぐには収まらなかった。しかし、公衆に向ける政策説明のアナウンス効果において、福井総裁は極めて巧みであった。デフレ期待を煽らないようにという配慮が、新総裁の発言の各所に見られる。財務省の円高防止のドル買いオペに、それを不胎化するような政策を採らなかったのも大きな功績である。たしかに、インフレ・ターゲットや、国債の大幅買い増しといった、望ましいと考えられる強い薬は使わなかった。伝統的でない例外的な政策手段として、銀行株式の買い上げ等採用された手段は、モラルハザードを招きやすい。しかし、強い薬はあまり使わずにも、アナウンス効果は顕著であった
 おかげで、日本経済はようやく回復に向かいつつあるかに見える。メイン・ディッシュらしきものをあまり出さずにオードブルだけ出しているようでも、シェフのうまい口上でデガスタション(一口料理)のように国民を満足させたというべきであろうか。したがって、日本においても、公衆の予想の役割が極めて高いのである。福井総裁の高パフォーマンス自体、インフレ・ターゲットのような予想に働きかける政策が仮に行われていたら、それが有効であったことを証明しているようにすら思えるのである。今後の課題として、今の緩和基調に対する国民、市場の信頼を損なわずに、将来景気が回復してきて金利を引き上げなくてはならぬとき、それで不利益をこうむる金融機関等の抵抗をどう御していか(ママ)という、相矛盾する課題が残っている。
pp.330-331

 日本経済の産業各部門の構造問題は日本経済のマクロ運営に対して重要であり、そのためには、政府が一番やるインセンティブの少ない規制緩和、規制撤廃が必要である。したがって第4の論点として、経済主体の過去の誤りから生じた遺産である不良債権など金融部門の構造を改革していくことも、もとより重要である。これらが、たしかに金融政策を聞かなくしている一つの原因となっている。しかし、これらの改革には抵抗もあり時間がかかる。
p.332

 銀行経営の健全化も必要だが、デフレ下では借入需要も湧いてきにくい。国民経済全体が超過供給の状態にあることが構造問題の解決を難しくしている。金融政策が効かないから、構造を改善せよという論者は、デフレが一般物価の下落という、貨幣の通貨価値が上昇しているという基本的事実に目をつぶっている。(略)構造問題は重要だが、それを金融政策の工夫の不足や不首尾を言い逃れるための「いけにえの山羊」としてはならない。
p.334

論争 日本の経済危機―長期停滞の真因を解明する論争 日本の経済危機―長期停滞の真因を解明する
(2004/05)
浜田 宏一、 他

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というようなことが縷々綴られているのですが、実質賃金を下げることってのは「個人の(預金に対する)現金選好」を強めたりしないのだろうかとか、ははあ「変動制下では国際協調の必要もメリットも微々たるもの」とかいうから、ドラめもんさんが、

まあ何だ、こちらだと『「為替水準発言、ルール違反だと怒られた」』(上記URLより、以下同様)と言われているのにもめげずに堂々と『「通貨安戦争などという概念に問題」、「通貨安競争は変動制下ではむしろ望ましい」』と相変わらず飛ばす上に、「1ドル=98円とか100円というのがいいのではないか」』と具体的水準の言及キタコレという所で、なんかもう凄まじくお洒落なのですが、ここまでくるとマジデスカという感じですな。
本日のドラめもん(2013/03/15)

呆れるお洒落と賞賛されるようなことを平気で言ってしまうのだなあとか、量的緩和とかの水準そのものよりもアナウンス効果が重要だとおっしゃるなら白川前総裁をdisるよりその言動を褒め称えてアナウンス効果をサポートしてあげればよかったのにとか、構造問題に帰着させるような論者を腐しているかと思いきや「政府が一番やるインセンティブの少ない規制緩和、規制撤廃が必要」という効率的市場仮説バリバリの清算主義を披瀝されていたりと、改めて現在の文脈で読み返してみると、残業続きで寝不足の頭のクラクラが止まりません。

で結局浜田先生は、不況下で流動性制約の厳しい家計に対して金融政策による流動性を供給する経路としてどのようなものを想定しているのでしょうか。まあ普通は賃上げとかが想定されるでしょうし、社会全体の消費性向を向上させることで金の回りを良くするためには、賃金所得のみならず社会保障制度による所得の再分配も重要だろうと思うのですが、浜田先生のおっしゃることが企業の借入と金融機関の貸し出しがインフレ期待の中で高まればオールオッケー的な楽観論にしか読めないのは私の精進が足りないからなのでしょう。

