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2009年10月15日 (木) | Edit |
先日鬼太郎のポスターが貼ってあったのでよく見てみたら、個別労働関係紛争処理のシェア争いに新展開があったようです。

 各都道府県の労働委員会及び中央労働委員会は、「個別労働関係紛争 処理制度」に係る周知月間を創設しました。
 全国共通ポスター等を作成し、10月を同月間として「個別労働関係 紛争処理制度」の広報活動を実施します。


1 趣旨
 雇用形態の多様化、人事労務管理の個別化、労働組合組織率の低下等、労使関係を取り巻く中長期的な構造変化に加え、昨今の経済活動の低迷に伴い、労働関係に関する事項についての個々の労働者と事業主との間の紛争が増加しています。
 都道府県労働委員会では平成13年以降、個別労働関係紛争処理制度(詳細はこちら(PDF:137KB))を設け、これら個別労働紛争の迅速かつ適正な解決に当たっています。
 今般、同制度の周知・広報を通じて一層の利用拡大を図るため、「個別労働関係紛争処理制度」に係る周知月間を定め、全国一斉に周知・広報活動を実施します。

「個別労働関係紛争処理制度」に係る周知月間の創設について(ポスターの作成等)」(中央労働委員会
※ 以下強調は引用者による。


「人事労務管理の個別化、労働組合組織率の低下」って労働委員会が言っちゃっていいんでしょうか? 排他的交渉権を認めず複数組合に個別の労働基本権を認めてきた労働委員会が、同じ企業内で正社員中心の利益団体と少数派正社員による思想集団とに分断され、それらに包摂されない非正規社員は企業外の地域ユニオンがまとめ上げるという、職場単位ではちっとも団結しない労働組合を作りだしたのではなかったですかね? 集団的労使関係構築の支援を本来の使命とする労働委員会が個別労働関係紛争処理の広報活動に力を入れるというのは、とうとう行き着くところまで行ってしまったなあと感慨深いものがあります。

ただ、労働委員会が自らの存在意義を否定しかねない個別労働関係紛争処理のシェア争いに乗り出したのも、昨今の「成果主義」とか「政策評価」の流れからすれば致し方のないものなのでしょう。

(イ) 不当労働行為事件取扱件数(初審) (単位:件)

  係属件数 終結件数








取下・和解 命令・決定

16 823(1) 311 1,134(1) 240 135 375
17 759(1) 294 1,053(1) 273 135(1) 408(1)
18 645 331(2) 976(2) 247 108 357(2)
19 619 330(1) 949(1) 314(1) 147 461(1)
20 488 355 843 210 98 308

※()内は中労委初審であり内数である。
18年の終結計は移送2件を含む。


不当労働行為事件処理状況」(中央労働委員会


◎ 調整事件係属状況及び終結状況

(単位:件)
年別 係属 終結 次年
繰越
前年
繰越
新規係属 取下げ等 解決 不調
・打切
合計
あっせん 調停 仲裁
16年 130
(10)
526
(8)
4 1 531
(8)
661
(18)
147 279
(4)
133
(2)
559
(6)
102
(12)
17年 102
(12)
560
(5)
4 0 564
(5)
666
(17)
139 270
(4)
130
(1)
539
(5)
127
(12)
18年 127
(12)
515
(2)
5
(1)
1 521
(3)
648
(15)
108 289
(3)
173
(2)
570
(5)
78
(10)
19年 78
(10)
467
(3)
5
(1)
0 472
(4)
550
(14)
103
(12)
219
(2)
149 471
(14)
79
20年 79 546
(4)
6
(2)
0 552
(6)
631
(6)
85 264
(4)
181
(2)
530
(6)
101

〔注〕 (1)( )内は特定独立行政法人等関係件数で内数
(2)取下げ等には不開始を含む。


調整事件取扱状況」(中央労働委員会


不当労働行為事件では終結計の事件数が400件前後、調整事件では終結の合計が400~500となっておりますので、全都道府県労委で年間850件くらい処理するとして単純に平均すれば、一都道府県労委当たり年間18件程度の集団的労使関係紛争を処理している計算になります。ただし、実際は東京や大阪など人口の多い都道府県に事件数が偏重しますので、個別に見れば年間に数件しか事件を処理しない労働委員会のほうが大多数となります。

となると、「そんな仕事のない組織なんかムダだ!」とおっしゃる議員さんやらオンブズマンの方々から「ムダの排除」の象徴としてやり玉に挙げられてしまい、地裁レベルではありますが委員報酬の月額支給を差し止める判決が出されたりしております。


「行政委員報酬「月額支給は無駄遣い」 市民オンブズ、県に見直し申し入れ」(2009/04/09 00:00【中日新聞】)

