2010年09月27日 (月) | Edit |
謎の民主党代表選のさなかの9月10日に閣議決定された「経済対策」なるものがありまして、マスコミ的にはあまりニュースバリューはないようですが、例の緊急雇用創出事業が拡充されたとのこと。

○成長分野を中心とした雇用創造・人材育成等

(ア)「重点分野雇用創造事業」の拡充【厚生労働省】
介護、医療、農林、環境・エネルギー、観光、地域社会雇用等の分野における新たな雇用機会の創出、地域ニーズに応じた人材育成を推進する「重点分野雇用創造事業」を拡充する。

(p.13)

本対策(緊急的な対応)の規模
国 費事業費
(億円)(兆円)
1.「雇用」の基盤づくり1,750 程度1.1 程度
(1)新卒者雇用に関する緊急対策250程度
(2)雇用創造・人材育成の支援1,150程度
うち重点分野雇用創造事業の拡充1,000程度
(3)中小企業に対する金融支援300程度

(以下略)
(別紙)

新成長戦略実現に向けた3段構えの経済対策 ~円高、デフレへの緊急対応~[PDF] (平成22年9月10日)」(首相官邸

※ 以下、強調は引用者による。


ちょっとややこしいんですが、失業者を雇用することを目的とした雇用創出の基金と呼ばれる事業には、大きくふるさと雇用再生特別基金事業(pdfファイルです)緊急雇用創出事業(pdfファイルです)重点分野雇用創造事業(pdfファイルです)いう三つのくくりがあって、そのうち三つ目の重点分野雇用創造事業はさらに重点分野雇用創出事業と地域人材育成事業の二つに分かれて、さらに地域人材育成事業のうちには「働きながら資格を取る」介護雇用プログラム(pdfファイルです)という事業が含まれています。で、今回拡充されたのは、重点雇用創出事業と地域人材育成事業(「働きながら資格を取る」介護雇用プログラムを含む)からなる重点分野雇用創造事業というわけです。あぁめんどい。

この基金はリーマンショック後の平成20年10月30日「生活対策」と平成20年12月19日「生活防衛のための緊急対策」で各地方自治体に配分されたもので、地方自治体はこの配分額を余さず事業化することに追われております。まあ、それだけ仕事が増えて現場はアップアップなんですが、前政権下で配分された当初は、草刈りでもパソコン入力でもなんでもいいから役所が失業者を雇えというものだったものの、PDCAとか大流行の昨今ですので、雇った成果を検証しろという指示が後から「せいじしゅどう」により飛んでくるようになりました。

ところが、緊急雇用対策というのはそもそも雇う以上の目的はありませんので、何か成果らしきものを残さなければならない地方自治体側は、目的が説明しやすい就職支援とか人材育成をするような事業を紛れ込ませてくるようになりました。まあ、地方自治体の側も、緊急事業として一時的に事業化するネタが尽きてきたということもあって、本来公共サービスとして提供すべきものでありながら、財政悪化に押されて手が着けられてない分野に進出しているという側面もあります。

たとえば、今回の経済対策では「パーソナル・サポート・モデル事業」というものも盛り込まれているのですが、これはかの「公設派遣村」を恒常的な制度としようとするもので、簡単に言ってしまえば、湯浅誠内閣府参与が「もやい」で実践されていることを役所の役人がやることになります。