その賃金水準についても、アベノミクスとか改めて言うまでもなく、政府が経済界に要請するといういつもの常套手段が行われていて、こちらも成果が表れているとかで話題になっています。でもまあ、ベアでもなく一時金のみの増額が行われたところで、将来の収入増が見込まれるわけでもなく、結局実質賃金は低下したままであればインフレ期待など誰特でしかありませんし、それで結局我慢を強いられるのであれば、「痛みに耐えて」とか「構造改革なくして景気回復なし」とか叫んでいた某元総理とどこが違うのかよく分かりませんが、それが理解できないのも私の精進(以下略)。

さらには、拙ブログでも参考にさせていただいているスティグリッツ教授が来日して「アベノミクスを評価」とか言われているようですが、インタビューを見ると浜田先生とは真逆に近いことを言っているような気がします。

TPP「日米国民のためにならぬ可能性」 米大教授(2013年03月22日23時10分 朝日新聞デジタル)

 ――日本は、どんな規制改革が必要ですか。

 「単なる規制緩和ならば、米国でバブルを引き起こし、金融危機につながり、世界で最もひどい格差を生み出したのでまねすべきでない。正しい規制がなければ世の中はうまく機能しない。ただ、日本には新卒一括採用などの窮屈な慣行がいくつも残っている。ダイナミックな経済にするために他のやり方を探るべきだ」

(略)

  ――政府・日銀の掲げる2%の物価上昇目標は、日本経済の成長にどの程度有効でしょうか。

 「(物価が下がり続ける)デフレは個人と国の実質的な債務を重くするので問題だ。デフレのペースは緩慢だが、長期にわたると影響が蓄積する。2%という目標は、わずかなインフレ率の上昇であり、実現は十分可能だ。すでに賃上げに踏み切った企業もあり、経済の回復に貢献するだろう

 「経済成長の課題に挑んでいこうとするとき、一方で格差が拡大しかねないという問題がある。安倍政権の掲げる『3本の矢』のうち、財政支出は所得の低い人たちのために多く使われるべきだ。低所得者は持っているお金の大半を消費するので、経済を刺激する効果がより大きい

まあ、スティグリッツ教授が日本型雇用慣行についてどこまで理解されているかはおいておくとして、「正しい規制がなければ世の中はうまく機能しない」というスティグリッツ教授が、賃上げとか低所得者向けの財政支出を重視している点はもっと注目されるべきだと思います。

ただし、そのスティグリッツ教授の主張についても、ケインズ研究の大家であるスキデルスキー教授が、リーマンショックの危機に対する評価でその限界を指摘しています。

 しかし新ケインズ経済学者も、危機を説明しようとして苦労している。新ケインズ派も前述のように合理的予想理論を受け入れているが、それでも市場が失敗しうるとの結論を導きだせている。完全な情報という「想定を緩める」方法で、この常識的な見方に到達している。新ケインズ派のジョセフ・スティグリッツはこう論じている。「金融市場の混乱は・・・情報の不完全性がいかに重要かを示している。・・・その結果は明らかだ。金融システムは資本の効率的な配分とリスクの管理という機能、果たすとみられていた機能を果たせなくなった」
(略)
 新ケインズ派のモデルは今回の危機であらわれた事実にかなりよく一致しているように思える。たとえば、銀行が融資を行った相手には、返済がまったくできない借り手が入っていたといった事実である。そのモデルの欠陥は、ローンの借り手や保険の買い手など、誰かが完全な情報をもっていると想定していたことだ。ところが今回の危機では、不確実性という問題があり、導く側も導かれる側も将来を理解できていなかったことが明らかになった。
(略)
ドナルド・ラムズフェルドの忘れがたい言葉を使うなら、「未知の未知」こそが躓きになるのである。誰かひとりが完全な情報をもっていれば、経済全体が危機に陥ることはない。だが、完全な知識をもっているのは神だけであり、神が株式市場で投資を行うことはない
pp.82-83

