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2011年12月19日 (月) | Edit |
隣国の指導者の死去という大ニュースの陰に隠れてしまいましたが、関西方面の自治体首長選挙で圧勝した弁護士さんが大阪市長として登庁されたそうです。法曹の割に労働法に疎いと思われるこの弁護士さんについては、hamachan先生のところなどでいろいろとおもしろ発言が取り上げられておりまして、相変わらず民間で適用される労働法制も理解せずに俺様解釈のコームイン人事労務管理構想を披瀝されているようです。だいぶ前の記事になってしまいましたが、拙ブログでも議論させていただいたことのある非国民通信さんのところで、この弁護士さんについて大変重要な指摘がされていました。

原発事故後、一夜にして電力会社が憎悪の対象となり「既得権者」に組み入れられてしまったことからもわかるように、何らかの転機があれば「あなたが」既得権者として憎悪の対象とされ、その権利の剥奪をもって改革とされる日が訪れることもある、そのことは心得ておくべきでしょう。一応は橋下の手法に批判的なフリをしている人でも、反原発論を通じて橋下的なロジック(憎悪扇動)を実践してきた人も少なくありません。この橋下的な手法が「あなたに」襲いかかる可能性は着々と増大しています

Hatebreeder(2011-12-01 23:11:52)」(非国民通信
※ 以下、強調は引用者による。


セージシュドーという呪文が唱えられた90年代から、「規制緩和」やら「既得権益の打破」を声高に主張するカイカク派が跳梁跋扈しているわけでして(注:リンク先のエントリでの橋本内閣による消費税率アップの評価については別エントリで反省しております。為念)、「民主主義の学校」ともてはやされるほどに民意至上主義が浸透しやすい地方自治の現場でカイカク派が勢力を伸ばしているということではありますが、その「既得権益の打破」が他人事であるうちは誰もがその威勢の良さに酔いしれるでしょう。しかし、福祉国家と呼ばれる現代日本においては、日常生活の隅々まで規制の保護が及んでいるわけで、別の言い方をすれば誰もが「既得権益」ということもできます。カイカク派が「既得権益の打破」を掲げる以上、一つの「既得権益」を打破してしまえば次々と獲物を見つけていかなければカイカク派の存在が成り立ちませんので、カイカク派が「既得権益なんて自分には関係ない」と思っている方々をターゲットにする日はそう遠くないかもしれません。

まあ、実際のところ、コームインの人件費が国家財政破綻の原因だというのはすでにカイカク派の常識の範囲内であるとしても、記憶に新しいところではJALが経営破綻したときの労働組合や退職者とか、非国民通信さんも指摘されているように原発事故の拡大を防げなかった東京電力とかが「既得権益」扱いされていたりしますし、もっとおおざっぱに世代間格差を煽って「ノンワーキングリッチ」とかいってみたり、社会保障額の絶対額が低いことを等閑視して高齢者に対する相対的な給付の多さを「シルバーデモクラシー」とか言い出して毎日新聞に引用されたりする経済学方面の方々もいらっしゃいます。本来労働者が団結して労働条件や待遇の改善を求める労働組合も昨今の「経営者目線」の風潮ではただの「既得権益」扱いですし、同じ労働者である非正規労働者からですら「正社員組合」と揶揄されて打破すべき対象とされてしまったりしています。さらに、最近では震災の被災者を既得権益扱いするという耳を疑うような物言いもあるわけで、「既得権益」というレッテルは決して他人事ではありません。

社会の構成員がお互いに「既得権益」というレッテルを貼り合う状況というのは、結局のところ何が「既得権益」かというコンセンサスがないことが原因となっているために生じているとも考えられますが、より深刻な問題は「既得権益」というレッテルを貼った後の行動に抑制がきかなくなることではないかと思います。特に原発事故以降では、東京電力の電力を使いながら電気代を払わないことを公言してはばからないアーティストがいたり、原発事故の収束に尽力している東電社員の賃金を引き下げろと迫ったり、挙げ句の果てにはその子息を攻撃するよう扇動するなど、直接的に東電に関係する方を攻撃する言説もありました。東電に対するヘイトスピーチだけではなく、放射性物質に対する恐怖心を煽って被災地に対する偏見を助長する言説も後を絶ちません。こうした状況を見ていて一番落胆するのは、そのようなヘイトスピーチや偏見を助長する言説が一定の知的修養を経ているはずのアカデミズム界隈の方から発せられることです。

「福島の農家はオウム信者と同じ」 群馬大 発言の教授を処分(2011年12月9日 東京新聞朝刊)