1 パーソナル・サポート・サービスの概念整理について

(1) 当事者の抱える問題全体に対応する包括的支援の継続的なコーディネイト
○ 今日の経済社会環境の変化を背景に、経済的な問題、社会的な関係をめぐる問題、家族関係をめぐる問題、精神保健をめぐる問題など多領域にわたる要因が複雑に絡んで、さらに問題を複雑、深刻化させる悪循環を引き起こし、生活上の困難に直面するものが増加している。
生活困窮する当事者自身が自分の抱える問題を正確に認識できないケースも少なくなく、自分の力のみでは必要な支援策にたどり着くことが困難である。また、対象(高齢者、障害者、女性、若者、子どもなど)や制度(介護、福祉、医療、就労支援など)別に構築した支援体制では、どこでも複雑に絡み合った問題の全体的な構造を把握し、受け止めることが難しい。
○ 現在の体制では、対象や制度に合わせて問題を限定化してとらえて支援を行ったり、あるいは他の支援機関に回すことが行われがちであるが、それでは問題の悪循環から抜け出し自立に結びつけていくことは難しい。当事者の抱える問題の全体を構造的に把握した上で、当事者の支援ニーズに合わせて、制度横断的にオーダーメイドで支援策の調整、調達、開拓等のコーディネイトを行い、かつ、当事者の状況変化に応じて、継続的に伴走型で行っていく支援が求められている
○ このような支援を、制度本位ではなく、支援ニーズを持つ当事者本位の個別的、包括的、継続的な支援という性格に焦点をあてて「パーソナル・サポート・サービス」と定義して、そのあり方を検討していく。


「パーソナル・サポート・サービス」について~モデル・プロジェクト開始前段階における考え方の整理~(平成22年8月31日、パーソナル・サポート・サービス検討委員会)」(緊急雇用対策本部推進チームの活動状況


失業状態にある方に必要な公共サービスが行き届くようにすることは重要だと思いますが、これが上述の緊急雇用の基金を使って事業化されることになるわけです。

ええと、ここでちょっと整理しておきましょう。緊急雇用の基金は失業者の方を雇うための事業を実施するための財源でしたね。また、その基金で実施することとされた「パーソナル・サポート・モデル事業」は、失業者に必要な公共サービスを行き届けるようにするものです。ということは、どういうことが起きるかというと、パーソナル・サポート・モデル事業で雇用されたついこの間まで失業状態にあった方が、今現在失業状態にある方をサポートするという事業になるわけです。なんという皮肉な事業でしょう。

まあ、昨今の「公務員制度改革」ではさらなる公務員削減が与野党問わず主張されているわけですから、失業対策であろうとそのための事業が増えようと正規職員を増やすなんてことはあり得ません。ということは、非常勤職員、嘱託職員、臨時職員という名目の有期雇用でその分の業務を補う必要が生じることになりますので、上記のように「失業者を雇用する事業で失業者をサポートする」という事業が生まれてしまうわけですね。

非国民通信さんのところにもこのような事業の募集があったようです。

 ハローワークの窓口相談の人は基本的に非常勤であると以前から聞いていましたが、そうした仕事の口が、まさか私にまで紹介されるとは思っても見ませんでした。普通に考えれば就職に関して相談に行く側である失業者に対して、そうした相談を受け付ける仕事を紹介するという行為は、もはや派遣会社からすれば当たり前なのかも知れませんが、私からすればシュールにすら感じられます。まぁ身をもって失業を経験している人であればこそ、仕事を探している人の置かれた状況を理解できるフシがあるとも言えるのかも知れませんね!

以前に、セクハラでクビになった大学の就職課職員の話を取り上げました(参考)。その時の職員もまた、当初は人材派遣会社からの派遣で働き始めたことが報道されていたものです。ハローワークの窓口相談役にせよ学校の就職課にせよ、そして役所の「キャリアカウンセラー」にせよ、この手の就職相談を受ける人の非正規雇用率は相当に高そうです。定年退職した人が年金受給年齢までのつなぎとしてハローワークのバイトをしているくらいならまだ理解できますが、それなりに若い人も少なからず目にします。詰めかける求職者の相談に応じているのは、実はいつクビを切られて失業するかわかったものではない、そんな不安定な立場に置かれた人たちでもある、何とも不思議な光景ではないでしょうか。

失業者に紹介する仕事か?(2010-09-25 22:57:32)」(非国民通信

この後の部分で非国民通信さんも指摘されていることとも関連しますが、困っている人を助けるのは困っている人に任せるという感覚が、どうもこの国にはありそうです。となると、中高所得者層から低所得者層への所得再分配によって公共サービスを拡充しようという主張が受け入れられる余地は、やっぱりなさそうだとしかいえませんねえ。

このエントリーをはてなブックマークに追加
スポンサーサイト


コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック