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2011年11月13日 (日) | Edit |
東日本大震災は1000年に一度といわれる大災害でしたが、その後も台風や大雨で新潟県や紀伊半島、最近では奄美大島でも災害救助法が適用されていて、自然災害の猛威を侮ってはいけないと改めて思うところです。さらに世界に目を向けると、トルコで大規模な地震災害が発生し、支援活動に当たっていた日本人スタッフが犠牲になってしまいました。

訃報
日本時間の10日未明に、トルコ東部で10月23日の大地震の余震とみられるマグニチュード5.7の地震が発生し、難民を助ける会のスタッフ2名が滞在しているホテルが倒壊いたしました。
内1名、近内みゆきは、日本時間の10日午前に救出されましたが、宮崎淳は、大変残念なことに、ワン市内の病院で死亡が確認されました。

トルコ:宮崎淳さんの訃報(2011年11月10日)」(認定NPO法人難民を助ける会

支援の志半ばで命を落とされた宮崎さんに心より哀悼の意を表します。

難民を助ける会は「1979年に日本で生まれた、政治・宗教・思想に偏らない国際NGOです」とのことですが、広く世界各地で活動しているそうで、トルコの震災でもいち早く支援活動に入っていたところ、余震の犠牲になってしまったようです。こうした災害が発生すれば世界各地でこうした活動が必要とされるわけで、NGO(非政府組織)の活躍の場は必然的に災害や政変などで公共サービスが不足している地域ということになります。

ここでトルコの国民負担率を確認してみようとしたのですが、計数が不足しているという理由で財務省の資料には記載されていませんでした。

(注3)エストニア、イスラエル、スロベニア及びトルコについては、計数が足りず国民負担率が算出不能であるため掲載していない。
OECD諸国の国民負担率(対国民所得比)」(財務省

計数が足りないということはあまり国民負担率が高くなさそうな気がしますし、ニュース映像を見ている限りでは、それほど社会資本や社会保障制度が整備されている印象はありません。その前提で話を進めるのは妥当ではないかもしれませんが、政府による救援活動や生活を保障する機能が一時的にせよ不十分な状態にあり、そこにNGOによる支援活動が必要とされる状況があったものと考えられます。

こうして考えてみたとき、日本でNPOなどの民間団体の活動を「新しい公共」という言い方をすることに違和感を感じてしまいます。人類の歴史をさかのぼってみれば、政府という統治機構の形は、特に現代国家の政府として結実するまでに数え切れない戦争や文化の衝突があって、代表制による多数決とその代表制を支える選挙によってそれらの紛争を解決しようとした結果なわけで、政府以外の活動の方が「古い」はずです。おそらくは現代国家ではおよそすべての社会的活動が政府の統治下にあるという認識があって、その範疇から外れたものが「新しい公共」という呼ばれ方をしているのでしょうが、少し歴史のスパンを過去に伸ばしてみれば「新しい公共」と呼ばれているものの方が「古い」のではないかと思うわけです。

いやもちろん、今や「古く」なってしまった立法・行政・司法による統治機構が扱えないような分野では「新しい公共」が必要とされているのだという議論も一理あると思います。しかし、それは、あくまで人類の歴史の中で多大な犠牲を払いながら少しずつ現在の形に形成された現代国家の不備を補完するものであって、現代国家そのものを否定するものではないはずです。だいぶ前に取り上げた「新しい公共」についての仁平先生の議論ですが、

 多くのNPOは、このような事態を少しでも改善すべく、物資搬送、炊き出し、自宅避難民の把握・支援等に奔走している。官民を超えた連携や役割分担も少しずつでき始めている。
 だが真摯に活動している人ほど、現実の前に強い無力感を感じているのも事実だ。なぜなら、今決定的に必要なのは、安心して尊厳を持って生活できる住居と、生活を支える収入や生計手段、健康を保証する医療・福祉だからである。これらは社会権に属するもので、最終的には国家/自治体が提供すべきものである。医療・福祉にしても、医療関係者やケア従事者たちが、今でも精一杯努力しているが、救えるはずの命が救えない苦しさの中にある。避難生活の中で震災関連しも増えている【注2】。「金と家をよこせ」という声は、文字通り社会権の回復を求める訴えとして聞くべきだろう。そして、健康と安全と尊厳の基盤を提供できるのは、最終的に公的セクターでしかない。

仁平典宏「被災者支援から問い直す「新しい公共」」p.91

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※ 以下、強調は引用者による。注は省略。

本文が書かれたのは今年の5月前後のようですのでフェーズが変わっておりまして、仮設住宅への入居にある程度めどが立った現時点では、「生活を支える収入や生計手段、健康を保証する医療・福祉」という継続的なフロー財源によって賄われる財政面での支援、つまりは税と社会保障による所得再分配が必要な分野に重点が移っています。こうした社会権についての公的セクターによる支援や保護が「財政削減」によって切り詰められて「新しい公共」ばかりが喧伝される状況は、特に「社会的弱者」と呼ばれるような支援を必要とされる方にとって厳しい社会を現出させかねません。再び仁平先生の議論を引用させていただくと、

 だが、そこから、阪神淡路大震災の時のように、「市民活動の足を引っ張る行政」というストーリーに一元化すべきではない。むしろ、市民セクターを生かす形で公的セクターが機能できなかった背景として、地方の公的セクターの損壊という点こそ考慮すべきである。だが、その損壊は津波だけが原因だったのだろうか。

(略)

 阪神・淡路大震災でもそうであったが、今回の災害も社会の弱い層にとってとりわけ過酷なものとなっている。災害時の社会が逆照射するのは、平時の社会が孕んできた矛盾である。「新しい公共」という理念を再構築するなら、まずは社会的に困難を抱える人々が安心して暮らせることを公的・制度的に保障し、その上に市民の創意工夫や直接民主主義的な参加が花開くような、二層的な公共空間であるべきだろう。

仁平「同上」pp.94-95

公務員の人件費カット・人員削減が行政改革の成果ともてはやされる時代に今回の大震災が発生したというのも自然の非情さを感じるところですが、そうであればこそ、公的セクターが担うべき役割、そのために必要な財源調達手段の再構築を考えなければならないと思います。

実を言うと、今回こうしたことを考えたのは、先日地元団体として被災地支援に当たっているNPOの資料にあった言葉が印象に残っていまして、正確な文言はあやふやですが、曰く「行政に民間感覚を求めるばかりでは支援できない。民間団体が被災地支援をするなら、民間が行政感覚を理解しなければならない」とのことで、被災地ではこうした感覚が共有されつつあるのだなと深く感銘したところです。
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コメント
この記事へのコメント
鳩山政権のブレーンだった平田オリザ氏が、以下のように発言したことは、有名ですね。(ウィキベティアより)
「2010年2月29日に開かれた「友愛公共フォーラム発会記念シンポジウム」というセッションで「ずっと10月以来関わってきて鳩山さんとも話をしているのは、やはり21世紀っていうのは、近代国家をどういう風に解体していくかっていう百年になる。しかし、政治家は国家を扱っているわけですから国家を解体するなんてことは、公(おおやけ)にはなかなか言えないわけで、それを選挙に負けない範囲で、どういう風に表現していくのかっていうことが、僕の立場」「国にやれることは限られるかもしれませんっていう、実はすごく大きな転換をすごく巧妙に、(演説に)入れているつもりなので先々、研究対象として何が変わったのかということを考えていただきたい」等の発言をした。」
新しい公共について、いろいろな論者がいて、議論もさまざまですが、上記のような思惑の方々がいるので、どうしても、「善意は地獄に通じる」にならないか、ちょっと心配せざるを得ないわけですね。
政治家によっては、「新しい公共」と「新公共管理改革」をいっしょだと思っている方もいるようで、ふわっと世間的には流布されている中、問題の根深さを感じる次第です。
2011/11/13(日) 10:36:01 | URL | yunusu2011 #-[ 編集]
> yunusu2011さん
いつもコメントありがとうございます。

> 新しい公共について、いろいろな論者がいて、議論もさまざまですが、上記のような思惑の方々がいるので、どうしても、「善意は地獄に通じる」にならないか、ちょっと心配せざるを得ないわけですね。

個人的には「新しい公共」という概念自体が空疎なものではなかったかと思っておりますので、ご指摘の通り「新しい公共」を強調する方が概して善意からそのような発言をされていることが大きな問題といえそうです。

その善意を否定せずに、「古い公共」が「新しい公共」と対立してその足を引っ張るものという概念を転換していくことが必要であって、この震災の中からその難題に対する回答が見えてくるのかもしれません。
2011/11/14(月) 00:24:22 | URL | マシナリ #-[ 編集]
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