--年--月--日 (--) | Edit |
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


2012年01月10日 (火) | Edit |
去年のエントリで再度取り上げるかもしれないとしていた『POSSEvol.13』ですが、取り上げたいと思っていたのが「反貧困・震災以降のNPO論 現場から語る行政・市場・ボランティア」という記事でした。というのも、たまたま中原『奇跡の災害ボランティア「石巻モデル」』を読んでいたところで、両者で語られていることが微妙にすれ違っていたりしてなかなか興味深かったからです。

まあもちろん、すれ違っている部分というのは『POSSE』の記事が各団体の実務面の代表者による対話方式の記事であるために、各団体の思惑がそれぞれ違う方向を向いているという点から受けた印象なわけでして、『奇跡の~』では主にピースボートの活動ぶりを紹介しているので、その点ではあまり齟齬はありません。たとえば、『奇跡の~』では第6章に「災害ボランティアは企画力」という章立てがされていますが、『POSSE vol.13』でも一般社団法人パーソナルサポートセンターの事務局次長である菅野氏が、

菅野:ちょっと違う視点かもしれないのですけれども、最近思っているのは、NPOってどちらかというと社会における開発の部門を担っているということなのです。企業でいうとリサーチアンドディベロップの部門を社会の中で担っている組織かなと。その観点からするとNPOはあまり大きくならずに、途中で解体した方がいいのではないかというのを実は持論として持っています。
(略)
様々なスキルや想いを持った人が特定の問題領域に集まってくる。その中で、次のNPOの種になるものができる。場合によってはNPOではなく株式会社のような営利活動になるのかもしれないですが、次の社会問題の解決を担っていく種だと思うのです。
pp.48-49

POSSE vol.13 ダメな雇用創出が震災復興を妨げる?POSSE vol.13 ダメな雇用創出が震災復興を妨げる?
(2011/12/10)
POSSE、古市憲寿 他

商品詳細を見る
※ 以下、強調は引用者による。

と指摘されています。つまりは、NPO・NGOが行政では発見できないことや考えつかないことを率先して実践し、それを一つの取組として作り上げたら、その時点でNPO・NGOは解散してしまうということのようです。いわんとすることは十分に理解できますし、そのようなノウハウがあれば行政としても積極的に連携していくべきと思うのですが、その背景にはおそらく資金面の継続性が確保できないという根本的な問題があるのだろうと思います。一方で、それってNPO・NGOで雇われている人にとってはかなり不安定な雇用形態を強いられることとなるように思いますが、労働問題に取り組んでいるPOSSEの今野代表がそこから経験値の蓄積とか人材育成に話を展開してしまっていて、あまり突っ込んだ議論とはなっていませんでした。まあそもそもボランティアがやれば雇用問題は起きないということかもしれませんけれども、生活者である労働者のための組合という生活協同組合で労働問題が発生していたりすることとか思い起こしてしまうのは私の認識が偏っているのでしょう。

また、個人的には『奇跡の~』で繰り返される「自己完結」とか「自己責任」とか「責任の所在」という言葉が妙に引っかかりました。

 山本は「石巻モデル」の成功の秘訣として、個々に集まるボランティアおよびNGOなど、団体間のもめごとが少ないことを挙げた。つまり、よい意味で団体間の協調性が保たれているのだ。
「これはNGOなどの団体の欠点でもあるのですが、誰かに『仕切られる』のを極端に嫌うのです。それは、災害支援という共通の目的があっても、その団体の設立の趣旨や経緯が違う以上、仕方がないことなのです」
 確かに「自己完結」の考え方ひとつとっても団体間の意識はバラバラだ
pp.93-94

 山本は「ニーズ調査」は大切なことだが、それをやるボランティアは、その後の解決までを責任として果たすべきだと語っている。逆説的に言うと、解決のできない、必要以上のニーズ調査はやるべきではないというのが山本の考えだ。
ボランティアは物事を具体的に解決する集団。当然、責任も生じる
 ボランティアが行政と連携し、本当の意味での災害時の「機能」となるためには、この具体的な解決能力が必要不可欠なのだ。そのためには、災対会議で負った責任を全うし、毎日の成果を具体的に「数字」で発表する必要があったのだ。
pp.195-196

