2010年01月17日 (日) | Edit |
昨年の派遣村に代わって今年は年末年始のワンストップサービスが大きく取り上げられたところですが、役人の立場からいえば、そういった行政需要があるならそのサービスを供給するために新たな人員や財源といったリソースが必要となるはずなのに、相も変わらず行政刷新担当大臣は「来年度も行政の無駄を排除するため仕分け作業を徹底する」とおっしゃるようで、新年早々先が思いやられます。

現政権で設置された緊急雇用対策本部の「緊急支援アクションチーム」貧困・困窮者支援チーム(第6回)議事次第というのが公開されていて、その資料を見ると、

1 概要
 公共機関が通常閉庁している期間中(12月29日(火)~1月3日(日))において、各自治体が中心となり、福祉事務所等を開帳して生活相談を実施。一部自治体では、自治体独自の対策も含め、住居のない傾けに宿泊場所等を手今日するなどの取り組みを実施。

2 実施自治体数
 194 自治体
(都道府県:32、政令市:14、中核市:23、その他:125)

(中略)

5 来所者数・相談件数
 全国4,675人が来所。相談件数は4,931件
 (就労相談:1375件、生活保護の相談:797件、貸付関係の相談:638件、住居手当の相談:268、健康・心の相談:116件、多重債務の相談:76件、その他の相談:1661件)

年末年始の生活総合相談の実施状況(注:pdfファイルです)」(緊急雇用対策本部「緊急支援アクションチーム」貧困・困窮者支援チーム(第6回)議事次第(平成21年1月13日(水))


だそうです。194自治体の多くが12月29日、30日の2日間に渡ってサービスを提供したということであれば、ここに掲げられた就労相談などの各関係機関から2名程度の職員が対応したとして、194自治体×2人×6機関×2日間=延べ4,656人の公務員が行政サービスを提供した計算になります*1。これは、来所者数・相談件数とほぼ同じ数ですね。

また、運営に当たる役付の公務員から雑務をこなす下っ端の公務員までが現場にいたでしょうから、平均の月給与を25万円とすると日給換算で約1万円強となるので、全国で5,000万円くらいの人件費が必要だったということになります。年末年始は週休日扱いでしょうからこれに時間外割り増しも加算されます。もちろん、年末年始の寒い時期に庁舎を開けて対応するための光熱水費や庁舎管理担当者の人件費もかかりますし、電話相談や相談者の移送などがあればそのための通信費や交通費も必要になります。トータルでは、4,675人の方の相談に対応するために上記の人件費5,000万円プラス数千万円の経費を要したのではないかと思います。

さて、これは事業仕分けではどのように判断するのでしょうか。湯浅内閣府参与は年末年始のテレビで「周知が足りなかったからサービスが必要な人に届かなかった」と連呼されていて、その原因は役人の怠慢だといわんばかりでしたが、周知するためのチラシ印刷や職員が直接出向いて伝える交通費や、その周知などの準備業務に時間を割かれた分で残りの業務をこなすための時間外手当や臨時職員などを措置してはいないわけです。そしてそのとき、「行政に無駄があるのに新たな経費負担なんか認めない。ましてコームインの人件費なんか措置できるか」というのが事業仕分け人のお立場でしょうから、民意至上主義の現政権がそれを押して経費を措置するわけがないんですよね。

さらにいえば、民意が人件費の削減を望んでいる状況下で時間外手当なんてものが支給されるはずもなく、年末年始に出勤した公務員のほとんどは振替休日をとれと強要されたことでしょう。しかし、来年度に向けた予算編成作業が本格化する中で政治主導によって実施されたエクストラな業務に人員を割かれている以上、事前に振替休日をとる余裕ももなく、事後に代休を取ることになるのが実態ではないかと思います。さすがに帳簿に残る代休に時間外手当を支給しない役所はないと思いたいところですが、ブラック企業認定できる役所ならあっさりとサビ残させてしまいそうでコワいです。

ワンストップサービスそのものについていえば、こういった行政サービスはまさに「貧困・困窮者支援」であって、この不況下では広義の雇用対策といえなくもないですが、現時点でスラックとなっている人員や設備などの資源を有効に配分する機能は貧弱です。局所的な病理にばかり目を奪われてしまったのでは、困窮している方々の境遇に比べれば緊急性がないとしても、余剰人員とされて日々低賃金で過酷な労働を強いられている大多数の労働者の待遇は改善されません。現政権に対してはよく「経済成長の戦略がない」という批判がありますが、それは労働者の待遇改善という視点に立つか、企業業績向上という視点に立つかによってその内容は大きく変わってくるように思います。まあ、どちらが大事ということではなく、それぞれをバランスよく改善させることが重要であって、だからこそマクロな経済政策と同時に労働者の待遇改善に向けた取組(特に産業民主主義など)を真剣に議論すべきだろうと思います。

そんな中で、マスグレイブの財政の3機能論からいえば、地方政府が担うべき資源配分機能を拡充*2することもなく、日銀・中央政府が担うべき経済活性化と所得再分配のうち、貧困・困窮者支援といった所得再分配的な機能を地方政府に担わせるというのは、非効率かつ非公正な国家を目指しているとしか思えないのですが・・・




*1 総合支援資金などは地域の社会福祉協議会が対応しますので、ここでは公務員に準じた賃金原資で雇われているという意味で公務員と見なすことにします。
*2 ここで拡充といっているのは、地方に小さな権限と大きな裁量を与えるべきという趣旨ですので、マスコミが好きそうな「地方分権」とか「地域主権」とは別物です。

このエントリーをはてなブックマークに追加
スポンサーサイト


コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック