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2010年06月05日 (土) | Edit |
海老原さんの新著を早速拝読しました。それにしても「ものすごい勢い」((c) hamachan先生)ですね。


「若者はかわいそう」論のウソ (扶桑社新書)「若者はかわいそう」論のウソ (扶桑社新書)
(2010/06/01)
海老原 嗣生

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今回は第1章で、門倉貴史氏、玄田先生、そして城繁幸氏が俎上に載せられて、それぞれデータ引用の(意図的な?)粗さ、妥当すぎる結論、一面的なとらえ方が批判されています。前2者はこれまでの著作でも批判されていましたが、いよいよ城氏も滅多斬りか・・・と思いきや、実は城氏については好意的な(というよりさらに親近感のある)トーンで書かれていて、城氏に対してroumuyaさんと同じ印象を持っている者としてはかなり意外な感じでした。

 日本型の就活には問題点が多い。それは、ネット型になって、さらに悪くなっている。日本型の年功序列システムには問題が多い(ただ、こちらは多少改善が進んだ)。
 ここまでは、城さんとほぼ同じ意見だ
 だから彼が、反貧困の見方をしたがる某エコノミストとネットでバトっていたりすると、「城に一票!」と言いたくなるときもある。

※ 以下、強調は引用者による。
海老原『同』pp.49-50


前掲のromuyaさんのリンク先でも取り上げられている城氏とモリタク氏の論争については、互いに「我こそが労働者の味方なり」といいたがる割に、相変わらず集団的労使関係に一切の言及がない辺りで、個人的にはどっちもどっちのような気がするところではあります。まあ、本書の玄田先生に対する批判の中にも「データ分析のみに重きを置くアメリカ流「レイバー・エコノミスト」」という言葉が出てきますし、企業内の人事の現場を知っている点においてはモリタク氏よりはマシということなのかもしれません。

そんなことはどうでもいい(?)んですが、みんなが分かっていながらマスコミでは誰も指摘しないポイントは、次の2点でしょう。

 大学が増え、大学生が増え、さすがに彼らも「大学を出たんだから、大企業でホワイトカラーを」と思いだす。すると、企業側の受け皿が不足し、若年未就業者が増える
 この状況を、なぜ、「企業側の人件費削減による正社員切り」とマスコミは報道するのか。
 決して大企業は採用を減らしてはいない。大学生が増えすぎたことが第1の問題であり、第2の問題は、中堅中小企業や販売・サービス業を志望しない、という嗜好の問題がある。そして、第3の問題。こちらは、「大学無試験化」により、小中学校の基礎知識さえ習得していない社会人不適格な大学生の増大。これでは大手の採用試験をパスできない。
 就職氷河期の内実は、こんなところだろう。

海老原『同』p.213


 ここでまた、反論を唱える人がいるだろう。
 「言うとおり、大学を作らず、大学進学率が低いままだったらどうなるか? 製造業、建設業、農林業、自営業・・・こうした受け皿がなくなった現在だと、高卒無業者が大量に発生するだけではないか? これじゃ、単なる問題のすり替えだろう」
 この反論はかなり正鵠を射ている。そう、就職問題は最終的にここに行き当たる。
 製造業、建設業、農林業、自営業、事務職正社員、こうした仕事が、極端に世の中から消えている。
 これらの職務に共通する要素がある。それは、「社外スタッフや顧客との折衝が少ない」仕事ということだ。さらに製造・建設・農林に限るともっとこの傾向は強くなり、「社内スタッフともそれほど折衝がない」仕事となる。
 どうだろう。こうした仕事がどんどんなくなった。その結果、社会で生きていくには「対人折衝」が必須となった。だから。
 そう、引きこもりやニートが増えた理由はここにもあるのではないか?

海老原『同』pp.116-117


学歴社会がけしからん!という世間の声に応えて「ゆとり教育」が取り入れられたものの、現実に起きたのは「大学の乱造」とそれによる「本来なら大学に入れない」層の大学進学率の上昇であったわけです。誤解を恐れずに厳しい言い方をすれば、以前は高卒で就職していた「本来なら大学に入れない」層が、名ばかりの「高学歴」を得てしまったために、本来なら自分が高卒の時点で受け入れられていた単純労務には、就活の最後の最後まで見向きもしなくなっています。それどころか、彼らは「高学歴」である以上大企業や人気企業にターゲットを絞った就活をするため、当然思わしくない結果が続くこととなり、内定がとれない中で自信を喪失していく大学生も増えてしまいます。

