2011年07月25日 (月) | Edit |
先日政府の東日本大震災復興対策本部で「東日本大震災からの復興の基本方針骨子」が決定されたとのことで、ざっと内容を確認してみました。とりあえず、雇用関係については「5 復興施策」の「(2) 地域における暮らしの再生」に記載されていましたが、

5 復興施策
国は、以下の復興施策を推進。各府省は、被災地方公共団体の意向等を踏まえつつ、所管の復興施策についての当面の事業計画を、可能な限り速やかに策定し、公表。東日本大震災復興対策本部は、各府省が公表したものについて、その一覧性を確保するため、取りまとめを実施。また、事業の進度にあわせて、これを改定。

(2) 地域における暮らしの再生
(雇用対策)
() 仕事を通じて、生活の安定を図るとともに、被災地の復興を支えることが重要。このため、復旧事業等による確実な雇用創出、被災した方々の新たな就職に向けた支援、雇用の維持・生活の安定を政府を挙げて進める「「日本はひとつ」しごとプロジェクト」の推進、雇用創出基金の活用、被災地域におけるハローワーク等の機能・体制の強化等を行うとともに、産業政策と一体となった雇用面での支援を実施。また、当面の復旧ニーズや震災後の産業構造を踏まえた職業訓練、新産業創出を担う人材の育成等を実施。
() 被災地域において、人口減少、少子高齢化に対応して第一次産業等の生涯現役の雇用システムを活用した全員参加型、世代継承型の雇用復興、兼業による安定的な就労と所得機会の確保等を支援。若者・女性・高齢者・障害者を含む雇用を被災地域で確保。

東日本大震災からの復興の基本方針骨子 (平成23年7月21日(木))注:PDFファイルです」(東日本大震災復興対策本部


なんとなく、1か月前に「いまさら?」と疑問を呈していた復興構想会議の提言よりも後退してしまっている感があるのは気のせいでしょうか。。。まあ「調整中(「復興に関する財政フレーム検討閣僚級会合」関連。)」とされている部分があちこちにありますし、骨子案とはいえ、参考資料を除いても提言の半分以下のページ数ということで、現時点では雇用に関してはほとんど内容がないといってもよさそうです。その他、「復興特区制度」や「使い勝手のよい交付金」、「新しい公共」など拙ブログで疑問を呈しているキーワードがてんこ盛りで、読んでいてゲンナリしてしまいました。

ところで、「「復興に関する財政フレーム検討閣僚級会合」関連」でググっても政府のサイトがヒットしないので、この会合は閣僚級の非公開会議のようです。経済財政諮問会議が機能していたころに比べて情報の開示も後退しているように見えますが、現政権には自公政権時よりも表に出せない話が多いのかな?と邪推してしまいますね。まあ、現政権は謝罪がマイブームらしいので、「いかに謝るか」を相談しているのかもしれません。

さて、復興構想会議の提言でも、今回の骨子案でも一つよく分からないことがあります。いずれの題名も「復興」という言葉がメインとなっているのですが、「復興」とはどういう状態を示すのでしょうか。拙ブログでも、3月の時点で

上記1、2で指摘したことは、いずれも財政負担を伴うものです。私が現時点で最も危惧するのは、自分の負担が増えることについての拒否反応と過疎地への再分配への拒否反応です。現在のところ、マスコミでもまだ被災者の苦しい避難所生活を強調したり、今後の生活再建への不安を駆り立てるような報道がなされ、それに対する支援の輪が広がっていく循環ができているように思いますが、ある程度生活再建が現実の課題として認識される段階になれば、「そんな津波で流されるところにわざわざ町を再建する必要はない」「もともと過疎の町だったんだから、この機会に全員移住させてしまえばいい」「津波に強い町にするためなんていいながらムダな公共事業なんかに税金を使わせてなるものか」という議論が起こることは十分に想定されます。

※ 強調は引用時。
復旧・復興に向けてのいくつかの論点(2011年03月27日 (日))


