2013年01月06日 (日) | Edit |
やるべきことがたまりにたまりまくってしまいブログの更新もままならないのですが、昨年末の拙ブログのエントリにhahnela03さんから大変興味深いご指摘を受けていましたので、備忘録としてメモしておきます。

 基本的に個人の財産形成のために補助金を入れるのが目的の「グループ補助金」ではありません。それでも特例としてであっても条件として、国・県からの拘束性があります。被災家屋や営業施設(賃貸物件は除く)などには、国・県・市町村からの拘束性が無い、施設のみの「修繕補助金(1,500万円)+復旧補助金(2,000万円)」があります。グループ補助金は「設備」が対象になることが大きいわけです。「施設」の補助だけですませて、商工会議所「遊休資産マッチング事業」やガバナー・ライオンズクラブ等からの設備支援を組み合わせることで、被災地は「グループ補助金」でしか助けられないわけではないのです。被災地で問題なのは、二重に補助を得る方達が偏りすぎることに本当の問題があります。
 だから権利と利権の調整が大事なんですね。

津波被災の記録91(2012-12-19)」(hahnela03の日記
※ 以下、強調は引用者による。

被災地で聞いた話などを基に書く部外者の役人の備忘録ですので、正確な情報は担当窓口にご確認いただきたいのですが、そもそも「グループ補助金」とはどういう制度であったかを確認しておくと、第1次の採択(平成23年8月5日)の説明によれば、

1.制度概要
復興のリード役となり得る「地域経済の中核」を形成する中小企業等グループが復興事業計画を作成し、県の認定を受けた場合に、施設・設備の復旧・整備について補助を行います。

2.採択決定
平成23年6月13日(月)から24日(金)まで公募を実施。
本事業の採択決定は、県の計画認定審査会、国の補助事業審査委員会の審査を踏まえ、行いました。

中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業の採択事業決定(平成23年8月5日)」(中小企業庁

というような補助制度です。中小企業庁のWebサイトに掲載されている最新(平成24年7月31日)の第5次採択のページでは、採択決定方法についての説明が「応募された案件について、県の計画認定審査会において復興事業計画の認定を行い、国の補助事業審査委員会の審査を経て、以下の通り、各県において補助金の交付を決定しました。」と少し詳しくなっていまして、手続としては、県の認定審査会が認定した復興事業計画を、国の審査委員会が審査して採択を決定しているということになります。

基本的な確認となりますが、行政が補助事業という場合は「ある事業体(民間も自治体も含みます)が自らの経費で実施する事業」に要する経費を対象とします。つまり、補助事業の実施主体はあくまで自らの経費で事業を実施する民間事業者や自治体などとなります。ただし、補助事業の制約として公費から支出された補助金によって購入されたものは、期間を限定する場合を除いて、原則としてその耐用年数が経過するまでは補助金を交付した国又は自治体の管理下にあります。例えば、廃校になった校舎を活用しようとしても文科省の補助金で建てたから国の許可が必要*1とかいう話がその典型でして、その理由は、いうまでもなく補助する公費の原資が税金である以上、その使い道を国又は自治体が適正に管理しなければならないからですね。

国や自治体が適正に管理するためには、被災者向けの事業に限らず、施設整備のような不動産の購入経費や一過性のソフト事業の実施経費を対象とする補助事業が多いわけでして、hahnela03さんが「国・県からの拘束性」とおっしゃるのはそうした補助事業の制約を指しているのではないかと思います。その点では、「修繕補助金(1,500万円)+復旧補助金(2,000万円)」も補助事業の制約があると思うのですが、個別の事業の特約があるのかもしれません。

いずれにしても、そのような補助事業と比べると額の面で格段に有利(お得)なのが、民間事業者の個別の設備(機械から什器に至るまで)を対象とすることができ、国と県から「定額の上限なしで3/4の補助率」で補助金が交付される「グループ補助金」なわけです。役所の職員なら実感されるだろうと思いますが、昨今の緊縮財政の中でこの「定額の上限なしで3/4の補助率」というのは破格の補助率です。

もちろん、これだけ有利な補助事業で採択されるためには、上記のとおり民間事業者が「復興のリード役となり得る「地域経済の中核」を形成する中小企業等グループ」を作って、そのグループが作成した復興事業計画を県が認定し、さらに国が審査するというプロセスを経なければなりませんが、逆にいえばそうしたプロセスを首尾良くかいくぐって採択された事業所には破格の補助金が交付されることとなるわけです。

