2011年11月01日 (火) | Edit |
しばらく間が空いてしまいましたが、だらだらと長引く風邪と仕事の都合で更新できておりませんでした。まあ、前回まで新刊ラッシュに追いつくのがやっとで、ブログ自体のネタとしてはこれといったものがなかったというのも理由ではあります。

というわけで、拙ブログで継続的に取り上げてきている被災地の状況は、市町村ごと、地区ごと、世帯ごとにばらつきが顕著になっています。仮設住宅は基本的に市町村が用地確保から取得までを担っていますので、市町村によっては被災前の地区ごとに仮設団地に入居する仕組みにしていたり、山奥の仮設住宅には健常者や車を持っている世帯を入居させて、市街地に近い仮設住宅には高齢者や障碍者を優先的に入居させていたりという工夫がなされています。

こうして仮設住宅に対するケアがある程度行き渡ってきた現在、現地で問題になっていることは仮設住宅以外の在宅被災者の方々に対するケアです。これは以前のエントリでも自宅避難者について指摘していたことではありますが、仮設住宅だけにケアが集中することによって、もともと車がなければ買い物が難しい地区とか公共交通機関がなかった地区に対するケアが行き渡らなくなっている実態があります。実はこのあたりは評価が難しいところで、急峻な山間に点在する平地が海に面している三陸沿岸部では、浸水部を避けて仮設住宅を設置した結果として、必然的にそういった買い物難所だった地区とか公共交通機関がない地区に仮設住宅を設置せざるを得ません。つまり、仮設住宅が設置されている地区全体が買い物難所であるにも関わらず、その中に新設された仮設住宅にだけ移動店舗が来たりボランティアが物資を提供するということが生じるわけです。

もちろん、仮設住宅に住まざるを得ない方は住居を失った方なので、住居などのストックに被害のなかった方と同列に扱うことは適当ではないでしょう。しかし、特に問題になるのは、家や家族には特に被害がなくても、被災地に所在した勤め先が被災したために収入源が途絶えてしまう方です。地方自治体の実務上、フローの義援金や支援物資といった支給対象となるのは自治体が発行した罹災証明書の交付を受けている方であって、具体的には家が全半壊したり家族が死亡したりという被害があった方に限られます。このため、在宅で被災された方は、自己のストック財産に被害はなくても勤め先が被災してしまって当面の生活資金というフローに窮する可能性があるわけです。

といった被災地の現状を踏まえたかどうかはわかりませんが、先週「日本は一つ」しごとプロジェクトのフェーズ3が公表されました。PDFでは2ページが一枚にまとめられていますが、関係施策だけで128ページに及ぶというそのボリュームに圧倒されます。

東日本大震災の被災者の就労支援、雇用創出を促進するため、各省庁を横断して総合的な対策を策定し、強力な推進を図るという目的で設置された「被災者等就労支援・雇用創出推進会議」(座長:牧義夫 厚生労働副大臣)は、被災者のみなさんの仕事と暮らしを支えるため、政府をあげて対策の検討を重ねてきました。
 政府としては、これまで、復旧段階における雇用対策として『「日本はひとつ」しごとプロジェクト』フェーズ1・2の取組を推進し、被災3県で6万4千人超の方々を就職に結びつける等の成果をあげてきましたが、長期的な安定雇用の更なる創出を図るため、第三次補正予算・税制改正措置等での対応を行うフェーズ3をとりまとめましたので公表します。
 これによりトータル58万人程度の雇用創出・雇用下支え効果が期待され、今後、さらに確実に就労支援・雇用創出を推進します。

【とりまとめのポイント】

<雇用復興を支える予算措置等による対策>
1 地域経済・産業の再生・復興による雇用創出
  ・国内立地補助、中小企業等の復旧事業等の企業支援
  ・農林水産業支援、地域包括ケアの推進等による地域づくり等
2 産業振興と雇用対策の一体的支援
  ・「被災地雇用復興総合プログラム」の創設
  ・復興特区の創設に伴う法人税に係る措置の創設
3 復興を支える人材育成・安定した就職に向けた支援等
  ・復興に資する産業分野、成長分野等の公的職業訓練等の拡充
  ・新卒者支援の充実など、ハローワーク等による支援の充実強化
  ・雇用保険の給付の延長(90日分)(10月1日より施行済み)

<フェーズ3の雇用創出・下支え効果>
 総額6.1兆円   雇用創出・雇用の下支え効果58万人程度
   (雇用創出効果50万人程度 雇用の下支え効果7万人程度)


『「日本はひとつ」しごとプロジェクト』~被災者等就労支援・雇用創出推進会議 第3段階対応とりまとめ~」平成23年10月25日
※ 強調は引用者による。

本文でも「平成23年度第3次補正予算による措置、税制改正による措置などによる雇用復興に向けた総合的な対応策として「日本はひとつ」しごとプロジェクトフェーズ3を取りまとめた」と書いてあるくらい、「震災」という名目があればとにかく詰め込んだという印象ですが、まあ、雇用対策という問題が厚生労働省の一部局だけの問題ではないということが明確になったということは一歩前進ではないかと思うところです。

ただし、拙ブログでは何度もその事務手続きの煩雑さを指摘している緊急雇用創出事業については、「被災地雇用復興総合プログラム」として、事業復興型雇用創出事業と生涯現役・全員参加・世代継承型雇用創出事業が新たに創設されるとのことですが、特に後者は以前拙ブログで「具体的に何をしようとしているのかさっぱりわかりません」と指摘した例のアレのことのようです。

もちろん、実務面からいえば前者の事業復興型雇用創出事業についても、対象事業の要件として「関係省庁または自治体による事業高度化支援、施設整備補助、融資などの支援策の対象となっており、雇用創出が期待される事業であること」などが挙げられているだけで、具体的にどの事業を対象とするのか、その事業のどの経費を対象とするのか、支援するフレームは事業補助なのか人件費補助なのか運営費補助なのか、あるいは委託なのか助成なのかもよくわかりません。

それに輪をかけて、後者の生涯現役・全員参加・世代継承型雇用創出事業は「高齢者から若者への技能伝承、女性・障害者等の積極的活用、地域に根ざした働き方などができ、将来的な事業の自立による雇用創出が期待される事業を、民間企業・NPO等に委託して行う」という事業概要が示されているのですが、これを実務的にどう判断するのか皆目見当がつきません。おそらくはセージシュドーによって美辞麗句が盛り込まれたのではないかと推察されますが、役所の古くさい手続きとか実務なんていう下々のことなど目もくれず、高邁な理想に燃える「市民目線」で見事選挙を勝ち抜かれた選良の方々の発想はさすがに違いますね。

被災地ではこれからも役所、ボランティア、NPO,NGO、そして住民自らが一丸となって、冒頭で指摘したような生活上のストック財産を失った方、フロー所得の収入源を失った方を支援していかなければなりません。これらの高邁な理想がその支援の活動をどれだけ実効性あるものとするのかは、もちろん地域の現場で仕事をしている地方自治体の執行にも大きく依存します。しかし、自治体の執行が依って立つ制度設計をどれだけ実態に近いものにするかについては、日本という国の制度設計を担う立法府(国会議員)と行政府(霞ヶ関の官僚)が決定権を持っています。セージシュドーとかカンリョー支配の打破とかをスローガンに掲げる政治家が拍手喝采を受ける昨今ではありますが、地に足のついた制度設計ができる環境を整えることは、そのセージシュドーが政治主導として機能するための必要条件ではないかと思うところです。
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