なにがケインズを復活させたのか?なにがケインズを復活させたのか?
(2010/01/21)
ロバート・スキデルスキー

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世の中がインフレ期待に完全な知識を持っていればいいのですが、果たしてそうなんでしょうかねえ。
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コメント
この記事へのコメント
ネットというのは大変ありがたいもので、残業続き寝不足の頭でクラクラしながら書いた駄文に対して、心優しい方々が私の無知蒙昧を温かい言葉で啓いてくださっています。

yasudayasu ネタ
失業者が雇用されて供給量が増えることは需給ギャップの拡大を意味しねぇ…リフレ派が名目賃金の硬直性を考えてきたこともわかってねぇ… ハシゴを外されたと感じるのは勝手だが相手の主張の正しい理解の上でないと2013/03/26
http://b.hatena.ne.jp/yasudayasu/20130326#bookmark-138065458

piccad
“潜在“供給、とのギャップな。生産量とのギャップではなく。元失業者による新たな生産は需要があるから起きる。労働人口などで決まる潜在供給は変わらないからデフレギャップは縮小。http://www.findai.com/yogo001/0004y01.html 2013/03/26
http://b.hatena.ne.jp/piccad/20130326#bookmark-138065458

wxitizi
デフレギャップのような重要で基礎的な単語一つ間違った理解をしていて、これまで引用に挙げてきた本やそこにある理論をどう読んでどう理解してきたんだろう?違和感さえ感じない程度の理解の仕方?2013/03/26
http://b.hatena.ne.jp/wxitizi/20130326#bookmark-138065458

nanashisan555
こんな認識でリフレに理解があるふりをし続けていたことのほうが衝撃だよ。スティグリッツが農業補助金廃止を主張していることも知っているのかね?決して日本のTPP反対派が喜ぶような考えの持ち主じゃないよ。2013/03/26
http://b.hatena.ne.jp/nanashisan555/20130326#bookmark-138065458

デフレギャップの理解が間違っていたとのことで、その点を丁寧に指摘してくださった方々に感謝の言葉もありません。心よりお礼申し上げます。「リフレに理解があるふり」をしている「程度の理解の仕方」の私には、浜田先生が「生産のパイを増やす」とおっしゃることが供給側をさらに強化することを意図しているように読めてしまったのですが、皆様にそのような程度の低い理解を晒してしまいましたことを誠に遺憾に思います。

そんな程度の低い理解による本エントリでは、タイトルを「誰が賃上げをするのか?」としているところですが、デフレギャップの理解不足がそのような頓珍漢な疑問を持ってしまう原因となっているのかもしれません。賃上げとは誰かが意図的に実施するものではなく、マイルドなインフレーションによって自然と発生するものと理解すべきなのでしょう(誰かが完全情報をもっていると想定する経済学の世界では)。
2013/03/27(水) 00:24:17 | URL | マシナリ #-[ 編集]
ヒントは
この記事。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDJ1401A_V10C13A2000000/

>募集広告は昨年から出していたが、反応が鈍いので思い切って時給を引き上げた」という。だが2月中旬になっても募集広告は張られたまま。店長は「もう少し上げないとダメなのか」と困惑顔だ。


賃上げをしないと求める水準の人が集まらなくなった企業が賃上げを行う。そのためには労働市場が逼迫するのが何より大切。2006年前後には一部労働市場で逼迫が起きて新卒の賃上げが起きた。さらに昔の好景気では人手不足倒産と広範囲の賃上げが起きた。
2013/03/27(水) 01:30:53 | URL | ぴっちゃん #-[ 編集]
> ぴっちゃんさん


ご教示ありがとうございます。
> 賃上げをしないと求める水準の人が集まらなくなった企業が賃上げを行う。そのためには労働市場が逼迫するのが何より大切。

なるほど、賃上げの前提として労働市場が逼迫することが必要とのご指摘は、roumuyaさんの
> それはそれとして中身をみてみますといきなり「日本版は賃金上昇に向けた3者合意になる。想定では、まず企業が賃上げを促進する。政府は賃上げした企業への優遇や失業者の就業支援を進める。労働者は労働市場の流動性を高める規制改革に同意し、一時的な失業増を受け入れる。」となっていて、いや賃金上昇に「向けた」合意なのに「まず」企業が賃金を上げる、というのは理屈が破綻しているでしょう。繰り返し書いているようにまずは経済状況や事業環境が好転することで人手不足状況となり賃金が上がるというのが正常な手順だろうと思います。

「■[労使関係]賃上げへ政労使協定(2013-03-24)」(吐息の日々)
http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20130324#p1

というご指摘と同様かと思います。私もその点には全く異論はないのですが、それはあくまでミクロの判断であって、roumuyaさんが引用部の後でご指摘のように、

> さてそうなると心配になるのは本当にこれでデフレ脱却できるかどうかで、デフレ脱却には個人の賃金が上がるだけでなくマクロで賃金総額が増えることが大事なはずで、今回この合意ができて個人の賃金は上がったとしても、「企業の不採算部門の整理」によって失業が増えることで賃金総額はむしろ減ることが大いに懸念されます。いや不採算部門を整理して企業が儲かるようになって採算がいい部門の労働者の賃金は上がるかもしれませんが、整理された部門の労働者はどうなるのかという問題です。あるいは新しい成長産業なるものに労働移動するとしても、はたしてそこでの賃金水準がどれほどのものか。まああまり楽観できる状態ではなさそうです。

マクロで見たときには、景気が好転してもその恩恵を受ける人と受けない人が生じる可能性はありそうに思います。景気のいいところは賃金を上げろ、それ以外の非効率なゾンビどもはクビを切れでは、結局誰のための景気好転なのか分からなくなりますね。

いずれにしても、
> 雇用されている人々が、実質賃金の面では少しずつ我慢し、失業者を減らして、それが生産のパイを増やす。

とおっしゃる浜田先生と、

> すでに賃上げに踏み切った企業もあり、経済の回復に貢献するだろう

とおっしゃるスティグリッツ教授のどちらが正しいのか、程度の低い理解の私にとっては疑問が深まるばかりです。
2013/03/27(水) 08:19:53 | URL | マシナリ #-[ 編集]
どちらも
正しい。政府から強制力もない要請をされたぐらいで、企業が自主的に賃上げをしたならそれはその方が企業にとってもメリットがあるから。当然、被雇用者にもメリット。よって社会的に望ましい可能性が高い。
一方で、本来ならデフレに合わせて賃下げをするべきだったがそれが困難で代わりに時間外労働や採用を絞ってきた企業にとってインフレで実質賃下げになれば調整が進んでメリット、絞ってきた時間外労働や採用が進めば失業者にはメリット。既に雇用されていた者には、単価が下がるデメリットと労働時間が増えるデメリットがあるが、時間外労働により手取りが増えるメリットと、そして失業の減少による、将来的に労働市場が逼迫して単価が上がる可能性や辞職した場合に次の仕事が見つかりやすくなるメリットを合わせれば、それらデメリットを上回る可能性は十分に大きい。ここに企業や失業者のメリットまで合わせて考えれば、社会的に望ましい可能性が非常に高い。
2013/03/27(水) 18:07:58 | URL | ぴっちゃん #-[ 編集]
> ぴっちゃんさん

たびたびのご教示ありがとうございます。
ただ、今回のコメントは私の疑問をさらに深めることとなりそうです。

> 企業が自主的に賃上げをしたならそれはその方が企業にとってもメリットがあるから

これは、roumuyaさんが「不採算部門を整理して企業が儲かるようになって採算がいい部門の労働者の賃金は上がるかもしれませんが、整理された部門の労働者はどうなるのかという問題」と指摘されている点そのものですね。企業は当然メリットのあることしかしませんから、「賃上げ」という一方で不採算部門を整理して企業が儲けるのであれば、マクロでのデフレ脱却にはつながらないように思います。

そもそもなんですが、
> 本来ならデフレに合わせて賃下げをするべきだったがそれが困難で代わりに時間外労働や採用を絞ってきた企業
ってどれだけ実在するんでしょうか。日本型雇用慣行において時間外労働が雇用調整の手段として用いられてきたのはおっしゃるとおりですが、その前提として時間外手当が満額支払われている必要があります。時間外手当を含めた人件費を調整するのがその目的であるならば、日本のようにサービス残業が当たり前という雇用慣行がまかり通っている中では、時間外労働の多寡は雇用調整の手段というより業務量の調整手段となっているのが現状ではないかと思います。

また、労働市場が逼迫して在職者の賃金が上昇するという経路も不明です。確かに、効率的賃金仮説によれば、在職中の従業員の賃金水準は転職した場合よりもわずかに高めに設定されるはずですが、おそらくそんな情報を的確に把握してそのとおり実行できるのは大企業に限られるでしょう。日本の99%を占める中小企業の大部分はそのような情報も余裕もない中で賃金水準を決定しているのが実態ではないかと。

