2010年01月07日 (木) | Edit |
年末に書いたエントリがhamachan先生に取り上げていただいたこともあって思いの外のブクマをいただいたようですが、「経営者目線」という言い方が一部に誤解を招いたかもしれません。若干補足させていただくと、経営者といっても現場で労務管理に悩むような小さな会社の経営者ではなく、大企業で取締役会に出ているような実務から離れた経営者を想定しています。もう少し具体的には、経済財政諮問会議とか地方分権改革推進委員会の委員のように政府の審議会等でご活躍される大物経営者の方々や、大企業の御曹司から政界に転じたような方々をイメージしていただくとわかりやすいのではないかと。

もちろん、そのような大企業であれば経営者だけが経営に携わっているわけではなく、現場で経営者の代理人として人事や労務管理を担当する方々もいらっしゃいます。そのような現場の実務家の方々は、下手に従業員を扱うと訴訟を提起されたり、不祥事を起こされたりして会社が傾くかもしれないというリスクを背負っていますから、経営者の代理人としてではありますが、労働者と真剣に向き合う必要に迫られることになります。個人的には、そのような人事・労務管理の実務家の方々の発言は、その背負ったリスクが大きいだけに信頼できるものが多いと感じております。

その信頼感をイメージするには、拙ブログで指摘するような思想的な結社としての性格を強めた労働組合と比較してみると、逆説的ではありますがその差が鮮明になります。たとえば、労働組合が活動を活発化させていって企業内組合としての限界にぶつかったとき、地域ユニオンやナショナルセンターなどの企業外の組織とのつながりを強めていくことがあります。特にそのナショナルセンターがある特定の政策に偏向している場合、ナショナルセンター等とのつながりが強まるほど政策要求などの取り組みが増えていき、結果的に企業内部の労働者の処遇に向き合うためのリソースが奪われるという、本末転倒な労働組合が往々にして生じることになるわけです。

このような比較においては、政策要求に重点を置いて当の労働者をないがしろにしがちな労働組合よりも、目の前の労働者の処遇次第で会社が傾くかもしれないというリスクを負った人事・労務管理の担当者の方が、真剣に労働者と向き合っているといえるでしょう。逆に言えば、現場を離れた「経営者目線」による改革を国民が称揚する一方で、労働組合がナショナルセンターに引き込まれて目の前の労働者を代表しなくなってしまえば、労働者の処遇を真剣に考える人が誰もいなくなってしまいます。そんな中にあって、労働者に唯一真剣に向かい合っているのが実は会社の人事・労務担当者しかいないというのは、ある意味で悪い冗談のようでもあります。

まあ、会社の規模が小さくなればなるほど労働組合はおろかまともな人事・労務管理者すらいなくなるわけで、一番援助が必要な労働者の周囲にその理解者がいないというのはかなり深刻な問題であるはずです。ところが、労働組合を既得権益として攻撃せずにはおられない方々が絶えないわけで、

 私は大筋として労働組合という仕組みに賛成ではないし、「春闘」も現在の延長で順調に死語になればいいと思う。しかし、個々の労働者のためには役立ちたいと思うし、組合が弱体化しつつあること、あるいは弱体化した方がいいことを前提とするとしても、現在、一定の影響力を持っている訳だから、この適切な行使に資する情報を伝えたい。
 ただ単に組合批判だけを述べに行くのは社会的なバカのすることだろう。

 とはいえ、何を伝えたらいいのかが、なかなか思い浮かばない。

労働組合の勉強会で何を伝えたらいいか?(2010年01月02日)」(評論家・山崎元の「王様の耳はロバの耳!」


あるべき労使関係についての構想もなくただ労働組合はけしからん!と唱えたいだけなら、何を伝えたらいいか思い浮かばないのも当然でしょうね。餅は餅屋ですから、経済評論家としてお話しされるのが身のためではないかと愚考いたします。

(追記)
補足のつもりのエントリでしたが、また言葉が足りないような気がするので念のため追記いたしますが、もちろん思想的な組合であっても企業内で強硬に労働運動を行う組合は多いと思います。本エントリでリソースが奪われると指摘したのは、そういった企業内の活動が停滞するということではなく、その運動が思慮を欠いて短絡的な方向に進みやすいのではないかという趣旨です。
また、逆に企業内の活動をメインとする組合については、使用者側のいいなりの「御用組合」になっているのではないかとの疑念もあるでしょうけど、これに関してはもう少し違ったから考える必要があるように思います。この辺はなかなか複雑なのでまとめきれませんけれども。

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