2012年12月11日 (火) | Edit |
世の中は12月というはた迷惑な時期の総選挙のまっただ中ですが、震災から21か月が経ち、震災の記憶はすっかり風化してしまったようです。現時点で震災と言えば、震災以降いまだに誰一人として死者の出ていない原発問題が依然として騒がれている程度で、最近のマスコミ報道も活断層の問題で持ちきりです。

拙ブログでは震災からの月命日を「1年と○か月」とか「(通算)○か月」とか書いているのですが、正直な感想として、あの震災から時間が止まってしまっている感覚が強くあるため、「21か月」という方がしっくりきます。特に被災地の現状を見ていると、がれきの山がまだまだうずたかく残っていて、地権者との交渉も進まず土地が確保できないために高台移転も埋め立ても進まない状況で、進むべき方向性が見えなくなってきていると感じます。もちろん、そんな中でも操業を再開した企業などは順調に業績を回復しているところもありますし、個人で土地を確保して新築の家に移り住んだ人もいます。アシモフのマラソンのたとえでいえば、同じゴールを目指して一生懸命に走っているランナーであっても、ゴールにたどり着くまでには長い列になってしまう、つまりは同じ被災地の中でも震災以前の状況に戻りつつある方と震災後の状況から抜け出せない方とに二分化していくことになります。

インフラが流されてしまっている土地では、その土地で活動する以上は誰でも同じ条件からのスタートとなります。特別に才能のある誰かがその才能で再建を進めるなんてことはごく稀な例であって、圧倒的多数の方はイコールフッティングすら確保されない中でなんとか使えそうな支援制度を探しているというのが実情です。相変わらずマスコミ報道は復興予算が足りないとか復興が遅れているとか声高に主張しては、「グループ補助金」という筋の悪いフィクションの予算を増額すべきなんて書き立てているわけですが、グループ補助金への要望が強いのは他に個人資産に対する補助制度がないからであって、グループ補助金のスキームそのものが有効だからでは必ずしもないんですが、そういった現場の感覚が共有されることもなくなってきています。

同じことは、被災地支援に当たっている「新しい公共」な方々にも共通する問題でして、がれきのキーホルダーを作る活動などで支援を続けている「和 RING-PROJECT(リングプロジェクト)」の方がその現状を指摘されています。

時間経過と共に、格差が生まれ出します。
浸水域と非浸水域の差は半端じゃありませんでした。
支援金や助成もこの浸水域と非浸水域で行政は決めてしまいました。
これは、今でも変わっていません。
復興計画も....

そして、みんなが避難所から仮設住宅に移った時点で、行政で補えない部分をNPOや支援団体に助成金を投げる事により、国は原発問題以外の被災地域から手を引きました。
違うかも知れませんが、僕にはそうとしか思えません。
これが、ボタンのかけ間違いの始まりです。

この事によって、何がこの沿岸で生まれているかわかりますか?
NPOや支援団体の助成金や支援金の争奪合戦です。
みんなとは言いませんが、顔色を見合いながらどうすれば活動費や助成金を貰えるかの腹の探り合いが生まれています。
被災した方の立ち場や現状を中心に活動する事は、ある意味この沿岸ではお上に逆らう様な事になる可能性も生まれています。
同じ気持ちのはずなのに、いや、同じ気持ちだからこそ同じ思いが生まれ、その活動資金を巡り支援団体同士がおかしな関係になっています。
(略)

この混乱を正直に報告したら支援が止まるんじゃないかと、地元の人間が活動している団体ほどとドキドキしてしまってるんです。
地元団体ほど、この活動により自身の生活の糧を得ている方が多いために、支援頂いている財団や企業に活動報告し支援を継続していただくために、こなさなければ行けない状況が生まれ準備不足になり結果的に参加してもらいたい地域の方を置き去りにしてしまったり、本当は違うと思いながら活動をしていたりという状況が不本意の中で生まれいます。
これが、地元の人間同士の溝を深めていたりしています。
でも、地域の活動団体は本当に復興に繋がればと必死なんです。

