2010年07月04日 (日) | Edit |
前々回エントリで引用させていただいた山形さんのこの部分ですが、実は前回エントリともつながっておりまして、その前々回エントリで引用した後の部分を引き続き引用させていただきます。

5. そもそも経済政策とはどんなものか。


(略)
 でも、みんなでいいアイデアを出しましょう、というのは政策でもなんでもありません。「それじゃダメだと言っている」でもダメなのです。なにがいいのか、だれが、なにをするべきかを、おおまかな枠組みでもいいから提示しないと。
(略)

6. で、小野善康は、ぼくの批判に答えているか?


(略)
これは批判でもありますが、同時に自戒でもあり、自己批判でもあります。土地について、ぼくもまったく類似の議論をすることがよくあります。地価が下がっているのに対し、「保有税減税なんかではダメだ、もっと利用価値を生み出すような開発をしないと」というような議論です。それがどういう開発なのか、ぼくにはわからない
 ただしその一方で、そこで用途地域の緩和をしたら(あるいは厳しくしたら)、とか開発申請を簡略化したら、とか、アイデアを出しやすくする政策提案はできます(します。きいてもらえないけど)。それが政策としてうまくいくか、というのは次の議論です。が、小野さんのいまの議論は、それ以前の段階でしかありません。

 タイヤに穴が開いているときに、それが釘で開いたのか画鋲で開いたのか、というのは、推理ゲームとしては楽しくても政策的には無意味です。そこでパッチをあててパンクを修理すべきか、それとも空気を入れ足しながら、だましだまししばらく乗るべきか、というのは政策議論です。小野さんは、いつまでも釘か画鋲かを考え続けるおつもりなのでしょうか

小野善康さん、それってちょっと……」(YAMAGATA Hiroo: The Official Page
※ 以下、強調は引用者による。


大事なことなので下線太大文字で強調しましたが、もう一度繰り返して引用するとみんなでいいアイデアを出しましょう、というのは政策でもなんでもありません。さらに重要なのは、その直後で山形さんご自身が自戒されているように、政策論議と呼ばれるものは往々にして「もっと資源を有効活用して効率化しなければならない」とか「ムダを削減してより効果的な分野に集中すべきだ」というような、正論でありながら具体的な内容を欠くものになりがちだということです。

選挙カーがかまびすしい今日この頃ですが、そこから聞こえてくる公約なるものはほとんど上記のような「正論」ばかりで、少なくとも山形さんが指摘されるような政策議論の体をなしてしません。特に、地方在住者としていずれかに投票しなければならない候補者の方々を拝見していると、チホーブンケン・チーキシュケンを批判する方はもちろん一人もおらず、「住民参加による政治主導で地域の実情に応じた行政を!」とおっしゃるわけですが、そりゃおっしゃることは正論だけど、誰がそれを考えて、誰がそれを実行して、誰がその財源を負担するのかという疑問が募るばかりです。公約だろうがマニフェストだろうがウィッシュリストだろうがなんでもいいんですが、政治家は有権者の好むことを代弁するのだから、七面倒くさい法制化とか実務の執行体制なんか役人どもが考えろとおっしゃるのであれば、それは前々回の山形さんの議論に戻ってしまいますけどそれでいいんですか? それでいいとかいっておきながら、後でまた役所のムダな事業で税金の無駄遣いとか叩きませんか? と小一時間ほど問い詰めたくもなりますね。

ここ数年の国政選挙で見えてきたこの国の政治過程を、前回エントリの目安箱による政治参加の過程としてまとめてみると、以下のような感じでしょうか。

1.国民が生活に対する不満の声を上げる

  • 景気の低迷で生活が苦しい
  • 医療・介護にお金がかかるので、自宅でなんとかするしかない
  • 保育・教育にお金がかかるので、子育てもそこそこに働きづめになるしかない ・・・等々

2.制度と役所が悪いという世論がマスコミを中心に盛り上がる

  • 法律の規制が緩和されたから働き方が苦しくなった
     → (例) 労働者派遣法を緩和した小泉改革のせいだから、製造業派遣を禁止すべき!
  • 規制でがんじがらめになっているから自由な企業活動ができない
     → (例) 解雇規制を撤廃して雇用を流動化すべき!
  • 国際比較すると法人税が高いために海外移転してしまう
     → (例) 法人税率を引き下げて国際競争力を高めるべき!
  • 大企業が海外で大もうけしているのに、国内の中小企業が搾取されている
     → (例) 法人税減税なんてけしからん! 中小企業支援策や有望な産業分野に投資を集中するべき!
  • 役人がムダな事業ばかりやっていて、天下り先では法外な給料と退職金で私腹を肥やしている
     → (例) 天下りを根絶してムダを削減するべき! ・・・等々

3.世論にまんべんなく応える公約を政治家が掲げる

  • 政治主導を徹底して脱官僚を目指す
     → (例) 官僚による国会答弁の禁止、事務次官会議・会見の廃止
  • 税金を官僚の手から国民に取り戻す
     → (例) 公的機関の民営化、NPO等への外部委託、公務員削減、子ども手当・戸別所得保障・高速道路無償化
  • 地元のことは地元が決める地域主権改革を進める
     → (例) 国の出先機関の廃止、三位一体の改革、義務づけの廃止
  • 住民による政治参加で住民目線の政治を実現する
     → (例) 地方議会基本条例制定、政策法務


まあある程度意図的にまとめて書いていますが、不満の声とそれに対する適切な処方箋についての役割分担が目安箱的に混在してしまったため、2の部分でかなり利害が錯綜しているように思います。これも、90年代以降の政治改革の流れの中で、当事者の利害を代表していた中間組織がことごとくやり玉に挙げられていき、国民の声を反映する経路として「政治主導」という理念だけが正当性を保ち続けているものの、実際にはその理念が空回りしていることの証左ではないでしょうか。

政治家の命運が合理的無知に陥る有権者の投票行動によって決まるという前提で考えるなら、政治主導という理念が、1の国民の声に向き合うのではなく、2の世論に応えることを主眼に置いたものとなるのは当然のことです。つまりは、2の部分を適切に担うべきなのは、マスコミのような世論ではなく、適切に動機付けられた労働組合等の中間組織ではないかと個人的に考えるところでして、それがなぜこの国で実現しないのかと考えることのほうが、選挙の争点とか議席数を考えることより遙かに重要なことではないかとの思いが強くなる選挙戦ですね。

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