奇跡の災害ボランティア「石巻モデル」 (朝日新書)奇跡の災害ボランティア「石巻モデル」 (朝日新書)
(2011/10/13)
中原一歩

商品詳細を見る

この「山本」氏という方は社団法人ピースボート災害ボランティアセンター代表理事とのことですが、ボランティアの一般的な機能説明として理解するのにはこの説明でいいのでしょうけれども、そもそも「自己完結」で自らの行動「責任を負う」組織が指揮命令系統もない(はずの)「ボランティア」によって構成されているというのはどう理解したらいいのでしょうか。NGOなどの組織が「仕切られる」ことを嫌うとしても、そこに雇用されている職員はその組織の指揮命令系統下にありますし、ボランティア自体もその組織の指示によって作業をしているはずです。「コーディネート」という言葉に惑わされそうですが、ボランティアとして応募してくる方々に「自己責任」とか「自己完結」を強調するのはどうにもブラック企業臭を感じてしまいます。いやもちろん、非常時に行うべき莫大な作業があって、それを担う人員が決定的に不足している状態だからこそ平時の雇用形態にとらわれない指揮命令系統が必要なのだろうとは思いますが。

しかし、それとは対照的に、被災者に対しては自己責任論がおとなしくなるという現象があったりもします。これについては前述の菅野氏が、

菅野:(略)
 逆に変化したところなのですが、被災地で何らかの事業を実施する分にはお金が付きやすくなったのではないかなと思っています。震災が起こると一応世論も味方につくし、自己責任論とか、今まで支援を邪魔していたものが全部なくなってしまう。その影響が行政との連携で特に出ています。とても普通の行政とは思えないぐらい動きが速い。

『POSSE vol.13』p.35

と指摘されています。まあ結局、自己責任論の広がりが行政による所得再分配などの社会保障的機能を阻害していたわけで、反貧困運動はそれに対する告発だったと理解することもできそうです。となると、結局のところ行政を縛っているのは自己責任論を振りかざす「民意」とそれに立脚する「セージシュドー」だったということになりそうな気もします。自己責任論が一方ではボランティアの働きを促進し、一方では公的セクターの動きを阻害するというのは大変興味深い現象ではありますが、この流れを突き詰めていくとNPO法人ほっとプラス代表理事の藤田氏が、

藤田:もう行政はだめだと思うんですよ(笑)。小さな政府になっていますし、公務員も減らすことしか考えてないのが大きな流れですので、行政にやれと言っても難しい。かといってあまり企業に求めてもしょうがないと思っているので、自前の市民が動きやすいようにお金の回りを作らないといけないと思っています。要は寄付してくれって話なんですよね。

『POSSE vol.13』p.54

とおっしゃるような話になってしまいます。震災後の行政機能の低下は小さな政府を推し進めた結果であることには異論はありませんが、このように公的セクターの機能不全を所与のものとしてしまうことは大変危険な議論だと思います。たとえば、中央政府がやらないから地方政府が所得再分配をやるべきだという地方自治体が、負担増を伴うことなく老人の医療費を無料化するという老人医療費支給制度を始めてしまい、それが全国に波及して保険財政が逼迫するという事態を招いたわけでして、その轍を踏んでしまいかねません。あるいは2世紀近く前のイギリスのスピーナムランド制度が同じような結末を迎えたことからも、適切な規模の政府を持たなければ所得の再分配は実現しないという歴史の教訓を学ぶ必要があると思います。