 選挙管理委員など県の行政委員の報酬が月額支給されるのは無駄遣いだとして、市民オンブズマン福井(坪田康男代表幹事)のメンバーが8日、支給法を日額に改めるよう県に申し入れた。行政委員の報酬をめぐっては大津地裁が今年1月、滋賀県に一部委員会への月額支給の差し止めを命じる全国初の判決を下した。各自治体にも見直しの動きがでており、県の対応が注目される。
 地方自治法は行政委員の報酬を「勤務日数に応じて支給する」と規定している。県では実働の少ない収用委員は日額だが、年間10-30回程度の会合を開く選管、教育、監査、人事、労働の各委員は月額で報酬を受ける。 同オンブズマンによると、支給法を月額から日額に改めた場合、1会合当たりの支出額は教育委員会で39万円、労働委員会では134万円も節約できる。同オンブズマンは「収用委員だけが日額であるのはおかしい。(他の委員が)月額支給を受けるだけの合理的な理由が必要だ」と主張している。 申し入れ書を受け取った県人事企画課の片山富士夫課長は「委員には会合以外の職務もあるが、他の自治体の動向も踏まえて見直しの是非を検討したい」と応じた。 (谷悠己)


どちらかというとオンブズマンの方々は一部の労働組合と親和性が高いように思われるところですが、労働委員会委員の任命問題でいつももめているその労働組合からすれば、労働委員会も資本の手先にしか見えないのかもしれません。

さらには、この判決の出る少し前には船員労働委員会が観光庁設置のために廃止・統合されており、その経緯についてはhamachan先生の当時のブログでも呟かれています。

>というわけで、濱口教授の 「もしかして、件数も少ないんだし中労委で一緒にやってよ、ということだとすると、その組織財源は中労委に持ってきていただくのが筋のような気がいたしますね。」 ( 船員労働委員会の廃止?(EU 労働法政策雑記帳(6/29付)))とのご懸念どおり、スクラップ財源に利用して事務はぶん投げるという方針の模様。まぁ、エクスキューズとして定員はなんぼか中労委事務局に振り替えるんでしょうか。ともあれ、また先生のぼやきが聞ける…とか不謹慎にもワクテカしてしまったり(笑)。

http://www.seri.sakura.ne.jp/~branch/diary0708.shtml

いや、今さらボヤきません。そういうことだろうなあとは思っていましたし。なんちゅうか、労働省設置当時に他省と権限を取りあった業務は、炭鉱といい、船員といい、歴史の流れの中で、当該他省の組織財源として移ろっていくものばっかりですなあ、とモソモソ呟いてみるばかりです。
今さらボヤきません(2007年8月14日 (火))」(EU労働法政策雑記帳


そんな船員労働委員会の悲運を目の当たりにした労働委員会側では、「いま最新流行は個別労働関係紛争処理、これ。最強。」とばかりに個別労働関係紛争処理のシェア争いに乗り出して自己の組織の有用性をアピってるわけです。

とはいえ、やはり労働委員会の本来の存在意義からすれば禁断の果実に手を出してしまったというべきではないでしょうか。端的には、一年ほど前のhamachan先生のこちらのエントリで、

もちろん、使用者個人の問題と言うよりは、株主主権論によるコーポレートガバナンス論がはびこり、労働者を大事にするようなけしからん会社の格付けは下げてやるんだこの野郎、みたいな風潮が、マスコミも巻き込んで吹き荒れたことが背景にあるのでしょうが、何にせよ、使用者側が「なんで労働者の権利なんか守ってやる必要なんかあるんだ、コストだけかかって無駄じゃねえか、使い捨てでいいじゃねえか、それでどこが悪いんだ」という風に考えざるを得ないような流れがあったことは確かで、それはマクロ的に長い目で見たらそうではないんだ、ということこそが本当の労働教育ではないか、というのはまさにその通りだろうと思うのですね。

今、労働者の側に「良好な労使関係の構築こそがマクロ的、長期的に労使双方にメリットがあるのだ」ということを教えていって、目の前の問題がすぐに解決するかといえば、そういう訳のものでもないので、現時点の労働教育としては権利教育という形にならざるを得ないと思うのですが、もちろんそれだけで話がすむわけではありません。

その先に、主としては使用者や使用者となろうとする人々に対して、そして国民全体に対して、そういう枠組みの重要さをきちんと教えていくという意味の「労働教育」という課題が待っているのだろうと思います。
社会全体への労働教育?(2008年11月15日 (土))」(EU労働法政策雑記帳


という部分について勝手に「我が意を得たり」と盛り上がって、

私の在籍時は個別労働関係紛争をどこが処理するかという議論の真っ最中でしたが、集団的労使関係紛争に持ち込まない限り労働委員会を利用できないということが組織化のインセンティブの少なからぬ要因となっていたはずで、労働委員会自らがそのタガをゆるめ続けているということも組織化が進まない一因かと。

投稿: マシナリ | 2008年11月17日 (月) 23時33分


などと若干すれ違い気味に反応してしまっておりましたが、労働委員会が個別労働関係紛争処理にうつつを抜かしているうちに、本来の使命である円滑な集団的労使関係構築支援の機能が崩壊してしまっているように思われるわけです。

『新しい労働社会』を改めて拝読してみると、紛争に至ってから慌てて「個別だ、集団だ、三者構成だ」と騒いでも現場の労使当事者にはほとんど意味がないことは明白だろうと思います。重要なのは、普段の同一の職場内において産業民主主義を確立する取組であり、政労使の関係当事者がその重要性を認識することがまず第一歩になるのだろうと思います。

ただまあ、そういった集団的労使関係に存在意義を有する労働委員会が、自らのその役割を見失っているようにしか見えないのが絶望的ではあります。そんな現状認識の甘さが民主党を盲目的に支持してしまうような連合の悪い癖なのかもしれませんけど。
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