2009年11月13日 (金) | Edit |
お詫び(11月14日記):本エントリでは連合の思惑を勝手に推測して書いてしまいましたが、11月13日に行われた事業仕分けで財務省から示された論点は、連合の思惑とは別のもの(一般会計と特別会計の負担割合)でした。ご覧になる場合はその点にご留意いただければと思います。当て推量で書いてしまい申し訳ございませんでした。「個別労使紛争の推進」の事業仕分けの内容については、別エントリで取り上げたいと思います。なお本エントリで示した地方分権についての論点は、事業仕分けとは別の論点として残したいと思いますので、本文は当面の間このまま掲載いたします(上記の別エントリアップ後に削除します)。

着々と進められている事業仕分けですが、明日はいよいよ15:45から「個別労働紛争対策の推進」が登場します。hamachan先生が、

個別労働紛争の解決のために国民の税金を使うなどというのは許し難いムダであるようです。

なるほど、「民主党革命」というのは、いきなりクビだと言われたり、パワハラを受けた労働者が思いあまって駆け込んでくる労働相談窓口はムダであると、いわんや経営者にあれこれ助言指導したりするのはムダであると、ましてや両者の間であっせんを試みて、少ない額でもなにがしかの金銭解決につなげていくことなど、言語道断のムダ遣いであると、こういうことを言わんとしているのでありましょうか。

確か、民主党のマニフェスト(正確には「政策集INDEX」では、「個別の労使紛争に対する適正、簡便、迅速な紛争解決システムの整備促進を図ります」(32ページ)というのもあったはずで、一体どういう考え方に立ってものごとを進めようとしているのか、理解に苦しむところでもあります

「クビ代1万円」すら「ムダ」ですか?(2009年11月 4日 (水))」(EU労働法政策雑記帳
※ 以下強調は引用者による。


と、労働組合を支持母体としながら労使間の紛争処理を仕分けしようとする民主党の姿勢に疑問を呈されていますが、実は個人的にあまり不思議ではありませんでした。

というのも、hamachan先生も重々ご承知のことだと思いますが、民主党の強力な支持母体である連合にとっての長年の主張は、個別労働関係紛争処理を都道府県労働委員会が担当するべきだというものだからです。都道府県労働委員会の労働者委員は沖縄県などを除いてほとんどが連合系の労組幹部によって占められていて、正直なところ、連合は労働委員会を自組織の一機関と勘違いしている節さえ伺われますが、連合の思惑としては、その労働委員会の権限拡大を狙っていたようです。

ところが、その論理というのが、「自治事務である労働委員会の権限を明確にするために国が法律に明記することが必要」だというもので、チホーブンケン教に典型的な支離滅裂さを見事なまでに示しています。

○委員 いま先生方のお話で、労働委員会を明記する必要はないというお話なのでありますが、我々も全国の地方労働委員会に委員を送っていますから、いろいろ意見を聞きますし、また地方で地労委の会長をしておられる先生ともお話をすることが多いわけですが、そういうときには、やはり法律上の根拠があれば、いろんなことができる、あるいはしやすい、是非必要だという声のほうが圧倒的に多いわけであります。もちろん、先生方が言われるように、たしかに法律的な支障はないということは、我々は地方自治に関する関係省庁ともいろいろなパイプがありますが、そちらのほうに法律的な解釈を聞くと、地方自治の法律の中で、たしかに支障がないといえばないけれども、それはいろいろ検討した結果、この中でも読み取ってあげてもいいと、そのぐらいのことであります。
 支障がないということであれば、何もしなくてもいいということとは、私は全く別だと思うわけでありまして、地方自治の法律で読み込むことができなくもないということで、この非常に重要な100万件に達するといわれる個別労働関係紛争について、ここに書かなくていいという論拠には、とうていなり得ない。私はやはりこの中に地方労働委員会ということを明記すべきだということを強く申し上げたいと思います。