そういう点に注意していけば、『奇跡の~』は今回の震災においてどのような取組が功を奏したのかという一つの事例を知るためにとても有用だと思います。特に「受援力」という概念は、ボランティアやNPOなどの現地の活動を円滑に行うために全国の自治体関係者は理解しておくべきでしょう。その上で個人的に物足りなかったのは、石巻で医師を名乗って逮捕された容疑者についての記述が一切なかったことでして、「古い公共」との関係についてはもう少し丁寧な検証が必要かもしれません。
このエントリーをはてなブックマークに追加
スポンサーサイト


コメント
この記事へのコメント
> 革命烈士さん

直前のエントリで「なってほしくない大人」について書いた途端に、それを体現される方からコメントをいただくというのも何かの縁ですね。是非対話させていただきたい…と思ったのですが、冒頭の「所得再分配を所与のものと考えるほうが違和感があります」から始まって、ほぼすべての論点が拙ブログで議論していないことのようでして、どこから議論を始めればよいのか途方に暮れております。

> 所得再分配を所与のものと考えるほうが違和感があります。味噌も糞も結果が平等、これが『当たり前』と、そういっているように聞こえる。

ええと、私は直前のエントリで「自らが稼得した所得を他人へ配分するという公的な所得再分配政策についての合意を得て、その結果として各家計の所得が公的セクターを通じて消費や投資に回されて流動性供給が増加し、マクロの経済成長がもたらされるという事態にいたることはないだろう」と指摘しているとおり、所得再分配という難儀な作業が完遂されることを所与のものとは考えておりません。もし「所得再分配を所与のものと考える」ような議論がされていれば、それは私にも「味噌も糞も結果が平等、これが『当たり前』と、そういっているように聞こえる」でしょう。

> 百個の部品を造る職人と同十個の者が居たとして、所得が10倍になるのは自明の理ではないか。これが平等。
>
> 政府がしゃしゃり出てきて、この2人の生活水準を平均化したとすれば、有能と無能・勤勉と怠惰の差は無意味であると言っているに等しい。それは平等ではない。

ロールズのマックスミンも真っ青の分配論ですね。この点についても私は革命烈士さんのご指摘に賛同いたします。なお、稼得能力と所得の再分配の関係については、太田啓之『いま、知らないと絶対損する年金五〇問50答』の問答6でコンパクトにわかりやすくまとめられていますので、ご一読をおすすめいたします。
http://www.amazon.co.jp/dp/4166608029


> また、反貧困・反格差の人々は、とにかく公務員批判は悪だ、公務員給与を一銭も減らさぬ、公務員減らせ論者は新自由主義者だ!ネオコンだ!と発狂にも似た発言をされるが、利害調整を言うなら、小さな政府論者や政府の過干渉を批判する人々、あるいは公務員給与や福利厚生を批判する人々との対話に応ずるべきだ。

反貧困運動界隈にはあまりシンパシーを感じない私からすれば、反貧困・反格差の方々も十分に公務員批判されていますし公務員給与の削減も力強く主張されていると思っておりましたが、革命烈士さんがご覧になっている風景が私には見えていないのかもしれません。精進いたします。
http://sonicbrew.blog55.fc2.com/blog-entry-286.html

> 消費税のバーターとして公務員給与削減は必要。

「増税をする前にやることがある」という台詞は、負担増を嫌う票を失いたくない政治家がよく使うフレーズですが、上記の太田著で整理されているような所得再分配が望ましいと考える立場からすれば、その所得再分配を受ける立場の方にそのフレーズが膾炙していく様は異様に思えます。ケインズの言葉を借りれば、「労働者を失業させ、政府職員の所得を減らして、直接、間接に影響を受けた人たちがこれまでと同じように輸入品を買うことができないようにすれば、輸入が減少した分、イギリスの国際収支の問題は緩和する。しかしその幅が、節約の総額の20パーセントを超えることはないだろう。残りの80パーセントは無駄になり、イギリス国民が他人からものやサービスを買うのを拒否したために起こる損失の転化か失業の形であらわれることになる。
 以上に述べた点はまったく確かなのだが、節約を声高に求める人のなかに、自分たちの主張が実際にもたらす結果をわずかでも理解している人が百万人に一人いるかどうかは疑問だと思う。」というところですね。
http://sonicbrew.blog55.fc2.com/blog-entry-443.html

> 特に疑問なのが、普段はやれ助け合いだの再分配だのと言っていながら、公務員どうしのワースシェアは絶対にやろうとしない。あるいは、普段は貧しい者の味方を装っていながら、ぬけぬけと「公務員給与と比較する民間給与に低賃金労働者が入っているのはおかしい。あいつらは物の数には入らぬ」と言ってのける。
>
> 恥知らずではないか

ワースシェアはワークシェアとかワークフェアのタイポでしょうか。いずれにしても、「公務員給与と比較する民間給与に低賃金労働者が入っているのはおかしい。あいつらは物の数には入らぬ」という議論は、私は不勉強ながら聞いたことがありません。ただ、統計データを扱うに当たってデータ単位や時期などを揃えることは客観的な比較を行うための基本となりますので、大卒者の割合の高い正規雇用の公務員給与である予算上の人件費から算出した平均と、家計補助的な非正規労働者の給与を含む民間給与実態統計調査の平均を比べるのはあまり正確な比較にはならないのではないかと思います。

> 追加
> 
> 天下り廃止にも一切応じない、我々の取り分はびた一文減らさぬという公務員原理主義者、公共無謬論者が、市場原理が云々と言う資格はない。

拙ブログでは天下りには弊害もあるけど利点もあるのではないかと考えておりますし、実際に我々公務員の給与は民間給与に合わせて増減していまして、寡聞にしてご指摘のような議論は存じません。
http://sonicbrew.blog55.fc2.com/blog-entry-405.html

大変残念ですが、革命烈士さんが何かに憤っていらっしゃることは伝わるものの、その内実がよく分かりませんでした。対話って難しいですね…というのは表層的な感想でして、革命烈士さんが実生活においてどのような利害関係にいらっしゃるのかという情報がないために、そのご発言の趣旨がつかみ取れないのではないかと思います。大変申し訳ございません。

その上で革命烈士さんの気が向いたらで結構ですが、ご自身のご家族や友人、職場の同僚といった身の回りの方々と、お互いにどのような利害関係を持っているか話し合ってみてはいかがでしょうか。そのとき、できれば障害を持つ方や震災などで被災された方など生活に支障を来している方々、さらにはその方々の生活を支援する職業(医療や介護、福祉など)に従事する方々の利害関係についても想像していただけるとありがたいと思います。
2012/01/11(水) 01:09:47 | URL | マシナリ #-[ 編集]
> 革命烈士さん

> 私は年収900万程度の民間労働者の平民ですよ

情報提供いただきありがとうございます。ちなみに私の情報も提供いたしますと、額面の年収が約500万円のアラフォー公務員で障害を持つ家族を扶養しています。
http://sonicbrew.blog55.fc2.com/blog-entry-437.html
「公務員批判しただけで、なぜ障害者や被災者の話になるのか」という点についてはこのような事情を考慮いただけると幸いです。

> 再分配をしても、かえって不公平感が蔓延している現状を見ても、再分配は失敗。

この点は非常に深刻な問題だと思います。日本は対GDPの政府支出が先進国の中でも低いのですが、高齢化率はダントツの一位です。つまり、少ない政府支出が高齢者向けの再分配にその多くを割かれてしまい、現役世代や次世代支援への政府支出が足りていない状況です。これにより再分配後のジニ係数が再分配前のそれよりも悪化してしまうという状況に陥っており、現役世代や次世代への給付を賄うためのフロー財源の確保が喫緊の課題となっています。

一方で、税と社会保障費を合わせた国民負担率も先進国では下位グループに属していることから、税負担の余地が大きいとして、先進国の中で図抜けて高い国債残高の対GDP比の割には国債の格付けは低下していません。といっても、毎年数十兆円単位の国債を未来永劫発行できるはずもなく、増税を社会保障の現物給付の財源とし、より所得の限界消費性向の高い低所得者層に給付することで、社会全体の消費性向を向上させることが重要だと考えます。

ただ、その他は相変わらず私が書いていないことを批判されているので、これ以上の対話はテクニカルな意味で難しいと思います。せめて誤解だけは解かせてください。

> やはり再分配マンセーの左翼は頭おかしい。

私は左派思想に懐疑的な立場を取っておりますので、左翼というご指摘には当たりません。むしろカイカク派を揶揄することが多いので保守と自認しているところです。
http://sonicbrew.blog55.fc2.com/blog-entry-313.html

> だいたい、引用されてるケインズの話を聞く限り、『政府は肥大化すればするほうが良い、そのために民間から税を搾り取るほど良い、政府が支出をばら撒いて経済を主導する」
> こんな時代遅れの社会主義を持ち出すこと自体、見識を疑う。

ケインズについてこのような誤解をされる方をたまに見かけますが、ケインズ自身は投資家であって、大多数の労働者が所得を得て消費が旺盛で投資効率の高い社会を望んでいました。ちょうど飯田先生が解説されています。
http://blogos.com/article/28868/?axis=&p=3

拙ブログでは
http://sonicbrew.blog55.fc2.com/blog-entry-437.html
あたりをご参照ください。

ところで、ヘイトスピーチを体現しているとの指摘に対して「非常に失礼ですね」といいながらヘイトスピーチで応答されているのを拝見すると、もしかするとご自身のヘイトスピーチを自覚されていないのかもしれません。老婆心ながら
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%98%E3%82%A4%E3%83%88%E3%82%B9%E3%83%94%E3%83%BC%E3%83%81
こちらでご確認されることをお勧めいたします。
2012/01/12(木) 02:25:37 | URL | マシナリ #-[ 編集]
> 革命烈士さん

前回の革命烈士さんのコメントの最後で結論が書かれていたことですし、私が書いていないことばかり批判されるのであれば、もう対話は終了したものと思います。革命烈士さんが私に左翼だろうと共産主義者だろうとレッテルを貼っていただくことはご自由ですが、この場は私の論説を公開する場ですので、私の書いていないことについてのヘイトスピーチを拙ブログで繰り返すことは今後おやめください。

以下は、革命烈士さんに対してのコメントではなく、飯田先生の記事についての感想ですが、

> 政策を考える際には「誰の利益を最大化するか」という点をはっきりさせる必要がある。ここからが価値論なのですが、学術的な意味での経済学はなるべく価値論に踏み込まないようにします。価値論の部分は経済学の仕事ではない、と少なくとも僕は考えています。
http://blogos.com/article/28868/?axis=&p=2
という言説を拝見するたびに、飯田先生に対する信頼を失っているところです。私が前回のコメントで飯田先生の記事を引用したのは、ケインズが投資家として何を考えていたかという事実を確認するためでしたが、だからといってその記事のほかの部分にまで全面的に賛同しているわけではありません。

特に問題だと思う点は、上記の引用部分です。学術的には価値判断を行わないという態度は、ワイマール憲法を実現させてナチスの独裁に道を開いた形式的法治国家と同様、どんな価値観をも正当化してしまう危険性があります。もし、経済学だから法学とは違うというのであれば、価値観の相違がもたらす人権侵害の可能性に対してあまりに無防備と言わざるを得ないでしょう。

手元にある樋口『憲法』はちょっと古い版ですが、法治国家と法の支配の相違を次のように説明します。
> 「法の支配」に言う「法」は、内容が合理的でなければならないという実質的要件を含む観念であり、ひいては人権の観念とも堅く結びつくものであったことである。これに対して、「法治国家」に言う「法」は、内容とは関係のない(そこ中に何でも入れることができる容器のような)形式的な法律にすぎなかった。そこでは、議会の制定する法律の中身の合理性は問題とされなかったのである。
> もっとも、戦後のドイツでは、ナチズムの苦い経験とその反省に基づいて、法律の内容の正当性を要求し、不当な内容の法律を憲法に照らして排除するという違憲審査制が採用されるに至った。
樋口陽一『憲法』pp.14-15