と懸念しておりましたが、やはり次のような反応が今後広まっていくのかもしれません。

 
 このまま行くと、人口が今後とも減っていく東北地方のために多額の税金を無駄に使われることになるかもしれない。そして被害額以上の税金がつぎ込まれ、今までの東北にあった国富のプラスαが作られることになる。しかも税金で被災者のために新築まで作るのだ。こんな馬鹿げたことのために税金を上げるとなると、今後は何か災害が起きても寄付する人は消えていなくなるだろう。はっきり言って、被災地のために増税されることがわかっていたら寄付することほどバカバカしいものはない!
 しかもコミュニティを壊さない復興をしろとか住民がワガママを言っているようだし、辞任した松本復興担当大臣じゃないけど「ちゃんとやれ!」と言いたくもなる。もし23兆~25兆円もの復興資金がつぎ込まれるのなら、もはや被災者は弱者でもなんでもない。あれこそ究極のモンスターだ!
 こんなに復興資金をジャブジャブつぎ込んだら被災地域は焼け太りになるだけであり、想像を絶するほどの無駄な公共事業を増税でやられることになる。人口が減っていく地域だからこその復旧があるはずで、その費用は土地の造成費用と生活道路と地域をつなぐ道路と漁港の復旧で十分だろう。その他プラスαがあると仮定しても、5兆円もあれば十二分に復旧は可能なはずである。間違っても被災者のために新築住宅まで税金でプレゼントしてはならない。
 年金で生活している被災者はいくらか引っ越し費用などをあげて、病院に近い都会の集合住宅にでも移住させればいい。仕事のない人も都会の仕事を探してあげて移住させればいい。地元に仕事が残った人を中心に造成地を作るだけですめば、復旧費用はもっと少なくても大丈夫だろう。

増税で復興事業を22兆~25兆円という暴挙!(2011年07月22日00:00)」(日本経済をボロボロにする人々
※ 強調は引用者による。


こうした意見が出てくるのも、肝心の「何をもって復興とするか」という点についてのコンセンサスが得られていないからではないかと思います。復興構想会議の提言でも今回の骨子案でも、どのような状態になれば「復興した」というのかは明記されていません。「2 復興期間」が調整中なのが象徴的ですが、これでは、復興に要する期間や費用の見積もりに異論が出るのも無理はないでしょう。

実をいえば、私自身も一面が流されてしまった被災地に行くたびに「ここがどうなれば『復興』したといえるのだろうか?」と思い悩んでいます。物理的に地盤が沈下したり、防波堤・防潮堤などが破損しているので、元の町並みを再現することは現実的ではありません。しかし、復興が遅れている今この時点でも、働いて生活する場を求めて人口は流出しています。被災地に残っているのは、地場産業の水産業のほか、復興需要が見込める建設・住宅関係の会社や商店街の店主などですが、復興需要は一時的なものとなるでしょう。

とはいっても、被害に遭った臨海部は、むしろ漁港や港湾を拠点とする漁業や水産加工業をはじめ、精密機械などの製造業といった産業があるので、まだマシといえます。それより問題なのは、これといった産業もなく、特に高齢化の進んだ農家しかないような中山間地域の集落です。農家の方々は土地を資本として農業を営んでいる以上、土地がない限りは引っ越して仕事=農業を続けることができません。農作物の出来不出来は気候や土壌に大きく左右されるので、例えば内陸の耕作放棄地に引っ越したとしても、沿岸の高齢化した農家がこれまで培ったノウハウを生かせるかどうかは未知数です。そもそも、農業がペイしないから高齢化が進んで耕作放棄地になっているわけで、高齢化した農家が内陸の耕作放棄地に引っ越して農業をするということは、現実的に難しいと思われます。

極端に言えば、そうした過疎地域の農業までが「復興」の対象となるのでしょうか。あるいは、「復興した」リアス式海岸部を全国の方が「是非住みたい」という地域にして人口増加を目指すのでしょうか。もしかすると、引用したブログ主が主張されるように、「その費用は土地の造成費用と生活道路と地域をつなぐ道路と漁港の復旧で十分」というのも一つの考え方かもしれません。まあ、このブログ主はストックとフローの切り分けができていないようですし、したがってフローによる所得再分配という概念自体も持ち合わせていないようですので、「トンデモ」認定しておけば無害です。といっても、経済学者の中にも堂々とこういう議論をされる方がいるので油断はできませんが。

話を戻すと、私自身は上記のとおり現時点で「何が復興か?」に対する回答はありません。ただ、一つの目安となるのは、外部から支援に入っている各機関や団体が撤退する時期が一つの区切りとなるのではないかと考えています。たとえば、岩手県では今週中にも自衛隊が撤収することになるようです。

