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2010年10月13日 (水) | Edit |
戦略大好きな現政権は「地域主権戦略会議」という物騒な名前の会議も開催しているようで、先週の会合では、埼玉県知事が、

○厚生労働省は地域主権改革に係る見直し案として、「国と地方の協働」や「一部事務の先行移管」を提案。
○しかし、これらは

「国と地方の協働」→現状と何ら変わらないばかりか役割分担を一層不明確にし、二重行政にもつながる。原則廃止の姿勢に照らし、全て地方に委ねるべき
「一部事務の先行移管」→ ごく一部の上乗せ事務(人材銀行など)の移管に過ぎず、大宗は国に温存。

であり、「身近な行政はできる限り地方に委ねる」地域主権改革の実現に結びつくものではない。
(略)

(2)ハローワーク地方移管によるメリット

  1. 求職者が求めるサービスは職業紹介だけでなく、住宅、生活保護、職業訓練など多岐にわたる。
    総合行政である地方は、これらの総合的サービスを「ワンストップ」で「常時」提供できる。
  2. 現行のハローワークができるのは「求人情報の紹介」まで。地方は地域企業とのネットワークや職業訓練機能を生かし、雇用を生み出す産業の育成から、そのための人材の訓練・育成まで「一気通貫の雇用政策」を展開できる。
  3. 若年就労(特に未内定卒業者や早期離職者)を改善するには学校教育と就労支援の連携が必要。
    地方では教育現場と連携した若年就労対策を講じることが可能。
  4. ハローワークが混雑していても、縦割り構造の中で他府省の職員(経済産業局や農政局など)を配置することはできないが、総合行政主体である地方は縦割りの壁もなく、首長の指揮の下、機動的・弾力的な人材配置が可能。


上田議員提出資料[PDF:404KB]平成22年10月7日(木)地域主権戦略会議(第7回))」(地域主権戦略会議


なんてことをおっしゃっていたようです。

うーむ、いやだから、国と地方が一体的に労働市場行政を担う仕組みであった地方事務官制を廃止した第一次分権改革に対する反省はどうなってるんでしょう?とか、ハローワークが混雑するくらいに雇用情勢が厳しくなれば、緊急雇用対策とかいって商工部局も農林水部局も事業化にてんてこ舞いだと思うんですが、どうやって機動的に配置するんでしょう?とか、そもそも着々と地方公務員を削減しておきながらさらに仕事を増やして他の部署の人員まで動員するってどんだけ働かせるつもりなんでしょうねえ、とかいう疑問が次々に浮かんでくる資料ですね。職業紹介と職業訓練の重要性を指摘している点は素直に賛同できますが、だたし、それもおそらく「職業訓練も地方によこせ」という文脈からであって、職業訓練そのものの意義を認めているかは疑問ですし。

役所に対する批判によくあるのが、「暇な部署に職員を配置するのはムダだから、忙しい部署に配置すればいい」という議論ですが、単純労務ならそれも可能だとしても、ハローワークで行う職業紹介と保険給付のような、職業安定法とか雇用保険法とか徴収法といった法規に関する知識と求人事業所についての情報と求職者に対する保険給付手続について熟知することが求められる業務に、他部署の人間を放り込んでも戦力にはならないわけです。さらにいえば、付け焼き刃の職員が担当すれば業務のクオリティは低下しますし、それが常態化すれば公共サービスそのもののクオリティが低下していくことになります。職業訓練が軽視される一方で企業内OJTが削減されていくのは、職場の年齢構成や人件費削減の状況の下では民間も役所も同じですから、役人のクオリティも下がっているのが実情ですしね。

まあ、役所の中に比較的暇な部署はもちろんありますが、特殊な事情(いわゆるリハビリポジション)を除き、通常は年度ごとの人事異動サイクルの中の繁忙期に合わせて人員を配置した結果として季節的に暇なわけですから、「お前、今の時期暇なんだからハローワークにいって職業紹介やってこい」といわれて職員を送り出してしまった部署は、その後の繁忙期に対応できなくなる可能性があります。繁忙期が予測できる定型業務ならまだしも、多かれ少なかれすべての部署は突発的な事案に対応する必要があるので、年度途中の人員配置の余地はそれほど大きくはありません。いずれにしろ、機動的な人員配置は「総合行政」を看板に掲げる地方自治体でも難しいのですよ。総合行政での機動的人員配置という奴は、言葉でいうほど機動的ではないのでな(一応参考までに第7話です)。

