2011年11月27日 (日) | Edit |
(お詫び)
本エントリで取り上げた経済学の先生から「完全に理解し損ねている」「まったく誤解釈して「俺様」解釈をその批判した人は全開。バカか」「なめるなと」と大変お怒りのTwitterが発せられたようです。ご高説を完全に理解し損ねた上に、非専門家として俺様解釈も示していないとのご指摘につきましては、私の本意ではございませんでしたが、専門家である先生にご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げるとともに、私の所業をさらすため該当部分は見え消し修正しました。その他の皆様におかれましても、この点にご留意の上ご高覧いただくようお願いいたします。


拙ブログで継続的に取り上げているCFWについて、永松先生が出演されているということでTBSラジオのDigという番組のPodcastを聞いてみました。まあ、ブログで取り上げているというより私自身がCFWに一部関わっていることもあって興味深く拝聴したのですが、なんというか永松先生の説明されている現地の状況がどこまで伝わっているのだろうかと不安な内容でした。

「失業手当の延長打ち切りへ。被災地の雇用はどうしていけばいい?」
パーソナリティは荻上チキ と 外山惠理

■経済学者で上武大学教授の田中秀臣さんに電話をつなぎ、被災地の景気や雇用の現状、そして「失業保険の期間延長打ち切り」の是非についてお話をうかがいました。

■関西大学教授の永松伸吾さんをスタジオにお迎えし、被災地での雇用を今後どうしていけばいいのか、「キャッシュ・フォー・ワーク」という震災復興の仕組みをふまえお話をうかがいました。

■気仙沼復興協会の事務局長、千葉貴弘さんと電話をつなぎ、「キャッシュ・フォー・ワーク」の具体的な導入事例についてお話をうかがいました。

11月23日(水)「被災地の雇用はどうしていけばいい?」(Dig | TBS RADIO 954kHz)


というのも、番組全体を通して被災された方々の境遇や心情についての配慮があまり感じられなかったからです。特に経済学方面には雇用対策というと単なる失業問題と考えてしまう方が多いように感じますが、この番組の冒頭でも、被災地の景気や雇用の現状について説明されていた経済学者(個人的には独特の経済学史観をお持ちの経済学史学者だと認識していますが)の方は、被災地では県外からの求人がほとんどだから景気が悪くなったら一気に求人がなくなるとか、被災地の製造業の落ち込みが雇用情勢の悪化の要因だからマクロ経済での財政・金融政策が重要だとか、まあリフレ派と呼ばれる一部の方々の通常モードっぷりを発揮されていました。しかし、被災地に隣接する地域に住んで被災地支援に当たっている者として、残念ながら前半のような話は聞いたことがありませんし、後半の話もマクロ経済政策による景気回復の重要性はご指摘の通りでしょうけれど、むしろ被災地に隣接する地域では復興需要も相まって製造業が震災発生前よりも好調なところでして、いったいどこの被災地の話をされているのだろうかと不思議に思ってしまいます。

もしかすると「経済学者」の先生なら地元の下っ端公務員などが知り得ない情報やデータをお持ちなのかもしれませんけれど、この先生は財政・金融政策が大事とおっしゃりながら、所得再分配のような財政政策はほとんど言及せずに金融政策ばかり強調されるので真意を測りかねます。雇用保険の給付日数の延長についても、震災直後に120日延長していたものを10月1日から被災市町村を対象としてさらに90日延長したところで、現地ではいろいろな混乱が生じているわけですが、この先生は「まだまだ半年でも1年でも延長することはかまわない」とかおっしゃっていて、被災地の現状をご存じなさそうな(もしかしたら興味もなさそうな)印象を受けたのは私の気のせいですかそうですか。このような方に「被災地の景気や雇用の現状、そして「失業保険の期間延長打ち切り」の是非についてお話をうかが」おうというのも、パーソナリティのお一人と「αシノドス」でつながっているからなのだろうと理解しております。
(11/28修正)

まあこの点はとりあえず認識の相違ということで済ませておきますが、上記で指摘した「番組全体を通して被災された方々の境遇や心情についての配慮があまり感じられなかった」というのは、タイトルの一部でも「失業手当の延長打ち切りへ。」とされているように、雇用保険の給付日数延長が被災地の雇用問題だと強調されていたことについて違和感を感じたからです。実はこの点について、パーソナリティの荻上チキ氏も被災者が仕事を選んでいるという形で叩かれることの問題点を指摘されていましたが、拙ブログでも指摘したように雇用保険があるから仕事をしないで遊んでいるというのは被災地でもごく一部の方ですし、被災された方がそうした行動をとってしまう理由についても十分な配慮が必要です。

たとえば、先日放送されたNHKの番組では、新潟県中越地震の発生後から現在まで被災された方の心のケアに当たってきた方が、生活再建は心のケアと両立させる必要があることが指摘されていました。

喪失体験に気づき、時間をかけてその悲しみに寄り添い続ける必要があると本間さんは強調します。
「ただの訪問だけ、啓発活動だけではだめで、やっぱり本当にその人の思いを聞ききるということが本当に大切なこと。苦しみ、悲しみ、いろんな思いがあると思います。それを聞ききるということ。それをしないと(心のケアに)つながっていかない」
聞ききること、それを実現するためには何が必要なのか尋ねました。
「やっぱり信頼関係ができて、初めてそういうご自分の本当につらい気持ちを話されると思うんですね。具体的な生活再建を支援しながら、信頼関係を作りながら、本当のご自身のつらい思いがお話しされるようになるんじゃないかと思いますけれどもね」
「たとえば、仕事が見つかったとかそういうことがあれば、心のケアの方にもいい影響ということになる、心のケアにつながるということなんですね」
「そうですね。ですから、両方が、生活再建がうまくいくことが心のケアにつながっていくことでもあると思います」

シリーズ東日本大震災 助かった命が なぜ」(NHKオンライン
※ 以下、強調は引用者による。

雇用保険の給付日数の延長によって、パチンコ屋ばかりが混んでいるとか仕事があるのにえり好みしているから求人が埋まらないとか、「識者」と呼ばれる方々からもさまざまな指摘がされているところですが、これまで当たり前に生活していた環境を奪われてその再建から始めなければならない方にとって、雇用保険の給付が受けられる間はまだ見つからない家族を探したり、損壊した自宅や職場の修繕に当たったり、福祉施設が再開するまで家族の面倒を見なければならなかったりと、仕事をする前に「やるべきこと」が山積みの状態です。「やるべきこと」の合間に都合よくパートの仕事があったとしても、パートの賃金では生活できなかったりするわけで、おいそれと手を出すわけにはいきません。中には、そうした膨大な「やるべきこと」を目の前にして途方に暮れてしまったり、逆にこれまで精力的に「やるべきこと」を片付けてきた方がふとその先を考えてふさぎ込んでしまったりという場合もあります。

たとえ短期で以前やったことのない仕事であっても求人があるんだから仕事すればいいというような言い方をされたところで、被災された方々のそうした状況からすれば「いわれなくてもわかってる」話です。仕事をする前に「やるべきこと」が目の前に山積み状態で仕事ができない方、「やるべきこと」があっても震災によって大事な人やものを失った喪失感にさいなまれる方、「やるべきこと」にも生活の再建にも手をつけられずに精神的に追い込まれていく方・・・こうした方々の心情に十分に配慮する必要があると感じます。もちろん、そうした思いを持ちながらも前向きに仕事をしようという方には仕事や雇用の場を提供する必要がありますし、それが被災した地元の復興につながれば、前に進めない方の生活再建への道も近づいてくるはずです。個人的にはもっと直接的に、医療や介護、保育といった社会保障の現物給付を拡充することで、被災された方々の生活を支援しながら地元の復興に取り組む環境を整備することも必要だと考えていますが。

番組の中で永松先生は「被災された方の尊厳のためにも仕事が必要」と指摘されていましたので、現地に入って活動する中でそうした生活再建と心のケアの両方を進めなければならないという事情は認識されているものと思います。個人的には、被災地が着実に復興して生活できる状況になっていくことを実感しながらでなければ、被災された方々の心のケアはおぼつかないものと感じています。私自身、震災直後に被災地に入って目の当たりにした光景や被災された方から聞いた話を思い出しただけで、何ともいえない不安感に襲われることがあります。ましてや、被災された方々がより過酷な状況に置かれていたことは十分に配慮しなければなりません。被災地の方がこのエントリをご覧になることもあるかもしれませんので具体的な引用は控えますが、

遺体―震災、津波の果てに遺体―震災、津波の果てに
(2011/10)
石井 光太

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で克明に綴られている被災地の惨状をなんとか乗り越えて、これから普段の生活環境を取り戻そうとしている方々にとって、どのような生活再建支援策が必要なのかをさまざまな制度の組合せの中で考え続けていかなければならないと思うところです。
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