こうして、世の中が「高学歴」化するにつれて高卒を受け入れていた単純労務が、より学歴の高い新卒者に結果的に置き換えられる一方で、円高や低価格競争が進むにつれて製造業の職場そのものが海外へシフトしていくため、高卒を受け入れる技能工や事務職の職場がどんどん減ってしまいます。つまり、中小企業までスコープを広げればまだ就職口がある大学生に対して、そもそも働く場が失われてしまっている高卒者の方が遙かに深刻なわけです。

現在の就職難に際しても、当面の就職口がないからといって高卒なら専門学校とか短大へ進学したり、大卒なら院進学や留年して景気回復を待とういう動きもあるわけですが、それはよほどの技能を身につけない限り「本来なら大学(短大、院)に入れない」層の就職を先送りするだけにしかなりません。そして「よほどの技能」を身につけることは、「本来なら大学に入れない」層にとってはハードルの高いことであって、まあそれだけの技能なり資格を取得できるならはじめから就職できるよね?ということになってしまいます。

ということは、高卒に対する労働需要を作り出すとともに、中小企業を含めた就職口とのマッチングの仕組みを拡充することが雇用対策として求められるわけで、第4章でその対策が示されています。この諸施策については、本エントリの冒頭でリンクを張ったhamachan先生とほぼ同じ感想を持ったところです(主体性がなくて申し訳ございません)が、蛇足ながら、第1に提案されている「教育安保政策」で受け入れた外国人労働者の事務が地方分権されたら地方自治体は大変だろうなとか、第4の「公的派遣」も、公設民営となるとまたぞろ地方分権の議論に乗せようとされるのだろうなとか、余計な心配をしてしまいました。

まあ、ここで金融緩和によるマクロ政策がその大前提だという議論をすることも可能ですが、たとえばクルーグマンも増えた労働人口を吸収できるようなマクロ政策の重要性を強調しつつも、同時に政治サイドが職業訓練の旗振りをすることもあり得るという見解を示しています。

 でも大事なのは、アメリカではNAIRUは過去20年間かなり安定していて、どっちかといえば低下傾向にあるってこと。これは長期的に見て、失業率は増加傾向にはないってことだ―そしてこれは、アメリカ経済の適応力という点で、絶賛していいことなんだよね。前にも見たけど、同時期のヨーロッパでは、失業率はホントどうしようもないくらい上がっちゃってるんだから。アメリカだって、過去10年で労働市場に入ってきた大量の女性やベビーブーム世代に職を上げられなかった可能性は十分にある
 さらに生産性成長がこんなドツボ状態で大幅賃上げを要求したってよさそうなもんだ。でも実際は、アメリカの非常に競争的で柔軟な労働市場は新規参入をすべて吸収したし、賃上げ水準も、ぼくらの低い生産性成長と見合った率におさえたんだ。
 もちろん、5~6%はゼロじゃない。NAIRUを下げて4%以下の失業に持ってくようにはできないの? うーん、できるかも―でも、それを実現するにはどうしたらいいかについて、経済学者の間でもあんまし一致した見解はないのよ。
 政治家は、長期失業者に対して職業訓練を提供するとか、そういう旗振り的なことはやるかもしれない。でも確実にいえるのは、クリントン政権が失業を5%くらいのとどめておければ、だれにも文句は言われないってことなんだな。
p.66

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要はマクロとミクロの経済政策のポリシーミックスが重要ということだろうと思うわけですが、毎度ながら与野党ともに「雇用・能力開発機構なんかイラネ」というこの国の政治家が正しく舵を切るとは到底思えないところが何とも・・・

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コメント
この記事へのコメント
HALTANさんに取り上げていただきました。
http://d.hatena.ne.jp/HALTAN/20100607/p2

> ここは真面目に書きますが、「リフレ」それ自体は否定しませんが何事ももう少し大きな目で見て頂けないかなあと・・・。ただリフレ派(ネットリフレ派)のいまだに上述↓
>
> 「霞ヶ関・日銀諸悪の根源論」紋切り型の「官僚亡国論」
>
> から抜け出せないらしい視野狭窄ぶりを拝見すると、これも期待しない方がいいのかなという気がしてきました。

リフレーション政策支持者が金融政策という他人任せな政策のみを取り上げる限りは、それが実現しないのは他人のせいだと言い募ることが可能になりますね。

先ほどアップされたエントリ
http://d.hatena.ne.jp/HALTAN/20100609/p1
で取り上げられている山形さんは、以前は官僚叩いても何にもならないとい書いていましたが、
http://cruel.org/other/stupidburo.html
そういうことを主張する一部の「リフレ派」のことはどう思っているのでしょうか。
2010/06/09(水) 01:48:03 | URL | マシナリ #-[ 編集]
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