2009年09月22日 (火) | Edit |
気がついたらこの秋はうちの業界的に気になるドラマが続いていたようで、「官僚たちの夏」は昨日が最終回でした。結局まともに見たのは初回と最終回だけで、第7話も途中から見ただけでしたが、うーむ、この政治過程をきちんと理解してご覧になった方ってどのくらいいたんでしょうね。

特に第7話は、法案成立が政治家の行動によって阻まれてしまうというプロットの話でしたが、これも「政治主導」の一つの形なんですね。

貿易自由化という戦後最大の試練を控えた昭和37年(1962年)、通産省企業局長の風越信吾(佐藤浩市)は外国企業の進出から国内産業を守るため、「国内産業保護法案」の成立を進めていた。その法案の中でも最も重視するのが、自動車業界を再編する「自動車三社構想」だった。過当競争を防ぐため普通自動車の量産メーカーを三社に絞るという構想は、関係各所への慎重な根回しが必要なため、極秘事項として検討されていた
(略)
ほどなく、古畑の調整はうまくいき、法案は昭和38年(1963年)春の通常国会に提出され、成立に向けて大きな一歩を踏み出した。しかし、古畑は風越への嫉妬から、法案の最も重要な部分である「自動車三社構想」を記者にしゃべってしまう。それを機に産業界は法案に反発、金融界も公取委も公然と批判を始めるようになり、風越ら産業派に逆風が吹き始める。そのとき、風越と古畑の亀裂が広がりに反撃のチャンスを見た池内は、新聞やデマ情報を使った法案潰しを画策する

TBS「官僚たちの夏」あらすじ第7話
※ 以下強調は引用者による。


あくまでドラマの中の話ではありますが、現実の政策決定過程の一面はとらえていると思います。「官僚主導」なんていったって、最終的には選良である議員の先生方が制度上保障された決定権を持っているわけで、官僚の抵抗が奏功するはずがないんですよね。

たとえば自民党政権下での手続をみても、法案成立のためにはその法律を所管する省庁が関係省庁に協議をする「各省協議」を行い、事務レベルで調整が整った法案について与党のカウンターパート(厚労省なら厚労部会など)に説明をする「与党根回し」を行うというロジを適切に踏まなければなりません。各省協議で調整した法案がそのまま通るなら官僚主導といわれても仕方ないかもしれませんが、この「与党根回し」で法案がガリガリと書き直されるなんてことは日常茶飯事なわけです。自民党でいえば、総務会と政調会で全会一致が見込まれるまで修正が加えられて、やっとの思いで国会に提出したのが「内閣提出議案」となります。

ところがもちろん話はこれで終わるわけではなく、国会の場では野党が修正とか付帯決議を求めてくるわけで、原案可決も多いとはいえ、これだけのプロセスを経た結果を「官僚主導」だという前に、まずは「与党も野党も含めて政治家は何をしてるんだ?」と小一時間ほど問い詰める方が先でしょうに。

でついに、ドラマの方は炭鉱爆発事故の対応で官僚が命を落とす展開に。

そんな中、炭鉱爆発事故の対応による激務の末、体調を崩し入院していた鮎川光太郎(高橋克実)企業局長を見舞った風越信吾(佐藤浩市)通産省事務次官は、鮎川の余命が半年もないことを知らされる。自分の病状を知らされていない鮎川は仕事に復帰し、輸出規制以来低迷が続いている繊維業界を立て直すつもりでいたが、風越は鮎川が務めていた企業局長を牧順三(杉本哲太)通商局長に代行させることを決める。鮎川は病床にあっても、日米安保のときに繊維が犠牲になったのを自分の責任と感じ、気にかけていたが、牧は領土返還でアメリカから見返りを求められたら応じるべきとの考えだった。

TBS「官僚たちの夏」あらすじ最終回


これもドラマを盛り上げるためとはいえ、現場で陣頭指揮を執ったり、霞ヶ関に押しかけてくるデモ隊と衝突したりと、現場に出て行くキャリア官僚がやたらと美化されていているように思いますが、それはキャリア官僚の描き方としてちょっと的外れではないかと(鮎川のモデルとなった川原英之氏(Wikipedia:川原英之)は、実際に炭鉱爆発事故を処理した後に亡くなっていますが)。

キャリア官僚が現場を見る必要がないとはいいませんが、キャリア官僚(のしかも幹部)にとっての現場というのはむしろ、業界団体との交渉だったり国会議員への根回しというような利害調整の場であって、現場の陣頭指揮は技官とかノンキャリの執行部門の現場となるはずですね。この辺は脚本の方も、政策立案に専念するテクノクラートたるキャリア官僚と、執行に専念するノンキャリ・出先職員・地方公務員の区別がついてないんだろうなと思います。

一方、NHKではそんな現場で執行する地方公務員の苦悩を描いたドラマが放映中です。

 倒れた間宮(岸部一徳)の代わりにチームのリーダーを志願した高岡駿馬(筒井道隆)は、「市民の積極的な参加による開かれた新しい行政」への転換を訴えるが、権藤(近藤正臣)はニュータウンこそがこの町の希望だと反論する。水元市長(吉田栄作)は、前市長である亡き父親の名誉を守るべきか、今困っている市民の生活を守るべきかで大いに悩む。そんななか、大勢の市民を集めて、ニュータウン計画の存廃を問う最後の公開部局折衝が開かれる。
 そこで市長はどのような決断を下すのか…?市民の反応は…?果たして、駿馬たちチームが作り上げた財政再建案は議会を通過させることができるのか…?