スキデルスキー教授が「誰かひとりが完全な情報をもっていれば、経済全体が危機に陥ることはない。だが、完全な知識をもっているのは神だけであり、神が株式市場で投資を行うことはない」とおっしゃるとおり、 ぴっちゃんさんが想定されるような「賃金を決定する労使の当事者が完全な情報を持つ世界」であれば、こんなことは杞憂なのかもしれませんが、労働者の中にも使用者の中もに「神」はいないと思うのです。いやまあ、「○○の神」と呼ばれるカリスマサラリーマンやカリスマ経営者は掃いて捨てるほどいますが、その方々が「神」であるのはミクロな世界でしかありませんからね。
2013/03/28(木) 08:29:50 | URL | マシナリ #-[ 編集]
本来のインフレ政策
賃金も含めて全ての財の価格の(2%)上昇を求めるのが本来のインフレ政策であって、実質賃金切り下げで雇用拡大という理解は、浜田先生の理解であって、そうでないリフレ派もいると思います。

通常は、賃金は多の財の価格より遅れて上昇します。つまり、実質賃金は一時的にせよ下がるので、その期間は所得再分配政策をもっと行え、というのが左派リフレ派のとるべき立場でしょう。
2013/03/30(土) 10:07:16 | URL | a #-[ 編集]
> aさん

「本来のインフレ政策」とか「左派リフレ派」という言葉が普通に使われているものかよく分かりませんが、財の中で賃金が遅行するといはいえ、すべての財の価格が上昇するということは、長期的には相対価格に変化がないということなのでしょうか。長期的な相対価格には変化がないものの、その経路が様々だから一時的に再分配を行うというのは、あまり左派的ではないと思うのですが。

エッジワースのボックスダイアグラムに示されるように、市場で決まるコントラクトカーブ上の財の配分(とそれに基づく相対価格)は、確かに効率的ではありますが公平であるとは限りません。特に市場の取引で取引主体の一方が極端に配分を得てしまう可能性を考えれば、それを是正するための所得の再分配が常に必要であるはずです。

市場で効率的な取引を確保することは大前提ですが、その結果ミクロで不可避的に生じる不公平な配分は、社会全体の消費性向を低下させてしまい、経済成長を妨げる要因となるでしょう。結局所得の再分配で経済成長を促すことが不可欠であり、所得の再分配が現金給付に偏った場合には応益負担やなりすましなどの問題が生じますので、権丈先生の請け売りではありますが、必要原則による再分配を達成するためには現物給付が重要だろうと思うところです。
2013/03/31(日) 08:55:01 | URL | マシナリ #-[ 編集]
>長期的には相対価格に変化がないということなのでしょうか。

インフレ政策は、ある時点を止めてみたときの、財同士の相対価格を変化させる政策でなく、将来財と現在財の相対価格を変化させる政策だとの理解が普通ではないでしょうか。

なお、私が「左派リフレ派」といったのは、実質賃金が一定でもリフレ政策が(理論的には)成功するので、リフレ派かつ左派の立場をとるならば、生活保護や最低賃金の引き上げを求めるのが本来のあり方だと考えているからです。
実質賃金切り下げで雇用拡大というのは、“右派的”なリフレ派だと思います。

私は左派なのでブログ主のとおり所得再分配には現物給付は有効だと考えています。それどころか、権丈先生と同じく増税賛成派です。

リフレ派は、増税で社会保障充実をする政策に冷淡な人が多い(=構造改革シバキアゲ派)ようなので、どちらかといえばそちらの方に私は批判的です。
2013/03/31(日) 13:33:34 | URL | a #-[ 編集]
> aさん

なるほど、aさんが左派であるために左派リフレ派という言葉を使われたのですね。しかし、

> リフレ派かつ左派の立場をとるならば、
ということと、
> 実質賃金切り下げで雇用拡大というのは、“右派的”なリフレ派だと思います。

ということが矛盾しているという指摘が通じないのがリフレ派と呼ばれる一の方々です。「リフレ派なんて派閥はない」とかおっしゃる方々は、aさんのおっしゃるような

>リフレ派は、増税で社会保障充実をする政策に冷淡な人が多い(=構造改革シバキアゲ派)

