2006年10月07日 (土) | Edit |
いろいろとネットに接続できない時期があったりして久しぶりの更新になります。前回の議論は一応収束したみたいですが、岐阜県の裏金問題はまだまだ火種がくすぶっているようだし、さらに福島県では現職知事が辞職に追い込まれるという事態になって、自治体業界も話題に事欠きません。いろいろとあって経緯を追いかける暇がなかったので、これらの件についてはそのうち取り上げることもあるかもしれないけど、とりあえず政策のフィージビリティを考える題材があったので取り上げてみます。

最近このブログでよく取り上げる「太田総理」なんだけど、昨日の放送もひどいことになっておりました。この海江田万里って経済評論家の肩書きもっていて、しかも一年くらい前まで国会議員だったんだと思うと、まあこの国の政策形成がどれだけのレベルかがよく分かるというもの。

ここで掲げられている海江田万里のマニフェストってのは、「格差解消税」っていう、多様な非課税品目や税率を盛り込んだ消費税を導入すべきってものなんだけど、「経済評論家」なんていいながらよくこんなことが言えますな(同じことは賛成に回っていた萩原博子にもいえますが)。

経済学的には消費税は所得税と同じということは理論的に導かれることで、それが成り立つためには、消費税(というか付加価値税)はすべての財に対して同率に課されるということが前提となる。つまり、課税によって所得効果と価格効果が生じ、所得効果だけならば消費者の行動に歪みが生じないので、税率を一定にして価格効果が生じないようにすることで課税による厚生損失が最小になるという理屈なわけで、ある特定の財に特定の税率が課されるとこの前提が崩れてしまう。なんていうミクロ経済学の基礎を無視してしまう経済評論家ってのは、詐欺師といわれてもしょうがない。それを担いでいた民主党もどんなものかと思っていたら、出演している民主党議員が全員賛成というていたらく。

民主党としては消費税率引き上げ反対キャンペーンの一環のつもりなんだろうけど、これまでに何度も繰り返しているとおり政策のフィージビリティについて無責任ですな。上記のような課税による外部性がもたらす行動の歪みということだけじゃなく、非課税品目とか税率が多様になればなるほど、その運用を担う現場の税務吏員の負担は大きくなるし、そこで不透明に不公平な扱いが助長されてしまうおそれもある。

もちろん、ラムゼールールの限界にあるように、厚生損失の最小化という効率性だけを目的とすると必需品に高い税率を課すことになるので低所得者の負担が大きくなるんだけど、そのために経済学では「効率と公平のトレードオフ」という考え方があって、ラムゼールールの限界については所得再分配によってバランスを取るための理論が構築されている。さらには、海江田万里が主張していたような必需品の税率が引き下げられることによる需要喚起がもたらす景気回復効果は、高価な奢侈品の税率引き上げによる需要減がもたらす景気後退効果によって簡単に相殺される。単純計算でいえば、1,000円のものが国民全員に1億2千個売れても1,000×120,000,000=1,200億円しか需要は増えないけど、100万円のものが人口の1%に満たない100万人の金持ちに売れなくなったら1,000,000×1,000,000=1,000,000,000,000円=1兆円もの需要減少が生じるということ。そういう腰を落ち着けた政策論議を展開するだけの度量を最大野党が持ち合わせていないという不幸をこそ、日本国民は嘆かなければならないのかも。

民主党の議論にこういう混乱が生じるのは、消費税だけを政策手段として考えるという野党にありがちな一点突破的な手法に頼るからだろう。消費税が所得税と同じであるならば、消費税率を上げる代わりに所得税で低所得者に再分配することが可能なわけで、実際に所得税ってのは高所得者になるほど税率が高くなる累進課税が昔から導入されている。こういった税制全体の改正を主張するならまだ消費税率に複数の税率を導入するとしてもその政策効果については展望を持つことができるんだけど、民主党のWebサイトの「2005年 民主党マニフェスト 政策各論」(注:PDFファイルです)を見てもそんなことは書いていない。しかもそんな問題を放っておきながら、消費税を「格差」っていう情に訴える言葉で修飾するあたりに民主党のあざとさが表れているわけですな。

こんな民主党のすりかえに惑わされず、格差問題を階層の固定化に絞って問題を指摘していた太田総理はその点では見識を評価したいが、、結局賛成とは・・・
「必需品の税率を下げることで政府が国民を救おうとしている姿勢が見えるようになる」ってのがその根拠らしいが、それをいうなら税率を一律にして再分配政策によって低所得者を救う方が(すくなくとも理論上は)国民を救うことになるわけで、こういうことをきちんと議論しない政党やマスコミの責任はどうなのかね。
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コメント
この記事へのコメント
正論ですね
同じような主張をアグネス・チャンのような素人が20年以上前にテレビで言っていましたが,エコノミストを自称する元政治家が同じレベルとは・・.

といっても海江田氏,法学部出身なんですね.
慶応の法学部は受験科目に数学もないですし,彼は学部レベルの理論経済も理解していない可能性は大ですね.
2007/03/02(金) 10:20:43 | URL | - #-[ 編集]
人材不足
民主党推薦で都知事選に出るとかなんとかという話もありますが、統一地方選に向けてこういう候補がどこの自治体でも担がれてしまうだろうと思うと薄ら寒くなりますね。
2007/03/03(土) 20:36:58 | URL | マシナリ #-[ 編集]
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