ただ、こういう主張が政治家一筋の経歴しかない地方自治体の首長から出てくるのは、組織内の人事労務管理を経験していないと考えればやむを得ないとしても、役所の人事労務管理の弱さを改めて感じてしまいます。ある程度の規模の民間企業であれば、人事労務管理を専門とする部署があって、定期的な人員配置と日常的な労務管理は一体のものとして管理されているのが通常だと思います。だから「人事労務管理」といわれるわけですが、多くの役所には「人事」を担当する部署はあっても、「労務管理」を担当する部署がないか、あっても認定などのいわゆる庶務的な事務手続に特化しているのが実情でしょう。そんな組織のトップに鎮座する首長にとってみれば、「俺が命令して職員を置けば仕事するのが当たり前。職場研修? 労働時間管理? そんなの現場で何とかしてくれるんでしょ」という感覚になるのも頷けます。

さらにいえば、そういう役所の組織では、具体的な労務管理は各所属がバラバラに担当することになるので、「労働法?なにそれ食えるの?」という上司がいる所属では、ブラック企業も顔負けのパワハラ、サビ残などの違法行為が横行してしてしまいます。機動的な人員配置が実現した場合は、そんな労務管理も労働法規も頭にない部署で違法行為に慣れきった職員が職業紹介に駆り出されるわけで、「サビ残って当たり前でしょ? 地元で働けるだけラッキーと思わなきゃね! せっかく雇ってもらえるのに文句なんかいったら失礼だよ!」とかいってブラック企業に求職者を送り込んでいくのが、地方自治体が行う職業紹介の未来像のような気がしてなりません。

その他、地方分権に観点からのハローワークの移管については、チホーブンケンに関する一連のエントリ以上は特に繰り返すこともないので、以前知り合いの県職員に見せてもらったはがきをご紹介することにします。社労士を名乗る方が全国の知事あてに送ったもののようで、もちろん全面的にこのはがきの趣旨に賛同するわけではありませんが、労働問題の現場にいる方からの意見ということでご覧いただければと思います。

 ハローワークの地方委譲を自治体は重点項目としていることを新聞で知りました。社労士として労働に携わる者からすれば、職安が行うセーフティーネットは国が保障すべきで、地方が行うものではないと考えます。
 仮に職安を財源・人員とセットで移譲されても、財政力の弱い自治体では現在よりさらに職安の統廃合、人員の削減が進み、地方によっては失業者の勤労権が脅かされる事態になりかねません。
 雇用政策は都道府県単位で行うべきではなく、労働力移動は全国単位で行われ、また国民全てが平等に就業の機会が与えられる「勤労権」を担う行政は、国に責任を持って運営させるべきです。
 また、英・仏の失敗で分かるように、保険と紹介は一体で運営する必要があり、どの都道府県に就業場所を探すために移動したとしても、安定した就業の機会と失業給付を保証する現在のシステムは維持すべきです。
 ハローワークの地方委譲には国民のために絶対に反対です。もし地方が参画するとすれば、国が運営し地方が参画する(事実上知事が指揮命令を行う)過去の「機関委任事務制度」の方がよほど有効だと考えます。
 地方分権は非常に重要で、確かに国土・農林等は二重行政で、統合や移譲を検討しなければいけないと思いますが、職安はあきらかに二重行政ではありません。
 何より残念なのが、埼玉県知事が先行して職安を地方に移し、さらに「民間委託」を行おうと提案したと聞きました。各知事が真剣に地方を良くしようと奮闘しているのにも関わらず、埼玉県知事の行いは、「やはり地方分権の目的は「金」のみで、国民の生活は無視、弱者切り捨て」と、かなり残念に感じた国民は多かったと思います
 良識ある知事にお願いです。国民生活に直結する労働行政は、埼玉県知事の発言のような、目先の利益に走る事なく、今の危機的状況を打開する為、国と地方が協力し、慎重に検討して頂ける事を強く望みます。国民生活の最後の頼みの綱、職安の役割は重要です

※ 太字強調は原文。


「英・仏の失敗で分かるように、保険と紹介は一体で運営する必要があり、どの都道府県に就業場所を探すために移動したとしても、安定した就業の機会と失業給付を保証する現在のシステムは維持すべき」という部分はもっと議論されていいと思うのですが、冒頭の埼玉県知事の資料には「メリット」しか書かれていないんですよね。上記で指摘したようなデメリットなんか考えていたら地方分権改革はできないという強い意志の表れなのでしょう。

とてもまえむきなかんがえかたで、ぼくもみなわらなければならないなとおもいました(久しぶりに棒読み)。

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