のですが、それをいうとデフレ派だのと罵られるという堂々巡りが続いていますね。

まあ、私は緩やかにリフレーション政策を支持する立場ですから、流動性制約が緩和されることで所得再分配を通じた経済成長が達成されるのであれば、リフレ派と呼ばれる方々が何をいおうと構わないのですが、倒錯した状況だなと思わずにはいられないのが辛いところです。
2013/04/01(月) 00:41:16 | URL | マシナリ #-[ 編集]
遅ればせながらドラめもんに取り上げていただきました。

http://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/doramemon1303.html#130328

> 確か官邸ホームページだか何だか(とっさに出てこない)で賃上げをしている企業の顕彰でもしたいのか取り組みご案内とか出していてどこのシャカイシュギだよとか思ってしまう今日この頃

シャカイシュギとまではいきませんが、戦時経済統制のような風景ではあります。ただ、上のコメントで引用させていただいたroumuyaさんのエントリで取り上げられている政労使の協定くらいのことであれば、北欧などの社会民主主義なコーポラティズムの国々では普通に行われているのではないかと思います。私も社会民主主義とシャカイシュギの線引きはよく分かりませんが、個人的には、社会全体で賃上げをするという合意があれば、それなりに経済成長に効果があるのではないかと考えております。
2013/04/01(月) 00:51:58 | URL | マシナリ #-[ 編集]
>それをいうとデフレ派だのと罵られるという堂々巡りが続いていますね

消費税を1%ずつ四半期ずつあげるなどの、段階的増税がインフレ期待を高めるという議論は、フェルドシュタインや山形浩生が昔していたはずです。最低賃金引き上げがインフレ期待を高めるという議論もあります。要は増税もやり方によってはリフレに役立つわけです。

インフレ期待を高める手段はいろいろあって、増税による社会保障充実や最低賃金引上げなどとミックスするという手法(=左派リフレ派)もあるのに、それを主張する左派政党がなく、金融緩和に批判的な左派ばかりという現況にも原因があるかもしれません。

日本の左派は増税にも冷淡に思えます。まあ、日本で増税を訴える側は財政再建や構造改革シバキアゲ派が多いということにも原因があるのでしょぅが。

2013/04/01(月) 16:39:30 | URL | a #-[ 編集]
aさんの真摯な議論のおかげで、
2013/03/27(水) 00:24:17 | URL | マシナリ #-[ 編集]
のコメントで取り上げていた私の無理解も幾分は緩和できたように思います。ありがとうございました。

一方で、そうした議論の仕方と別の議論を見かけてしまうと、しかもそれがリフレ派と呼ばれる方々のものだったりすると、何ともいえない脱力感に襲われてしまいます。

「2013年03月29日のツイート」(WATERMANの外部記憶)
http://d.hatena.ne.jp/WATERMAN/20130329/1364583663

> 立場の弱さゆえ原発問題は極端な議論になってしまう。つまり http://p.tl/x2cG の通り絶対反対派の存在である。 http://togetter.com/li/478645#c1020552
https://twitter.com/WATERMAN1996/status/317391358371438593

> 絶対反対派が一定の勢力を持つと、原発には毛ほどの瑕も許されないという事になる。つまり、絶対反対に対しては絶対安全を主張しなければならなくなると言う事。建設的な議論ができない。実はこれ、イスラム過激派.. http://togetter.com/li/478645#c1020554
https://twitter.com/WATERMAN1996/status/317392609876271105

> だからまずは「相手の意見を否定せず尊重する」という議論のルールを作るところから始めねばならないと思う。 http://togetter.com/li/478645#c1020556
https://twitter.com/WATERMAN1996/status/317393927256829952

こういった誠に真摯な議論をされている方が、同じ日に

> プライムニュースに藤井氏と与謝野氏が出ている。アベノミクス批判、円高崇拝、株価上がっても効果はない、インフレはダメ。こいつら本当に速く天国へ行けと言いたくなるほど醜悪。
https://twitter.com/aono_show/status/317603798593986560

> 要するに破綻がはっきりしている厚生年金や共済年金の受給者への補償を確かなものにするため、低所得で年金保険料も負担できず、もらえる年金も「生きられない程度」の人から巻き上げるというのが彼らのやり方なんだよ。
https://twitter.com/aono_show/status/317610537800306689

というtweetをRTしているわけでして、いまどきあの民主党ですら「年金が破綻している」なんて言わなくなっているのに、この辺がリフレ派と呼ばれる方々のダブルスタンダードを感じてしまう一因なのだろうなあと思うところです。
2013/04/05(金) 08:02:11 | URL | マシナリ #-[ 編集]
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