自衛隊に撤収要請…岩手県知事、26日にも

 岩手県の達増拓也知事は20日、県内で災害支援活動を行っている自衛隊に対し、26日にも撤収を要請する考えを明らかにした。

 東日本大震災で大きな被害を受けた東北3県での撤収要請は初めて。

 達増知事は20日開かれた県災害対策本部会議で、「自衛隊は24日に県内での支援活動をすべて終了する予定だ。順調なら撤収要請を26日に行う方向で考えたい」と述べた。

 陸上自衛隊第9師団司令部指揮所広報によると、岩手県内では19日現在、陸自隊員ら約4900人が生活支援活動などをしている。防衛省によると、震災で7道県から自衛隊の派遣要請があり、このうち青森、千葉、北海道、茨城の4道県では撤収している。

(2011年7月20日13時21分 読売新聞)


まずは、これまで災害発生直後は警察や消防でも手に終えないような生存者の救助、道路や橋梁の復旧に当たり、その後は遺体の捜索のほか、風呂の提供、炊き出し、物資の運搬・配給といった社会生活に必要な支援に当たってきた自衛隊に対し、心からお礼を申し上げます。そして、自衛隊に提供していただいていたこれらの支援は、これから地元自治体や民間団体が担うことになります。このとき、上記のブログ主なら、「税金でやるのはけしからん」というのかもしれませんが、施設や物資はもちろん、それを提供する人員の人件費など多額の費用が必要となりますので、皆様にはご理解とご協力を心からお願い申し上げます。

さらに、民間団体の中では海外のNGO団体にも撤収の動きが出ています。海外のNGO団体からすれば、日本という世界トップクラスの行政サービスを有する国で起きていることは、まともな行政機構もスタッフもいない途上国の状況に比べればまだまだマシでしょうから、ある程度まで行政機能が回復すれば、日本より途上国の支援にリソースを回すのが合理的です。その意味で、海外のNPOが撤収した時点では、少なくとも支援するために必要なリソースを日本という国が用意できたと判断したことになると思います。そしてこのときも、我々地方公務員は住民の方々と接する中で「何が復興か?」を問い続けながら、この地で引き続き社会生活の支援をし、さらに充実させていかなければなりません。

正直なところ、海外のNGO団体の判断基準が途上国であれば、地元の行政機能が十分に回復する前に手を引いてしまいそうな気がしますし、現政権は「復興特区」と「使い勝手のよい交付金」を渡して「後は地方分権で」と手を切りそうな気もします。しかし、この地域が「復興」のために必要としているのは、財源や物資だけではありませんし、ましてやそれを獲得して配分する権限でもありません。この地元の住民として生活をしながら仕事をし、家族や友だち、周囲の住民と一緒に活動し、必要であれば互いの生活を支援し合い、その成果を分かち合う「人」が必要です。生活する場や仕事を求めて一時的に地元を離れた「人」がいても、いつかは「人」がその土地に戻ること。「復興」はおそらくその先にあるのだろうと思います。
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コメント
この記事へのコメント
ストックとフローをどうわかっていないかを曖昧なく教えてください。具体的に文章を出してどういうふうにわかっていないかを指摘していただければ自分のブログで取り上げて反論してあげます。
2011/07/26(火) 07:28:00 | URL | nnnhhhkkk #-[ 編集]
> nnnhhhkkkさん

コメントありがとうございます。
本エントリで「このブログ主はストックとフローの切り分けができていないようですし、したがってフローによる所得再分配という概念自体も持ち合わせていないようです」と書いたのは、特に後段の所得再分配の重要性を強調することが目的でした。nnnhhhkkkさんがストックとフローをわかっていないという趣旨で書いたつもりではありませんでしたが、お気に障りましたらお詫びいたします。

改めてnnnhhhkkkさんのブログの他のエントリーを拝見したところ、金融関係に造詣が深いように見受けましたので、ストックとフローの話は釈迦に説法かもしれません。もし気が向きましたら、震災後の拙ブログでは、
「財源論と行政不信」
http://sonicbrew.blog55.fc2.com/blog-entry-450.html
「復旧・復興に向けてのいくつかの論点」
http://sonicbrew.blog55.fc2.com/blog-entry-447.html
などご覧いただくと、公共経済におけるフローとストックについての私のスタンスをご理解いただけるかと思います。

なお、震災前のエントリではありますが、私の経済政策についてのスタンスは、
「ケインズの言葉」
http://sonicbrew.blog55.fc2.com/blog-entry-443.html
「体系の人」
http://sonicbrew.blog55.fc2.com/blog-entry-439.html
「手段としての経済学」
http://sonicbrew.blog55.fc2.com/blog-entry-437.html
などでご確認いただければと思います。
2011/07/27(水) 23:31:35 | URL | マシナリ #-[ 編集]
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