○委員 いまの話に重ねてですが、以前の検討会議等からも参加をし、議論をしてきているわけですが、なぜ我々が労働委員会ということにこだわって主張をするかというと、戦後の日本の労使紛争の調整機関として、労働委員会というのがそういう機能を果たしてきた。それが公・労・使の三者構成によって、その機能を果たしてきたという実績もあるわけですし、そういう法律の体系になってきたわけです。個別労使紛争も、これも基本的に労使紛争でありまして、そのことをやはり公・労・使の委員の下できちっと処理をしていくというのが本来の筋であって、私は行政が様々な相談機能をそれぞれ持
つことは否定はしないということで、この間の複線型ということを確認し合ってきたと思うのですが、その基本の労働委員会ということは、一地方自治体のそれぞれの自主性に任せるという分野の問題ではなくて、国がどうしていくのか、国の法律の中でどうしていくのかということをきちっと示さなければ、これは地方ごとに個別労使紛争の処理の仕方が違うとか、同一の企業でも様々な地方自治体にまたがった企業はあるわけでして、自治体ごとに違うということにも、なりかねないわけであります
 これは、やはり基本として、国の制度として、きちっと位置づけていくという方向が示されるべきだという意味で労働委員会ということにこだわらなければならないということをあえて、重ねて申し上げておきたいと思います。

第3回労働政策審議会個別的労使紛争処理対策部会(平成13年2月9日(金)9:00~11:00)」(厚生労働省審議会、研究会等


さすがの連合も、自治体ごとに違ったら困るから全国一律で規定しなければならないという事情は認めているようですが、そういってしまうと連合自身の息のかかった労働委員会の権限拡大ができなくなるので、「自治事務を国が規定しろと」いう自家撞着をものともしない主張をしてしまうのでしょう。というより、そもそも円滑な集団的労使関係の構築を支援する労働委員会が個別労働関係紛争処理に活路を見いだす現状をこそ問題にしなければいけないわけで、二重に倒錯していて気が遠くなります。

後に成立した「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」では結局、労働委員会の権限を明記することは叶いませんでした。その現状に忸怩たる思いだった連合が、事業仕分けの対象に「個別労使関係紛争対策の推進」を盛り込んで、国(都道府県労働局)が実施している個別労働関係紛争処理を地方に移管することを狙ったではないかと思います。新たな既得権益の奪い合いがすでに始まっているわけですね。

実績からみれば全都道府県労働委員会の個別労働関係紛争処理は年間300~400件前後であるのに対し、都道府県労働局のあっせん申請は平成20年度で約8,500件と、桁違いの件数を処理しています。個別労働関係紛争というのは、労働基準法等の労働法規についての権限が組織内に控えていることが相談から解決までトータルに扱うために大きな効果を持っていて、その点で何の権限も持たない労働委員会より労働局が処理件数が多くなるのも当然でしょう。さらにいえば、労働局の労働基準部は都道府県内に数カ所の労働基準監督署を有するのに対し、労働委員会は県庁内に一か所しか事務所を持っていないので、利便性でも労働局には遠く及びません。

というように、法規上の権限もなくアクセスも悪い労働委員会では、労働局の行う個別労働関係紛争処理機能に勝ち目はないと思うんですが、明日の事業仕分けは「地方に移管」でFAなんでしょうね。すでに答えが見えているところが民意のすばらしさです。さすが民主党クオリティ。

ついでに、

○留意点〈全WG共通〉
※1 直接的な利害関係者は、事業仕分け作業には加わらないものとする
※2 行政刷新会議の議員は、全てのWGに評価者として参加することができる。
※3 行政刷新会議事務局職員や他のワーキンググループの評価者が、コーディネーターとして加わ
る場合がある(評価は行わない)。

行政刷新会議(第2回)議事次第 資料1-3 評価者名簿(民間有識者)(案)【PDF形式】(平成21年11月9日(月))」(行政刷新会議ホームページ


だそうで、連合の幹部経験者(草野氏)が入っていながら当事者による話し合いを否定するという、これまた見事なネオリベ的リベサヨっぷりにも気が滅入るところですなあ。
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