悲し過ぎる行き違いが生まれています。

悲しいすれ違い....「支援」(2012年12月01日(土) 02時58分06秒)」(いつかは、仙人のブログ

このエントリは、それまで2回にわたって復興計画や予算の立て方について思いを述べた上で書かれたものですが、私のような下っ端の役人からすれば、このエントリ自体がその前のエントリで書かれていたことへの回答になっているように思います。全く力が及ばないながらも復興のお手伝いをさせていただいている私の立場では、被災地の住民の方々が置かれているさまざまな状況にすべて対応することは到底不可能と感じてしまいますし、「住民の合意の下に復興を進める」ということも言葉で言うほど単純な話ではないと思わざるを得ません。そのことは、まさに引用させてていただいたブログ主さんが支援団体の当事者として巻き込まれている現状にも当てはまります。つまりは、使える制度をいかに探していかにそれを獲得するかという能力やネットワークの有無が再建への近道となるわけです。

hahnela03さんの言葉をお借りすれば、それは政策評価とかNPMとかの市場原理的で効率的な「ネオリベ的行政手法」によってもたらされたものであって、小泉政権下で叫ばれた「民間でできることは民間に」という言葉が象徴するように、民間からの支援でも「効率の悪いものは支援しない」という姿勢は変わりはありません。むしろ民間企業の日本的なCSRでは「成果」が求められる傾向が強いように思いますし、だからこそ「支援頂いている財団や企業に活動報告し支援を継続していただくために、こなさなければ行けない状況が生まれ準備不足になり結果的に参加してもらいたい地域の方を置き去りにしてしまったり、本当は違うと思いながら活動をしていたりという状況が不本意の中で生まれ」ているのでしょう。

そして、上記のブログ主さんがその前のエントリで指摘されているように、地元自治体も「本当は違うと思いながら活動をしてい」るのが実情だろうと思うところでして、確かにそれは「悲しき行き違い」と映るのかもしれません。こんなことを書くと他人事の役人根性と思われそうですが、誤解を恐れずに言えば、支援団体ですら否応なく巻き込まれる「行き違い」はそもそも避けることのできないものであって、その「行き違い」を解決することはおそらく住民の合意の中では難しいだろうと思います。そうであれば、「悲しくない行き違い」の所在をお互いの立場の中で相互に探り合い、できるだけ少ない遺恨を残しながら進めるしかないのではないかと考えるところです。この国では、その間に入って悪役に仕立て上げられながらその遺恨を背負い込むのも行政の大事な仕事ですし。

役人というのは、そうした諦観に立ってその中でせめてできることから進められるところを探る癖がついているのかもしれません。そういう考え方がネガティブと思われても仕方ないのかもしれませんが、そんな諦観を持って現状を眺めてみると、実は「りーだーしっぷで決断を!」とか「抜本的なカイカクを!」というポジティブさこそが「せめてできることから進める」という選択肢を住民の方々から奪っているようにも思うところです。

実は、先日こんなテレビをチラ見しまして、

11月30日(金)午後7:30~8:43
東北Z スペシャル「住民合意への道~誰もがいち早い復興を願っていた~」

震災の壊滅的な被害を被った沿岸部で、いま膨大な量の公共インフラ復旧事業、復興まちづくり事業が進められている。居住地の復興は喫緊の課題だが、事業着手する上では「地域住民との合意形成」が前提となる。しかし規模の大きな地区では調整が難航し、時の経過とともに分裂・複雑化しており、「住民合意」が進まぬ復興の「壁」となりかねない様相を呈している。 番組では、気仙沼市において「防潮堤を勉強する会」を立ち上げ建設的な合意形成で防潮堤計画に住民の意思を織り込もうという取り組みと、名取市閖上地区を現地再建する行政の計画案に判断が割れる市民たちの復興に向けた取り組みにスポットを当て、大震災を経験した日本において“合意”とはどうあるべきか、その形を探っていく。

この番組の最後に登場した有識者の方(名前は確認できませんでした)が「住民の合意は必ずできる」とかコメントされていたのですが、番組の本編ではそんな楽観論を蹴散らすほど深刻な住民団体の意見の対立が描かれていて、その有識者のコメントがかえって空々しく聞こえるほとでした。かくも合意形成というのは難儀な作業なのですが、それを生業としている役人は、特に合意形成の場面で批判されることはあっても感謝されることはないわけで、被災地の役人の受難はまだまだ続きそうです。

(念のため)
夜中に朦朧としながら書いているうちに書きたかったことが書けませんでしたので念のため補足いたしますが、本エントリは引用したブログ主さんが書かれたことを題材として、被災地とひと言でいってもいろいろな立場の方がいること、その中で「古い公共」も「新しい公共」もそれぞれの立場から支援に当たっているものの、立場の違いからはどうしてもすれ違いが生じてしまうという現実を知っていただきたかったというのが本エントリの趣旨です。ブログ主さんを批判する趣旨はありませんが、立場が違うと考え方も変わってしまうということも現実でして、かといって、その現実を批判してしまうと結局は立場の違いを乗り越えることができなくなるというジレンマがあるのだろうと思います。
スポンサーサイト


コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック