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2010年09月22日 (水) | Edit |
前回エントリに引き続き、新閣僚に就任された方についての過去のエントリをサルベージすると、海江田万里氏についてこんなエントリを書いておりました。

ここで掲げられている海江田万里のマニフェストってのは、「格差解消税」っていう、多様な非課税品目や税率を盛り込んだ消費税を導入すべきってものなんだけど、「経済評論家」なんていいながらよくこんなことが言えますな(同じことは賛成に回っていた萩原博子にもいえますが)。

経済学的には消費税は所得税と同じということは理論的に導かれることで、それが成り立つためには、消費税(というか付加価値税)はすべての財に対して同率に課されるということが前提となる。つまり、課税によって所得効果と価格効果が生じ、所得効果だけならば消費者の行動に歪みが生じないので、税率を一定にして価格効果が生じないようにすることで課税による厚生損失が最小になるという理屈なわけで、ある特定の財に特定の税率が課されるとこの前提が崩れてしまう。なんていうミクロ経済学の基礎を無視してしまう経済評論家ってのは、詐欺師といわれてもしょうがない。それを担いでいた民主党もどんなものかと思っていたら、出演している民主党議員が全員賛成というていたらく。

民主党としては消費税率引き上げ反対キャンペーンの一環のつもりなんだろうけど、これまでに何度も繰り返しているとおり政策のフィージビリティについて無責任ですな。上記のような課税による外部性がもたらす行動の歪みということだけじゃなく、非課税品目とか税率が多様になればなるほど、その運用を担う現場の税務吏員の負担は大きくなるし、そこで不透明に不公平な扱いが助長されてしまうおそれもある

(略)

民主党の議論にこういう混乱が生じるのは、消費税だけを政策手段として考えるという野党にありがちな一点突破的な手法に頼るからだろう。消費税が所得税と同じであるならば、消費税率を上げる代わりに所得税で低所得者に再分配することが可能なわけで、実際に所得税ってのは高所得者になるほど税率が高くなる累進課税が昔から導入されている。こういった税制全体の改正を主張するならまだ消費税率に複数の税率を導入するとしてもその政策効果については展望を持つことができるんだけど、民主党のWebサイトの「2005年 民主党マニフェスト 政策各論」(注:PDFファイルです)を見てもそんなことは書いていない。しかもそんな問題を放っておきながら、消費税を「格差」っていう情に訴える言葉で修飾するあたりに民主党のあざとさが表れているわけですな。

ニセ経済評論家と民主党(2006年10月07日 (土))
※ 強調は引用時。


拙ブログでも初期のエントリですが、現時点でも大きな修正の必要はなさそうです。

というより、このエントリでは消費税に複数税率を導入することを一応標準的なミクロ経済学の理論を用いて批判しているので、経済学部でまともな授業を受けた学生なら大抵はこういう批判ができるはず。たとえば、権丈先生も同じような趣旨の発言をされていますね。

日本でも、消費税率を上げる際には、食料品への軽減税率を設けるべし言うのが常識となっていますけど、食料品への軽減税率を設けたいのは、何も食料品だからではないですよね。要は、低所得・貧困を支出側面で判定するのか、給付側面で判定するのかの問題になるわけです。低所得者対策として食料品への軽減税率を設けことにしても、食料品は、やはり高所得者ほど多く購入するので、あまり効率の良くない低所得者対策となってしまいます。さらに、何をもって食料品とするのかの問題があり、食料品を軽減税率とすれば、永田町がロビイング活動で賑やかになるのは確かです。複数税率をとっている国々は、軽減税率は運営面でのコスト、ロスが大きすぎ、軽減税率を導入したことを少々後悔気味で、デンマークをうらやましがっています。かつての日本にも奢侈品に対する物品税がありましたけど、消費税の導入時になくしてしまいました。私自身は、軽減税率を設けずに税収をたっぷりと得、その財源で給付を充実させるデンマーク方式がベター、つまり、家計の必要を給付面で判定する方がベターだと考えています。

「勿凝学問300 要は、低所得・貧困を支出側面で判定するのか 給付側面で判定するのかの問題になるわけです」 ―― 消費税の食料品へ軽減税率について」(仕事のページ(権丈善一先生Webサイト)
※ 以下、強調は引用者による。


この「勿凝学問300」を紹介している「勿凝学問329 介護関係者への消費税の説明は楽なのかもしれないと思った日―――介護と付加価値税のモデルはともにデンマーク?」については、黒川さんも取り上げています。