拙ブログではケルゼンの法実証主義の文脈で違憲立法審査制を取り上げておりましたが、経済学という学問に「違憲性」が認められることはないでしょうから、だからこそ価値判断には慎重であるべきと考えます。
http://sonicbrew.blog55.fc2.com/blog-entry-338.html

飯田先生のリフレ派についての見解はこれまでにも何度も引用させていただいておりますが(http://sonicbrew.blog55.fc2.com/blog-entry-398.htmlコメント欄)、その「世にリフレ派と呼ばれる人の共通点は「安定的なインフレによる景況の維持が必要だ」のみで,ミクロ的な経済政策については人それぞれ」というスタンスが、「価値観にかかわらず思考ツールを提供する」という経済学のスタンスとに基づくものであって、人権に結びつくだけの合理的な内容を持たない無用な議論の応酬と闇雲なヘイトスピーチへの論拠を提供しているのであれば、その罪は大きいと思います。
2012/01/13(金) 00:36:20 | URL | マシナリ #-[ 編集]
”「100万円のモノをプレゼントするよりも100万円を渡した方がいい」と考えるところまでは、全経済学者の共通理解といってよいでしょう”

飯田先生のこれには「はあ?」という反応が漏れてしまいましたが
2012/01/14(土) 01:29:43 | URL | X #EBUSheBA[ 編集]
訂正とお詫び:前回コメントで、「樋口『憲法』」と書いてしまいましたが、樋口陽一『憲法』と思って手にしたのはよく見たら芦部信喜『憲法』でした。大変失礼いたしました。

> Xさん

現金よりも現物給付の法が効用を改善できるという議論については、たとえば林・小川・別所『公共経済学』309ページ以降に簡単な解説がありますね。
http://www.amazon.co.jp/dp/4641123950/
これによると、現物給付を行う政府の側とそれを受給する側に情報の非対称性がある場合は、政府が現物給付として低い効用の消費を強制することによって、高所得者には自己選択制約を課してその受給を閉め出し、結果として高所得者のなりすまし(ミミック)抑制して税収を確保して、ターゲットとなる(稼得能力の低いことの代替変数としての)低所得者への給付水準を確保できるという議論があるそうです。

飯田先生の「100万円のモノをプレゼントするよりも100万円を渡した方がいい」という議論は、2財モデルで市場に歪みがない場合には成り立つ議論ですので、全経済学者の共通理解というのはそのとおりではありますが、だからといって現実世界がそのとおりであるということにはならないという事例と理解すべきではないかと思うところです。
2012/01/15(日) 12:44:32 | URL | マシナリ #-[ 編集]
革命烈士さんとマシナリさんのコメントを興味深く拝見しました。簡単な感想を。

効率性と平等性はトレードオフといわれますが、ある程度は両立しうると言うことがひとつ。
失業者があふれている状況は効率性も平等性も両方失われていますが、失業を減らすことは両方が同時に成り立ちます。リフレ政策というのは、そういうものであるはず。

もう一つは、所得再分配を受けている側が、なぜか増税〈所得再分配〉を嫌っていること。たしか飯田先生も書いてたはずですが、年収1000万円以下は再分配を受けている側のはずです。少なくとも、たいした税負担はしていない。

それと、ケインズは社会主義を嫌っていたのに、社会主義よばわりされるとは、生きていたら驚いているでしょうね。
2012/01/16(月) 00:45:47 | URL | a #-[ 編集]
震災から10ヶ月、日々ご苦労様です。
震災より人災の方が怖いというのを体験することの多いなかで、流石にこれは無いでしょうね。

>私は年収900万程度の民間労働者の平民ですよ
県民一人当たりの所得が平均221万4千円の民間労働者の平民としては、ただあきれるばかりですね。

 >消費税増税に失敗すれば、中所得層の所得税が増税されることは間違いないので、消費税増税してほしいのですが。
 控除の廃止によってですね。革新的なかたたちほど控除廃止に熱心でしたね。中間層を薄くしたかったからですね。