NHK「再生の町」次回予告


こっちも公務員が倒れてますなあ・・・

いやまあ、これを単に「放漫財政でムダ遣いばかりしてきた公務員の当然の報いだ!」と思われるならそれはそれで構いませんが、その「ムダ遣い」なるもので支えられていた公共サービスを削減するということは、これまでの公共サービスを享受してきた住民がもっともその影響を被るという点は認識していただきたいところ。このドラマでも、まさに自己責任で財政再建を強いられた地方自治体とその住民の苦悩を描いていて、これまた地方分権の一つの形なんですね。

公務員が苦しむ様は視聴率がとれるんでしょうけど、その苦しみというのは実は、その所管する分野なり地域の住民の方々のものでもあるわけです。「キャリア官僚を減らせ」、「天下り先への補助金を減らせ」、「無能なチホーコームインなんかクビにしろ」・・・なんとおっしゃっても結構ですが、その帰結には責任を持っていただきたいものです。

ついでに、「再生の町」はこれから最終回が放送されるので、「地方分権をより拡充して地域に財源を渡し、地域のことは地域が決められるようにすべきだ」と主人公が述懐してエンドロールに1000点。
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コメント
この記事へのコメント
gruza03さんにはてブでコメントいただいておりました。
http://b.hatena.ne.jp/entry/sonicbrew.blog55.fc2.com/blog-entry-344.html

> gruza03 社会, 行政, ローマ人の物語 カラカラ帝の「アントニヌス勅令(属州の全自由民にローマ市民権)」で取得権から既得権へと、市民の間接的参加から直接的参加が社会の流動性を奪い都市地方格差の固定を生む事への帰結を望んでいる人々は多そうです 2009/09/22

これ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%8B%E3%83%8C%E3%82%B9%E5%8B%85%E4%BB%A4
ですね。

歴史的な評価はよく分かりませんが、直接参加がよいことばかりではない一つの例といえそうです。現代とはかなり制度的背景が違いそうですけど。
2009/09/23(水) 09:08:03 | URL | マシナリ #-[ 編集]
http://sankei.jp.msn.com/politics/local/090922/lcl0909222148003-n1.htm
国の出先機関廃止後、関西広域連合が受け皿で一致 大阪、京都、滋賀3知事
2009.9.22 21:47
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20090930-OYT1T00009.htm
国の出先機関、都道府県の「広域連合」に移譲検討へ

 本格的に外局の職員の道州制における上級職となるか単なる地方公務員となるかが示されることになりますが、自分は「ムダを無くして財源を確保」することが、、国家公務員から地方公務員へ出向ではなく完全に移籍する場合、退職金の財源(ムダの廃止が公務員の退職金確保が主たる目的)でしかないことが明らかになった場合どのような反応があるでしょうね。
 国家公務員、地方公務員の退職金は積立方式じゃない「基本給連動型退職金制度」で一括支給することで、団塊の世代の退職金の増加により一般会計予算が圧迫されることにあります。
 天下りの「退職金」問題は「内部規定」で制限するのは訳ないんです。退職金を複数回貰うというのは「源泉税と住民税」をより多く居住地自治体に納付することでもありますから、職員の給与引き下げが、地域経済を縮小させるという話と一緒で、公務員の俸給も公共投資(再分配政策の一翼)という面からみれば、それほど目くじらをたてるものではないと考えますが、感情論からの批判には晒されるのは致し方ないことだとは思います。
 
No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)

http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1420.htm

1 退職所得とは

 退職所得とは、退職により勤務先から受ける退職手当などの所得をいい、社会保険制度などにより退職に基因して支給される一時金、適格退職年金契約に基づいて生命保険会社又は信託会社から受ける退職一時金なども退職所得とみなされます。

 また、労動基準法第20条の規定により支払われる解雇予告手当や賃金の確保等に関する法律第7条の規定により退職勤労者が弁済を受ける未払賃金も退職所得に該当します。

 キャリア公務員の渡り問題は、退職金控除廃止と退職金の給付改革「キャッシュバランス型退職金制度」等へ公務員をどのように移行させるかだと思いますし、「また、」で書かれている部分は昨今の「有期雇用契約」等の増加を考えれば、(財務省・国税庁は)退職金控除ではなく通常の給与所得として課税したいところでは無いでしょうか?