それより制度が最初に期待した効果を、十分な財源確保ができないために発揮できず、制度見直しのたびに中途半端な制度になっていく後退戦を強いられていて、財源確保が課題になっている。また少ない財源でサービスを提供しなくてはならないので、多くの官製ワーキングプア(民間企業に雇われている人が多いが、公金が財源であり、公的制度であるから、実態は官製ワーキングプアだろう)に支えられているのも現実。俗論に惑わされていない介護関係者は、一日も早い財源確保を願っているし、税財政の仕組みを理解できる介護関係者は、一定の増税または保険料負担の増がない限り、自分たちの職場の改善はやってこないと理解していると思う。

(略)

●増税で不景気になると短絡的に説明する人には、1998年の不況ばかり指摘するのではなく、2000年の介護保険制度の導入による保険料負担の増が、不況を悪化させたと説明づけてほしいと思うことがある。価値を創造する勤労の対価を通じて社会に税収を放出すれば、不況にならないという事例ではないかと思う。介護保険料の負担が始まったと同じ裏側で雇用創出があったからだ。

9/21 介護関係者の期待は制度改善のための財源確保(2010.09.21)」(きょうも歩く


税金は取られるものであって還元されるものでない(と思われる)境遇にいる方々にとっては、マクロ経済学の教科書に書いてあるような政府支出のクラウディングアウトとか租税乗数はc/(1-c)とかをもって、「増税すれば景気が後退するに決まっている」と思考停止してしまう傾向があるように見受けますが、増税によって確保された財源が直接的に還元される方々にとっては、それが何よりの景気回復であるということですね。

ここで難しいのは、往々にして還元される方々は少数派の低所得層であることが多い一方で、還元されない(と思われる)方々の多くは中高所得者であるということではないかと思います。つまり、増税で確保された財源がなければ所得再分配を受けることができない(と思われる)ほどには低所得でない方々からすれば、そりゃ確かに増税は景気後退だと思えるでしょうし、それが多数派になれば、マクロ経済で見ても景気後退が現実化してしまうかもしれません。そして、その方々が多数である以上は、増税によって低所得者層に再分配するなんてことは不況下でやってはいけないことになってしまうわけです。

とはいえ、そのような多数派の思考停止を食い止める可能性について考えると、権丈先生のこの言葉が重くのしかかりますね。

• 「経済哲学および政治哲学の分野では、25歳ないし30歳以後になって新しい理論の影響を受ける人は多くはなく・・・」ケインズ『一般理論』
• ということで、本日のわたくしの報告で、誰かの何かが変わるとは、思っておりません、はい。。。


「勿凝学問300 要は、低所得・貧困を支出側面で判定するのか 給付側面で判定するのかの問題になるわけです」 ―― 消費税の食料品へ軽減税率について」(仕事のページ(権丈善一先生Webサイト)


まあ、権丈先生のこの言葉は全労連と事務所の住所を同じくする民医連での講演でのものですので、その点は割り引いて考えてもいいのかもしれませんが、かといってそれほど楽観できそうには到底思えないのがなんとも・・・

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コメント
この記事へのコメント
権丈先生の「勿凝学問300」へのリンクが間違っていましたので修正しました。大変申し訳ございませんでした。

またはてブでコメントいただいておりました。

> gruza03 社会保障, 消費税, 経済, 雇用 増税によって確保された財源が直接的に還元される方々にとっては、それが何よりの景気回復であるということですね/こういうことを気付かせてはならないからこそ、市民目線と称する方達は霞が関を叩くのだと思う。 2010/09/22

統治する側が国民からの批判をかわすためには、国民を分断するのが手っ取り早いですからね。国民がお互いに不満をぶつけ合って、その責任をテクノクラートに負わせているうちは為政者は安泰なわけですし。

本文では書き漏らしてしまいましたが、私自身も「増税なんて景気後退させるだけだろ」と考えていた時期がありますので、多数派の思考停止という点については、引き続き自戒しなければならないと考えております。

ただ、そこに気がつくような気の利いた方であっても、敵は霞ヶ関と本石町にありというところで思考停止してしまう方も多いようです。霞ヶ関と本石町の政策形成に問題があると指摘するのであれば、その政策形成の現場(ロビイストたる関係団体やその意を受けた政治家とその支援者、その構図を政策ではなく政局として報道するマスコミ、その報道を基に政策批判する有識者という無限ループに囲まれた状況)まで考慮する必要があるのではないかと思うところです。
2010/09/23(木) 09:00:33 | URL | マシナリ #-[ 編集]
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