2011年10月09日 (日) | Edit |
最近風邪を引くと長引く傾向があって、ここ2週間ほど平熱より1℃以上高い熱が下がらず、咳も収まらないということで、この3連休は遠出もせず布団にくるまってることになりそうです。というわけで、寝ながら積ん読の整理をと思いましたが、アメリカで「ウォール街を占拠せよ」というデモが盛り上がっているとのことで、権丈先生のところで推奨されていた映画「インサイド・ジョブ」をiTunes Storeでレンタルして視聴してみました。

ハバードからミシュキン、フェルドシュタイン、ロゴフ、ルービニ、ラジャンなど錚々たる経済学者がインタビューに答えていて、教科書とかでしか知らない海外の経済学者が話す姿にちょっと感動してしまいました。内容とは関係ないんですが、顔を見ながら話を聞くと、字面だけでは分からない心の動きなんかが推察されてくるので、やっぱメールとか電話よりも話しているときの姿勢とか息づかいとかが見える対面の会話ってのは大事だなと思ったり。

で、内容について言えば、基本的な説明は以前NHKスペシャルでやっていた「シリーズ マネー資本主義」と大きな違いはなかったと思います。あくまでも個人的な印象レベルの話ですが、サブプライムローンの危機についてラジャンとかルービニが警告できたのは、彼らがいわゆるWASPじゃなかったからなのかなとか、そうはいってもミシュキンはユダヤ人だしWASPだけじゃないのかとか、そもそもWASPとユダヤ人の対立がアメリカの政府高官と投資銀行のせめぎ合いをもたらして、止めどない金融の規制緩和につながったのかも・・などなど想像がかき立てられます。

と考えていたら、その辺の実情の一端を指摘しているブログがありました。

それが随所で感じられたのが、『WASPとユダヤ人』の対比です。
そもそも、マーク・ザッカーバーグはユダヤ人であり(だから、映画の中でもユダヤ人のパーティである「カリビアン・ナイト」に行くシーンがあります)、そのマークを「アイデアを盗まれた(!?)」と言って、ハーバードの学長に訴え相手にされずに、最後は訴訟をした双子の兄弟君たちキェメロン&タイラー・ウィンクルボスは、典型的なWASPです。

(略)

双子君達の行動パターンは、映画では随所に皮肉が混じっていて、苦笑の連続です。

ハーバード学長に直訴するために、父親のコネを使ったり。ちなみに、この時のハーバードの学長は、クリントン政権で財務長官だったサマーズ氏、映画の中で、双子君たちを評して、「ブルックスブラザーズの営業マンのようだ」というセリフには、本当に受けました(汗)

マーク・ザッカーバーグが、さえないGAPのパーカーを着ていて、WASPのエリート双子君たちは、ブルックスブラザーズの営業マン(合格)

アメリカ社会の光と影~映画「ソーシャル・ネットワークの衝撃」~続編(2011-01-23)」(KAELUのブログ
※ 絵文字は( )内に変換されています。強調は引用者による。

引用したエントリは映画「ソーシャル・ネットワーク」(Wikipedia:ソーシャル・ネットワーク(映画))の感想がてら書かれたもので、マーク・ザッカーバーグとは言わずと知れたFacebookの創設者ですね。
フェイスブック 若き天才の野望 (5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた)フェイスブック 若き天才の野望 (5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた)
(2011/01/13)
デビッド・カークパトリック

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ザッカーバーグ自身は、この本によると「ビジネスは目的を達成する手段に過ぎない」というスタンスを維持していて、フェイスブック社に対する度重なる買収提案をすべて断っているとのことで、当然のことながらユダヤ人だから投資に走るというわけではありませんが、何というか映画「インサイド・ジョブ」の登場人物を見ていると、金融業界の関係者というのは、人種は違っても同じような思考パターンになっていくのだなと感じたところです。