 しかしそれでは、国民へのサービスを犠牲にして、自分のところの退職金を確保するわけで、ふざけた話になりかねませんからどのように説明をするのか見物です。

 しょせん補正予算のストップで確保できるのが一兆円ちょい。"無駄の排除"で得られるのが数千億円程度ではないかと思っています。国民へ「バラマキ」するには足りませんが、団塊の退職金にはちょうどいいくらいの額です。
 既得権保証調整支給
 既に在籍している社員については旧退職金規程による退職金支給額を、既得権として保証することが必要となる。
 「広域連合」なるものが整備された時点で、「キャッシュバランス型退職金制度」を打ち出すんじゃないでしょうか?

ついでに
http://www.jtuc-rengo.or.jp/kurashi/zei/daizouzei/mondai.html
連合/ここが問題!政府の増税案
 2005年6月に政府税調の小委員会が発表した増税案には、多くの問題点があります。特に、次の4つは私たちの暮らしに大きな影響を与えます。
 財政赤字を拡大した政治の責任は棚に上げられたまま、負担だけを国民にシワ寄せする今回の増税案。
 国民に痛みを押し付ける前に、歳出構造の徹底した見直し、不公平税制の是正など、政府にはやるべきことがたくさんあるはずです。

給与所得控除の縮小 退職所得控除の縮小 特定扶養控除の廃止 配偶者控除の廃止
金融所得課税の一体化

 いや真っ当なんだけど・・・時は不思議なものを見せてくれます。
2009/09/30(水) 07:17:34 | URL | gruza03 #.AP4vxmU[ 編集]
> gruza03さん

> 国の出先機関、都道府県の「広域連合」に移譲検討へ

これも「ムダをなくして財源を調達する」のと同じく、民主党お得意の「単なる予算の付け替え」ですね。中央政府が小さくなりさえすれば地方が大きくなるのは構わないという朝三暮四にいつまで付き合わされるんでしょうか。
http://sonicbrew.blog55.fc2.com/blog-entry-102.html

天下りにしても、天下りで退職金をもらうのがけしからんからといって、その天下り先の事業までムダだと断定してしまったら、その事業で生活が支えられている方の人生までムダだと宣告してしまうことになるわけです。

典型的なのが、中央職業能力開発協会へ交付した基金がムダだと叫んで失業者の生活を逼迫させるのが民主党、社民党による鳩山政権だったりします。誰のための事業なのかを考慮することなく実施主体を叩いてしまい、自らの支持基盤である労働組合を利するばかりで失業者を路頭に迷わせるという、見事な誤射ぶりですね。
gruza03さんが示された連合の政府税調批判も同じような話ではないかと。

「「凍結」失業対策基金、天下り先に7千億委託」(2009年9月11日03時15分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090911-OYT1T00134.htm

いただいたコメントの趣旨は、広域連合なるものに再就職するに当たって、国を退職した国家公務員に対する退職金の支払いが増大するということかと思いますが、退職金は賃金の後払いという性格を有するため、退職時にヘタに下げると債務不履行で損害賠償請求が頻発する可能性がありますね。地方自治体に対しては退職手当債が認められているので、おそらく国債の発行によって対応することになるかと。まあ、この国は法治国家から民意至上主義国家になったようなので、判例法理もひっくり返るかもしれませんが。

なお、細かいことですが若干事実誤認されているようなので僭越ながら指摘させていただきますと、有期雇用の雇止めの場合には労基法上の解雇予告手当は不要なので、有期雇用契約が増加したからといって必ずしも解雇予告手当が増えるわけではありません。解雇権濫用の法理が適用される場合は民法上の不法行為による損害賠償金の支払い義務が生じることになりますが、通常は課税対象にならないのではないかと。
2009/10/01(木) 01:21:12 | URL | マシナリ #-[ 編集]
>なお、細かいことですが若干事実誤認されているようなので僭越ながら指摘させていただきますと、有期雇用の雇止めの場合には労基法上の解雇予告手当は不要なので、有期雇用契約が増加したからといって必ずしも解雇予告手当が増えるわけではありません。解雇権濫用の法理が適用される場合は民法上の不法行為による損害賠償金の支払い義務が生じることになりますが、通常は課税対象にならないのではないかと。

 ありがとうございます。
 ご指摘の通りです。
 連合の退職所得の範囲の縮減との関連もあり、国税庁の動き等を含め悩ましいところでした。また、退職金の財源については、国債の発行を抑止する発言や財政規律派の意向があることから、国債に依存しない以上、「ムダな予算」を当てるしかないと読んでました。

 CM(コンストラクション・マネジメント)方式による有期雇用契約での労働者の使役について、公共投資を民間投資(PFI)や公契約条例における「一人親方」の取扱いを見ていると、請負契約そのものを解体した、個別の労働契約(有期)が増大することになると見てましたので、作業の進捗状況で終了し残存期間が生じた際、解雇予告手当の支払いを求められるのではないかというのがあったものですから。 
2009/10/01(木) 07:37:15 | URL | gruza03 #.AP4vxmU[ 編集]
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2009/09/22(火) 09:20:37 | すなふきんの雑感日記