 短文投稿サイト「ツイッター」で不適切な発言をしたとして、群馬大学は「放射能汚染地図」作製で知られる教育学部の早川由紀夫教授(火山学)を七日付で訓告処分とした。早川教授は八日、前橋市内の同大で会見し「訓告は学問や言論の自由の根幹に関わる。大学の自殺だ」と訴えた。
 早川教授は、福島第一原発事故後に放射性物質で汚染された土壌の危険性を伝える趣旨で、周辺の農家について「セシウムまみれの干し草を牛に与えて毒牛をつくる行為も、セシウムまみれの水田で稲を育てて毒米をつくる行為も、サリンをつくったオウム信者がしたことと同じだ」などと投稿していた。
 会見では、放射性物質の拡散状況をまとめた汚染地図を四月に発表して以降「ツイッターの読者を増やすために意識的に刺激的な発言をした」と認め、「地図を広め、理解を浸透させたかった」と説明した。大学によると、投稿について批判と賛同の両方の意見が学外から寄せられている。


この先生はおそらく本心から放射能におびえてこうした行動を取られたのでしょう。しかし、その行動の代償はその先生当人ではなく、被災地に近いというだけで生産物が売れなくなってしまう農家や酪農家、漁業者が払わなければなりません。地元住民の脅迫的な反対のために花火の打ち上げが中止になるだけではなく、がれきの受け入れ先も限られてしまっています。しかしこの先生は、そんな被災地の状況などには目もくれず、ご自身の「ツイッターの読者を増やすために意識的に刺激的な発言をした」とか「地図を広め、理解を浸透させたかった」というきわめて幼稚な動機でもってヘイトスピーチをまき散らしていたわけです。

ヘイトスピーチで済んでいたからまだマシというわけではありませんが、これが実力行使を伴ったときどのような事態を引き起こすかについては、過激さを増していく反捕鯨運動が参考になります。先日日本の捕鯨調査を行う組織がシー・シェパードに対する妨害の差し止めと調査船への接近禁止を求めて、同団体が本部を置く米ワシントン州の連邦地裁に提訴したという報道がありましたが、それに対するシー・シェパード側の反論をみると、上記の群馬大の先生の論旨と通底するものがあるように感じます。

「日本側の最後のあがき」 シー・シェパード代表が調査捕鯨妨害差し止め提訴に反発(2011.12.9 14:21 [捕鯨])

 日本鯨類研究所などが反捕鯨団体「シー・シェパード」に調査捕鯨妨害差し止めを求めて米連邦地裁に提訴したことについて、同団体代表のポール・ワトソン容疑者は9日、共同通信の電話取材に「提訴は取るに足りない。訴えの内容は真実ではない」と反発した。

 ワトソン容疑者は提訴について「捕鯨産業が衰退する中、日本側による最後のあがきだ」と挑発。「われわれを支援する弁護士らに相談するが、提訴はまったく(妨害)活動に影響しない」と断言した。

 シー・シェパードは、調査捕鯨団が南極海へ向けて既に日本を出発したのを確認したとして、来週中にも計3隻の抗議船をオーストラリア西部や南東部から出港させる方針。同容疑者は「南極海を日本の調査捕鯨船団の侵略から守るため行動する」と強調しており、激しい抗議行動が予想される。(共同)


こうした「自分の目的を達成するためには手段を問わない」という姿勢の方に共通するのかもしれませんが、その攻撃対象も自分と同じ姿勢を取るものと考えるようで、自分が攻撃を受けると即座に陰謀論に持ち込みます。

シー・シェパードが日本の警察を非難…「法律犯していない」(スポニチ Sponichi Annex)
 反捕鯨団体「シー・シェパード」は17日までに、同団体関係者が和歌山県警に16日、暴行の疑いで現行犯逮捕されたのを受け、公式サイト上で「いかなる法律も犯していない」などと逮捕を批判する声明を出した。

 逮捕されたのはオランダ国籍のフェルミューレン・アーフィン・マルコ・ピーター・アド容疑者で、クジラ搬送作業を監視していた会社員に暴行を加えた疑い。

 声明は、同容疑者が自費で日本を訪れているシー・シェパードの支援者であるとした上で「(被害者の会社員の他に)目撃者はいない。逮捕はあらかじめ計画されていたと思われる」などと指摘、日本の警察を非難した。(共同)
[ 2011年12月17日 09:35 ]


ついでに、「自分の目的を達成するためには手段を問わない」という姿勢の方で陰謀論好きといえばこの方ですが、

@hidetomitanaka 田中秀臣

NHKで竹中平蔵氏が頑張ってる。こういうときはもうなんでも総動員w いい悪い、好き嫌いはおいといて、長期停滞を解消する運動(日本銀行法改正でリフレーション)のためには、総力戦でいかないとダメ。リフレをいってくれるなら池田信夫にだってハグしちゃうよ(みえすいた嘘ですw


 NHK見てましたけど、竹中氏だけはだめですって・・・。

(略)

 それより田中先生は、宮本氏の言っていることを理解できているのかな。たぶん、できていないでしょうね(汗) ミュルダールを読んでも「金融政策を重視した」とか、そんなまとめになるくらいだから。

ちょっとなあ(2011/12/17(土) 午後 10:46)」(暴言日記


自説に反する物言いはすべて否定しなければ気が済まないほど自説を固く信じている方ですから、自説の通りに世の中が動かなければ陰謀論に落とし込むのでしょうし、宮本先生の言っていることどころか経済学の教科書に書いていないことは理解する気もないのかもしれません。
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コメント
この記事へのコメント
年を越してしまいましたが、zhang_rさんに追記で取り上げていただきました。
http://blogs.yahoo.co.jp/zhang_r/29958996.html

> しかし、「経済は教科書どおりにはいかない」と言っても、「誰が経済は教科書通りに動くなんて言った!」という憤然とした反応がかえってくるだけなんですね。

田中先生のおっしゃることは、「経済学的に」正しいことでしょうから、zhang_rさんご指摘のとおり教科書に書いてあるかどうかだけで対応しているわけではないだろうとは思います。田中先生の中では、「経済学的に正しいことをいっている俺」という自己認識があって、それに異議を唱えるなら「経済学的に」正しい反論をしなければ受け付けないということなのかもしれません。

「法律学的に正しい」とか「社会学的に正しい」と言い換えてみれば、それは現実問題とか実務とは別の話だというニュアンスになるのに、「経済学的に正しい」というときは経済学でしか反論が認められないというニュアンスになることが、特に「リフレ派」と呼ばれる方々の議論には多いように思います。そのこと自体が「リフレーション政策」単独では「経済学的に」しか正しくないということの裏返しでもあるのでしょうけれども。
2012/01/09(月) 22:18:27 | URL | マシナリ #-[ 編集]
だって経済学=世の中のうち現在関心のある事柄で重要なものだけ抽象してモデル化するもの、だから「経済学的にしか正しくない」議論なんてものは存在しないのだもの。ズルいけど、経済学的に正しい/間違っているの話ではなく、経済学の使い方の正しい/間違ってる、あるいは選んだモデルが適切/不適切という話になってしまって、経済学そのものが傷つかないようになってる。

もちろん、人間ではなく全知全能の神様であれば、わざわざ特定の部分を抽象するなんてことをする必要もなく、全てをそのまま理解して判断できるのだろうけど、理解力に限界のある人の身では、どうしたって一部だけを使って考えなければならない(あるいは、何とか全部が考えられる非常に狭い視野から判断しなければならない)。で、この抽象化して考えることのうち、社会に当て嵌まる分野を経済学はまるまる飲み込んでしまってる。

1/1詳細地図をそのまま理解できない人間である以上、地図帳なり市街地地図なり手描きマップなりを見なければならない。で、そういった簡略化地図を見ましょう、及びそういった地図の作り方といった部分に経済学は当たるので、経済学そのものは正しい/間違ってるの議論にそぐわなくなっている。山登りに手描きマップを使って失敗しても、それは簡略化地図の選び方に失敗しただけ、ということになってしまい、簡略化地図を使おう、そしてそれを作ろうという部分が失敗したとは言えないのと同様。
2012/01/11(水) 02:37:38 | URL | yasu #-[ 編集]
> yasuさん

> 抽象化して考えることのうち、社会に当て嵌まる分野を経済学はまるまる飲み込んでしまってる。

おっしゃるとおりだと思います。帰納的に考えるためのツールとそれによって構築された演繹的に考える理論が経済学にはそろっているのですが、帰納的に考える際の一般化や抽象化で間違いを起こしてしまうのかもしれません。一般化や抽象化は変数を選択してモデルを構築するためには必要ですが、そのときに採用しなかった変数とか因子をモデルの中でどのように評価するのかという価値判断が重要ではないかと思うところです。
2012/01/12(木) 01:01:29 | URL | マシナリ #-[ 編集]
池田信夫イナゴ氏のストーカー行為
> 公務員は、池田信夫(w)の同類

池田信夫イナゴ氏のストーカー行為
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/05/post-02e4.html
2012/01/13(金) 12:15:34 | URL | hama #-[ 編集]
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