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2012年11月22日 (木) | Edit |
というわけで、前回エントリの最後で取り上げた常見著『僕たちはガンダムのジムである』ですが、前回取り上げたような「承認を与えて“やる気”を引き出せば世の中が変わる」という表層的な組織論で熱に浮かされた頭を冷ますのに絶好の本だと思います。ジムというガンダムの中で決して主役になり得ないモビルスーツを題材に取り上げることで、「やる気を出して自分磨きをすればスーパー公務員になれる」というようなキャリアアップ論の空疎さを完膚なきまでに描き出していて、管理主義にもモチベーションアップにも迷いながらバッシングに晒されている公務員にも参考になると思います。

いやもちろん、ガンダムがいくらガンヲタを量産し続けているとはいえ、某CMで古舘寛治が「世の中の人がみんなガンダム好きではないですよ」というように、「ガンダムのジム」といってピンとくる層は限られているでしょう(実をいえば私もファーストガンダムだけは何とかついていける程度です)。そもそもガンダムが放映された1979年というのは第二次オイルショックのまっただ中で、高度経済成長期末期から日本型雇用慣行が確立された時期でもあって、日本型雇用慣行と「春闘」方式が高インフレによるスタグフレーションの進行を抑え、1980年代の日本経済の一人勝ちを準備していた時期でした。またこの時期は、就業規則不利益変更法理とか解雇権乱用法理とか整理解雇の4要件(東洋酸素事件の東京高裁判決がちょうど1979年ですね)とかの判例法理が確立し、賃金体系では1969年の日経連「能力主義管理−その理論と実践」による職能資格給が広まっていった時期にも重なります。そして、それらの判例法理は日本独自の不当労働行為法理に起因する労労対立の産物でもあったわけです。

そういった時期に放映されたガンダムで描かれる軍組織への視線には、日本型雇用慣行に対する異議申し立ても多分に含まれていたのではないかと思うところでして、興味を引くギミックとはいえ日本型雇用慣行をとらえて「ガンダムのジムである」とまでいうのは言い過ぎのような印象はあります。

まあそんな細かい設定への詮索はおくとしても、自分磨きとかモチベーションアップをやたらと称揚するキャリア論に不安を駆られた方には、こちらの一節が解毒剤になるかもしれません。

 落ち着いて考えよう。自分は自分。それでいいのだ。モチベーションに満ちあふれすぎているのも危険なのである。第1章でもふれたが、僕の経験で言うならば、企業というのは時に躁状態のような、ハイテンションになりがちである。その反動が怖い。プロは、モチベーション、テンションが上がりすぎず、下がりすぎないようにコントロールするのだ。
 それこそ、高校野球ではよくピッチャーがボコボコに打たれて目も当てられない状態になったりするが、これはアマチュアなのだ。
 安定した試合にすることができる、負けたとしてボロ負けしない、これがプロだ。
 技術もさることながら、気持ちのコントロールがものを言う。だから気持ちを前向きにすることも大事だけれど、上がりすぎないようにすることも大事なのだ。
(略)
 例えば、やりたくない仕事の代表にルーチンワークがある。でも、このルーチンワークをナメてはいけない。僕は「創造的ルーチンワーク」という言葉を大事にしている。
(略)
 そもそも、ルーチンワークは深いのだ。例えば、単純作業、パシリの典型だと言われるコピー取りについて考えてみよう。あなたは「会議のためにコピーをとっておいて」と言われたら、どうするだろうか? そのまま何も考えずにコピー機を動かしてしまう人は、社会人失格だ。
p.131

僕たちはガンダムのジムである僕たちはガンダムのジムである
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常見陽平

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※ 以下、太字強調は原文、太字下線強調は引用者による。

ルーチンワークをナメきっている方に限って「自分が主役だと思えばやる気も出る」とか言ってしまうのですが、それは従業員をブラックな労働環境に駆り立てていくという危険性を孕むものだけに、無邪気にそんなことを言うような学者がいればとても罪深いと思います。

 また、「超やる気」社員が多い業界として広告業界や情報・通信業界があげられよう。たとえばリクルートの社員は、昔から“やる気”が突出していると評判だった。社員同士が血相を変えて議論することも多いし、ほうっておけば徹夜ででも仕事をする(現在は会社側が労働時間管理を徹底しているが)。
(略)
 ここに紹介した「超やる気」人間たち。彼らに共通するものをひとことで言うと、それは「自分が仕事の主役である」という意識を持っていることだ。だからこそ、ずば抜けたモチベーションが生まれるのである。
pp.82-82

公務員革命: 彼らの〈やる気〉が地域社会を変える (ちくま新書)公務員革命: 彼らの〈やる気〉が地域社会を変える (ちくま新書)
(2011/10/05)
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そのリクルートの社員であった常見さんが、『僕たちはガンダムのジムである』という本の中で、

 中にはブラック企業を「居場所」と思い込んでしまうことだってある。最近では、楽しい企業を装ったブラック企業が増えている。「愉快なプチ搾取企業」とも言える企業だ。こういった企業には、次の2つのパターンがある。
①「好きなことを仕事にしたい」という気持ちを悪用する企業
②「モチベーションが上がる楽しい職場」であることを悪用する企業
(略)
 もう一つ注意すべきなのは、やたらとモチベーションアップ施策を行っている企業だ。
・会社や事業部をあげての派手なキックオフイベントなどがある
・営業マンランキングなどをやたらと競わせていて、表彰制度などがある
・インセンティブが充実している
・社内報が充実している
・宴会やパーティーに必要以上に力を入れる
 人材業界やネット関連業界などでよくあるパターンだ

常見『同』pp.188-190

とおっしゃっていることの意味を、太田先生は十分に検討する必要があるのではないかと老婆心ながら思ってしまいますね。

そのブラック企業については、現在今野晴貴著『ブラック企業』を拝読中ですので、そのうちこの続きが書ければと思います。実は、すでに震災から1年8か月目となる11月11日が過ぎたわけですが、このやる気をめぐる対照的な論評から「ブラック企業」に話をつなげて、被災地の労働環境がブラック化している状況(民間も役所もその傾向がありますが、役所の方が進行度合いが深刻ではないかと思います)を書こうかと思っていたのですが、来月に持ち越しになりそうです。
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というわけで、前回エントリの最後で取り上げた常見著『僕たちはガンダムのジムである』ですが、前回取り
2012/11/22(木) 01:36:38 | まっとめBLOG速報
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