まあ、それが前回エントリで取り上げた企業のクレドみたいな形で共有されていくものであって、金融業界のそれを身につけたものだけが勝ち残っていくというのが、傍から見た金融業界の特質なのかもしれません。もちろん、コームインの世界にもクレドがあるでしょうし、民間でも建設業とか小売業とかそれぞれで違うクレドがあるのだと思います。問題は、莫大な利益を上げた金融業界では、それが行きすぎた成果主義的報酬体系に結びついていたことなのではないかと思います。

映画の中でインタビューに答えていたラジャンも、2005年の論文"Has Financial Development Made the World Riskier?"(注:pdfファイルです)ではアメリカの投資銀行の報酬体系によって、マネージャーが敢えてリスクを受け入れるように仕向けられていたことを指摘しています。映画「インサイド・ジョブ」の中で、ウォール・ストリートで診察している精神科医も指摘していましたが、リスクをとるときに反応する脳の部位は麻薬に反応する部位と同じだそうで、そうした感覚の麻痺が金銭欲を昂進させて、「回転ドア」(注:pdfファイルです)によって将来の報酬が約束される政府高官に金融業界に対する規制緩和を推進させたのかもしれません。

いやあ、民間感覚による政治主導ってほんとうにすばらしいですね(棒)
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コメント
この記事へのコメント
hahnela03さんのところで取り上げていただき、さらにそれをHALTANさんに取り上げていただいておりました。

> hahnela03さん
http://d.hatena.ne.jp/hahnela03/20111011/1318341605
も今年の風邪には苦しめられているとのことでご自愛ください。私の方はやっと熱が下がったところです。

> ※体調の悪い中、マシナリさんがわざわざこういうエントリーを上げた意味ってどういう事だろうなあと足りない頭で考えても、とても理解できるものでもないんですけど、何となくHALTANさんが指摘することをやんわりと知識階級たる方達にプライドを傷つけない言い回しで指摘しているのかなあと、感じました。

> 儀式=デモ ユダヤ対WASP=仮想敵との対立構造の利用

>  官主導・民主導という対立構造ものがそもそも無くて、同軸で回るものではなくクランク状態で各々自転周期が違うものが、回転するようなイメージなんですけどね。

いやまあ、単に本を読むのが辛かったので映画を見たという程度なんですが、スティグリッツが参加したという一点のみをもって、日本の怪しげな方々が「ウォール街を占拠せよ」などという運動に賛同してしまいそうでしたので、頭の整理という意味もありました。スティグリッツが参加した理由は、本エントリで引用させていただいた権丈先生の「勿凝学問」を読むと大体想像がつきます。

なお、「儀式=デモ」とか「ユダヤ対WASP=仮想敵との対立構造の利用」という意識は私の中にはありませんでした。言われてみればそう理解されてしまいそうな流れのエントリですが、まあ偶然ですね。。

> HALTANさん
http://d.hatena.ne.jp/HALTAN/20111013/p1

> 「リフレ」を言い訳に「儀式」を行い「仮想敵」を叩いて溜飲を下げているのが「リフレ派(ネットリフレ派)」なのだろう。

というわけでして、いわゆる「リフレ派」の一部の方々が「儀式」で「仮想的」を叩いているというご指摘はそのとおりかも知れませんが、私自身はむしろ、「政治主導」とか「民間感覚」というキーワードが闇雲なキセーカンワを許容している点を危惧しています。規制というのはそもそも誰かを保護するためにあるのであって、その保護されるものが強者であれば確かに撤廃されるべきですが、保護されるものが弱者であっても「あらゆる規制は非効率だからけしからん」という初等経済学の理論が大手を振ってキセーカンワが進められた結果が、例えば債務担保証券(CDO)の隆盛とその崩壊によるリーマンショックだったわけです。

まあ、キセーカンワが目的となった時点で「保護されているヤツが悪い」と短絡に考えてしまい、誰が保護すべきでない強者で誰が保護すべき弱者かが見えなくなってしまっているのが最大の問題なのでしょう。セージシュドウもしかり、チーキシュケンもしかりです。
2011/10/14(金) 08:30:43 | URL | マシナリ #-[ 編集]
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