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2010年05月17日 (月) | Edit |
hamachan先生経由で「分権はむしろ福祉の敵です」というまっとうな発言を発見したので、発言の主は誰かと見てみると山井政務官でしたか。

「ガバナンス・国を動かす:第3部・中央と地方/2(その1) 省庁の抵抗「政治主導」(毎日新聞 2010年5月4日 東京朝刊)」

3月16日と18日、戦略会議の構成員である神野直彦東京大名誉教授(64)が10府省に対して実施したヒアリングで、厚生労働省の山井(やまのい)和則政務官(48)は、政府方針に反する回答をためらおうとはしなかった。

 「社会福祉の中でも緊急的なものは中央集権的にやらないとだめです。分権だと迅速にできない。分権はむしろ福祉の敵です

 テーマは「ひも付き補助金」と呼ばれる地方向け国庫補助負担金の「一括交付金化」。民主党が地方の自由裁量を増やそうと政権公約の目玉にした。神野氏はその担当主査だ

※ 以下、強調は引用者による。


神野先生はいわずとしれた左派経済学者の大御所ですが、私が左派思想に抱く違和感をある意味で体現されている方でもありまして、特徴的なのが北欧のいいとこ取りをしているうちに自らの主張が矛盾してしまうところですね。たとえば、上記の引用記事の後半ではこういうこともおっしゃってします。

神野氏は3月31日の第3回戦略会議で「各府省の意見は、可能な限り廃止になるひも付き補助金の範囲を狭くするという印象を受けた」と控えめに聴取結果を報告した。

 首相は「地域主権からほど遠い発想をお持ちの方がかなりいる」と批判した。仙谷由人国家戦略担当相(64)は政府方針に従わない政務官について「クビにすればいい」と踏み込んだが、それ以降具体的な動きはない。

 民主党は子ども手当の創設や高校無償化、農家への戸別所得補償など「大きな政府」につながる政策を打ち出してきた。その体質と地域主権をどう整合させるのか。各論に入るほど基本設計の甘さが浮かび上がる。


神野先生がよく使う論法が、「北欧では福祉分野でも地方分権が進んでいる」とか「高福祉高負担でも経済成長は可能だ」というようなものですが、北欧と日本では初期状態が全く違う点を考慮しない主張はあまり誠実なものとは思えません。北欧で地方分権が可能であったのは、分権的な労使自治を支える労働組合の組織率が高く、それによる集団的労使関係が確立していることと、労使による政策決定が中央レベルでも浸透していることが大きな要因だろうと思います。それとは全く逆に、労使自治の基盤がほぼ崩壊しつつある現在の日本において、地方分権だけを先行させることがどれだけリスクをはらむものか、日産の労働現場から学者に転じた神野先生ならばよくおわかりのはずです。それなのに、「各府省の意見は、可能な限り廃止になるひも付き補助金の範囲を狭くするという印象を受けた」と相も変わらず霞ヶ関を悪者に仕立て上げるコメントをされる真意が理解できません。

正直こういうことをいう方の本を読む時間がもったいないので、山井政務官がTwitterで取り上げた神野先生の新著は立ち読みで済ませてしまいました。
「分かち合い」の経済学 (岩波新書)「分かち合い」の経済学 (岩波新書)
(2010/04/21)
神野 直彦

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実をいうと立ち読みしたときの目的は、『分かち合いの経済学』という所得再分配を題材にしたようなタイトルの本だったので、そういうからには地方分権のことをどう書いてあるのかと思ってパラパラとめくってみたんですが、少なくとも目次には「地方分権」も「地域主権」も出てきませんでした。まさかと思って関係しそうなところも開いてみたものの、しばらく探しても地方分権のことが書いてありません。神野先生はこれまで、財政再建を目的として地方分権を主張されることが多かったのですが、北欧流に「ワークフェアを目指すべき」といってしまったとき、前述のような北欧と日本の決定的な違いを看過することができなくなったのでしょうか。

まあ、神野先生は反経済学で地方分権な総務省(旧自治省)には受けがいいので、あまりこうした点は問題にされないのかもしれません。しかし、山井政務官が言う「緊急的なもの」とはみなされないであろう職業訓練については、田中萬年先生も疑問を呈していらっしゃいます。

 濱口氏の紹介とコメントに異論を挟む訳ではないが、山井政務官がつぶやいている「職業訓練」とはどのようなイメージなのかが心配である。枝野行革相の言っている職業訓練は民活化でやれる、とか、都道府県が引き受けなければ廃止いうことと同じでないことを期待したい。
(略)
昨年から始まった「基金訓練」の実態も大した差は無いであろう。このようなことが民活化の職業訓練の実態である。つまり、施設の空き時間を利用して、非常勤講師をかき集め、片手間の訓練を実施しているのである。就職率が低いのは当然である。
 かって、「教育訓練給付金」目当てに「授業料が戻ってきます」と宣伝し、大々的に教育訓練を展開して急激な拡大をしたが、給付金の削減で倒産した英語学校(学校法人ではなかった)があったが、民間の営利目的の餌食としての職業訓練費にならない対策を明らかにすべきである。次代の人材として必要な職業能力の形成が必要なのであり、少子化の対策として一部の教育産業の延命策に利用されないようにすべきである。それこそ無駄遣いであろう。枝野行革相は勘違いをしていないか、山井政務官は確認すべきである

※ 太字強調は原文。
山井政務官のつぶやきと「職業訓練」(産業分野別の見方)(2010-05-12)」(職業訓練雑感 田中萬年の新ブログ


この点については、hamachan先生も

観念的な地方分権論は、成長戦略の重要な一環であるはずの職業訓練政策という現実に向き合う必要があるわけですが、この記事を書いた記者(たぶん政治部)も「滞る懸念が出てきた」などと、政策の各論はすっぽり抜けたまま「お題目政治」を続けるつもりのようです。
こういう問題については、実は朝日も毎日も読売も日経も産経も変わりはありません。右と左じゃなくて、総論人間と各論人間の違いなんですね。政策の各論が判らないどころか判る必要なんかないと思っている政局オンリーの政治部記者のセンスと、政治部記者が顧みないその政策の各論こそが何よりも大事だと思っている労働とか福祉とか教育といった分野の専門記者のセンスの違いが、この問題ほど浮き彫りになるものはないでしょう。

地方分権の職業訓練的帰結(2010年5月10日 (月) )」(EU労働法政策雑記帳


と指摘されています。個人的には、年金問題で攪乱要因となっている山井政務官が果たしてどこまで各論を理解しているか疑問なしとしませんが、少なくとも地方分権に対するスタンスは維持していただきたいところですね。

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