>「自分は特権階級だが、文句あるか。愚民は我々に従っていれば生活できるのだから何も言うな」という独裁者は殺されるべきだと思うね。

 改革とか革命という名の特権階級の希求って惨いものですね。自分が何を言っているか判らなくなるんですね。

 マシナリさんは何時も丁寧に応対しているから良いようなものの、貶めることだけが目的でくるのはどうかと思います。
 所得再分配批判によって、その制度が消失した際は、治安も国家が追う必要が無いでしょうから、刃が年収900万円以上の平民に向い易くなるでしょうね。ある意味、富裕層を守っている効果もあるような気がしていたけど錯角だったようです。あっそうか、寄付で「新しい公共」の担い手の方達に治安維持機能を担って貰うんですね。チホーシュケンという改革の「新しい公共」の平等と効率性というのが薄ら寒いものでしかないのでしょうね。
  
 今後も更新を楽しみにさせていただいておりますので、体調にお気をつけください。
2012/01/16(月) 02:08:36 | URL | gruza03 #V76W3knM[ 編集]
遂に本性が出てきましたね・・・・・。

この人はネットでも有名な方なので無視していたのですが、一つだけ。
以下引用開始、
「天下り官僚手当て2000万円(国民の平均給与は400万)
公務員給与平均750万円(国民の平均給与は400万)
人殺し東電が税金で保障される給与1000万(国民の平均給与は400万)
寄生虫・特権”貴族”を撲滅しなければ、国民が食い殺される! 」
以上、引用終了。

貴方の2011-09-11のブログ記事ですが、貴方は公務員や東電社員の年収を「脱税しまくりの自営業者を含めた『平均所得』に意味があるのでしょうか。政府ですら自営業者等の所得捕捉の不正確さを認めている時代ですよ。 何が言いたいのかわかりませんね 」
と自らが仰っている「平均所得」と比較して批判されていますね。お見事なブーメランです。以後、この論法は使用しないでください。

まあ、貴方のいい加減さ、人間性が滲み出てて面白いですが。
2012/01/17(火) 00:47:01 | URL | 名無しの投資家 #SFo5/nok[ 編集]
> gruza03さん

労いのお言葉ありがとうございます。gruza03さんも被災地でご尽力されていることと存じますが、お身体にはお気をつけください。

なお、お気遣いいただく気持ちはありがたいのですが、この場で件の御仁と議論されることは実りのないものと思います。私もすでに対話は終了したものと考えておりますので、ご理解いただくようお願いいたします。
2012/01/17(火) 06:58:58 | URL | マシナリ #-[ 編集]
> 革命烈士さん

私は前回の革命烈士さんあてのコメントで、「私の書いていないことについてのヘイトスピーチを拙ブログで繰り返すことは今後おやめください」とお願いしております。
2012/01/13(金) 00:36:20 | URL | マシナリ #-[ 編集]

革命烈士さんはgruza03さんのコメントに対して、拙ブログでは誰も書いていない「ルンペンやニートのような税金払ってない輩」とか「怠け者の貧民」というような他人を侮蔑する言葉を使ってコメントを返されています。最後には「猟銃」という言葉を使って銃刀法違反をほのめかして脅迫ともとれるコメントとなっており、さらに悪質です。

2回目のお願いとなります。本エントリとは関係のない悪質なコメントはおやめください。再度同様の行為がくり返された場合はコメントを削除させていただきますので、あらかじめご了承ください。
2012/01/17(火) 07:19:41 | URL | マシナリ #-[ 編集]
> 名無しの投資家さん

情報提供ありがとうございます。件の御仁については上記のとおり対応しております。その方のコメントに対して批判されることは実りのない反論を招くおそれがありますので、拙ブログでは控えていただけると幸いです。
2012/01/17(火) 07:30:51 | URL | マシナリ #-[ 編集]
>マシナリさん

失礼しました。以後、いつも通り無視します。
2012/01/17(火) 19:28:38 | URL | 名無しの投資家 #SFo5/nok[ 編集]
> 革命烈士さん

2度のお願いにもかかわらず、私のお願いを聞き入れるおつもりがないことは良く理解いたしました。ヘイトスピーチについての明確な定義はありませんが、明確でないからといってどんな罵詈雑言も許されるわけではありません。

拙ブログは「FC2利用規約」の下で私の管理で公開しているものであり、FC2利用規約では、「総則」において「本サービスの利用は、FC2IDの利用登録者(以下「ユーザーといいます」)及びユーザーを含む本サービスを利用しうる全ての対象者(以下「利用者」といいます)の自己の責任においてなされることに合意します。」と規定しています。革命烈士さんのコメントは同規約の「基本ガイドライン」4. 禁止事項の1.に規定する「05.公序良俗に反する行為及び表現。他の利用者又は第三者に対して、卑猥な映像・音声・文字列などの情報公開、及びその幇助。」及び「07.トラブルに発展しうる個人、特定団体、統治機構、国家、製品、政治体制、信仰、思想、主義その他を差別し、誹謗中傷を行うなど、名誉や信用を毀損する行為及びそれを助長する行為」に該当する疑いのある行為であると考えます。
http://help.fc2.com/common/tos/ja/

また、「FC2ブログ利用規約」では2.禁止事項で「1.利用者は、「基本ガイドライン」の禁止事項に該当、もしくは該当する疑いのある行為をしてはいけません。」と規定していることから、禁止事項への抵触の有無はFC2の判断によるものとされていますが、FC2ブログ利用者としての私の判断において今後の革命烈士さんのコメントをブロックいたします。
http://help.fc2.com/blog/tos/ja#service_blog

なお、私がこのような判断に至った経緯について拙ブログをご覧いただく皆様にご確認いただくため、私の前回のコメントにかかわらず、革命烈士さんの
2012/01/17(火) 17:21:23 | URL | 革命烈士 #JOq9D3eA[ 編集]
及び
2012/01/17(火) 17:22:23 | URL | 革命烈士 #u7210uis[ 編集]
のコメントは当面の間削除せずに公開いたします。

念のため、上記の取り扱いはあくまで「FC2利用規約」の下で拙ブログにおけるコメントをブロックするものであり、拙ブログ以外で罵詈雑言を吐かれることまでは関知いたしませんが、「FC2ブログ利用規約」2.禁止事項において、「2.FC2は、「基本ガイドライン」の禁止事項及び、2.1の禁止事項に違反した利用者に対して法的に可能なあらゆる措置または手続を取る事ができるものとします。」と規定していることを申し添えます。
2012/01/17(火) 23:14:13 | URL | マシナリ #-[ 編集]
100万円を(飯田)
http://lunaticprophet.org/archives/13044

”生活保護を現物支給に切り替えれば、不正受給はなくなるし、ギャンブルなどへの浪費も防げるという声はよく聞かれます。自民党の政策ビジョンでは食料回数券という案が示されていますね。2ちゃんねるやはてなブックマークではさらに過激に、なかば懲罰的な意見も出ています。”

ものごとの多面性ですね
2012/03/03(土) 22:45:35 | URL | XX #EBUSheBA[ 編集]
> XXさん

ご教示いただいたブログを拝見したのですが、権丈先生の言葉を又借りすれば「生活保護を理解するためにはスティグマという言葉を理解する必要がある」ということなのだろうと思います。

ただ、私が拙ブログで「社会保障の現物給付」といって想定しているのは、生活保護を現金級から現物給付に切り替えるという趣旨ではなく、より広く介護、保育、医療、教育などのすべての国民が利用を必要とする公的サービスですので、スティグマ以外の論点についても意識する必要があるのではないかと思います。
2012/03/04(日) 17:31:55 | URL | マシナリ #-[ 編集]
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。