これを「選択と集中」といえば聞こえはいいのですが、問題は、県の認定とか国の審査が適正な復興事業計画を採択しているのかは誰も保証できるものではないということです。特に震災後に膨大な量に膨れ上がった事務を抱えている役所が、「復興のスピードが遅い」という批判を受けながら説明責任を果たせる(と思われる)ギリギリのラインで採択しているのが実態でしょうから、その過程はともかく「選択」して「集中」した「結果」が誰からも納得されるとは限らないわけです。

hahnela03さんのご指摘に戻ると、「被災地で問題なのは、二重に補助を得る方達が偏りすぎること」というのは、破格の「グループ補助金」を受けることができた民間事業者とそれ以外の支援の格差が広がっているということではないかと思います。実をいえば、部外者の役人である私ですら、被災された事業者の方から「うちだって○○業を営んできちんと税金も払ってきたのに、なんでグループだと何億円も補助金を受けられて、事務所も家族も流されたうちの会社は数十万円の補助金しかもらえないんだ!」と詰め寄られたことがあります。上記のグループ補助金の仕組みについてもそのとき教えてもらったのですが、そのような状況にある方からすれば、いくら補助金の実施要綱などで基準が示されていて採択や不採択の理由が示されたとしても、その「結果」が納得できないものとなるのは当然のことかもしれません。

補助金の採択という競争に勝ったものが「選択と集中」によって手厚く保護されていくというのは、「競争」と「保護」という言葉の意味を考えると根本的な矛盾をはらむような気がするところです。この点については、以前の競争的資金の事業仕分けについてのエントリで、「競争するという以上事業の数を増やす必要があるだろうし、評価に基づいた割り当てが行われるなら(あくまで制度上の評価でという意味ですが)一部の「優秀」な研究者に資金が集中するのも当然ではないかと思うわけで、もっと競争しろというのか、それじゃダメだから査定を厳しくしろといいたいのかのかはっきりしません」と書いたのと同じ構図があるように思います。結局のところ、「競争的市場原理により行政の効率化を図る」というようなNPM的手法の論理矛盾がここにも露呈しているわけで、「ネオリベ的行政手法」とはhahnela03さんの言葉ですが、まさに言い得て妙ですね。

と思ったら、グループ補助金の採択についてhahnela03さんが新たなエントリで言及されていました。

そもそもこの補助金は被災した地域で残すべき産業内の企業の取捨選択という意味がある「勝ち取る補助金」であったはずなのが、一次から三次の選定で地方自治体が歪めてしまったことが拙かった。

津波被災の記録92(2013-01-05)」(hahnela03の日記

具体的な内容は後でまとめられるとのことですので、その際は拝読させていただきたいと思います。

なお、冒頭で引用したhahnela03さんのエントリのメイントピックである緊急雇用創出事業の問題については、新聞等の報道でしか情報がないのですが、それらの報道を見る限り

実務なんぞやったこともない有識者とかいう連中が高邁な提言をしようが、政治家連中が「新しい公共」なんてほざこうが、緊急雇用創出事業は委託事業であって、都道府県や市町村が実施すべき内容でなければ事業立案できないし、事業立案しても委託先が想定されなければまともな積算もできず予算要求は通らないし、運良く予算要求を通っても、委託先を決定するにはよっぽどの理由がなければ随意契約なんかできないし、総合評価方式による入札やら企画競争による選考委員会を開催しなければならないし、そのために膨大な量の資料と関係者の日程調整をして会場を確保してホームページにアップして、説明会やら問い合わせに対応して委託先を決定して、委託先が決定したら契約書を作成して事業の進行管理やら労働者の従事状況の確認をして、年度末にはすべての事業の書類をチェックして完了確認しなければならないんですよ。それをどうやって現存の職員でこなせというのでしょうか?

「古い公共」の手続(2011年08月21日 (日))

というような委託事業*2のノウハウや人員が不足していた役場とそれにつけいるNPOが震災後のドタバタの中で不幸にも手を組んでしまい、その問題が資金繰りの行き詰まりと従業員の解雇という最悪の形で顕在化したものといえそうです。結局は、「実務なんぞやったこともない有識者とかいう連中が高邁な提言をしようが、政治家連中が「新しい公共」なんてほざこうが」現実に問題は起きるわけで、震災後に膨大な緊急雇用創出事業を押しつけられたツケを被災地が後始末させられるしかないのでしょうか。




*1 補助事業で購入した場合の考え方は、自動車を割賦販売(ローン)で購入した場合に似ています(似て非なるものですが)。例えば、「補助事業に要する経費として耐用年数6年の自動車の購入経費を対象とする」という補助事業の場合、その趣旨は「補助の対象となる事業が続くことを前提として、耐用年数が6年の自動車を買う経費を補助する」ということです。ローンで自動車を買った場合、ローンを払い終わるまでは販売店かローン会社に所有権があるのと同じように、補助の対象となる事業で使用する自動車についても、補助の対象となる事業が終了するか耐用年数の6年を経過するまでは、その自動車を補助の対象となる事業のみで使用しなければならないという点で国や自治体の管理下にあるというわけです。したがって、補助事業で予定されていた期間よりも前に自動車を他の目的で使う場合は、自動車のローンを前倒しで完済して自分の所有物にするように、耐用年数に応じた残存価額分の補助金を返還して自己の管理下に置く必要があります。
*2 委託事業である緊急雇用創出事業は、県や市町村などが委託事業として予算化して、それを発注したときはじめて民間事業者が受託して実施できるものですので、民間事業者があらかじめ失業者を雇用して実施している事業は委託事業となり得ません。法律上は事実行為の委任である準委任であって、上記で説明した補助事業の手続とは全く逆になります。
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